対人戦闘訓練。私は宝希と向かい合っていた。
【ライトニングアロー】
宝希の放った魔法を、首を少し動かして躱す。ライトニング系の魔法は見てから躱すことはできないほど弾速が速いが、魔力の起こり、導線を察知できれば、躱すことはそんなに難しくはない。
「噓でしょ……?光速だよ……??」
「君が撃つと決めた時にはもう避けてるんだよ」
言いながら距離を詰める。言葉を追い越して、宝希の背後に回った。
少しだけ力を込めて宝希のことを叩く。ボンッッ、と少し軽い感触。
「グラビディで自分を引っ張って威力を受け流し、さらにシャドウダイブで地面に叩きつけられることを回避する。相変わらず、器用だな」
「お褒めいただきありがとう!」
影から宝希が飛び掛かってくる。さっきの一撃で体の多くが壊れただろうに、一生懸命ヒールを発動しているのだろう。見事な立て直しの速さだ。
ブワッッ!!と、暴風が吹き荒れた。両断される宝希の虚像。ミラージュか。
「外れ」
横から切りかかってきた宝希の剣を受け止める。すり抜けた、これも外れか。
背後から魔力の起こり。こっちが本命か。反転して、
ニヤッといたずらな笑みを浮かべた宝希の虚像が切り裂かれた。これもっ。
【ライトニングブラスト】
光の炸裂。私は大きく吹き飛ばされた。やられた。さっきの宝希は虚像なのは剣までで、体はちゃんと本物であったということか。
「魔法の多重起動といい、やっぱり君は戦い方が上手いな。Bタイプの異界でも大活躍できそうだな」
「いやあ、フランさんが褒めてくれるのは嬉しいんですけど、最大火力の魔法を叩きこんでも無傷だと絶望感がすごいんですけど」
「無傷ではないぞ。ほら、少し服がコゲた」
びっくりしたことに、1センチくらいの円形のコゲか衣服に残っていた。おそらく魔法の発動範囲を収束して、貫通力を高めたのだろう。思ったより守り切れなかった。
「実質ノーダメージじゃないですかやだー!」
「それでも実際一本取られたみたいなものだ。貴種としてのスペックの差を考えれば、私の負けだぞ」
「でも有効打じゃないですよね。じゃあ次はもっとすんごいのをおみまいしちゃいますよ!」
そういうと、宝希は再び戦いの構えをとった。あくなき向上心。うん、やっぱり君が好ましいよ。
じゃあ、少し札を見せよう。
【ボルト】
秒速150キロメートルの雷が宝希の体を貫いた。
ように見えた。
「あぶ、あぶなっ……!?」
宝希はちゃんと躱していた。私がやってみせたように、魔力の起こりと導線を予測して。
わたわたと慌てふためいた様子を見せながらも、あの透き通る瞳が私を見つめていた。役者め。読んだな、私の思考を。
「ふふっ」
ボルトウェーブ。回避不能な範囲攻撃を放とうとして。
【フラッシュ】
「っ」
目に飛び込んだ魔法の光が、一瞬私の集中力をかき乱した。攻撃力皆無で簡単な光の魔法でも、こういう使い方をしてくるか……!
【シャドウランス】
私の足元の影から発生した影の槍が私に直撃した。ただ、効きはしない。この程度の魔力の練りでは、貴種の
ただ、私の足元からシャドウランスを発生させたことは警戒すべきだ。魔力操作、魔法の実力が上がっている。まさか、宝希。
【ミラージュ】
10人の宝希が突っ込んできた。さっきより、ずっとミラージュのコントロールが上がっている。やはり宝希は。
「スキルのレベルが上がったか……!」
「その通り、魔法レベル2ですよ!!」
とんでもないやつめ。レベル2は現役の貴種の冒険者の水準だぞ。あっさりと言ってくれる。
「だが残念だな。それだけでは意味がない」
【ボルトバースト】
私から解き放たれた雷が全てのミラージュを消し飛ばした。ふむ、潜っているな、宝希。
【シャドウダイブ】
宝希が潜んだ黒い影が私に近寄る。魔法レベルが上がったおかげで、影の移動速度は上がっているが、貴種の目にはあまりにもゆっくりな移動。おそらく何かしらの策があるのだろう。
「ふふ」
いいだろう。のってやる。どんなとんでもない仕掛けがあるのか楽しみだ。
【ボルト】
影に対して雷を放った。さあ、どうする宝希。
ズドンッ
雷が影を貫いた。影は跡形もなく消え去り、込められていた魔力は霧散した。シャドウクローンか……?ここにきて新魔法とは、相変わらずの器用さだ。
背後の影から魔力の起こりを感じた。
「そっちか」
とんできた無色の魔力をかわす。ふむ。今のはちょっと危なかった。魔法ではなく魔力の塊であったため、発動が予想より早かった。だが、貴種の反射を抜けるほどの速度ではない。
【グラビディ】
引力で加速した宝希が突っ込んできた。格闘戦か?一体何を仕掛けてくる、宝希。
殴打には余裕をもって回避をしようとしたが、それを読んでいたかのように足を踏まれ、回避の動きを封じられた上で頬を殴られた。ふむ、
蹴りは腕で防御をしようとしたが、グラビディの魔法で軌道を急に変えられる。それでも、動き自体はまだ遅い。十分に目でその蹴りを追うことができているから、防御は間に合う。
【ミラージュ】
バギッ。
……蹴られた。光の虚像に騙され、目測を誤った。目で追うことができているからこそ、フェイントに騙されてしまった。やはり、私の動きが先読みされている。ここまで読まれるとは、ほぼ未来予知に近い精度だ。魔法の制御といい、宝希はもしかしたら知能に関するユニークスキルをもっている可能性もある。
フフッ。やっぱり君はすごいな。だが、それだけで私にダメージを与えることはできないぞ。
【グラビディ】
魔法の発動を感じた。しかし、何も起きない。私が引力で引き寄せられるわけでも、宝希に引力がかかるわけでもない。なら、周りか。
私は体を横にずらし、背後から飛んできた無色の魔力を躱す。先ほど宝希が放った魔力だ。このための布石だったのか。だが、私は躱せたぞ。次はどうする宝希。
私が躱した魔力が宝希に飛んでいく。む、自滅か?いや、宝希の拳に
「一緒に修行しようよ、フランさん」
宝希の
――闍ヲ縺励>縺、繧峨>豁サ縺ャ蜉ゥ縺代※蜉ゥ縺代※谿コ縺励※谿コ縺励※谿コ縺励※
「ッ……!!」
いたいいたいくるしいくるしいとにかくはなれて、しきりなおしを。
うしろにとんだ。はやく、つよく。
なのに、どうしてノービスのほうきが、わたしのそくどについてこれる……?
「神血を用いた身体強化。名づけるなら、神血纏いってところかな」
【神血パンチ】
「ガハッ……!?」
今日初めて、私はダメージを受けて吐血した。
「やりました!有効打、僕の勝ちですね、フランさん」
「ああ……そうだな。負けたよ。予想外の連続だった」
やりました、宝希くん大勝利!魔法スキルのレベルアップと、相手の舐めプに乗じた心理戦と、とっておきの神血技を用いての大金星だぜ……!かー、これなら、僕がこの世界で最強になってしまうのも近いかもしれないな……!ま、多分フランさんは1割も全力を出していないでしょうけどね。道のりはまだまだ遠い……。
でもまあ、瞬間的とはいえ、神血纏いを活用すれば貴種にも通じるスペックを得られることが分かったのは大きな収穫だ。これでようやく、彼らと対等に戦える切符を手に入れることができたのかもしれない。
「僕の勝ちってことは、今日の放課後のご飯のおごりはフランさんですからね!たらふく食べてやりますよ……!」
「ああ……。そうか。負けたからおごらなければいけないんだな。うん。それもいい。むしろ、その方がいいのか」
そうだよ。僕に金があまりないからって、ブルジョワ面を発揮しやがって……!僕たちは持たざる者と持つ者だから分け与えられるんじゃなくて、対等な関係でちょっとした賭け事に負けたから、食事をおごってもらうっていう方がちょうどいいんだ。気を抜けばすぐに上位者意識をだしてきやがる。このナチュラル上位者め!
「レクリエーションは終わったな」
あ。ミツルギ先生!こんにちは!ところで、なんか不穏じゃないすか……?
「これから対人戦闘訓練の授業を始めるぞ」
ミツルギ先生は剣を抜いた。ブワッと漆黒の
そうですよね、初日の授業は死にかけるほど剣を振りましたし、2日目の授業も死にかけるまで魔物と戦いました!3日目の今日は、まだまだ少し死にかけただけで、そんなに重傷は負っていない。全然スパルタ度が足りねぇよな……!
「か、勝てるわけがない……!」
でも、やるしかねぇ!僕には神血纏いという切り札があるんだ!貴種なんか怖くねぇ!野郎ぶっ飛ばしてやらぁ!(ミツルギ先生は女の子だぞ)
なお、神血纏いを使ってもまともに戦いにならず、僕はミツルギ先生にボコボコにされました。30回くらいほぼ逝きかけました。なんで人間と戦ってんのに、魔物と戦うより死にかけているんですか……?
ノリで書いているせいでフランさんやミツルギ先生がヒロインっぽく見えるけど、プロット上のちゃんとしたメインヒロインはいまだに未登場とかいう深刻なバグ。