ラノベ転生 ―底辺社畜、昔好きだったラノベの世界に転生するも転生先は暗黒系鬱ラノベの世界だった件― 作:哀原正十
A級魔人は想定通り殲滅し終えた。
学園の生徒は一旦歓喜に包まれた。それから、本番はこれからであることを思い出し、気を引き締めた。
S級魔人。陽光の魔人ネルアポロン。
七賢魔ではないがS級の魔人なだけあり強力だ。
だが、順当に行けば魔人ネルアポロンは問題なく討滅できるはずだ。原作においても神崎焔が一人で相手取り討ち取った相手。神宮司ルナまでいる状況で負けるはずがない。そのはずだ。
そのはずなんだ。
(だから今度は僕がでしゃばるのはやめておこう。うん)
さっきの戦いで懲りた。僕が不安視し過ぎているだけなのだ。元々不安症な気質だからすぐ不安になってしまう。原作の魔人強さランキングでも中途半端な位置にいるネルアポロンがそこまで強いはずがない。そのはずだ。うん。
うん。
「アキラ。とうとう決戦ね」
「ああ。でも大丈夫だよ。あの2人なら。問題なく魔人ネルアポロンを討滅できるはずだ」
「そうね。神宮司ルナ会長に、あの神淵覚醒の到達者神崎焔までいるんだもの。負けるはずがないわ」
「そうそう。負けるはずがないね」
「うん。きっとそうよ」
両手をギュッと祈るように重ね合わせながら言うキサラちゃん。やはりSランクの魔人相手ともなれば不安にもなるだろう。その不安を和らげる本音を言う訳にはいかない。原作知識など口にしようものなどできるはずないから。
だから代わりに言う。
「大丈夫だよ。だって」
僕はキサラちゃんに微笑む。
「神宮司ルナ会長に、神崎焔までいるんだ。同格以上の相手、それこそ七賢魔でも現れない限りピンチになんてならないよ」
「……うん、そうよね」
キサラちゃんは少し明るい表情で言う。
「七賢魔でも現れない限り大丈夫なはずだわ」
七賢魔。それはSランク魔人の中でも特別な、SS、あるいはSSSランクとでも言うべき魔人たち。その魔人さえ現れなければ大丈夫なはずだった。
まさか、こんな場所、この状況に都合よく七賢魔が控えているなんて状況、あるはずないだろう。
「あ、進軍するみたいよ」
「うん。最後の戦いだね」
AグループとBグループは合流して進軍する。S級魔人ネルアポロンの元を目指して。
「くぅううう。敵の数がやはり多いな」
本郷タケシが悲鳴のような声を漏らす。夢川アユムも頷きつつも。
「でも、あーしらにAグループの味方も加わって数の上ではこっちが優位。さっきよりマシだよ」
「そうね。やっぱ数は力だわ。ねぇアキラ」
「うん。そうだね。数が2倍になると単純に戦力が2倍になるようなものだもんね。A級魔人も全滅させたしイレギュラーも起こり得ない。……大丈夫そうだね。ここは」
AグループとBグループが合わさった連合軍は破竹の勢いで敵を倒していく。人類の中でも選りすぐりの対魔士集団対魔学園の精鋭たちがここには集まっている。人類の中の精鋭なのだ。早々魔物の群れなどに負けてはいられない。
僕たちが負けるようなら、人類に未来などないのだから。
「あ、先頭、魔人との戦い始まったわよ。早速会長がインフィニット・アークぶっ放してる」
「目立つなー……一撃で戦闘が終わるといいんだけど」
「そうはいかなかったみたい。え? インフィニット・アークが、反射されて……」
反射されたインフィニット・アークがあらぬ方向に飛んでいき、近くの山を穿った。
ドォオオオオオオオン!
……山に大穴が開く。その様を呆然と見つめながら、キサラちゃんが口を開いた。
「一体、何が起こってるの? これが陽光魔人ネルアポロンの力……?」
(いや、おかしい。ネルアポロンにそんな力はないはず。むしろインフィニット・アークの一撃であっさり死んでもおかしくない程度の小物だ。それが跳ね返された? ……そんなことできる存在は一人。鏡の魔術師神宮司ルナ一人――まずい!)
「僕が行ってくる!」
「え、アキラ、急にどうしたの!?」
「最悪の想像が当たっていたらこのままじゃ二人ともやられるかもしれない! だから僕がいく! 肩透かしならそれでいい!」
「分かった! アキラがそう言うなら行ってきなさい! 肩透かしで終わればいいわね!」
「本当にね」
「アキラ、またいくのか……」
「あーしらはあーしらで頑張るしかないっしょ。幸い味方の陣も厚いし、今度は大丈夫そうだよ。ビーム・ライフル!」
勇ましく戦う3人の声が聞こえる。本当ごめん。思いながらも僕は胸の中の不吉な予感に一つの確信を得ていた。
これ、肩透かしじゃ終わらない奴だ。鬱展開なんて本当真っ平ごめんなんだよ……!
そんな展開、僕がへし折ってやる! ゴミ箱行きだ!
僕は急ぐ。二人が