「お前の能力は一族の恥だから出て行け!」と筋肉を愛する実家から追放された俺が前世で助けたヤンデレ聖女につきまとわれている件。なお、俺はキラキラフリフリ衣装の近接格闘聖拳少女に変身して戦う。   作:羽黒楓

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第12話 フカフカのパニエ

 砂埃の中で光を発して出現した俺に、すぐさま気づいた者がいた。

 

「キャーッ! ミスティレインボー様ぁ!」

 

 フェリスだった。

 彼女の叫び声が響く。

 

「おお! あれが噂のミスティレインボーか!」

 

 全校生徒が聖拳少女(トゥインクル・スマッシャー)ミスティレインボーについて知っていた。

 なぜなら、フェリスが言いふらしていたからだ。

 今、生徒たちの前で見える光景は。

 へたり込んでいるカロミア、カロミアを守るように立っている俺(の幻像)、そして派手な戦闘ドレスを着ている華奢な聖拳少女(トゥインクル・スマッシャー)――俺だった。

 

 少し距離があったが、俺が地面を蹴ると一飛びで凶爪熊(グラオザーム・ベア)の目の前にたどりつく。

 カロミアのバフ聖術の効果がまだ効いているみたいだ。

 変身した上にバフがかかっているとなれば、こんな化け物テディベアくらい、瞬殺してやる!

 凶爪熊(グラオザーム・ベア)が吠える。

 

「グオオオオッ!」

 

 そして丸太のようにでかい腕を振り回してくる。

 長さ50センチほどもある巨大な赤黒い爪が輝いていた。

 

「フンッ!」

 

 俺はその爪を右手で掴むようにしてその攻撃を止めた。

 

「ミスティボム!」

 

 叫びながらその爪に左フックを叩き込む。

 ボグッ! という鈍い音とともに、凶爪熊(グラオザーム・ベア)の爪が一本折れた。

 

 怒りに燃える熊はもう片方の腕で俺を殴ってくる。

 だがその瞬間には俺はもうそこにいなかった。

 

「ここだっ!」

 

 俺は瞬時に凶爪熊(グラオザーム・ベア)の頭上に飛び上がっていたのだ。

 

「ハァァァッ!」

 

 その頭に両足でキックをお見舞いする。

 ぐらつく熊の化け物。

 俺は宙に舞いあがり、何もない空間を蹴った。

 俺の身体はグンと加速し、俺は頭から熊に襲い掛かる。

 

「グゥオオッ!」

 

 それを避けようとする凶爪熊(グラオザーム・ベア)

 だが、俺の全身を使った頭突きは、簡単に読まれるような軌道をしていない。

 まるで稲妻のようにジグザグに動きながら凶悪テディベアに突っ込んでいく。

 

「ミスティサンダーヘッドアターック!」

 

 ドスン、と俺の頭突きが凶爪熊(グラオザーム・ベア)の背中に突き刺さる。

 ふらつきながら向きを変えようとする熊、だが俺はまたしても瞬時に移動して、今度は凶爪熊(グラオザーム・ベア)の足元にいた。

 樹齢百年の大木くらい太いその後ろ脚を抱える。

 

軽いぜ(ライウェッ)!」

 

 俺はそう叫んで、熊を持ち上げると、そのまま地面に叩きつける。

 生徒たちが「おお!」と歓声を上げるのが聞こえた。

 

 俺は倒れている凶爪熊(グラオザーム・ベア)の眼前に飛びつくと、

 

「くらえっ! ミスティメテオライツ! タァーーーーッ!」

 

 とにかくもう、めちゃくちゃにその鼻ツラを殴りつける。

 

「タタタタタタタタタタタタタタタタタァァァァァーーーーッ!!!!」

 

 殴る。

 殴る。

 とにかく殴りまくる。

 数十発、どころではない。

 何百発も殴りまくる。

 俺の拳は音速を超えているようで、「パァン!」というソニックブームの衝撃波が巻き起こる。

 

「タタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタラララララァァァァッ!」

 

 そして最後の一発。

 

「くらえぃっ!!」

 

 メキッという音とともに俺の拳が凶爪熊(グラオザーム・ベア)の顔面だったところに突き刺さった。

 もう、頭部とも言えぬほどめちゃくちゃになっていて、肉塊と言ってもいい。

 化け物熊は、完全に絶命し、ピクリとも動かなくなった。

 

「…………ふう」

 

 俺は額の汗を拭いながら、手をパッパッと振って返り血を飛ばした。

 そのとき、校庭をすごい歓声が覆った。

 

「すげえええええ!」

「なんだあの子!?」

「あれが噂の聖拳少女(トゥインクル・スマッシャー)か!」

「ミスティレインボー強ええええ!」

「すっごいかわいい!」

「女神様の化身みたい!」

「エゼルが召喚したんだろ? 強すぎてやばい!」

 

 凶爪熊(グラオザーム・ベア)が完全に沈黙したあと、カロミアの張った防護聖術が解ける。

 ちなみに、その時俺の幻像も消えていたのだが、みんな俺の方を見ていて気付いていなかった。

 

 その途端、俺に向かって走り寄ってきた人物がいた。

 毛量の多いポニーテールを尻尾みたいにパタパタ振っている。

 フェリスだった。

 

「ミスティレインボー様ぁ! 素敵です素敵です素敵ですぅ!」

 

 そのまま俺の前にひざまずくと、まだ血がついている俺の手をとった。

 そしてその手の甲にほおずりする。

 

「またお会いできて光栄です! 先日は命を救ってくださり、ありがとうございました! ああ、なんて小さな手……。こんな手でこの恐ろしい魔物を倒してしまわれるなんて……」

 

 目を閉じ、堪能するかのように俺の手に頬ずりし続けるフェリス。

 ついでにポニーテールの先っぽも俺の腕にまとわりついて撫でさすっている。

 くすぐってえな!

 

「あなたは……私の天使様です……!」

「俺は……」

 

 言いかけて、やめた。

 『俺』なんて一人称を使うと、俺が元は男だとバレる可能性がある。

 だから、こう言った。

 

「私はやるべきことをやっただけよ。感謝ならエゼルにしなさい。彼が私にパワーを与えてくれるのだから」

 

 自分を褒めてほしい一心で勢いで言ってしまったが、あれ、こんな設定を勝手に付け加えてよかったかなあ?

 

 と、そこで腰の抜けたカロミアが、それでもヨタヨタと俺たちのところへ歩いてやってくる。

 

「おい、カロミア、大丈夫か?」

「だいじょばないよ。エゼ……ミスティレインボーちゃんからその手を……その手を離しなさい! 頬ずりなんて私もまだしたことないのに羨ましい!」

 

 こいつもブレねえなあ。

 

 カロミアは、俺に近づいてくると心配そうに聞く。

 

「ケガはない?」

「ないぞ……ないわよ。心配いらないわ」

「一応確認するよ!」

 

 そして俺の身体をペタペタ触り始める。

 

「うわーすっごいかわいい! なにこれ、フリルも素敵! お肌もすべすべ! なにより顔が……ものすっごく綺麗! まつげ多すぎ、長すぎぃ! それにそれに、腰も細い! 私よりも細いよ、そんなことある!?」

「おいおい、何してる、セクハラだろ!」

「ケガがないか見てるだけだよ、ここはどうかな?」

「スカート覗き込むなバカッ! あ、くそ、恥ずかしい……!」

 

 スカートの中には一応フカフカのパニエがみっしりと詰まっているので、パンツは見られなかった。

 いや待てよ、今俺はどんなパンツを穿いているんだろう?

 …………正直、気になるが……。

 それよりこの恥ずかしい姿をこれ以上みんなに見られるのはさすがに耐えられないぞ!

 

「ミスティレインボー、すげえ強いな! お見事な戦いだった!」

 

 スカートをめくられている俺に、教師や生徒たちが拍手を送っている。

 まさに万雷(ばんらい)の拍手だった。

 

「すごいぞ!」

「キャーッ! ミスティレインボー、かわいい!」

「俺と結婚してくれぇ!」

「ミスティさまーっ!」

 

 …………ストリッパーの気持ちが少しだけ分かった気がした。

 ――悪くないかも。

 そう思いかけて、いやいや、んなわけあるか、変態じゃあるまいし!

 俺は正気を取り戻そうと思って首を振った。

 その時、もう一人、俺に話しかけてくる奴がいた

 

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