「お前の能力は一族の恥だから出て行け!」と筋肉を愛する実家から追放された俺が前世で助けたヤンデレ聖女につきまとわれている件。なお、俺はキラキラフリフリ衣装の近接格闘聖拳少女に変身して戦う。   作:羽黒楓

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第24話 どっちも抱かれている

 カロミアとマインは、俺たちがさっきまでいた鉄棒のところまで来ると、二人で夜空を見上げた。

 月が二つ、煌々(こうこう)と輝いている。

 

「綺麗……あなたとこうして平和に月を眺められるなんて、わりと私、幸せだよ」

 

 そんなことを言うカロミア。

 

「そうだな。あのときは、月を見ることなんてできなかった」

「ね、覚えてる? あの五日間。ずっと二人でくっついていたよね」

「ああ。カロミアの暖かさが嬉しかったよ。すごく、熱い五日間だった……」

 

 おいおいおい。

 何を話してるんだ?

 それじゃまるで……。

 カロミアがマインの顔をじっと見つめて言った。

 

「ねえ、マイン。私、ずっとあなたにここにいてほしいの」

「そういうわけにもいかないさ。ボクには、女王陛下と国のためになすべきことがある」

「男の人っていつもそうだよね。こっちの気持ちなんか考えないでさ」

「ふふ。ボクは男だからね。考え方も男らしいんだ」

「まったく……男らしいとか、マインらしくないね」

 

 もう、話の内容なんて俺には入ってこなかった。

 とにかくもう、月光の下で二人が仲良く会話しているのを聞いて……。

 なんだろう、胸が重いっていうか、ズーンとくるっていうか。

 くそ、なんか、不愉快だぜ。

 

「で、カロミア。あのエゼル君だけど。彼の能力について詳しく聞きたいな」

「うーん。あなたになら話してもいいけどさ」

 

 なんだよ、俺はフェリスにカロミアについて聞かれたとき、話していいものかすごく迷ったのに。

 カロミアは俺の能力をあっさり話すつもりなのかよ。

 俺の恥ずかしい能力を。

 

 と、その時。

 マインが俺たちの方を見て首を傾げた。

 

「ん? あそこに誰かいるなあ」

 

 さすが勇者だ、俺たちの気配に気づいたらしい。

 

「言われてみれば誰かいるよね。魔物じゃなきゃいいんじゃない? 生徒の誰かだと思うけど……」

 

 そう言いながらカロミアが近づいてきて、俺とフェリスを発見する。

 

「あ! エゼル君!? ……と、フェリス? え、こんな夜中に二人で何をしていたの!?」

 

 驚きの声を上げるカロミアの顔はこわばっていた。

 

 フェリスは屈託のない笑顔で、

 

「えへへー。見つかっちゃった。エゼル君と夜のデートをしていたのよ。カロミア先生こそ、逢引きなんてして……。なんか、熱い日々について語ってたけど、昔から付き合ってたの? その人、カロミア先生の彼氏ってことよね?」

 

 カロミアは俺の顔を見てブンブンと首を振った。

 

「ち、違うの! 違うんだよ、私とマインはそういうんじゃなくて!」

 

 フェリスはニヤリと笑いながら、

 

「でも二人、すごく距離が近いわよね? わかるわよ、絶対二人はデキてる」

 

 え、そうなのか?

 勇者マインと聖女カロミア。

 確かに、二人は身分としてもお似合いだし釣り合っているけど……。

「そ、そうか、邪魔したな、じゃあ俺は行くわ」

 

 俺はそう言ったけど、なんだか舌がもつれる感じがして、うまく喋れなかった。

 

「待ってエゼル君、これはそういうんじゃなくて! マインは違うの! マインは……」

「カロミア!」

 

 マインが鋭い声を飛ばした。

 

「ボクのことは誰にも喋っちゃいけない。わかるだろ?」

「でも……」

 

 俺はもう、なんだかわからない感情に襲われて、

 

「ただ筋トレをしてただけなんだ……もう終わったから、部屋に帰るよ」

 

 そう言って、くるりとカロミアたちに背を向けると、寮に向かって歩き始めた。

 くそ。

 いったい、なんなんだよ!?

 

「え、待ってよエゼル君! これは誤解なの!」

 

 カロミアの声が後ろから聞こえてくる。

 そんな俺にフェリスが追い付いてきて、

 

「ね、エゼル君。カロミア先生って、実は彼氏がいたんだねー。なんかエゼル君をひいきしてたけどさ、隠れ蓑にさせられてただけかも」

「うるさいなあ。どうでもいいよ」

「私、すっごい気になるわ! それに……そっちの方が、私は都合がいいもん。だって、私、エゼル君のこと……ほんとはちょっといいなって、思ってたのよ」

 

 あーもう、みんなしてわけわからんこと言いやがって!

 こいつ本気か?

 フェリスの髪の毛は感情に合わせてパタパタ動くから、それを見極めようと思ったけど、なぜか今日に限ってフェリスのポニーテールは静かにしている。

 

「ね、エゼル君。あれだよね、聞いたんだけど、マーシャってあのマインって人のお供なんでしょ? ってことは、マーシャってマインにお手付きされてるのかなあ? あんな優男の顔して、けっこうヤルことヤってるわね。カロミアもマーシャもどっちもマインに抱かれているってことよね」

「うるさいな、知らないよ!」

「で、明日、マーシャに聞いてみようよ! マーシャなら、いろいろ知っているかもだし」

「勝手にしろ」

 

 俺はズンズンと男子寮まで歩いていく。

 フェリスは男子寮に入れないので、その入り口で止まって、俺の背中に念押しした。

 

「明日学校で一緒にマーシャに聞こうよ! いろいろわかるかもだから!」

 

 結果を先に言っておこう。

 本当に、『いろいろ』わかることになったのだった。

 

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