BanG Dream! 〜もし恋人がいたら〜   作:あきと。

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戸山香澄(2)

 

 香澄に手を引かれながら歩いているうちに、気付けば商店街までやって来ていた。

 

 放課後の時間帯ということもあり、人通りは多い。

 買い物帰りの親子連れ。楽しそうに話す学生たち。

 

 そんな賑やかな通りを、香澄はきょろきょろと見回していた。

 

「わぁ……!」

 

 その目が輝く。

 何かを見つけたらしい。

 

「どうした?」

 

「彼氏くんあれ見て!」

 

 香澄が指差した先には、色とりどりの風船が飾られた新しい店があった。

 

 どうやら最近オープンしたクレープ屋らしい。

 

「新しいお店みたいだよ!」

 

「本当だ。この前来たときにはなかったよな」

 

「行こう行こう!」

 

 案の定だった。

 香澄は再び俺の手を掴むと、そのまま店へ向かって走り出す。

 

「転ぶなよ」

 

「大丈夫だよー!」

 

 元気な返事が返ってくる。

 全然説得力はない。

 

 店の前に着くと、香澄はメニューを見ながら目を輝かせた。

 

「すごーい!種類がいっぱいある!」

 

「香澄はどれにするんだ?」

 

「うーん……」

 

 真剣な顔で悩み始める。

 だが三十秒後。

 

「決めた!」

 

「早いな」

 

「いちごチョコ生クリーム!」

 

「王道だな」

 

「だって美味しそうなんだもん!」

 

 そう言って笑う。

 

「すみません。カスタードホイップひとつといちごチョコ生クリームをひとつ」

 

 結局、俺も注文と支払いを済ませる。

 

「あっ! まってお金……」

 

「大丈夫だよ。奢るから」

 

「でも……」

 

「いいよ。俺は香澄の彼氏なんだから。いつもありがとな」

 

「彼氏くん……。ありがとう!」

 

そうして、二人でクレープを受け取った。

 

「わー! 美味しそう!」

 

 近くのベンチに腰掛ける。

 

「いっただきまーす!」

 

「いただきます」

 

「はむ!」

 

 香澄は一口食べるなり。

 

「んー!!おいしいー!」

 

 と満面の笑みを浮かべた。

 本当に幸せそうな顔だ。

 

「そんなにか」

 

「うん!」

 

 香澄は何度も頷く。

 

「りみりんも絶対好きだと思う!」

 

「ああ、牛込さん甘い物好きだって言ってたな」

 

「うんうん! おたえだったらねー、三つくらい食べそう!」

 

「三つで済むか?」

 

「あっ、確かに!」

 

 二人で笑う。

 

「有咲はねー」

 

「うん」

 

「絶対『別に普通だし』とか言いながらほっぺたにクリームつけながら食べるよきっと!」

 

「イメージ湧くなー。それで気付いたら完食してるんだろ」

 

「そうそう!」

 

 香澄は楽しそうに笑った。

 

 本当にバンドのみんなのことが好きなんだな。

 Poppin’Partyの話になると、いつもこうだ。

 ライブに招待されたときに何度か会ったことはあるけど、香澄から話をよく聞くからかメンバーのことはよく知っている。

 

 それに、誰かの話をしている時の香澄は、本当に嬉しそうだからな。

 

「あとね!」

 

 香澄が身を乗り出す。

 

「さーやだったらお店の人とも仲良くなってそう!」

 

「それはありそうだな」

 

「だよね!」

 

「また山吹さん家のパン食べたいな」

 

「今度また一緒に行こう!」

 

「だな」

 

 ころころと表情を変えながら話す香澄を見ていると、こちらまで楽しくなる。

 

 すると。

 ふと香澄が立ち上がった。

 

「ん?」

 

「ねぇ、見て!」

 

「今度はなんだ?」

 

 指差した先には、小さな雑貨店があった。

 店先には星の形をしたガラス細工が並べられている。

 

 太陽の光を受けて、キラキラと輝いていた。

 その瞬間。

 香澄の目がさらに輝いた。

 

「あれ絶対キラキラドキドキだよ!」

 

 やっぱり来た。

 

「当然行くのか?」

 

「もちろん!」

 

 香澄は迷いなく答える。

 

 そして、当たり前のように俺の手を握った。

 

「ほら!」

 

「はいはい」

 

「早く早く!」

 

 嬉しそうな笑顔。

 まるで宝物を見つけた子供みたいだ。

 

 そんな香澄に引っ張られながら、俺も立ち上がる。

 

 商店街の喧騒の中。

 キラキラと輝くガラス細工へ向かって。

 香澄は今日一番の笑顔を浮かべていた。

 

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