ラノベ転生 ―底辺社畜、昔好きだったラノベの世界に転生するも転生先は暗黒系鬱ラノベの世界だった件― 作:哀原正十
コキュートス学園に帰った僕らは盛大な歓迎を受けた。感極まって泣き出す生徒たちの群れの中で盛大に感謝され、盛大に祝われた。その日は歓待の激しさも相まって帰れなかった。
翌日以降帰ることになった。そしてその時にはコキュートス学園の全生徒が一緒だった。コキュートス学園はゲイマルクを抑え込むためだけに設立された学園。その役目を終えた以上、コキュートス学園はもう必要ないのだ。過酷な役目から解放された皆の顔には笑顔があった。僕たちが取り戻した笑顔だ。そのことは素直に、誇ってもいいと思った。
もちろんその中にはエレナ・バートンもいる。これで大量の戦力が確保できた。人類会議の魔王城急襲作戦の一つが整った。人類会議にこき使われるのは癪だが、確かにこれは自分の運命でもあるのかもしれない。自分のお陰で他人に喜ばれたから素直にそう思えた。
コキュートス学園の生徒たちは各学園に補填される形で吸収された。連戦続きで死傷者数の激しいヴァルハラ学園にも相当数の生徒が転校してきた。一気に賑やかになった学園の変化を僕がもたらしたのだと思うと感慨深いものがあった。
そう言えばキサラちゃんにも大きな変化があった。
「武装覚醒! ボルテック・ランサー!」
――なんとキサラちゃんが武装覚醒に覚醒したのだ。以前より遥かに雷の魔術は強力になり手強くなった。とはいってもまだまだ僕の敵ではないが大きな進歩であることは確かだ。僕は素直に祝う。
「本当におめでとうキサラちゃん。とうとうここまできたね」
「うん! やっぱ魔術士っていったら自分だけの武器を産み出してなんぼって感じだもんね! やっと私もスタートラインに立てたって感じ。たー!」
雷の槍を縦横無尽に振るうキサラちゃん。本当に嬉しそうだ。僕まで嬉しくなってくる。うんうんと頷く僕にキサラちゃんが言う。
「そういえば人類会議からまた新たな任務を言い渡されたんだってね。大丈夫?」
「大丈夫。ちょっと大変な危機が迫ってるからね。しばらくは忙しくなるよ。でも、僕にしかやれないことなら、やるだけさ」
「ふーん……ふふ、アキラもこの学園に来た当初から随分成長したわね」
「え? 本当?」
「案外次の魔法――神淵覚醒へのステップアップは近いのかもね」
「僕がねぇ……」
……正直実感が湧かない。そこまで成長しただろうか。神淵覚醒への頂までまだまだという感じがするけれど、でも確かに少し。
以前より少し。
その頂には近づけた気がする。それが成長という物なのかもしれない。僕は嬉しそうに雷の槍を振り回すキサラちゃんを見ながらそう思った。
(……しかし当分は忙しくなるな)
人類の魔王城急襲作戦その作戦に至るまでやらなきゃいけないことは山程ある。その中には僕にしかできないこともある。逃げる訳にはいかない。やらなきゃいけない。以前会長に言われた言葉が身に染みる。
【私、この景色があるから戦えるんです!】
「……僕も」
僕は屋上の下新たに混ざったコキュートス学園の生徒たちがヴァルハラ学園の生徒たちと仲良く談笑する姿を見ながら思う。
「この景色があるから戦えるのかもな」
5章 凍り付いた学園編 完