夢想は甘き鎧となる~ダンジョン世界でおカシな仮面ライダー!?~ 作:妄想めっちゃ代理人
探索者証を受け取った悠斗たちは、再び受付カウンターへ戻った。受付職員は笑顔で一つの小箱を取り出す。
「こちらをお受け取りください」
箱の中には、金属製の薄いカードケースのような装置が収められていた。
「これは……!」
「探索者用装備収納装置、『ギアケース』です」
職員は装置を手に取りながら説明する。
「探索者証と連携し、登録した武器や装備を収納・携行できる装備です。一般的な探索者は起動に魔力波形認証を利用して使用します」
悠斗は以前の実験を思い出した。
「でも、俺は……」
「はい」
職員は頷いた。
「相沢様は魔力が観測されない特例探索者です。そのため通常の魔力認証式ではなく、本部特別開発部が製作した専用モデルをご用意しました。探索者証と同様に、魔力を使用しない認証方式を採用しております」
そう言ってギアケースを悠斗へ差し出す。
「ありがとうございます」
悠斗は両手で受け取った。職員は一度表情を引き締める。
「そして、もう一点、武器の収納についてです」
悠斗も自然と姿勢を正した。
「調査の結果、相沢様はご自身の能力で武器を収納・展開できることが確認されています。その能力の使用自体を禁止するものではありません……ただし」
職員ははっきりと言葉を区切る。
「探索者協会本部の決定により、相沢様が単独で行動することは禁止されています。必ず登録済みパーティーと行動してください」
悠斗は真剣な表情で頷く。
「はい」
「また、能力による武器の取り出しについても条件があります。ダンジョン内、または生命に危険が及ぶ緊急時を除き、人前で武器を展開することは絶対に行わないでください。能力の詳細が未解明である以上、不要な混乱や事故を防ぐための措置です」
「分かりました。本当に緊急の時以外は、能力で武器を出しません」
職員はその返答を聞いて柔らかく微笑む。
「ご協力ありがとうございます。なお、通常の探索準備時はギアケースをご使用ください。一般の探索者と同じ運用になります」
「はい」
悠斗はギアケースをベルトへ取り付ける。
奏も安心したように頷いた。
「これで立派な探索者だね」
陽奈は笑顔で親指を立てた。
「これで準備万端! 次はいよいよ、本当のダンジョンデビューだね!」
悠斗は胸ポケットに探索者証をしまい、小さく頷いた。
探索者としての資格、装備を管理するギアケース、そして、仲間と共に行動するという約束。異世界で新たな一歩を踏み出すための準備は、着実に整いつつあった。
「それじゃあ、装備を身に着けようか」
奏に案内され、悠斗たちは協会ロビーに併設された《ロッカー》区画へ向かった。ロッカールームには壁一面には、シャッター式の扉が整然と並んでいる。
一つひとつは普通のドアほどの幅しかなく、一見すると駅やジムにある大きめのロッカーと大差ない。
「これが《ロッカー》……」
悠斗は思わず呟いた。
「探索者はみんなここで着替えるんだよ」
奏が説明する。
「なるほど……」
探索者だけが利用する、更衣室。それはこの世界の日常と非日常を切り替える境界だった。
「じゃあ、私たちはこっち」
奏が女性用区画を指差す。
「終わったら入口で合流しよう」
「はい」
三人を見送り、悠斗は男性用《ロッカー》へ向かった。
探索者証を認証部へ近づける。
ピッ。
『認証を確認しました』
電子音と共にシャッターが静かに上昇する。
「……すごいな」
思わず声が漏れた。中は外観からは想像できないほど広い。ロッカーのドア同士の間はそんなに幅は無かったように見えたが、空間拡張技術によって一人用の更衣室として十分な広さが確保されている。
正面には全身を映す大きな鏡、そして中央にはベンチ。奥には、ギアケースの接続台が設置されていた。
「奏さん達はここに置いていたよな」
悠斗はギアケースを取り出し、ゆっくりと接続台へ置き、探索者証をかざすと電子音が小さくなると同時に接続台が淡く発光した。
ギアケースが静かに展開を始める。小さなケースは機械仕掛けのように変形し、防具や道具を整然と並べた専用装備ラックへ姿を変えた。
「おぉ……」
思わず感嘆の声が漏れる。ラックには先日購入した探索服や防具、探索用リュックが見やすく収納されていた。
悠斗は私服を脱ぎ、探索服へ着替えていく。胸部や肩、肘、膝など要所を守る軽量プロテクターに初心者用のヘッドギア。鏡の前で装着具合を確認すると、身体の動きを妨げるほどではない。
「思ったより動きやすいな」
続いて探索用リュックを手に取る。
応急処置用品、ライト、ロープ等の道具類に非常食。購入した探索用品を一つずつ整理して収納していく。
腰に装着する小型ポーチも付属していたが、悠斗は少し考えてからリュックへ戻した。
「変身したら、多分これもスーツの中に収まっちゃうよな」
必要な物はリュックへまとめた方が使いやすいだろう。 最後に鏡の前へ立つ。
探索服に身を包み、リュックを背負った自分の姿。数日前までごく普通の会社員として日本で暮らしていた自分が、今では探索者としてダンジョンへ挑もうとしている。そんな現実離れした変化に、悠斗は思わず苦笑する。
「……よし」
小さく頷きロッカーを後にした。
《ロッカー》を出ると、ちょうど向かいの女性用区画から三人も姿を現した。
「お、悠斗くん!」
最初に気付いた陽奈が手を振る。
「待たせちゃった?」
「いえ、今出たところです」
悠斗は答えながら、改めて三人の装備へ目を向けた。
私服姿とはまるで違う。これが探索者としてのアルカディアの姿。
奏は初めて出会った時と同じ、純白の重厚な鎧に身を包んでいた。胸甲から肩当て、籠手、脚甲に至るまで白銀に輝く装甲が全身を守っている。一見すると重量級のフルプレートアーマーだが、肘や膝、腰といった関節部は柔軟な素材で構成されており、見た目ほど動きは阻害されないよう工夫されている。背には新調したばかりの大盾、腰にはメイス。堂々と立つその姿は、まさに仲間を守る騎士そのものだった。
その隣では陽奈が軽く身体をひねる。
「どう?」
黒を基調としたスーツは身体のラインに沿うように密着し、まるでSF映画に登場する強化スーツのような印象を受ける。胸部や肩、前腕、膝、脛には黒いハード素材の装甲が取り付けられ、軽快さと防御力を両立させた設計だ。腰には巨大な大剣が収められ、今にも飛び出していきそうな躍動感がある。
「すごく似合ってます」
「えへへ」
陽奈は照れくさそうに笑った。
「動きやすそうでしょ? 私、スピード勝負だから!」
最後に視線を向けたのは詩織だった。白と紺を基調としたローブは、一目で魔法使いだと分かる装い。しかし古典的な魔術師とは少し違う。ローブの縁や胸元、袖口には淡く輝く結晶が埋め込まれ、両手の手甲にも同じ素材が組み込まれている。魔導杖にも複数の結晶が規則正しく配置され、洗練された魔導具という印象を与えていた。幻想的でありながら、どこか工業製品のような機能美も感じさせる装備だった。
「魔力伝導用の魔導結晶です」
悠斗の視線に気付いた詩織が説明する。
「魔法の制御精度を高めるため、私の装備には多く組み込まれています」
「なるほど……」
悠斗は感心したように頷く。ファンタジーの魔法使いというより、この世界ならではの"魔導技術"によって洗練された探索者。そんな印象を受けた。
奏は悠斗を見て柔らかく微笑む。
「悠斗くんも似合ってるよ」
「うんうん!」
陽奈も大きく頷く。
「ちゃんと新人探索者って感じ!」
悠斗は少し照れながら頬をかいた。
「ありがとうございます」
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
装備を整えた四人は、そのままダンジョンロビーを抜けて入口へ向かう。道中には探索者向けの案内板や依頼掲示板が並び、武装した探索者たちが思い思いのパーティーで行き交っていた。
悠斗は周囲を見回しながら尋ねる。
「そういえば、ダンジョンって全部同じ造りなんですか?」
「ううん」
奏は首を横に振る。
「ダンジョンごとに全然違うよ。階層が深いダンジョンもあれば、浅い代わりにすごく広いダンジョンもあるし、洞窟みたいな場所もあれば、遺跡や森林みたいな景色のところもある。変わり種だと会社のオフィスや無限に続くプールの様なところもあるよ」
陽奈も指を折りながら続ける。
「魔物の種類も違うしね! 同じ第一層でも、出てくる魔物はダンジョンごとに結構違うよ」
「へぇ……」
ゲームのダンジョンのように一律ではないらしい。
詩織が補足する。
「そのため、探索者協会ではダンジョンごとに立ち入り可能な階層を定めています。探索者等級によって進入許可区域が異なるんです」
「それって、どうやって決めるんですか?」
「複数の要素を総合して判断されます」
詩織は淡々と説明を続けた。
「各階層で観測される魔力波形の質に魔物の分布や平均戦闘能力。そして、実際に先行調査した上位探索者たちの記録。それらを基に、安全に活動できる等級が決められています」
奏も頷く。
「もちろん絶対じゃないけどね……異常発生で強い魔物が出ることもあるし。でも基本的には基準を守っていれば無茶な探索にはなりにくいよ」
悠斗は感心したように頷いた。
「ちゃんとデータで管理されてるんですね」
「そう」
奏は前方を指差す。
「ちなみに、今日潜るダンジョンは階層自体はそんなに深くないんだけど……すごく広い。悠斗さんと始めて会ったダンジョンだよ」
陽奈が苦笑する。
「一本道じゃないからね。分かれ道も多いし、初めて来た人はすぐ迷子になるよ」
「だから」
詩織はスマートコンタクトを軽く指で示した。
「地図機能は必須です。探索中は現在位置を確認しながら進むのが基本になります」
「なるほど……」
奏が歩きながら続ける。
「私たちアルカディアは現在D級探索者だから、このダンジョンなら第三層まで進入許可が出てる。今日は悠斗くんも一緒だけど、無理はしないよ。まずは第一層で実際の探索に慣れてもらう予定」
「了解です」
悠斗が返事をすると、前方の景色が大きく開けた。そこには巨大な半球状の建造物と、それに吸い込まれるように伸びる長い列。探索者たちが次々と探索者証を提示し、未知なる地下世界へ足を踏み入れていく。
異世界へ来てから何度も耳にし戻ってきた場所、ダンジョン。その入口が、悠斗たちの目の前に姿を現した。
四人はダンジョン入口の受付へ到着すると、探索者証を端末へかざす。すると電子音と共に入場が記録された。
『D級パーティ、登録名『アルカディア』の入場を確認しました。お気を付けてお進みください』
受付を抜けた先には、大きく口を開けたダンジョンへの通路が続いている。悠斗はその景色を見た瞬間、小さく目を見開いた。
「ここ……」
見覚えがあった。数日前、異世界へ来たばかりの自分が何も分からないまま彷徨い歩いていた場所。アーマーベアとの激闘を交わし、死の覚悟をした場所。
そして──アルカディアの三人と出会った場所でもある。
あれからまだ数日しか経っていない。それなのに、ずっと昔の出来事のようにも感じられた。
「懐かしい?」
隣を歩く奏が優しく尋ねる。悠斗は少し笑って頷いた。
「はい……数日前のことなのに、不思議ですね。あの日は本当に必死でした。何も分からないまま戦って……気が付けば皆さんと一緒にアーマーベアを倒していました」
陽奈は照れ笑いを浮かべる。
「いやぁ、あの時は本当に驚いたよ。いきなりチョコの鎧に変身するんだもん! 私たちも何が起きたのか分からなかったよねぇ」
詩織も静かに頷く。
「誰も見たことのない特異な変身能力。あの時点では誰も予想できない現象でした」
悠斗は三人へ視線を向ける。
「でも……あの時、皆さんと出会えたから、今ここにいます。一人だったら、何も分からないまま途方に暮れていたと思います」
奏は穏やかに微笑んだ。
「でも、今は違う。今日は偶然居合わせた人じゃないよ。私たちの仲間として、一緒にダンジョンへ潜るんだから」
その言葉に、悠斗も自然と笑みを浮かべた。
「……そうですね」
胸ポケットの探索者証へ軽く触れる。数日前は、身元も居場所もない異邦人だった。今は探索者として認められ、仲間と共にこの場所へ戻ってきた。
同じ景色、同じダンジョン。けれど、自分の立場だけは確かに変わっていた。
「行こう、悠斗くん」
「はい」
四人は並んで歩き出す。数日前、偶然の出会いが運命を変えたダンジョンへ。今度は仲間として、新たな探索を始めるために。
ゼッツやスパイダーマンの映画を見てきました。どちらも神映画でした! ヒーローってかっこいいですねやっぱ