ラノベ転生 ―底辺社畜、昔好きだったラノベの世界に転生するも転生先は暗黒系鬱ラノベの世界だった件― 作:哀原正十
プロローグ 超えるべき己
それからの日々は激闘が続いた。
僕だけじゃなくキョウくんも、そして新たに生徒会に重用された黒桃煉、キサラちゃんも生徒会にて色々な任務に当たっていた。
激しい戦いは時に犠牲を産み出した。
「くっ、この俺がこんな所で力尽きるとはな、ガフつ!」
「貫貴ワタル先輩! うおおおおおおおおお! 俺にもっと力があれば!」
キョウ君と共に任務を受けた貫貴ワタル先輩が死んだり、
「いやぁああああああああああ! こんな死に方、いやあああああああああああ!」
「くっ、弾桜サクラ先輩! 俺にもっと力があれば! 糞ォおおおおおおおおお!」
キョウ君と共に任務を受けた弾桜サクラ先輩が惨い死に方を遂げたり。
「フッ、こんな所で終わるなんてな……」
「剣ヶ丘ケン先輩! うわああああああああああああああああ! お前だけは絶対に許さない!」
キョウ君と共に任務を受けた剣ヶ丘ケン先輩が死んだり、そして――。
「とうとう我が校から4人目の魔境覚醒者が現れるとは。誇らしいぞ。光津キョウ」
「……どうも」
光津キョウは魔境覚醒に至った。
ここまでくればもはや立派な人類の切り札だ。その為に出た犠牲は大きかった。それでも尚、学園長は光津キョウの覚醒を喜んだ。犠牲が出た分、収穫もあったからだ。
「激闘続きで疲れたろう。少し休憩期間を入れるといい。お前の所は……意図せずして惨い戦いばかりになってしまったからな」
「それは……助かります。では、失礼します……」
バタン。
キョウくんは強くなった。だがその代わり心に闇を抱えた。その闇は本来なら朝宮ハルカが払えたはず。僕にはどうすればいいか分からなかった。
だからいつもの通り稽古をつけた。
「ぐぅうううううう! 虚無よ! 薙ぎ払え!」
「無駄だ! うおおおおおおおおおおおお!」
光の魔力がキョウ君の全身を包む。虚無の魔力に特攻を持つ光の結界だ。攻撃がキョウ君に届かない。さらに、
「魔境覚醒――
「アキラ! 今日こそお前に勝つ! 僕はもっと強く成らなきゃいけないんだ!」
「ッ! いい心がけだけどキョウくん。今の君は危うい。だからこそ」
僕は。
激闘続きで僕もまたコントロールできるようになった内なる闇蔵アキラを少しだけ解放して。
「叩き潰してやるよ!」
全力で叩き潰した。
「糞ォ……ここまでやってもアキラに勝てない。どうしてだ……」
「キョウくん……」
キョウ君は強くなった。恐ろしいまでに。僕でも勝ち続けられるか分からない程だ。魔族に対する特攻を思えば魔族相手の強さはあるいは僕をも超えるかもしれない。でも、それでも。
強さの代わりに大きなものを失った。
以前のような快活な心を取り戻して欲しかった。
だから僕はキョウくんを抱擁した。
「えっ……」
「もういいんだ。キョウくん。強くならなくても。あとは」
それは。
僕の切っ掛けとなる決心だった。
「僕がやる。魔王を倒す。だから、キョウ君はもう休んでいいんだ。ずっと。戦いから離れていいんだ……」
「アキラ……くっ」
キョウ君の僕を掴む力が強くなった。そしてキョウ君は慟哭した。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
……男同士の暑苦しい抱擁だったが、少しはキョウ君の心を解すことができた。僕はそう信じた。
「ありがとうアキラ。でも、僕はもっと強くなるよ」
「それは、何のために?」
「失った仲間のために。そして」
キョウくんは。
立ち上がり、光の剣を構えて、こういった。
「仲間を失うようなこんな不甲斐ない俺を今でも慮ってくれる仲間のためだ! アキラ以外にもキサラちゃん、黒桃煉、ルナ会長、神崎焔、隠流サスケ、他にも色々な人たちから声をかけてもらった。そしてアキラ、お前に戦わなくていいと言われ心底安心した。それと同時に思った。それは嫌だと。支えてくれた仲間たちをやはり俺はこの剣で守りたいと。それが俺の答えだ。だから」
キョウくんは再び雄々しき魔力をその身に纏って吠えた。
「お前を倒す。魔王を倒すのは僕の役目だ!」
「……全く。君って奴は」
僕は立ち上がり、緩やかに構えて、笑った。
「身も、心も、強すぎるんだよ。いいさ。かかってきなよ。いつものように」
駆け出す。戦いが開始する。僕は虚無の剣を振るった。
「叩き、伏せて――」
「……今まで、ありがとうございました!」
「……はは」
――僕はキョウ君に叩き伏せられた。
それだけさらに一皮むけたキョウ君は圧倒的だった。僕は誇張なしに全力を振り絞った。あのコントロールできるようになったとはいえ尚危険な力にも頼った。その上で。
「……とうとう、越えられちゃったなぁ……」
「超えたとは思わない。いざという時の本気のお前はもっと強いと思うから」
「……はは」
そこまで言われちゃ完敗だ。完全に心の方でも負けてしまっている。流石キョウくん。強くなると信じて鍛え上げてきただけのことはある。何だか僕は凄く満足してしまった。このままキョウ君に任せていればあるいは魔王を。
(……いや)
それはなんか嫌だ。
僕は思った。
僕もこの手で大切な人たちを守りたいんだと。
その尊さを既に知っているから、手放せないと。
僕は思った。
(ああ、キョウ君もこんな気持ちだったのかもなぁ……)
「ありがとうアキラ。また、戦おう」
「そうだな。今度はもっと」
僕は。
確固たる決意を籠めて、差し出されたその手を握った。
「もっと、強くなって、戦うよ」
それはあるいはこの世界に来て本気で強さを欲した瞬間かもしれなかった。