ラノベ転生 ―底辺社畜、昔好きだったラノベの世界に転生するも転生先は暗黒系鬱ラノベの世界だった件― 作:哀原正十
――全ての準備は整った。
七賢魔も残り2人。そしてこちらには神淵覚醒に至った魔術士が5人。順当に行けば魔王城急襲作戦は成功するはずだ。
魔王城急襲作戦まで残り1日。僕たちは最後の休息を取っていた。自室で神妙に時間を過ごしているとキサラちゃんが話しかけてくる。
「ねぇ、今度の作戦って人類全体で魔界に攻め入って魔物城を目指すのよね。失敗したらどうなるのかな」
「失敗したら……か……」
原作では失敗する作戦だ。かのものまねの魔人ジークフリートにより神崎焔ともう一人風巻フウカという神淵覚醒に至った魔術師が早々に打ち取られ、早々に瓦解し、人間界に敗走したのだ。敗走が早かったお陰で魔物界の奥深くまでは攻め入らず、浅瀬で引き返したので致命的な犠牲は出なかった。ギリギリ致命的には至らなかった、と言うだけで数多くの魔術士が死んでいき、以降人類と魔物のパワーバランスは大きく逆転ししばらくは劣勢が続くのだが、何とか光津キョウの覚醒があり物語はハッピーエンドへと至った。だが、今回は魔人ジークフリートが既に死亡し光津キョウも神淵覚醒へと至っている。敗北する要素はない。もしこれで敗北したとしたら。
「人類全滅、かなぁ」
「うわ。不吉なこと言わないでよ」
「ご、ごめん。だけど、この陣容で敗北するようじゃ真面目にその可能性は高いと思うよ。または以前の人間牧場時代に戻るとか」
「うー、責任重大ね。人類軍の末端として責任感じちゃうわ」
「あはは」
キサラちゃんも当然今回の作戦には参加する。優秀な魔術士をかき集めての大作戦だ。これがもしかしたら最期の戦いになるかもしれない。
そうだな。最後の戦いにしよう。もちろん、いい意味で。
「キサラちゃん。僕、この世界が大好きなんだ」
「うん。知ってる。アキラはいつも学園にいる時は楽しそうだもの」
「うん。そしてね。最後は希望が勝つんだ。僕はそう信じている」
「最後は希望が勝つ。いい言葉ね」
「うん。使い方を間違わなければね。いい言葉だよ」
「やだ、間違った使い方って何よ。あはは。どう使っても悪い意味にはならない言葉だわ」
「あはは……そうだね……」
……僕たちは希望に向けて最後の休息を過ごす。それはとても貴重で尊い時間。この時間を守るために、そしてこれからも続けていくために僕は戦う。
愛すべきこの世界が。
ハッピーエンドを迎えるために。
僕は戦う。闇蔵アキラとして。そして松岡アキラとして。
「……希望を、掴もうね。キサラちゃん」
「うん。そうね。必ず。……そろそろ寝よっか。明日に響くといけないし。お休みアキラ」
「うん。お休みキサラちゃん。僕」
「うん?」
「この世界でキサラちゃんと出会えてよかったよ」
「……うん。私も。アキラと出会えてよかったよ。それでね」
「え――」
チュツ。
と、キサラちゃんは僕の頬にキスをした。呆然とする僕にキサラちゃんは笑顔で、
「大好き」
と、そう告げた。
……守らなければいけない理由がまた一つ増えた。僕はギンギンとして中々寝られない夜を過ごしながら、それでも最期に待ち受けているはずの希望を掴むため、やがて作戦前最後の睡眠へと、静かに寝入っていったのだった。
第6章 超えるべき己編。 完