ラノベ転生 ―底辺社畜、昔好きだったラノベの世界に転生するも転生先は暗黒系鬱ラノベの世界だった件― 作:哀原正十
そして僕たちにその時が訪れる。
キョウくんは任務を受けて再び旅だった異邦の地で。僕は任務を受けて旅立ったアポカリプス学園という学園のある土地で。
その敵と出会った。
「魔人ジークフリート……!」
「おや、奇遇ですね。いつかの魔術士よ。今日はあの時みたいに強力な味方はいないみたいですねぇ」
一方その頃、光津キョウも。
「七賢魔の一人、虐殺の魔人ケイブマン……?」
「おお。何だちびっこいの。俺様とやるってか?」
七賢魔と邂逅していた。
僕たちが動き回ると同時、七賢魔も僕たちに対抗して目まぐるしく動いていた。だから、偶然ブッキングすることがあっても不思議ではなかった。あるいはそれは必然だったのかもしれない。
「あなたは厄介な魔術士です。ここで屠らせていただきますよ。魔境覚醒――
「くっ、魔境覚醒――
超えるべき相手に、出会う宿命だったのかもしれない。僕は魔人ジークフリートと。
「オラ行くぜ。オラ行くぜ。オラ、オラ、オラ、オラ!」
「くっ、何て強さなんだ……!」
キョウくんは初めての七賢魔と。
邂逅する宿命だったのかもしれない。
「くっ、全ての攻撃が上回れる。そして、こんなやり辛い魔法だったのか。虚無の魔法は」
「ははは、なんて素晴らしい魔法だ。属性としてこれ程強力な魔法はお目にかかったことがありません! 七賢魔を次々と撃破していったのも頷けるというもの。しかしそれも今日で終わりのようです!」
僕は初めて対決する虚無の魔法のポテンシャルに戦々恐々していた。いつもこれ程の理不尽な魔法を振るっていたのか。そしてそれが敵になるとこれ程悍ましいものだったのか。僕は改めて闇蔵アキラの強さに驚く。
「ダークネス・エヴォルヴ!」
「ダークネス・エヴオルヴ!」
飛び道具もこちらの攻撃が当然撃ち負ける。虚無のオーラで相殺するが虚無のオーラが僅かに削れるのが分かる。僕は今初めて闇蔵アキラと相対している。そんな気分だった。
(……おい。僕は使わないのか)
心の内からそんな声が聞こえる。僕は心の内にそういう。
(頼っても叶わない、そうだろ)
(ははは。……その通りだ。僕にもどうしようがない。素直に諦めるんだな)
「誰が!」
心の声は諦めろという。だがそんな訳にはいかない。僕には戻るべき所がある。居場所がある。会いたい人たちがいる。守るべき人たちがいる。この魔人ジークフリートだけは野放しにしてはいけない。こいつは魔王城進軍の最大の障害になる。ここで僕が倒さなければいけないんだ!
(……でもなぁ、さっきから防戦一方だぜ?)
(分かってる。それでもだ)
「ダークネス・ネクサス・サークル!」
「ダークネス・ネクサス。サークル!」
悍ましい虚無のエネルギーを秘めた球体を射出する技だ。それも当然あちらの球体が生き残る。僕は言った。
「打ち消せ」
「その魔法を打ち消しましょう!」
何もかもが上回れる。それでもあきらめる訳にはいかない。僕は全力で虚無の剣を球体に振るった。
虚無のエネルギーが荒れ狂って僕に襲い掛かる。魔力のオーラでも打ち消せない程の奔流が僕の体を傷つけた。痛い! こんな痛いの初めてだ。思えばいつも僕はこの魔力のオーラに守られてきた。本格的な傷なんて負わなかった。それが、初めてこんな痛みを味わう。初めて?
(そうだ、お前は初めてだ。僕には昔から馴染んだものだがな)
(僕は、弱いのか?)
(そうだ、お前は弱い。受け入れろ、その弱さを)
「……だとしてもッ」
僕は立ち上がる。膝ががくがく震える。痛みよりも恐ろしいものがある。痛みを越えてでも守らなきゃいけないものがある。帰らなきゃいけない所がある。だから僕は剣を振るう。愛すべきもの全てのために。
「はっはぁ。効きませんねぇ。魔力量が違うのですよ。お判りですか?」
「分かってる。分かってる。それでも僕は」
「その心意気やよし。それでも、叶わない現実がある!」
――虚無の剣が僕を切り裂く。今までで最大の痛み。そして悪寒。僕は反射でこう言った。
「打ち消せ!」
「虚無の世界に誘われろ!」
虚無対虚無。その好対象が魔法の出力を手伝ってくれたのだろう。だから僕の体は虚無の世界に誘われることはなかった。だが。
「あ、ああ……」
「痛そうですねぇ。そろそろ介錯してあげますよ。この私がね」
――傷口が抉れ、捻じれ、見てられないような惨状になっている。痛みが凄まじい。全身の細胞が痛みを叫んでいる。僕は倒れたかった。介錯されたかった。それでも尚、僕は……。
(守りたい、ものが、あるんだ……)
「終わりです」
魔人ジークフリートが虚無の剣を振るう。僕はその剣に対して――。