心が壊れた救済RTA走者のセカンドライフ   作:ササキ=サン

1 / 9
ボクが考えた最高に可哀そうな主人公。その経歴で存分に周りを曇らせて、重力を発生させまくっていけ……!


少年のモノローグ

 唐突だけど、質問しよう。

 

 もし君が、全ての未来を、辿り着ける可能性を知ることができたら、どうするだろうか。

 

 ギャンブルで大儲けしようか。仕事で常に大成功を収めようか。あらゆる人と良好で親密な関係を築き、狙った人と恋人になり、幸せな人間関係を作ろうか。

 

 それとも、死にゆく数多の命を救うヒーローになるだろうか。

 

 僕はヒーローを目指した。できそこないで、多くの命を取りこぼした未熟者だったが、少しでも多くの命を救うために、僕の人生の全てをかけて、あらゆる自身の幸福の未来をぶん投げて、一人でも多くの命を救うために僕は世界中を走り続けた。

 

 それだけ聞くと、まるで僕が狂気の偽善者、最大限良く見て本物のヒーローのように見えるかもしれないが、僕はそんな並外れた善人ではないんだ。僕が誰かのために最後まで走り続けることができたのは、救いたい人の全てが、僕にとっては親しい人で、多くの時間をともに過ごした知り合いだったからだ。

 

 全ての未来を知るということは、その人と知り合って、どんな言葉を交わして、その言葉でその人にどんな影響を与えて、僕がその人とどんな関係を築くのか、その全てを知ることができるということ。ゲームのように言うなら、その人のバッドエンドもグッドエンドも、あらゆるエンディングを網羅し、そのキャラクターの全てを知り尽くしているのが僕の状態なのだ。どんな屑人間でも、家族よりも本人よりも深くその人物を知ってしまったら、それだけの愛着は湧くというもの。素直に言ってしまえば、僕は全ての人類を愛していた。だから僕は、本気で全ての人類を救いたかったんだ。

 

 それに、どれだけしんどくても、この救済RTAを降りて、家出少年として優しい人に泣きつけば、いつでもその後は幸せに過ごせる未来を知っていたから。世界は人が想像するよりもずっと優しく作られているからこそ、僕は最後まで走り続けることができた。

 

 でも、多くの命を救えるということは、同時に多くの救えない命を選ばなければいけないということ。全ての可能性を知っていても、僕の手で救える命には限りがあるからこそ、救う命を選ばなければいけなかった。

 

 親よりも本人よりもその人のことを知り尽くしていて、愛している人物たちの命に順番をつけなければいけないのだ。

 

 その選別ほど、苦しいものはなかった。それでも、迷う暇はない。1秒でも動くのが遅れれば、救えない命だってあるのだ。心の苦しみはともかく、足を止める暇はなかった。

 

 失敗だってした。疲労のあまり、短時間とはいえ、気絶してしまったこともあった。起きたら、34人死んでいた。

 

 吐いて、苦しくて、死んでしまいたかった。でもその間に、また1人死んだ。狂いそうでも、足を動かすしかなかった。ルートを再構築して、とにかく次に進むしかない。

 

 本当に多くの命を取りこぼしてきた。全てを知っている癖に、ルート通りに走り切れなかった。僕の心は想定できる未来よりも貧弱で、僕はあらゆる全てが未熟だった。

 

 だから僕は、僕のことを絶対に赦さない。救い得た、3億1498万5137人の命を忘れない。

 

――異世界転生。謎の上位存在の哄笑と共に、奇跡的に第二の生がもたらされた。

 

 僕は取りこぼした命の償いのために、今度こそ完璧に、誰も彼も救い尽くしてみせる。

 

 ……なんて意気込んでいたら、スーパーギャグ属性のじっさまに拾われて、色々あった末に、なぜか超スパルタかつ超エリートの王立学園冒険者科に入学することになったのだった。

 

 未来予知ができない人生って、こんなに波乱万丈なんだね……。

 




性癖に素直に書きます。対戦よろしくお願いします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。