「お前の能力は一族の恥だから出て行け!」と筋肉を愛する実家から追放された俺が前世で助けたヤンデレ聖女につきまとわれている件。なお、俺はキラキラフリフリ衣装の近接格闘聖拳少女に変身して戦う。   作:羽黒楓

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第20話 すっごくかっこいいイケメン

 勇者マインは、ひっそりと町にやってきた。

 魔族からすると、最優先の殺害目標でもあるから、あまり目立つ行動はとれないらしい。

 供の女性二人をともなって、夜半に町に入ったという。

 

「ね、ね、エゼル君! さっそく挨拶に行こうよ! 私も会うの久しぶりだから楽しみ! マインってすっごくかっこいいイケメンなんだから!」

 

 ハンマーカールをしている俺に、カロミアがニコニコと笑顔でそう言う。

 ふーん?

 カロミアがほかの男をイケメンだとか言うなんて、けっこう珍しいよな。

 ちょっと興味がないではないけど、でも今はハンマーカールが最重要事項だ。

 

「いや、いいよ。勇者なんて興味ないし」

「私の友だちなんだよー? 紹介もしたいし。ってかいやならそのダンベル返して」

「はい、行きます」

 

 そんなわけで、俺たちは勇者が宿舎にしている、一軒家へと向かった。

 そこは町のはずれにある家で、周りは空き地になっている。

 

「エゼル君、こっちこっち。魔族の刺客とか来ても、すぐに気づけるようにこの家借りたんだって」

「ふーん。けっこう新し目の家だなあ」

 

 扉をノックすると、出てきたのは若い修道服の女性。

 奥の方にもう一人、修道女がいた。

 彼女たちはカロミアを見ると、驚いた表情でひざまずき、カロミアに祈りをささげる。

 

「わざわざ聖女様がおいでなさるとはありがとうございます」

 

 そうだった、カロミアは国家に7人しかいない聖女だったな。

 修道女にしてみればこうして話すだけでも光栄なのかもしれなかった。

 

「いいよいいよ、堅苦しくしなくて。マインはいる?」

「少々お待ちを」

 

 応接室に通されて、しばらく待つ。

 

「でもさ、勇者マインって、イケメンなんだろ? 女の人と一緒に旅するなんて……」

 

 この国の国教、ルミエル教では、婚前の男女が付き合うことを禁忌としてはいない。むしろ、結婚前提の交際であれば推奨しているほどだ。

 だからまあ、問題はないっちゃないのかもしれんけどさ。

 勇者たるもの女連れかあ。

 カロミアが出された紅茶に口をつけながら言う。

 

「あの二人、けっこう強い神聖力を感じたよ。お供ってだけでなく護衛も兼ねてるんだと思う」

「護衛だとしても女性二人とイケメンがなあ……」

「マインはそういう感じの男の人じゃないから大丈夫」

 

 ほんとかあ?

 そこに、当の本人がやってきた。

 

 なるほど、これはイケメンだ、と思った。

 すらりとした赤髪で細身の美男子。

 身長175センチの俺よりも背が高いように見える。

 足がとんでもなく長い。

 なんというか、もし日本に産まれていたら男性アイドルか俳優にスカウトされるだろうな、っていうレベルで顔が整っている。

 

「やあ、カロミア。久しぶりだね」

 

 その笑顔もさわやかで、ああ確かにこれはハンサムだ、と男の俺ですら思った。

 

「あ、マイン! 変わってないねえ。相変わらずイケメンだよ」

 

 カロミアの言葉に、俺は思わず動揺してしまった。

 え、こいつ、俺以外の男にそんなこと言うキャラだっけか?

 こいつらどんな関係だ?

 マインも笑顔でカロミアに言葉を返す。

 

「カロミアこそ、前と変わらず美人じゃないか。髪を伸ばしているんだね。似合っていて素敵だよ」

「えへへ、マインに褒められると嬉しいな」

 

 喜びの笑顔でカロミアがそう言った。

 なんだよ、カロミアをそんな風に褒めるなよ、と一瞬思ってから、あれ、なんで俺はそれが嫌なんだ? と思い直した。

 

 いやでも、『マインに褒められると嬉しい』?

 なんか、特別感がある言い方だな。

 マジでこの二人、何もないのか?

 い、いや、とりあえず俺も挨拶しないとな。

 

「初めまして。聖カロミア先生の生徒の、エゼル・ブロリオス・ガルディオスと言います」

「君が噂のエゼル君なんだね。ボクはマイン。勇者マインだ、よろしく」

 

 右手を差し出してくるマイン。

 俺はその手を握って握手する。

 ん?

 勇者というからにはいかにも筋肉バキバキのイメージがあったけど、袖から伸びる前腕を見てそうでもないな、と思った。

 マインは俺に対して逆の感想を持ったようだ。

 

「うわ……すごい筋肉……鍛えてるんだね?」

「筋トレは好きなんですよ」

「へー。ボク、自分がそうじゃないからか、筋肉のある人は好きだよ」

 

 おお!

 ついに!

 ついに筋肉の良さを知っている男とこの街で初めて会ったぞ!

 さっきは一瞬なぜか負のイメージを持ちかけたけど、もしかしたら、いい奴なのかもしれない。

 

 と、そこにカロミアが慌てた声で言った。

 

「あ、あのさ! エゼル君はずっと一緒に私と戦ってきて! 筋トレも私が補助したりしてるんだから! マイン、わかってるよね!?」

 

 ん?

 なんでそんなに動転した声で言うんだ?

 

「ははは、心配いらないよ、カロミア。でも、なるほど。エゼル君、君は見たところ筋肉に関するギフトはないね?」

「そうですね。残念ですけど」

「それにしてはなかなかだよ。ちょっと二の腕見せてもらえないかな?」

 

 お!

 来た来た!

 筋肉を見せろと言われたら見せたくなるのが人情ってもんだよな!

 

 俺は袖をまくって力こぶを作って見せる。

 小指をちょっと内側に巻き込むのがうまく二頭筋を盛り上げるコツだ。

 筋トレ三昧の毎日で成長期の俺である。

 実家にいた頃より多少なりともデカくなってる自覚があった。

 マインは俺の上腕を触って、

 

「カチコチだ……へえ」

 

 そこにカロミアが手を伸ばしてマインの手をパチンと軽く叩いた。

 

「エゼル君に気安く触らないでってば!」

「あはは、ごめんごめん。でもさ、これだけ鍛えているってことは、王都のマッスルフェスティバルでも目指しているのかい」

 

 ん?

 初耳だなあ。

 

「なんですかそれ。いや、でもやっぱりギフトなしじゃ大会になんて出られないですよ。俺の父や弟なんか、ギフト持ちだからレベルが違う筋肉しているし」

「いやいや、マッスルフェスティバルはギフトを持ってない人間限定の大会だよ。君、いくつ?」

「17です」

「18歳以下の部門なら、いいとこまでいけるかもね」

 

 ギフトなし限定の筋肉大会だと!?

 そんなものあるのか!

 よく考えたら俺の実家、ガルディオス家の男はみんなギフト持ちだから、ギフトなし専門の大会についての情報なんて入ってくるわけないか。

 なんか、がぜん、興味が湧いてきたぞ!

 

「で、エゼル君」

 

 マインが言う。

 

「筋肉もそうだけど、ボクは君の能力に興味があるんだ。君は召喚士だって噂だけど、そうなのかい? 精霊の少女を呼び出すそうじゃないか」

 

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