ラノベ転生 ―底辺社畜、昔好きだったラノベの世界に転生するも転生先は暗黒系鬱ラノベの世界だった件―   作:哀原正十

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第45話 魔人ジークフリート

「私のインフィニット・アークが反射された? 馬鹿な……」

 

「……いけませんねぇ……」

 

 魔人――Sランク魔人、ネルアポロンの隣にいる、黒いタキシードに身を包みステッキをその手に持った魔人が神宮司ルナのように鏡を中空に浮かばせながら紳士のように首を振る。

 

「戦闘開始直後に空気も読まず大型攻撃とは紳士らしくない。全くやれやれ。最近の魔術士は……」

 

「あなた、何者ですか」

 

「おっと。これは申し遅れました。申し訳ない。私の名前は」

 

 魔人は。

 

 うやうやしく一礼しながら、礼儀正しくその名を告げた。

 

「ジークフリート。ものまねの魔人ジークフリート。七賢魔の一人です。あなたたちが作戦行動を立てているという噂を小耳にし援護に向かったものです。そして」

 

 ジークフリートの雰囲気が変化する。そして、

 

「あなた方を殺す者です。御無礼」

 

 当然の如く、詠唱した。

 

「神淵覚醒」

 

「な!」

 

「ありえない!」

 

 神宮司ルナと神崎焔がともに驚く。だが、本当に驚くことになるのはそのあとだった。

 

 なぜならジークフリートが発動した魔法は。

 

「ゴッド・ブレイズ・マナ」

 

 神崎焔の魔法と同一のものだったのだから。

 

 

 

 

 

「どけぇ!」

 

「ギャッ」

 

「おい一年、どこに行く。そっちは神宮司ルナ会長と神崎焔代表の戦場だ。邪魔になるから大人しく」

 

「お叱りはあとで! 自分でも馬鹿なことをしているとは思っています! ハッ!」

 

「ギャフっ!」

 

 ……僕は道中の敵を鎧袖一触切り伏せながら、味方の真っ当な制止を振り切りながら進む。間に合え。勘違いならそれでいい。あの2人ならネルアポロン如きなら問題になるまい。

 

 だが、もし。

 

 もしあいつがいたなら。

 

 勝敗は分からない。いや、むしろ神崎焔(・・・)がいる分怪しくなる。

 

「抜けた! あそこか!」

 

 そして僕は2人が戦っている戦場へと割って入った。

 

 

 

 

「ゴッド・ブレイズ・キャノン。敵の魔法を焼き尽くせ!」

 

「ならばこちらもゴッド・ブレイズ・キャノンで応戦しましょう。敵の魔法を焼き尽くしなさい!」

 

 2つの魔法がぶつかる。極熱の魔力弾。その激突。その勝敗は――。

 

「な、私が押し負けている!?」

 

「魔人と人間の残酷な魔力の差が出ましたねぇ。そら、いきますよ!」

 

「くっ。鏡よ!」

 

 神宮司ルナが鏡反射の魔法で援護する。

 

 ジュウ。

 

 一瞬で燃え尽きるも、幾つも鏡を連ねて燃え尽きるまでの時間を遅延する。その遅延が重なり僅かに攻撃を反射することに成功する。そしてその僅かな反射の差で、

 

「相殺、か」

 

「はぁ、はぁ。こんな魔人がいるなんて、想定外でした」

 

「敵は私たちだけではありませんよ。さぁ、魔人ネルアポロン」

 

「了解。太陽よ」

 

「っ! まずい!」

 

 魔人ネルアポロンが攻撃動作を行う。陽光の魔力を宿した強力な攻撃だ。単体ならともかく、魔人ジークフリートの相手をしながら相手取るには厄介すぎる相手だった。七賢魔ではないといえど腐ってもS級魔人。窮地。その2文字が頭を過る。舌打ちを堪えて目を細めて魔人ネルアポロンの方を神宮司ルナが見ていると、

 

「どけぇえええええええええ!」

 

 見知った声が聞こえる。神宮司ルナは表情を明るがせた。

 

「アキラくん!」

 

「魔人ネルアポロン、雑魚が!」

 

「陽光、裁蝕」

 

 魔人ネルアポロンが急に現れた敵――闇蔵アキラに陽光の力を集約した一撃を放つ。アキラは闇の剣を陽光に向け。

 

「打ち消せ」

 

 詠唱。勢いが弱まる。だが、打ち消すには至らない。アキラは躊躇うことなくネルアポロンに向けて疾駆する。そして。

 

 ドガァアアアアアアアアアアアアン!

 

 アキラに陽光裁蝕が激突する。魔力煙。それを突っ切ってアキラが現れる。攻撃は身に纏う魔力のオーラが無力化した。動揺するネルアポロンの首元まで3,2,1歩。

 

 そして0。

 

「死ねぇ!」

 

 闇の剣がネルアポロンを切り裂いた。

 

 虚無へと誘う絶死の剣。それを喰らったネルアポロンは捻じれ、そして不可思議な虚無の空間に巻き込まれ、そして消えた。その命を散らした、のかどうかは分からない。だが、ともかくこの世から消えたのは間違いない。それは死んだも同じこと。神宮司ルナはもう一度明るい声で言った。

 

「アキラ君」

 

「ハァ、ハァ。やっぱり、お前だったか。ものまねの魔人ジークフリート」

 

「おや、私の事を知っているので? ああ、そうですか。あなたがあの魔人イルミナティがせっせこ育成していた人間の協力者の残党ですか。……中々油断ならない力の持ち主ですね。あの魔人ネルアポロンを瞬殺とは。強敵と認めましょう」

 

「どーも。そして」

 

 そしてアキラは詠唱した。

 

「魔境覚醒――虚那琉脊界」

 

 そこは既に3通りの結界が張り巡らされた場所だった。

 

 神宮司ルナの神鏡弧獄(しんきょうこごく)。神崎焔の炎淵騰界(えんえんとうかい)。そして魔人ジークフリートの炎淵騰界。人の結界が2つに魔人の結界が1つ。しかしながら、その勢力圏に優勢を築いていたのは1体の魔人の魔境覚醒だった。魔人の魔力量とはそれだけ理不尽なものなのだ。だがしかし。

 

 そこに3人目の結界が加わったことで。

 

「ちっ。私の結界が押されている、ですか……」

 

 ようやく人の結界が魔人に対して優勢を築けた。

 

 3人の結界。それが合わさり、魔人の結界に対してようやく優位が築けた。アキラがその闇の剣を魔人ジークフリートに向けて、

 

「さぁ、これで結界はイーブン以上。つまり戦力大幅ダウンだ。魔人ジークフリート。ここで死んでもらう」

 

 殺害を宣言した。

 

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