「お前の能力は一族の恥だから出て行け!」と筋肉を愛する実家から追放された俺が前世で助けたヤンデレ聖女につきまとわれている件。なお、俺はキラキラフリフリ衣装の近接格闘聖拳少女に変身して戦う。 作:羽黒楓
俺の能力は基本的に近接格闘向きだ。
ニチアサの伝説の戦士みたいに遠距離浄化技でも使えりゃよかったんだが、あいにくそういう能力はもちあわせていないみたいだった。
さて、空を飛んでくる
ヒントは、俺の足元にあった。
遠距離魔法が使えないなら、遠距離から物理でぶん殴ればいいのだ。
そう、投石である。
こちらに向かって真っすぐ飛んでくる
プテラノドンそっくりな見た目だが、そのクチバシから炎を吹き出しながら飛んできている。
俺は足元の手ごろな石を拾い、そのうちの一羽に狙いを定めた。
距離は300メートルくらい。
石を握りしめる。
そして、
「うおりゃああ! ミスティピッチング!」
と叫んで石を思い切りぶん投げた。
野球のピッチャーなんか目じゃないほどのすさまじいスピードで空気を切り裂いていく。
石ころが
頭を粉砕された
「よし、もう一発!」
再び石を投げると、それもまた
翼に大穴を開けられたプテラノドンの怪物は、揚力とバランスを失ってクルクルときりもみしながら地面に落ちていった。
「まずいな……全部撃ち落とすまでにここにたどり着いちまうぞ」
俺は地面の石を拾いまくりながらそう呟いた。
予想通りだった。
その後も投石を続けたが、何発か外れたこともあって、俺が撃ち落とせたのは四羽まで。
残りの六羽はそのまま俺たちに向けてまっすぐ飛んでくる。
ちらりとカロミアを見る。
全くの無防備状態でブツブツ詠唱を続けていた。
チッ、本意じゃないが空中戦をやるしかない!
俺たちの上空数十メートルまでたどりついた
「ハァァァァッ!」
叫び声を上げながら俺は地面を蹴る。
蹴られた地面がえぐられ、俺の身体はまるでロケットのように大地から『発射』された。
「グゲ!?」
おそらく遠隔魔法攻撃を予想していたのだろう、
その隙を見逃す俺じゃない。
俺はスカートをまくり上げて、左手で押さえていた。
なんのためかって?
めくったスカートの中にたんまり石を詰め込んでいたからだよ!
一度上空に飛び上がった俺の身体は、今度は落下していく。
もう、
「至近距離でくらえええい!」
俺は空中で石を投げまくる。
こんな攻撃方法は今まで喰らったことがなかったんだろう、
一羽一羽を狙ったその石は、次から次へと命中していく。
一羽、また一羽とプテラノドンを撃墜していく。
ただ、そこで俺の方にも予想外が起きた。
まずい! カロミアは今、完全無防備なのだ。
俺は空中で態勢を変え、頭を下に向けると、
どうしてそんなことができるとわかったのか、自分でも理解していない。
カロミアを狙う
さっきのがロケットなら、今のは流れ星だ。
「願い事なんて言わせねえぜ! ミスティ・シューティングスター!!」
俺はそのままとんでもないスピードで
風圧のせいで俺の顔が変になってるのを感じながら、俺の身体はそのまま
「グギャア!」
ボキッ、と
そいつはそのままコントロールを失って地面に激突する。
俺の方はというと、空中でくるりと一回転し、スタッ! と綺麗に着地を決めた。
残りは二羽。
そいつらは並んで空中からカロミアに向けて炎を吐いた。
まるで火炎放射器のようだった。
させるか!
カロミアは俺が絶対に守る!
俺は瞬時に飛び上がってカロミアと
チリチリッと俺の髪の毛が燃えるいやな臭いを感じる。
皮膚が焼けていくのがわかる。
だが、その程度の炎で女神様が直接くださったギフト、
その身で思い知れ、聖女を守る
俺は叫んだ。
「ミスティメテオライツ!」
そして音速を超えるほどの連続パンチを炎に向かって繰り出す。
パンパンパンパンッ! というソニックブームの音が響いた。
そのたびに炎が切り裂かれる。
火炎放射の軌道が逸れ、炎はカロミアのすぐそばの地面に落ちてそこで燃え上がった。
俺はさらにもう一度地面を蹴った。
次の瞬間には俺はすでに二羽の
「とりゃああ!」
目にもとまらぬ速さで手刀を繰り出す。
実際、こいつらの目は俺の動きを捉えられていなかったのだろう。
ゴキン、バキン、という音が鳴り、二羽の頭部が粉砕される。
再び着地を決めると周囲を警戒する。
……飛行部隊はこれで全滅のようだった。
俺たちの周りには六羽の魔物が死体を晒している。
カロミアの歌うような詠唱が聞こえてきた。
「ガーバル・デミア・シュランティーア。我が女神様、怒りを私の手に賜りませ!」
そして、カロミアがついにその聖術を発動した。
「究極爆破聖術……
次の瞬間。
洞窟を中心として爆発が起こった。
この世の終わりかというほどの巨大な爆炎。
あまりの音のでかさで俺の耳がキーン! と鳴って、何も聞こえなくなった。
巻き起こる炎と黒煙がキノコの形に盛り上がっていく。
その爆発は、あまりに巨大すぎて逆にスローモーションにも見えた。
山が崩れる。
熱風が俺たちを襲う。
チリチリと俺の髪の毛が焦げた。
激しい炎が噴きあがり、まるで山が噴火したかのようだった。
そして十数秒後、その炎は嘘のように消え去る。
残ったのは、大きなクレーター、形が変わってしまった山、そしてすべて焼き尽くされた真っ黒な大地。
これだとあのあたりにいたゴブリンどもも全滅だろう。
「…………これが聖女の力かよ…………」
俺は呆気にとられてそれを見ていることしかできなかった。
カロミアはこんな力を持っていたのか。
これは……ほとんど戦略的な攻撃規模じゃないか。
マジか。
これなら確かに魔王やら魔将軍を倒そうという気も起きようというものだ。
俺はカロミアの力に感心するどころか、恐怖まで感じ始めていた。
この力…………。
こんな攻撃力を持っていたら、この先彼女はいろいろな戦場に派遣されるだろう。
いつか彼女が言っていたことを思い出した。
『20歳になるまでは自由にしていいって言われてるんだよ。その後は軍務につかなきゃいけないから』
カロミア、お前はそれでいいのか?
そうするしかないのか?
そして俺は……?
そのとき、
「あ」
というカロミアの短い悲鳴のようなものが聞こえた。
爆発を見届けたカロミアが、膝から崩れ落ちるようにしてその場にしゃがみこんだのだ。
「おい、どうした? 力を使いすぎたのか? 大丈夫か!?」
カロミアはしゃがんだまま俺を涙目で見上げてこう言った。
「私は大丈夫。エゼル君こそ、ひどい火傷してるみたいじゃない! せっかくの服も焦げてるし……」
「こんなのしょんべんつけておけば治るさ」
「駄目だよ! 少し休んだら治癒してあげるね…………ってか。久々に全力だしたら……ちょっと漏れちゃった……。つける? 治るかなあ?」
さっきはカロミアの尋常ならざる力を一瞬怖く思ったが、その表情はいつものヤンデレ聖女だった。
別の怖さがあるけどな!
「んなもんつけるか! あとで治癒聖術で治してくれよ。それにちょうどよかったぞ、返そうと思って下着持ってきているんだ。馬につけてある荷物の中に入ってるぞ」
俺はなんだかほっとしてそう言った。