「お前の能力は一族の恥だから出て行け!」と筋肉を愛する実家から追放された俺が前世で助けたヤンデレ聖女につきまとわれている件。なお、俺はキラキラフリフリ衣装の近接格闘聖拳少女に変身して戦う。 作:羽黒楓
「いつかその能力、ボクも見てみたいなあ」
マインがそう言った。
その瞳には鋭さがあった。
少し背すじに寒いものが走った。
「い、いや勇者様にお見せするような能力じゃないんで」
「でも、カロミアはすごい能力だって言ってたよ? カロミアがそう言うんだからそうなんだろう」
うーん、カロミアのやつ、針小棒大にものごとを言いふらして回ってるからなあ。
「私、思うんだけど」
カロミアが周りをキョロキョロしてほかに誰もいないのを確認してから、声をひそめて言った。
「エゼル君のギフト、マインには言ってもいいんじゃないかと思うの。マインにとっても最高に興味深いギフトだと思うし」
「バカかよ、ダメだよ!」
思わず即座に否定した。
なにしろ、俺の能力は
カロミアにはバレてるから仕方がないが、これ以上俺の能力を他人に知られたくない!
「ハハハ、カロミア、エゼル君は軍への入隊を目指しているんだよね? 軍人を目指す人間なら自分のギフトを隠したいと思うのは当然だ。そんなこと言うもんじゃないよ。聖女にそんなこと言われたらエゼル君だって困っちゃうだろう」
お、マインって、けっこう話の分かるやつじゃないか!
そうそう、そうなんだよ。
まさか俺があんな手足のほっそい女の子になるなんて、他人に絶対知られたくない。
俺の上腕二頭筋はモリッとしているべきなんだ。
「うーん、いいと思うけどなあ。ところでマイン、今回はマーシャは連れてきているの?」
カロミアが話を変えて俺の知らない人物の名前を出した。
「連れてきてるよ。会うかい?」
カロミアは顔をパッと明るくして、
「会いたい会いたい!」
と言った。
マーシャ? だれだろうな? 名前の響きからして女性っぽいけど。
さっきいた二人の修道女のうちの一人か?
「エゼル君。実はボクは今日、女王陛下に手紙を書く用事があるんだ。だから、これで失礼させていただくよ。あ、でも少し待っていてね。マーシャも君に会いたいと思うし」
そう言って、マインはさっそうと部屋を出て行く。
応接室に残された俺とカロミア。
「ね、イケメンだったでしょ?」
「ああ、確かにな……。それに筋肉にも理解があるみたいだった。いい奴かもしれん」
「そうなんだよねー。筋肉好きなんだよ。それがちょっと心配」
「心配? なにが?」
「あ、ううん。なんでもない」
んー?
なんか、含みがあるなあ?
「そういや、マーシャっていうのは?」
「私の友だちだよ。親友かも。すっごく仲いいの! あ、でも惚れちゃ駄目だよ? マーシャのこともエゼル君に紹介したくて」
さっきいた修道女とは別の人だろうか?
勇者はお供二人だけと聞いていたけど……。
少し雑談しながら待つ。
マインが退室してから、10分くらい経っただろうか。
応接室のドアが開く。
そこには、勇者マインと同じく赤い髪の毛の、少女がいた。
「キャーッ! マーシャ! かっわいい!」
カロミアの言う通り、すごい美少女だった。
身長は俺より少し低いくらい、大きくてクリクリとした目、体型はカロミアよりも小柄だ。
ひざ下くらいのスカートを穿いているが、裾から見える
筋トレ民ではなさそうだ。
年齢は俺と同じくらいかな。
彼女は俺にペコリと頭を下げると、
「マーシャ・サラドゥルニアと言います。カロミアの友だちです」
「あ、ああ。エゼル・ブロリオス・ガルディオスだよ」
彼女はさっきまでマインが座っていた席に座ると、さっきまでマインが口をつけていた紅茶に手を伸ばし、それを飲もうとする。
ん?
え、こいつヤバいやつか?
マーシャはすぐに気づいたようで、
「あ、駄目か」
と言ってもとに戻した。
なんだこいつ、天然ちゃんか?
「マーシャ、髪型変えた?」
「うん。うざったかったから、思い切って短くしたの」
そうは言っても、肩くらいまである髪の長さだ。
以前はもっと伸ばしていたのだろう。
マーシャは俺ににっこりと笑いかけると、
「私、勇者様のお供なんです」
「あ、修道女の人たちだけじゃなかったんだな」
「はい。で、エゼルさん、勇者様と会われて、どんな印象でした?」
それを聞いて、カロミアがクスリと意味ありげに笑った。
なんだ?
「まあ、イケメンだよな。スラっとしているし。勇者っていうくらいだから、強いんだろ?」
「それはもう! 魔王でも魔将軍でもやっつけられるくらい強い! あといい男だし、優しいし、女心もわかるし」
カロミアが紅茶に手を伸ばしながら口を挟む。
「そりゃ女心はわかるでしょうよ。まあでもポンコツなとこもあるやつだけど」
ふーん、そうなのか?
「で、私、勇者様がこの街に滞在しているあいだ、学院に通うことにしたんです。カロミア先生の授業を聞きたくて!」
マーシャの言葉を聞いて、カロミアが紅茶を噴き出しそうになった。
「え、ほんとに?」
★
★
魔将軍。
彼は、リョーウの町の地図を前に、作戦を練っていた。
魔将軍と言えば、群れることを嫌う魔族たちを力で束ねる、恐るべき存在である。
3メートルを超える巨躯から放たれる一撃は巨人をも昏倒させ、ドラゴンですら彼の前では歯が立たない。
実際は、彼は竜族の魔族であり、その皮膚はうろこに覆われ、巨大なツノが頭から生えている。
人間どもの軍隊など、2000人がかりでも彼一人に壊滅させられるだろう。
人にも魔族にも恐れられる存在。
それが魔将軍であるのだ。
魔将軍は地図を指さして傍らのゴブリンキングに話しかけた。
「