心が壊れた救済RTA走者のセカンドライフ   作:ササキ=サン

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ちょっとした日常編。


第10話 学園の日常

 救えるものに限りがあった。だからまず、何よりも命を優先した。

 

 でも、本当はもっと誰かの助けになりたいことがたくさんあったのだ。

 

 命に比べれば、ささやかな不幸かもしれない。

 

 でも、僕はみんなに笑っていて欲しかったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アレクサンドル王国、王都ペラにそびえ立つ、アレクサンドル王立高等学園冒険者科の1回生。 そこは未来の英雄を夢見る貴種の血を引く少年少女が集う、過酷かつプライドの煮凝りのような場所である。

 

 その日の放課後。食堂の片隅で、数人の男子生徒がいつも通りにぎやかにくだらない言い合いをしていた。 彼らの中心にいるのはホーク。冒険者科1回生の中では平均的な実力と、それなりの家柄を持つ中堅どころの貴種だ。基本的にこの世界の男子、それも冒険者科を目指すような連中のコミュニケーションは、お互いの実力や領地を軽く煽り合い、馬鹿にし合うような体育会系のノリがデフォルトであった。

 

「おいおいホーク、今日の対人訓練のステップ、なんだあのザマは? まるで足元に泥でも詰まってるような不恰好さだったぜ。お前、実は夜の『訓練』が忙しくて寝不足なんじゃないか?」

 

 友人の一人が、品のない笑みを浮かべてホークの肩を小突く。 いつもなら「うるせえ、お前の大振りの剣筋こそ大根役者の素振りだろ。魔法ばっか練習してないで武術の練習もしろや」とでも笑って返すような、よくある低俗なからかい。 だが、この日のホークの反応は違った。

 

「……あ?」

 

 低く、不機嫌な地を這うような声。 ホークの額に青筋が浮かび、自然と拳に力が籠った。ピキッ、と。貴種が使うことを想定して頑丈に作られた食堂のテーブルに罅が入った。

 

 ホークは、死ぬほど機嫌が悪かった。 理由は単純明快。昨日、恋人である貴種の女性と「ある些細な行き違い」から喧嘩をしてしまい、絶交寸前の状態になっていたからだ。精神的に余裕が皆無なところに、タイミング悪く「夜の忙しさ」などという、今の彼にとって最悪の地雷を踏み抜くワードが刺さってしまった。

 

(殺す……)

 

 (オーラ)で身体強化をしようとした、その刹那。

 

「うぉおぉぉおお! ちょっと待ったぁあああ!!」

 

 謎の乱入者が現れた。場違いなほどに突き抜けたハイテンションな叫び声とともに、小さな影が二人の間に滑り込んできた。

 

「宝希?」

 

 あまりの唐突な登場にホークは驚いて動きを止める。

 

「くらえ!下ネタ撲滅パンチ!」

 

「なんでっ!?」

 

 そして宝希はホークを煽った男をぶん殴った。ただし、欠片も強化をしていないので、殴った宝希の手の方が痛んでいた。痛い。宝希、涙目である。

 

「いいですか、公共の場で夜の訓練なんて卑猥な言葉をいうような輩は、ただいま風紀委員会に就任したこの十字宝希が許しません!成敗です!」

 

 この冒険者科に風紀委員はない。ここは力こそが正義な無法地帯でもあるが、宝希という少年の人徳はある程度の理不尽を許容された。宝希が冒険者科に入学して一週間。笑顔を振りまき、様々な人とコミュニケーションをとった証であった。

 

「ほーん、宝希。夜の訓練の何が卑猥なんだ」

 

 ニヤニヤしながら、宝希に殴られた男は問いかけた。

 

「え゛」

 

「俺はただ、夜にホークが部屋でお前みたいに自主トレをしすぎて寝不足になっているんじゃないかってからかっただけだぜ??おいおい、どこに卑猥な要素があるんだよ」

 

 宝希は分かりやすく冷や汗をかき始めた。あせあせ。追い詰められた証拠である。

 

「えぇー?まさか正義の風紀委員さまが、普通の発言を下ネタと勘違いしていらっしゃった!?こいつじつはとんでもねームッツリじゃないか!?」

 

 

 他の男子がからかいに参戦した。周りにいた宝希の知り合いの人たちも悪ノリをして、ニヤニヤしながら「変態?」「すけべ」と呟いて、宝希の辱めにエントリーする。

 

「……ッ!」

 

 宝希の顔が羞恥に染まる。

 

「おいは恥ずかしか!生きてはおられんごっ!」

 

「宝希どん!?」

 

 ホークは困惑した。急に宝希が上着をはだけ、腹部を晒したからだ。残念ながら異世界にジャパニーズ文化の理解はない。だからこの後の行動も予測できなかった。

 

「ゲポァっ!」

 

 宝希は短剣で腹を切った。ぶしゃーと血が吹き出るが、食堂を汚さないように謎にしっかりバケツを用意しており、吹き出た血はすべてそこにおさめられた。丁寧なエイムである。演技のレベルが4に達していたら、そこから「介錯しもす!」と謎の侍が宝希の首をぶった切り、笑うたこと許せ!合掌ばい!と弔ってくれただろうが、今の宝希にそこまでハジケる力はなかった。じっさまの壁はまだまだ遠いのである。

 

「!?」

 

「何やってんだお前!?」

 

「誰か光魔法ー!」

 

「まかせろ!」

 

「でかした!」

 

 日々鍛えられた冒険者科の面々も、この奇行には流石にびっくり。慌てて光魔法が得意なやつが宝希の治療を行った。

 

「すいません……僕はむっつりでした。責任を取って、風紀委員を止めます……」

 

「お、おう、そうか」

 

 周りはドン引き。ホークに至っては、自分がなぜ切れかけていたのかすっかり忘れてしまった。

 

「ふむ。罪を認めたな、宝希。では、ちょっと夜のトレーニングで何を想像したのか署で聞かせてもらうおうか」

 

 しかし残念。道化ぶる宝希に対して、隙を逃さず突き刺してくる友人(フラン)がいた。その目は鋭く獰猛で、まるで獲物を狙う獣のようである。

 

「え……?」

 

「よっこいしょ」

 

 宝希を担いでフランは自室に向かった。あれ止めなくていいの?無理だな止められない。宝希、合掌ばい。周りの人物はヒソヒソと、ドナドナされる宝希を見送った。

 

 ばたんっと、食堂の扉が閉まる。

 

うわぁぁぁぁあああああああーーーー!!!

 

 情けない宝希の悲鳴が聞こえた。一部始終を見ていた宝希の知り合いの何人かが笑いをこらえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 学園の裏庭。一人で頭を冷やしていたホークのもとに、トコトコと足音を響かせて宝希が現れた。

 

「ホーク君、はいこれ! 糖分を補給すると、イライラが少しはマシになりますよ!」

 

 差し出されたのは、学園の使用人たちに手伝いのお礼として大量に貰っていたアメ玉だった。

 

「宝希……お前、フランチェスカから逃げ出せたのか」

 

「分身ですよ!僕、光と闇魔法が得意なので!」

 

 一体までは余裕です!そういって誇らしげに宝希は胸を張った。

 

「あ、待ってフランさんそこはさわっちゃだめひぃん……!?」

 

「大丈夫か……??」

 

「……大丈夫です!今分身を消しましたから」

 

 そう言った宝希の頬は赤く、ちょっと息がキレていた。なんかこいつエロいな。ホークは変なことを考えた。

 

 ホークはアメを受け取り、口に放り込んだ。

 

「それより、何か悩み事ですか? 僕で良ければ、恋愛相談から結婚相手の相談、式場選びや結婚後の人生設計まで、何でも相談に乗りますよ!」

 

「実質恋愛関係一択じゃねぇか」

 

 ニコニコと笑う13歳のちんちくりん。だが、ホークはなぜか、この少年の前だと妙に肩の力が抜けるのを感じていた。いつもプライドを張り合っている貴種たちには、絶対に言えないようなこともこいつには言えた。口内のアメの甘みが、彼の頑なな心を少しだけ解きほぐす。

 

 というかこいつ、見抜いていやがったな。妙に慧眼でお節介なやつだ。おそらく自分の苛立ちを見抜いて、ことを大きくしないために一芝居うったのだろう。

 

「……あいつと、喧嘩したんだ。恋人の、アメリアって奴と」

 

「ほうほう、アメリアさんですか。どんな内容で?」

 

「いや、大したことじゃないんだ。あいつが最近、俺のために手作りの御守りを作ってくれたんだが……その、冒険者科の俺から見れば、術式の組み方が甘くて実戦じゃ使えない代物でさ。つい『術式が甘い。こんなの、戦闘じゃ何の役にも立たない』って本当のことを言っちまったんだ。そしたらあいつ、泣き出して……それっきりだ」

 

 宝希は頭を抱えた。おい。それは100%お前が悪いだろ。ストイックすぎる冒険者科の価値観で生きてきた彼にとって、それは純粋な「事実」の指摘だった。しかし、恋人関係においては最悪の正論である。

 

「とんでもねぇノンデリ発言だ!ちょっとぶん殴らせろ!てい!」

 

 宝希は割と本気でホークを殴った。ちゃん(オーラ)で拳を強化したので、結構いい音がした。

 

「やっぱ俺が悪いよな……」

 

「当たり前ですよ。デリカシーなさすぎです。恋愛経験皆無の童貞の僕でも、こいつやってんなーって思いましたし」

 

「へぇ……お前、モテそうなのに意外だな」

 

「いや、そこにひっかからくてもいいですよ……。ニヤニヤしていないで、恋愛0年生にも解ける簡単な問題を解けなかったことを恥じてください」

 

「そうだな……まあ、確かにそうだよな……」

 

 少しの沈黙。ホークは考え込むように空を見上げた。だから気づかなかった。ひどく澄んだ目をした宝希が、じーっとホークのことを見つめていることに。

 

「でも、ホークさんなら大丈夫ですよ」

 

 今後のことを考えて思考の海に沈むホークを、宝希の言葉が引っ張り上げた。

 

「ちゃんと自分が悪いって分かっていますから。後はしかるべきタイミングでちゃんと自分の思いを伝えれば、すぐに仲直りできますよ」

 

「そうか……?あいつ、だいぶ怒ってたけど」

 

「大丈夫ですよ。だってそのお守り、今だってつけているじゃないですか」

 

 宝希はホークの胸元を指さした。そこの上着の裏ポケットには、彼が彼女からもらった例のお守りが入っていた。

 

「それを大切にできているなら、その想いをあとは言葉にするだけです。できる限り早く行動することをおすすめしますよ。傷心中の女性は、何かと隙だらけですから。間男は偏在しますし、気づけば、どしたん話きこか?彼氏くんひどいなー俺なら絶対そんなこと言わないのになーのコンボが発生するかもしれませんし……う゛脳が破壊される……」

 

「なんでお前の脳が破壊されるんだよ……」

 

 呆れたようにホークはツッコミを入れた。

 

「まあ、なんだ。その、ありがとな」

 

 宝希はニッコリと笑った。

 

「その素直さがあるなら大丈夫ですね!今からでもいってらっしゃい!」

 

「え、今?や、夜だしもう遅いし……」

 

「間男が一番活発に活動するのは夜なんですよ!?もっと危機感をもってください!さあ、行きますよ女子寮に!」

 

 その後、宝希とホークは女子寮の門番と激闘を繰り広げ、宝希の犠牲の末にホークはアメリアの部屋にたどり着くことに成功した。謝罪は無事成功。ホークとアメリアの仲はよりいっそう深まることになった。

 

 

 

「やあ宝希。今度は本体だな?」

 

「待ってフランさん、僕は門番さんに敗れたはずなのに、どうしてあなたのお部屋にワープしているんですか……?」

 

「私が門番を秒殺して、戦利品を部屋に持ち帰ったからさ」

 

「いやぁぁぁああああ助けて!!!!!」

 

「叫んでも無駄だ。この部屋には既に結界を張ってある」

 

「何をするつもりなんですか……?」

 

「……夜のトレーニングさ」

 

 この後たくさん夜のトレーニングをした。なお、宝希くんは引き続き恋愛0年生なので安心して欲しい。

 

 




AIって便利っすね……。途中気に入らなくて大規模に改変はしましたが、こういう展開で、自分が今まで書いてみたいに書いてみてってやったら、けっこういい感じに書いてくれました。書くのが面倒なシーンとかはこういう風に書かせて、手直しするとサクサク進みますね。
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