ラノベ転生 ―底辺社畜、昔好きだったラノベの世界に転生するも転生先は暗黒系鬱ラノベの世界だった件― 作:哀原正十
「ジークフリート、お前の魔法は一度に一人しかものまねできない。つまり多数の敵を相手取るには相応しくない魔法だ。3人の魔術士相手にどれほど拮抗することができるかな」
「ふ、ははは。そこまで知っていますか。魔人イルミナティ、お喋りの魔人ですね。全く。その通り。私の魔法は複数を相手取るに適しない。しかし……ゴッド・ブレイズ・キャノン!」
魔人ジークフリートの後方に鳳凰を象った炎が現れる。その口に炎の奔流が生まれる。ジークフリートが叫ぶ。
「この純然たる魔力の差はどう覆すつもりですかねぇ! 放て!」
「こちらも、ゴッド・ブレイズ・キャノン!」
神崎焔が同じく鳳凰を象った炎を産み出し、そして炎の奔流を放った。その勢いの差は歴然。当然押される。しかし。
「鏡よ!」
神宮司ルナの鏡の多重展開により敵の攻撃の数パーセントを跳ね返し、
「虚無よ、打ち消せ」
闇蔵アキラ――僕の放った魔法によりその威力を減ぜられて、
「う、おおおおおおおおおおおお!」
最後は神崎焔の気合いで。
3人の力で敵の攻撃を押し返し、撃ち破り、反撃することに成功した。類まれな炎の奔流がジークフリートに襲い掛かる。
「ちぃっ! ゴッド・ブレイズ・シールド!」
ジュア!
ジークフリートの前に現れた焔の盾が攻撃を防ぎきる。しかし、ジークフリートの表情に余裕はない。むしろ苦々し気だ。しかし、ふっはは、と突然笑い出し、そしてジークフリートは宣言した。
「負けました。降参です。確かに今の私に3人の相手は荷が重いようです」
「はぁ!?」
「一度に一人の魔法しかものまねできない。だからと言って神淵覚醒に至ったそちらのお嬢さん以外の魔法をコピーしても劣化コピーになる。私の能力の欠点を見事に突かれた形ですね。全く。しかし、これほどの、人類最高クラスの魔術士が3人も集まるなどと誰が予想できましょうか。魔境覚醒で優位を築けていればまだ勝機はあったのですが、ね」
「……降参、して許すとでも」
「思いません。だから」
ジークフリートはその背に炎の翼を生やし、高く飛び立って言った。
「逃げます。では、さらば」
「あ、待ちなさい!」
「くっ! 虚無よ。捕まえろ!」
「無駄です。燃えろ!」
虚無の魔力で敵を捕らえようとしたがその魔力を燃やされるだけに終わった。やはり、神崎焔あっての拮抗状態。その神崎焔の魔法に、
「駄目ね。この距離で、私の
魔人ジークフリートをどうにかする手段がない以上諦めるほかない。僕は大きく息を吐いた。
「……くそっ。あの厄介な魔人をここで仕留めきれれば大きかったのに。逃がしてしまったか……」
「厄介。そうですね。厄介すぎる相手でしたわ。相手が強力な程自分も強化される。そして魔人特有の魔力量で相手の魔術士の上位コピーになってしまう。反則よ。あんな魔法」
「でも、無事で済んでよかったです。アキラくんが駆けつけてくれなければ危ないところでした。アキラくん」
生徒会長は僕に近づく。そしてそのまま
ギュッ。
「大好きです」
「ッ!!!!!!!!?」
「ちょっとそこ、何イチャついてるんですか!?」
「あ、間違えました。助かりましたって言おうとしたんです。間違えました。本当です。信じてください。間違えてつい、本音が」
「……まぁ、いいですわよ。あんたの痴情なんてどうでも。しかし、本当助けられましたね。闇蔵アキラ。凄まじい力でした。本当に」
そして神崎焔は。
綺麗に一礼をしてこう言った。。
「ありがとうございます」
「いえ。2人が死ぬのは人類の損失ですから。助かって本当によかったです。それにしても、畜生。本当、あいつだけはここで仕留めたかったな。それだけが残念だ」
「妙にこだわりますね。何でですか?」
「だって想像してみてくださいよ。こうやって3人で集まることなく、たった一人であいつと相対するような状況に陥ったときのことを。そうなれば」
ゴクリ、と神宮司ルナの喉が鳴った。僕はその先の言葉を口にする。
「必敗ですよ。どんなに強い魔術士でもね。あいつはジョーカーなんです。だからこそ、仕留めておきたかった。あんな奥の手で逃げられるとは思わなかったな……」
「ご、ごめんなさい、私の魔法が割と万能なばかりに」
「……いえ。それも含めて相性でした。今回は勝ち切れた。まずはそのことを喜びましょう」
「そうですね……アキラくんがこなければ負ける所でした。アキラ君」
生徒会長は僕に近づいて。そして。
ガシッ。
神崎焔にその先の行動を止められた。
「いちゃつくのはもういい」
「あーん」
「……とりあえず」
僕は跡形もなくなったS級魔人ネルアポロンの最後の姿を瞼の裏に残滓しながら、言った。
「任務は達成です。残りの敵を掃討してから帰りましょうか」