心が壊れた救済RTA走者のセカンドライフ   作:ササキ=サン

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ようやく神血(イコル)の儀の解説に入れる……。


第5話 神血(イコル)の儀

 

 一時間目の授業はハードだったが、二時間目以降は座学の日だった。歴史、戦術、魔法理論、ダンジョン学、異界学。《忘却刑縛(パラダイス・ロスト)》のスキルで教科書の内容を丸暗記しているので、実技のように授業についていけないということはなかった。

 

 そしてついに、全ての授業が終わり、神血(イコル)の儀の時間がやってきた。

 

 カリキュラムの最後の時間にある、神血(イコル)の儀。なぜこの時間にやるのかというと、授業が全て終わった後なら、最悪気絶して寝込んでいても、授業に影響がないかららしい。

 

 想像を絶するほど辛い修行とは多くの人がいうものだが、どれほどしんどいものなのだろうか。

 

 (オーラ)魔力(マナ)を同時に発動させ、混ぜると発生する特殊な力、神血(イコル)。これをその身に浴びるのに耐えるのが、神血(イコル)の儀。メンタルが普通の人なら1秒でも気絶するらしいし、無理矢理10秒やるようなら一か月以上寝込むこともあるというから、恐ろしい。

 

 凄まじい苦痛があるらしいが、同時にその苦痛に耐えれば耐えるほど、肉体は強く、頭は賢く、魂はより多くの魔力を持てるようになるらしい。そうして向上した能力は遺伝するらしく、神血(イコル)の儀を代々行い、尋常ならざる進化を遂げてきた一族を貴種という。

 

「とりあえずノルマの5秒はちゃんと耐えたいな……」

 

「心配性だな、宝希。君ほどの根性があれば、10秒くらいは余裕で耐えられると思うんだが」

 

「だといいんですけどね……」

 

 フランさんは笑って大丈夫と言ってくれるが、これでもメンタルの弱さにはそれなりに前科がある僕だ。前に怨霊経験を積んだことで、苦痛への耐性はそれなりに出来上がったと自負しているが、大の大人が二度とやりたくないと謳う儀式を、一体どれほど耐えられるのか。

 

 神血(イコル)の儀は戦闘訓練と同じく、訓練場で行われる。ついでに一か月経っても神血(イコル)の儀を5秒以上耐えられないと、冒険者科を退学させられる。神血(イコル)の儀の耐久が、最初に訪れる退学をかけた課題なのである。なお、数か月後には第二、第三の足切り課題が訪れる模様。

 

 早速、神血(イコル)の儀を行うクラスメイトがいたので、そちらに視線を向ける。

 

「――っっ、ぅぅぅ……!」

 

 ライが声にならない叫びをあげている。普段はもっと飄々として、余裕綽々の彼が脂汗をかいて、必死に歯を食いしばっている。

 

「……ライさんでも、ああなるんですね」

 

「まあ、そうだな。私だってああなる。神血(イコル)の儀の苦痛を取り繕えるやつは見たことがないな」

 

 ひぇぇええ……。まじか。まじかぁ……。

 

「……覚悟を決めて、やってみますか」

 

「ああ、頑張れ。いざという時は、光魔法はかけてやる。ただし、無茶をして心を壊すなよ。引き際を間違えると、廃人になるぞ」

 

 何それ、怖すぎ……?まあいいや、男は度胸。なんでも試してみるものさ……!

 

 右手に(オーラ)をため、左手に魔力(マナ)をためる。そして、合わせる!

 

 

 

 ――闍ヲ縺励>縺、繧峨>豁サ縺ャ蜉ゥ縺代※蜉ゥ縺代※谿コ縺励※谿コ縺励※谿コ縺励※

 

 

 

 ぎゃあああああ!頭痛い吐き気がするお昼のパスタリバースするっ!

 

 ていうかなんか変な声がガンガン聞こえてけっこうやばい!しんどい!

 

 けどまず一秒は耐えたぞ……!てか立てねぇ!膝が崩れて、地面に手をついた。気合で耐える。苦痛を振り払うように、拳で地面を叩いた。

 

 ボゴッ!!

 

 うぉ!?すげ。なんかよく分かんないけど、地面がめっちゃ抉れた。もしかして今、めっちゃしんどいけど超強化されてるじゃんね?

 

「頑張れ、宝希……」

 

 不思議、クッソしんどいけど、名前を呼ばれるとけっこう楽になっちゃう。

 

「頑張ります!」

 

「……っ!?」

 

 よし、五秒は経過したぞ。ノルマクリア達成!もう一回遊べるドン。うん、まだ結構いけそうだな。

 

 

 

 ――螟ァ縺?↑繧区ュサ繧偵◆縺溘∴繧医&繧峨↑繧句ョ吶↓縺ョ縺シ繧後?繝翫?譬ケ貅舌↓隗ヲ繧檎函蜻ス縺ョ菴ソ蜻ス繧呈?昴>蜃コ縺

 

 

 

「ヴっ」

 

 はい前言撤回!!吐きました。さよならお昼のパスタくん……。いや待て、ゲロをよく見るとパスタっぽいものが入っていない。そっか。(オーラ)で消化器官を強化したから、君はとっくの昔に僕だったんだね……(意味不明)。

 

 というか、苦しみのギアがまた一段上がりやがった。これは何というか、怨霊時代の経験的に、魂をぐちゃぐちゃにされるような、肉体から魂が引きはがされ、高次の宙に昇っていくような苦痛。肉体とかじゃなくて、魂が感じている苦痛だなこれ。というか魂がふわふわとんでっちゃうから、しっかり繋ぎとめないと帰ってこれなくなる!

 

「大丈夫か……?初めてだから、そんなに無理をしなくてもいいんだぞ。もう5秒は過ぎた。聞こえるか、宝希?」

 

「ハイ無理ですもう無理です止めます止めました!」

 

 フランさんの心配そうな声が聞こえて、一旦切り上げる。別にこの儀式、ここじゃなくてもできるから、ここでわざわざ心配かけてまで続行する必要ないな。

 

「……っ、すごいな……君は。15秒も続けられたのは、初めて見たよ」

 

 ほら、水だ。フランさんが飲み物をくれた。ありがてぇ、ありがてぇ。口をすすいでから、ごくごくと水を飲む。ぷはっ、生き返る!

 

「ありがとうございます……助かりました……」

 

 お礼を言いながら、違和感。非常に多くの視線が向けられている。貴種の視線は普通の人より魔力(マナ)(オーラ)がのって重いから、自分が注目を浴びているとよく分かる。

 

「……」

 

 ミツルギ先生も、驚いたような顔をしてこちらを見ていた。ミツルギ先生でさえそんな顔をしているのだから、周りの人はもっとあり得ないものを見たような顔をしていた。

 

「その、異常はないか、宝希。すごく眠いとか、目が見えないとか、変な音が聞こえるとか。無理をして神血(イコル)の儀をすると、後遺症が出るんだが」

 

 うーむ。体の五感を点検。……特に異常はないな!むしろ神血(イコル)の儀のおかげか、前よりよく聞こえるし、よく見える。五感は研ぎ澄まされていますよ!てか(オーラ)魔力(マナ)がけっこう増えてる!やったー!

 

「大丈夫ですね、思ったより健康です!むしろさっきより強くなってますよ、僕!」

 

「……っ。……そうか。何か異常があったら、すぐに言うんだぞ」

 

 フランさんは本当に呆然としたような顔をしている。周りの人の反応も考慮すると、僕の神血(イコル)の儀はあり得ないものだったということだろうか。

 

「よっ、と」

 

 わざとらしく、立ち上がってみた。

 

 ざわっ。分かりやすく、周りが動揺したのが分かる。

 

「あり得ない……」

 

 凡人(ノービス)と馬鹿にしたウルフィンさんでさえも、信じられないものを見るような顔をしていた。貴種は神血(イコル)の儀によって作られてきた。彼らの価値観の中核には、神血(イコル)にどれだけ耐えられるかがあるのだと思う。

 

 となると、これはもしかすると色々と注目を浴びるのかもしれない?

 

 ふむ。まあ。僕的には大歓迎ですよ!差別されないのは嬉しいですし?友達100人作りたいですし。でも、今後の立場が思ったより違ったものになりそうだから、そこは色々と計画を立て直した方がいいかもしれない。

 

 何はともあれ、神血(イコル)の儀に思ったより耐えられることが分かったから、今後は貴種とのスペック差をもっと埋められるかもしれない。自室に戻ったら、もう30秒くらいはやってみようかな。時間をかけるほど、しんどさが増すみたいだし、どれくらい耐えられるのか、後で試してみよう。

 

 でもなんだろうか。たぶんびっくりしているからだろうけど、少し態度が変わったフランさんの様子に、胸がザワザワする。友人が利害関係のない友情で結ばれた友人でいてくれるのか、心配に……。……。なる必要はなかったね!

 

 うん。フランさんはフランさんの事情で僕と友人でいてくれるから、僕の云々は特に関係なかった。これからもよろしくね、フランさん。

 




金土日の休日とはいえ、大雑把なプロットもなく前から温めていた脳内設定だけで2万文字近く書けたのは個人的に結構頑張ったと思います。
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