ラノベ転生 ―底辺社畜、昔好きだったラノベの世界に転生するも転生先は暗黒系鬱ラノベの世界だった件― 作:哀原正十
最終話 魔界大侵攻
ヴァルハラ学園。
魔物との戦いの最前線。
今その場に各国、各地域から集った人類の総戦力が集っている。
その数何と100万人。それが、魔物界の侵攻に最低限必要と算出された人数。今、その100万人がヴァルハラ学園に集まった。
そして、作戦開始の時を刻一刻と待っている。
「良く集まってくれた、みんな」
この場を纏めるのはヴァルハラ学園学園長鷲塚シスイ。
今、学園に集まった100万人を前にして、最後の大演説を行っている。
「人類の最精鋭がこの場に集った。まずはそのことに感謝を。この100万人は今から魔物界に進攻しようとしている。人類の命運をかけた大作戦だ。この作戦の是非によって魔物との戦いの是非が決定づけられるだろう。故にこの戦いは絶対負けられぬ。皆の者。その力を人類のために振るってくれ!」
歓声が巻き起こる。鷲塚シスイの演説は続く。
「この日のために準備は整えた。神淵覚醒に辿り着いた魔術士が5人も集まった。そしてその者たちが先陣を切る。もはやこの布陣に伍する敵はいないだろう。だからそれ以外のものはただ魔物界の雑兵と戦うだけでいい。魔物界の有象無象の敵共だ。それが結果的にこの先人に立つ5人を救うことになる。いくらこの5人と言えど魔物界で云百万の敵に囲われては一溜まりもないからだ。だからこそ皆の力が必要になる。この戦いは皆で戦う一大決戦だ。その力を――人類のためにとくと振るえ!」
再び巻き起こる大歓声。ちなみに僕は学園長の前に立つ5人の魔術士の一人だ。士気高揚のためにこの場に立っている。柄ではないが我儘は言わない。
この戦いを有利に運ぶためならば何でもやってやる。
「それではこれより行軍を開始する! これが魔物との最終戦争になるだろう! 長きに渡る魔物との戦争にこの戦いで終止符を打つのだ! みなのもの、続け!」
雄叫びのような歓声。そして行軍が始まる。僕たち5人――光津キョウ、神崎焔、エレナ・バートン、風巻フウカ、そしてこの僕闇蔵アキラを先頭とした人類連合100万人の大行進が。その後にはルナ会長など各国の精鋭が続く。僕たちは先陣を切って最も過酷な戦いに身を投じる。
そしてその果てに――魔王を討つ。
もう引き返せない。戦いは既に始まったのだから。
「インフィニット・アーク!」
魔物界へ侵攻して真っ先に攻撃を打ち込んだのは会長の一撃だった。
視界一杯に広がる敵が一度に吹っ飛ぶ。常ならその一撃で敵を掃討できる程の一撃。だが、此度に関しては敵が次から次に補充される。故に一々構っていられない。ひたすら敵を屠りながら前に進む。ことこの段階の魔術士に至ってはもう並の敵など雑草だ。だが、
「くっ、敵が多い!」
「そのための100万人の軍隊だ! 尖端だけ開けばいい! 後は後続の仲間に任せるんだ!」
「ガン・ブレイズ・ウエスト! 最低限魔力を節約しながらね!」
敵の尖端をひたすら開き、魔物の群れをこじ開けていく。戦いはまだ始まったばかり。だが、既にして激戦が始まっていた。
「なんだ、あの敵は」
「私は七賢魔が一人発明のロア・アンセム。貴様らを阻みに」
「神淵覚醒! 虚無の世界に消えろ!」
「なっ、ぐぁあああああああああああ!」
途中、七賢魔の残り2人のうち1人発明のロア・アンセムが現れた。だが、一々相手をしていられないので僕の力で瞬殺した。ロア・アンセムは七賢魔でも戦闘力自体は雑魚の方だ。だから、敵にはならなかった。本当に警戒すべきは最後の七賢魔。
天使の魔人バズワルド。
そいつ只一人だ。
会長が僕に言ってくる。
「瞬殺でしたね、アキラくん」
「はい。でも気を付けてください。事前に通達した通り最強の七賢魔バズワルドがまだ残っています。あいつは神淵覚醒に到達した唯一の魔人。こちらの数の利を最大限活かして戦わないと危ないですよ」
「はい。分かっています。……私も、全力を尽くしますよ」
会長が悔しそうに言う。会長は神淵覚醒に至れなかった。だからだろう。どこか申し訳なさげだ。そんな会長に僕は言う。
「会長にはたくさん助けられてきました。今回も期待しています」
「……はい!」
会長の魔法は相性さえ良ければ戦力差をひっくり返すポテンシャルを秘めている。それに魔境覚醒の魔術士は原作でも最終盤まで戦力になった。神淵覚醒に至った魔術士が5人も揃った今の状況がイレギュラーなだけで。もしかしたら会長に救われることもあるかもしれない。半ば本気で思いながらの僕の言葉だった。
「そこそこチャージしました。再び……インフィニット・アーク!」
ズドォオオオオオオオオオオオン!
前方の敵が吹っ飛ぶ。お陰で進軍スピードが上がる。会長は今でも大活躍だ。僕は改めて会長に言った。
「僕はこの世界で会長に出会えてよかった。これからもよろしくお願いします」
「! アキラ君、はい! よろこんで!」
僕たちは魔物界を魔王城目掛けて破竹の速度で進軍する。
そいつが現れたのは魔物界に進軍して1時間くらいが経過した頃だった。
背中に6対の白翼。宙に浮かんでいる。荘厳な雰囲気を漂わせるそいつの顔はおぞましく整っている。僕は即座に警告した。
「現れました! 天使の魔人バズワルドです! 一気に行きますよ!」
「はい。神淵覚醒」
そして僕たちは一斉に詠唱した。
「ゴッド・ボイド・ワールド!」
「ゴッド・シャイニング・ワールド!」
「ゴッド・ブレイズ・マナ!」
「ゴッド・フリーズ・ゾーン!」
「ゴッド・ウィンド・スペース!」
対して魔人ラズワルドも、
「神淵覚醒――ゴッド・エンジェリック・リンク」
神淵覚醒を発動する。規格外の戦いが始まる。
風巻フウカが死んだ。
それが僕たちの犠牲者だった。
代わりに会長が神淵覚醒――ゴッド・ミラー・ワールドに目覚めた。それが逆転の切り札となり僕たちは魔人バズワルドの討伐に成功した。流石最強の魔人なだけあり、生半可な力ではなかった。原作ではキョウ君とエレナ・バートンが協力して討伐に当たり、エレナ・バートンの犠牲を以て討伐した魔人だが、この世界でもここまで苦戦させられるとは思わなかった。それはおそらく覚醒の儀――魔王復活のために己の力を贄に捧げる儀式を今の段階では行っていないことが原因だろう。MAXパワーのバズワルドがあんなに恐ろしい力を持っているとは思わなかった。あるいはそれは魔王に匹敵する力だったのかもしれない。
だが、倒せた。
会長の覚醒のお陰で。
余力はまだある。だが、悲しむ暇はない。僕たちは一刻も早く魔王城に辿り着きこの戦いを終わらせなければいけない。風巻フウカには簡単な火葬だけして、そして僕たちは再び走り出した。魔王城目指して。
ひたすら、真っ直ぐに。
それからも魔物の妨害は続いた。
敵自体は雑魚だったが、休憩の間さえなく戦い続けるのは純粋に辛かった。だが、これが最後の戦いだとみな歯を食いしばった。そしてどれだけ走り続けただろうか。無限にも思える時間駆け続けた後、僕たちはついに。
「……魔王城だ」
「あれが……」
「とうとう本当の最終決戦だな」
魔王城に到達した。僕たちの最後の戦いが始まる。
魔王城の中には強力な魔人がひしめいていた。
しかし、ここに至って尚僕たちの敵になるような魔人は存在しなかった。やはり原作で光津キョウの一人だった所5人もの神淵覚醒の到達者を集めたのが大きかった。僕たちは魔人共を蹴散らしながら最奥へと進み、そして、
「……ここが、最奥。そして、あれが」
……培養カプセルのようなものの中に入り、コポコポと泡を立てる一人の男。そいつが魔王城の最奥にはいた。全員戸惑いのようなものを覚えながら、確かめるように誰かが口にした。
「……魔王?」
「しかり。我が魔王也」
カプセルの中の魔王がそう答えた。
カプセルの中の魔王の目が開く。そして、僕たちを右から左に一人ずつ見て、言った。
「なるほど。強き者たちを集めたな。少しでも復活を速めるためロアアンセムに開発させた急速覚醒カプセルにて復活を速めていたが、間に合わなかったか。現時点の我より強い魔人バズワルドが討たれた時点でもはや我に勝ち目はないという訳か……」
「……随分物分かりが悪いな。まるで戦う前から諦めているみたいだ」
「諦めているよ。ふっ、勝てるはずがないだろう。この戦力差を見て希望を抱くのは愚か者の所業だ……」
「……じゃあ、殺すぞ」
僕は前に進み出て言った。魔王は言った。
「まぁ待て。少し問答でもしようではないか」
「いや。いい」
「えっ、ちょっと待て。少しくらい」
「虚無の剣よ。虚無の世界に誘え」
ガシャァアアアアアン!
僕はカプセルを割って魔王に虚無の剣の一撃を浴びせた。ここまで来て迂闊な問答など必要ない。それより早くこの戦いを終わらせて今もなお戦い続けている皆を楽にさせてあげたかった。果たして魔王は、
「なっ、我がこんなことで、待て、せめて少しくらい話を、ぐ、ぐぁあああああああああ!」
――虚無の剣の力で魔王は虚無の世界に誘われた。死んだ。僕は剣を振るって血糊を払う。神宮司ルナ会長が僕の肩をツンツンと突いて、
「あのー、良かったんですか? 何か話したそうでしたけど」
「いいんです。これで」
僕は会長に言った。
「これで僕たちの勝利です。さぁ、戦いは終わりです。勝利の凱旋と行きましょうか」
後エピローグが一話だけ続きます。