「お前の能力は一族の恥だから出て行け!」と筋肉を愛する実家から追放された俺が前世で助けたヤンデレ聖女につきまとわれている件。なお、俺はキラキラフリフリ衣装の近接格闘聖拳少女に変身して戦う。 作:羽黒楓
数日後のことだった。
授業中、ベルーガが、俺に耳打ちした。
「おい、エゼル……すごくいいものが手に入ったんだ。今日、俺の部屋に来てくれ」
ベルーガの顔を見ると、なんというかすごくにやついていた。
ん?
こいつ、なにを企んでやがる?
★
その日の夜。
俺はベルーガに言われた通り、隣の部屋のドアをノックする。
「エゼルか?」
「ああ」
「よし、静かに入れよ……」
ベルーガの部屋は案外片付いていた。
寮は本来二人部屋だから、当然ベッドも二つ置いてある。
「ん? シェラサスはいないのか?」
俺はベルーガにそう尋ねる。
シェラサスとはベルーガのルームメイトだ。
なんというか、まだ12歳の男子で、聖職者希望の少年だ。
なんというか非常にナヨナヨしている、中性的な男の子だが、しかし12歳でこの神聖学院に入学するだけあって、その神聖力は抜群で、将来を嘱望されている生徒である。
もちろん、この学院の最年少だ。
性格も素直なので、みんなの弟分みたいな感じでかわいがられている。
「ああ、シェラサスは違う部屋に行かせてるよ。あいつにはこれは目の毒だからな」
「目の毒? なんのことだ?」
「ふふふ……これだよ……」
ベルーガが自分のベッドの下に手を入れる。
そこから、大きな木箱が出てきた。
「なんだそれは?」
俺が聞くと、ベルーガは「しっ」と人差し指を口にあてる。
「エゼル、これはな、マジでマジで極秘シークレットなブツなんだ……」
ベルーガがゆっくりと木箱のフタをとる。
中にあったのは、紙の束だった。
「おいおい、いったいなんだっていうんだよ……んん!?」
それを見て、俺はゾクッとした。
これは……確かに、ヤバいものだ!
「お、おい、これ何枚あるんだよ……。……! こんなに!」
「多分、数百枚はある……。とある筋から特別に手に入れたんだ……」
俺はごくりと唾を飲み込んだ。
そう。
それは、なんと、女性の裸が描かれている、エロイラストだった。
いや、それだけじゃない、男と女が絡んでる、そのままの絵もある。
「こ、これ……! どうしたんだ!?」
「ふふふ……秘密だが、とある印刷所に知り合いがいてな。そこからまわしてもらった」
「印刷物なんて、結構高価なのにこんなに……!」
俺は震える手で紙をめくっていく。
すごいぞ、すごい!
巨乳貧乳なんでもござれだ。
シチュエーションもごくノーマルなものからとんでもなくアブノーマルなものまで……!
「ふふふ。エゼル。お前は俺の親友だからな。こっそり分けてやろうと思ったんだ」
「マジでか!」
この世界、俺が前世で生きていた日本とは違って、エロ動画なんてものは存在しない。
もちろん、写真もないからそういう写真集もない。
だから、こうして裏から裏へとエロいイラストが出回っているのだ。
それはそれで巨大な市場となり、有名な絵師も何人も誕生し、結構な値段でやりとりされているのだ。
転生してきたとはいえ、俺は今17歳。
活発化した男性ホルモン、若い脳みそに若い身体。
精神は成熟していたつもりだが、脳も身体も全部17歳のものなのだ。
だから、どうしてもどうしてもおかずがほしい、と思うときがあった。
人間なんて、精神がどうあれ、どうしても身体に備わる本能にひっぱられるものなのである。
「本当か、ベルーガ……。これを、俺に? 高かっただろう?」
「ふふふ、多くは聞くな。裏のルートだからな。もちろん、全部は譲れない。20枚。20枚だけ選べ。それをお前にやろう……」
「そ、そうか……!」
そして俺は何百枚もあるそのイラストを一枚一枚、丹念に見ていき、俺的最高なエロイラストを20枚、選んだのだった。
★
その日の夜、部屋を一人で使っている俺が、筋トレよりもクタクタに疲れ果てたのは言うまでもなかった……。
もう体力の限界にきているのに、俺はそれでもランプの光の下で、20枚のイラストをかわるがわる見続ける。
ああ、素晴らしい。
この異世界、最高の絵師が何人もいるんだなあ。
俺の実家じゃあ、こういうのにめちゃくちゃ厳しくて、転生してから見たことなかったからなあ。
うーん、マジでベルーガは俺の親友と認めてやることにしよう。
20枚の中に一枚だけ、ほかとは毛色の違うイラストがあった。
正直、それは俺の趣味では全然なかったのだが。
絵師の画力が高すぎて、竿役のマッチョ男がよく描けていた。
思わず感心して、それも選んでしまったのだ。
「うーん、でもこのイラストの筋肉はマジで見事だぞ……。この広背筋、三角筋、僧帽筋……。この絵師さんはよほど人間の身体を研究したんだろうなあ……」
俺は嘆息して、その筋肉を眺める。
そのときに気づいたが、イラストのはしっこに103と数字がふってあった。
まあそんなことはどうでもいいか。
よし、筋トレもさらに継続して、こんな筋肉をいつか手に入れるぞ!
★
翌日、放課後、学院の相談室。
カロミアはベルーガを相談室に呼び出していた。
「で、ベルーガ君。どうだった?」
「はい、カロミア先生にもらったあのイラスト、エゼルのやつ超喜んでいましたよ」
カロミアは満足げな笑みを浮かべた。
「そう。よかったよ。やっぱりエゼル君も男の子だね。そういうのに興味がない身体だったらどうしようと思ってたよ。うんうん。で、ベルーガ君」
「はい」
「今度の聖術のペーパーテスト、多分教科書の45ページあたりが重要なんじゃないかなあって私は思うの」
「先生、ありがとうございます!」
「あとはね、資料集の……」
「資料集の?」
カロミアはじらすように妖艶な笑みを浮かべる。
「いいえ、その前に。エゼル君は、何番のイラストを持って行ったの?」
数百枚のイラストにはすべてナンバーが振ってあった。
エゼルが選んだイラスト、それこそがエゼルの好みの女の子、そして好みのシチュエーション!
カロミアはほくそ笑む。
ふふふ、私、頑張るからね。
あなた好みの女の子になってあげるから……。
「さ、ベルーガ君。教えて?」
「はい、えっとですね、5番、67番、68番、79番……あ、103番が一番好きだったみたいで凝視してました」
「103番……と、言うと……」
国家に認められた聖女である。
イラストの番号と中身はすべて記憶してあった。
そして。
103番のイラストの内容を思い出したとき。
「ヒャッ!」
カロミアは思わず声を上げていた。
「103番って……男の人が……犬と、その……イタしているイラストだった……えええええ!? エゼル君……まさか……そんな趣味がっ!」
「ええ、親友の俺としても信じられない思いです。女装趣味でケモノ趣味だとは……。しかも獣人じゃなくてケモノそのものですからね……。底知れないヤツですよ、エゼルは……」
カロミアはペロリと自分の唇をなめた。
まさか、そんな、そんな趣味がエゼル君にあったなんて!
でも、でも私、頑張るからね!
カロミアはそう決心するのであった。