GOD EATER~アラガミが嫁で悪いか?~   作:王・オブ・王

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第十二話「The past love」

 あれから数日が経ったある日、自分の部屋でソファに座っていた俺、松田グラハムは集めた資料に目を通していく。

 どれも書いてあるのは神器やアラガミ、そしてオラクル細胞やらの情報ばかりだがどれを読んでもまったく俺の身体の異常についてはわからずじまいだ。

 そもそもアラガミにとっての突然変異なんぞは日常的なことであり、いついかなる時も突然変異しているのだからサイズが大きなスサノオの一体や二体は居てもなにもおかしくないらしい。

 だからと言ってあきらめるつもりも毛頭ない、でなければいざアルフやらマトちゃんやらとベッドでのミッションに移行した時にリタイアする羽目になるからな……。

 黒い脇腹なんて誰も見せたくはないだろう。

 

 そんなことを思っていると、誰かが入ってきた。

 不躾だな、と思いながらそちらを見てみればそこに立っているのはマトちゃんであり、噂をすればなんとやらかと思っていたがそうでもないような表情だ。

 マトちゃんは俺に早歩きで近づいてくると俺の隣に座って俺の手を取る。

 驚きながらも、俺は笑みを浮かべざるをえなかった。

 

「フッ、いやはやまさかいつのまにやら攻略済みとはな……さすがの俺も恐れ入―――」

「やっぱり、ならない」

 

「……む?」

 

 マトちゃんはそれだけ言うと俺の手を放して立ち上がると一礼。

 

「ありがとうございました! では、また!」

 

 そのまま部屋を出て行くマトちゃんを追おうと思ったがすでに遅く、部屋の外を見ればマトちゃんはさっきゅんの部屋に入ってしまったというわけだ。

 さすがに女性二人の部屋に堂々と入ってなおかつ傷心中のさっきゅんをからかうことなんてのは、まだできない。

 もう少し時間をおいてからじゃないと攻略にはピースが足りないのだ。

 

 まぁ、サクヤぐらいになるとできるかも怪しい部分なのだがな……。

 

 リンドウのことが頭によぎるが男なんて想像してもつまらないので頭を振る。

 俺はおそらくアルフが居るであろうペイラー・榊の研究室へと足を進めることとした。

 ラボラトリにて降りると、椅子に座っている二人が目に映る。

 

「よぉエリックにソーマ、お前らほんと仲良いな」

「親友ですから!」

 

 髪を掻きあげるエリックにイラッとする俺だが、ソーマは心なしか楽しそうだ。

 

「おい、お前の女がまたラボラトリに行ってるぞ」

「うむ、報告ご苦労だソーマ……今度なにかあったら手伝ってやろう」

「後悔すんぞ」

 

「フハハハハッ、どんと来いだ!」

 

 俺は研究室の方へと足を進めながら背後に手を振る。

 当面の問題は俺の横にある医務室の中にいるアリサかもしれないが、どうでも良いことだ。

 とりあえず、研究室に入るとそこにはアルフが座っていてその前に立っているペイラー榊が何やら話をしてやがる。俺の嫁を寝取る気ではあるまいと思いながらも、想像すれば若干ながら興奮しないでもない。

 だが、とりあえず俺としては本題をさっさと所望する。

 察した榊が眼鏡を上げながら話を始めた。

 

「君の知り合いの“彼女”に連絡を取ってみたけれど、肯定的な返事はもらえたみたいだ」

「ほう、ならば遠出ができるな……経費で落ちるのか?」

「落とさないと他国には行けないね、まぁ今の世の中に国とか国境とか言ってもられないけれど……」

 

 なにはともあれこれでオラクル細胞に詳しいアイツと話もできると言うわけだ。

 会うのは何年ぶりかはわからないが、今はともかくこの腹のことだしな。

 とりあえず移動は空を使うとして良いだろう。

 今日中には出れるか……。

 

 

 

 結果、午後にすぐ極東から飛んでアチラへ向かうこととなった。

 数時間も座りっぱなしなんてこともそうそうないのでかなり腰が疲れたがここに来るだけの価値はあるだろうしな。アルフの部屋にもアラガミのパーツ、つまりは食事を置いてきたし問題もないだろう。極東支部にもかなり馴染んでるしな。

 俺がいないぐらいは問題ないだろう、結構癪だが問題ないはずだ。

 

 ただここで俺とて怖いことがいくつかあった。

 極東支部が襲撃を受けること、だ。

 第一部隊も今はボロボロだしな、さっさと帰らなければならん。

 

「つきましたグラハム“少尉”!」

 

 聡い者は気づいただろうか、今パイロットは俺のことを“少尉”と呼んだ。

 ただ単にリンドウが居なくなり新たに統率するものが必要になった支部長が俺の階級を上げたというわけである。そもそも俺はそれだけの価値がある男であるから当然と言えば当然なのだが、ともかく俺の階級が上がったということで小僧やエリックがパーティーでも開くかという話もしているが、まぁ今はどうでも良いだろう。

 それよりロシアンガールやマトちゃんのフォローの方が先だ。

 

 俺はヘリから降りる。

 ヘリのローターもすでに止まっているので煩さは無いが、いささか風が吹いている。俺は風で流される髪をかるくかきあげながら目的人物を見つけて近寄った。

 迎えに来てくれるとは良いとこあるじゃないか、まぁあの女は見かけ自体が良いのだが……。

 俺はかの女に近寄ると地面膝をついて、その低い視線に合わせる。

 

「ようこそ、マグノリア=コンパスへ」

「ああ、久しぶりだなラケル」

 

 ずいぶん久しくなる再開だ。

 最後に会ったのはいつだったか、オラクル細胞研究の最前線に立っている何人かの科学者の一人。

 それでありながら若く美しい。

 ただ車椅子というのが彼女にとっては難点か? 俺としては良いチャームポイントなんだがな……。

 

 生憎、目がやけに薄汚れてる。

 

「ごきげんよう、お姉さんは?」

「今は留守にしていますわ、どうぞ中へ、研究室へご案内します」

 

 そう言うラケルの後を付いていき、俺は孤児院マグノリア=コンパスへと中に入った。

 もう夜も遅いため子供たちは寝ているようだ。こんな夜中に金髪美少女と一緒とはな、まぁ20歳を越した女を少女と言うのかはわからんが、やはり見かけは少女なのだから少女で良いだろう。

 ロリ体系と言えばそうかもしれんが、やはり大人びているということには変わらんな。

 

 俺とラケルの二人で会議室、というよりも研究室にやって来た。

 

「さて、貴方のデータは頂きましたわ……それでも、実物を見せてくださいませんこと?」

「良かろう」

 

 立ち上がると同時に俺は上着を脱いで、服を上に上げる。

 脇腹を侵食している黒いオラクル細胞で新たにわかったことはその細胞は既存のものではないということぐらいだ。あいつ、ペイラー榊は俺の想像以上の天才であるらしい。

 なにはともあれ、俺は世界で唯一の細胞の持ち主らしい。ただし後付。

 オラクル細胞、ならびにアラガミ研究の第一人者たるラケル・クラウディウスは元々俺の知り合いでもあるのだが、そのつてを使って今回は俺に後付された細胞を調べてもらいに来たわけだ。

 

 そして今から検査開始……。

 

 

 

 数時間もしない内にいくつかわかることがあった。

 

「これは、数々のオラクル細胞を受け入れて直、その細胞を破損させずただ食す。なるほど……」

「なにがわかったということだ?」

「大丈夫です“特に”変わったことはありませんわ」

 

 そんな言葉に、グラハムは目を細めながら上着を着る。

 黒い部分は特に何もなく、グラハムの肉体の一部のように触っても違いはわからない。

 

「もう少し早く、出会いたかった……」

「遅くはないだろう?」

 

 笑うグラハムだが、クスッと笑ったラケルはグラハムのデータが映されているディスプレイに向き直る。

 意味が違うと察するまでそれほど時間はかからなかった。

 

 つまり、自分のデータがもう少し早く届けば何かがあったということだろう。

 なんでも食すオラクル細胞、つまりは偏食せずに形構わずすべてを食らう。自分が食われる日も来るのだろうかと考えて、首を横に振る。

 アルフを置いて死ぬわけにはいかない。

 せっかくの正妻だ。決して手放すことは赦されない。

 

「これを治す方法は、あるのか?」

「今の私ではわかりません……調べてはみますが、また追ってご連絡させていただきますわ」

「なるほど、なっとくだ」

 

 グラハムが前髪を軽く掻き揚げる。

 

「……ナナはどうしている?」

 

 顔をしかめながらも彼はそう聞いた。

 彼を知っている者は総じて『意外』というだろう。それぐらいなにかを申し訳なく思っているような、苦しそうな顔をしているからだ。

 グラハムの珍しいそんな表情を見れる人間は少なく、その一人がラケルである。

 その表情に笑みを浮かべたラケルは、先ほどと少しばかり違う雰囲気だ。

 

「“血の繋がった実の娘”が気になるかしら?」

「当然だ、特にヨシノが死んだのは俺のせいでもあるからな……」

「当時はゴッドイーター同士の婚姻、出産のサポートがしっかりしていなかったから」

 

 先ほどまでと違い敬語が取れている。

 

「貴方にずいぶん懐いているけれど、会っていくのかしら?」

「当然だろう……それにしてもヨシノに似ているよ」

「そうですわね、私は亡くなった姿でしか会ったことは無いけれど」

 

「……その方が幸せだ、会っていれば辛いさ」

 

「おでんパン、一度も受け取ったことがないんですってね?」

 

「……しんみりした気分になるのは御免だからな」

 

 かつての“彼女”を思い出すことなど御免だし、それと同様に他にも死人のことは思い出したくない。

 つい最近も“遠くの支部にいる友人”が死んだと聞かされもした。

 勘ではリンドウは生きているだろうが、死体か神器か腕輪が見つかれば確実だ。

 

「今日は泊まっていくのかしら?」

「そうさせてもらおう、部屋は……」

「ナナと同じ部屋というのは―――」

 

「あまりからかってくれるな、俺の精神とて鋼鉄ではない」

 

 よく言う―――とも思うかも知れないが実際にそうであり、古参神器使いの一人であるグラハムにとって“死”というのは身近だ。

 人間にとって、一番忌避し、遠ざけたいものが一番近くにある。

 ソーマに言わせれば“くそったれな職場”だ。

 

「ともかく、空き部屋を一つ用意するわね」

「君と共に寝るというのも一興だがな」

「あらあら、私初めてよ?」

 

「処女でマグノリア=コンパスの母か、まるで聖母(マリア)だな」

「フフ、ありがとう」

「では部屋は―――」

 

「“空き部屋”を用意しておくわね?」

 

「……あぁ」

 

 グラハムは肩をすくめて軽くため息をついた。

 とりあえず明日の夜までには向こうに帰らなければならない。

 彼は軽くため息をつくと、車椅子に乗って移動するラケルを追うことにした。

 

 やはり女の尻を追うということは、変わらないのだろう。

 

 

 

 




あとがき

さて、今回は衝撃の新設定!
まぁ最初から娘と死んだ嫁を作る設定だったので、ナナとヨシノが丁度良かった!
状況的にハルオミとかぶったりしそうでござりまするが、これはこれであり!

とりあえず2をやってインスピレーションが沸いた!
ところで19日にはまどマギのゲームが発売、これにて再び更新継続不可の危機……。

なんとなく頑張りますでござりまするよ!
では、次回もお楽しみいただければまさに僥倖!

PS
感想、是非お待ちしておりますで候。
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