夢想は苦くも甘き鎧 ~ダンジョン世界でおカシな仮面ライダー!?~   作:妄想めっちゃ代理人

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あっけなく終わる一口サイズバトルと甘くない邂逅

 ゴブリンが地を蹴る。

 

「ギィィッ!」

 

 岩肌を抉る勢いで一直線に突っ込んでくる。

 

「う、うわあああっ!」

 

 悠斗は反射的にヴァレンバスターを胸の前へ構えた。

 

 変身、そうだ、変身するんだ。

 

 テレビで何度も見た手順を思い出そうとする。

 

「えっと、これどうやるんだっけ!? 待っ──」

 

 焦った指がグリップを強く握り込むとそのまま、

 

 ──カチッ。

 

「あ」

 

 引き金を引いてしまった。

 

 次の瞬間。

 

 ズキュゥン!! 

 

 派手な発射音とともに、ヴァレンバスターの銃口から褐色の光弾が撃ち出された。

 

 光弾はを光の軌道を尾のように引きながら一直線に飛ぶ。同時に、ふわりと空気へ広がる。

 

「……え?」

 

 甘い濃厚なチョコレートの香り。まるで製菓店の前を通りかかったような、香ばしくも優しい匂いが洞窟いっぱいに漂った。

 

 光弾はゴブリンの足元の岩へ着弾する。

 

 ドンッ!! 

 

 衝撃と岩片が飛び散り、茶色い光が弾けた。

 

「ギャッ!?」

 

 ゴブリンが飛び上がった。目を限界まで見開き、耳をぴんと立てる。何が起きたのか理解できていない。理解できないのは悠斗も同じだった。

 

「えぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」

 

 悠斗も思わず後ろへ飛び退く。

 

「撃った!? 撃った!? 俺撃った!?」

 

 ヴァレンバスターを凝視する。

 

「ちょ、ちょっと待て待て待て! 本当に撃てるのかこれぇ!?」

 

「チョ、チョワァ!?」

 

 チョコドンゴチゾウまで驚いて小さく飛び跳ねる。丸い瞳をぱちぱちと瞬かせ、悠斗とヴァレンバスターを交互に見ている。どうやらゴチゾウも予想外だったらしい。いやお前が予想外なのはなんでだ。

 

 洞窟に、妙な静寂が落ちる。

 

 悠斗

 ゴブリン

 ゴチゾウ

 三者とも固まったまま、お互いを見つめていた。

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………チョコ」

 

 最初に動いたのはゴブリンだった。

 

「ギ……」

 

 一歩下がる。悠斗もつられて一歩下がる。

 

「ギギ……」

 

「いや、動くな動くな動くな……」

 

 さらに一歩。悠斗もさらに一歩。互いに警戒し合い、じりじりと距離だけが開いていく。

 

 ゴブリンの頭の中も混乱していた。

 

(なんだ今の)(光った)(弾けた)(変な匂い)(怖い)

 

 悠斗の頭の中も負けていなかった。

 

(なんだ今の)(撃てた)(地面にあたった)(チョコ臭い)(マジでチョコ)(怖い)

 

 奇妙な沈黙……そして。

 

「ギィィィィィィッ!!」

 

 ゴブリンが突然、踵を返して全力疾走した。

 

「逃げたぁぁぁっ!?」

 

 悠斗も条件反射で叫ぶ。ゴブリンは一切振り返らない。武器を抱えたまま、洞窟の奥へ一目散に駆けていく。

 

「な、なんだったんだあいつ!」

 

 悠斗も同時に踵を返した。

 

「いや無理無理無理無理!!」

 

 反対方向へ全力疾走。

 

「チョワァアァァ!」

 

 チョコドンゴチゾウも飼い主と似たように悲鳴をあげる。

 

 洞窟には、二つの足音が響いていた。一つは人間。一つはゴブリン。どちらも必死で、どちらも相手を恐れていた。

 

 数十秒後。

 

 悠斗は息を切らせながら岩陰へ飛び込む。

 

「はぁっ……はぁっ……」

 

 胸が苦しい。心臓が飛び出しそうだ。ヴァレンバスターを抱えたまま壁にもたれ掛かる。

 

「チョ……チョワ……」

 

 チョコドンゴチゾウも小さな身体で震わせ、胸ポケットに沈み込んだ。悠斗はその姿を見ると、極限状態だったにもかかわらず、思わず吹き出してしまう。

 

「……お前も、息切れするんだな」

 

「チョワ……」

 

 ゴチゾウは「疲れたぁ」と言わんばかりに小さく頷く。悠斗は笑いながらヴァレンバスターを見下ろした。

 

「……これ、本当に本物なんだな」

 

 手の中の武器は静かに佇んでいる。その銃身からは、まだほんのりと甘いチョコレートの香りが漂っていた。

 

 ──────────────────────────────

 

 悠斗は、まるで爆発物でも扱うかのようにヴァレンバスターを両手で持っていた。トリガーには絶対に指を掛けない。グリップも必要最低限しか握らない。銃口はなるべく自分にもゴチゾウにも向けない。

 

「……危ない、危ない……」

 

 ついさっき何の気なしに引き金を引いただけで、チョコレートの香りを撒き散らしながら光弾が飛び出した。

 

()()は玩具ではない、本物の武器だ。会社帰りの社会人が持っていい代物じゃない。

 

「チョコ」

 

 胸元のチョコドンゴチゾウが、不思議そうに悠斗を見上げる。

 

「いや、お前は慣れてるのかもしれないけどさ……」

 

 悠斗は苦笑する。

 

「俺、昨日まで普通の会社員だったんだぞ」

 

「チョワ?」

 

「普通の会社員は銃なんて持たないんだ」

 

「ワニョ」

 

「納得したみたいに頷くな」

 

 ゴチゾウは「なるほど」と言わんばかりに何度か小さく頷くと、悠斗の胸元で大人しくなった。その姿に少しだけ肩の力が抜ける。

 

 洞窟は相変わらず広い。天井は高く、青白い鉱石が星空のように散らばっている。迷路のように枝分かれした通路が何本も続き、自分がどこから来たのかすら分からなくなっていた。

 

「出口……あるのかな」

 

 その時だった。洞窟の奥から、金属同士がぶつかる激しい音が響く。

 

 ガァンッ!! 

 

 続いて、地面を揺らすような轟音。

 

「……また魔物?」

 

 金属がぶつかり合う重い音。続いて爆炎が洞窟を赤く照らした。

 

 悠斗は足音を殺しながら岩陰へ身を寄せ、慎重に先を覗き込む。そこはこれまで歩いてきた通路とは比べ物にならないほど広い空洞だった。天井は高く、大小様々な鍾乳石が垂れ下がり、薄暗い空間を魔石灯の淡い光が照らしている。

 

 その中央で、一体の巨大な化物が咆哮を上げていた。

 

 身長は三メートル近く。全身を黒褐色の毛皮に覆われた熊のような体躯。しかし前脚は人の腕のように発達し、鋭い鉤爪が岩を容易く抉っている。

 

 魔熊──アーマーベア。

 

 悠斗は知らないが、今いる第三層でも危険個体として知られる魔物だ。

 

 その前に立つのは三人の女性。

 

 大盾を構える長身の黒いポニーテールが目立つ女性──奏の肩が呼吸で大きく上下している。盾にはいくつもの傷が刻まれ、白い鎧にも土埃と血が付着していた。

 

「はぁ……はぁ……」

 

 額から汗が滴る。その後ろでは栗色のショートボブ少女──陽奈が大剣を肩へ担ぎながら苦笑する。

 

「さっきのホブゴブリン……多すぎだったってぇ……」

 

 普段なら明るい声も、今は疲労を隠せない。

 

 青みがかった黒髪のロングストレートの女性──詩織もローブの袖で額の汗を拭いながら魔導書を握り直す。

 

「魔力残量、二割弱。もうあまり余裕は無いわ……」

 

 その声は落ち着いているが、余裕はない。

 

 つい数分前。

 

 三人は第三層で発生したホブゴブリンの異常な群れを撃退したばかりだった。探索者協会へ情報を共有し、ライブ配信でも第三層の異常事態を呼び掛けながら撤退を始めた矢先。まるで逃がさないと言わんばかりに、このアーマーベアが現れたのだ。

 

「グォォォォォッ!!」

 

 咆哮と同時に巨体とは思えない速度で踏み込む。

 

 ズドン!! 

 

 巨大な腕が振り下ろされる。奏は大盾を構え、真正面から受け止めた。

 

「ぐっ……!」

 

 凄まじい衝撃。地面へ靴底がめり込み、身体が押し込まれる。

 

「奏!」

 

 陽奈が横から飛び込む。

 

「はああぁっ!」

 

 大剣がアーマーベアの脇腹を斬り裂く。

 

 だが。

 

 ギィンッ!! 

 

 まるで金属でも斬ったかのような音。分厚い毛皮と筋肉に阻まれ、刃は浅くしか通らない。

 

「硬っ!?」

 

 その隙を狙うように熊の腕が薙ぎ払われた。陽奈は咄嗟に飛び退くが、衝撃だけで身体が吹き飛ばされる。

 

「きゃぁっ!」

 

 岩壁へ背中を打ち付け、苦しそうに息を吐く。

 

「陽奈!」

 

「大丈夫……まだ動ける!」

 

 詩織は冷静に魔法陣を展開する。

 

「《連火弾》!」

 

 火球が連続して炸裂し爆炎が魔物を包む。しかし煙の中から現れたアーマーベアには、焦げ跡が付いただけだった。

 

「……思った以上に硬い」

 

 詩織が小さく呟く。奏は盾を構え直しながら短く息を吐いた。

 

「さっきの消耗がなければ……」

 

 本来なら勝てる相手、だが今は違う。体力も魔力も削られている。このままでは押し切られる。その様子を、少し離れた岩陰から悠斗が見つめていた。

 

(あの人たち……)

 

 さっきから見ていて分かる。三人とも強い。自分とは比べ物にならないほど戦い慣れている。それでも、あの魔物一体に少しずつ追い詰められているのが悠斗から見ても分かった。

 

 ──────────────────────────────

 アーマーベア、通常なら万全の【アルカディア】であれば十分対処できる相手。しかし先ほどまで第三層で発生したホブゴブリンの異常発生を食い止めた結果、三人の体力も魔力も大きく消耗していた。

 奏は大盾を構え直し、スマートコンタクトの視界に表示された情報へ一瞬だけ目を走らせる。

 魔力残量:38%

 陽奈:41%

 詩織:23%

(……長引かせられない)

 

「陽奈、正面から無理に押さない!」

 

「わかってるっ!」

 

 陽奈が大剣を低く構え、アーマーベアの側面へ回り込む。それに合わせるように詩織の魔導書が淡く輝いた。

 

「《炎槍》!」

 

 細く収束した炎が一直線に走る。

 

 ドンッ!! 

 

 アーマーベアの肩へ突き刺さり、爆ぜる。

 

「グォォッ!!」

 

 僅かによろめく。

 

「今!」

 

 陽奈が踏み込む。

 

「はあぁぁぁっ!!」

 

 全身を使った横薙ぎ。大剣が毛皮を裂き、鮮血が飛び散る。

 

 だが。

 

「硬っ……!」

 

 骨までは届かない。

 

 アーマーベアは怯むどころか、そのまま巨腕を振り抜いた。

 

「陽奈!」

 

 ズドォン!! 

 

 岩盤が砕ける。陽奈は間一髪で転がって回避したものの、飛び散った岩片が頬を掠める。

 

「いったぁ……」

 

 その瞬間。

 

「グルォォッ!!」

 

 標的を奏へ変更したアーマーベアが一直線に突進した。

 

「来るっ!」

 

 大盾を地面へ突き立てる。

 

《聖域》

 

 足元から淡い光が広がり、奏を中心に結界が展開される。

 

「ぐぅっ!!」

 

 ドゴォォォン!! 

 

 巨体同士がぶつかったような衝撃。盾が軋み、奏の身体ごと数メートル押し込まれる。靴底が岩盤を削り、火花が散った。

 

「奏!」

 

「まだ……止められる……!」

 

 歯を食いしばる。

 

 しかし視界には魔力の残量が少なくなっている警告表示が浮かぶ。

 

(このままじゃ押し切られる……!)

 

 一方、その頃。魔導ドローンとスマートコンタクトを用いて全国へ配信されているアルカディアのライブ配信。彼女達の視界の片隅にはコメントが次々と流れていた。

 

『アーマーベアやべぇだろ!!』

『みんな魔力残量やばくねぇ?』

『盾もうボロボロやんけ!』

『陽奈ちゃん無理しないで~~~!』

『お願い逃げてもう逃げて』

『協会の応援は!?』

『アルカディア死ぬの? 無理すぎるんだけど』

 

 詩織はコメント欄を一瞬だけ確認する。

 

「応援要請はもう受理されてる。でも……第三層到着まで最短でも十五分」

 

 その言葉に陽奈が苦笑する。

 

「十五分って、それ戦闘終わってる時間じゃん……」

 

 コメント欄もざわめき始める。

 

『間に合わない』

『アルカディア耐えてぇ!』

『頑張れ!』

『第六ダンジョン近い人いないの!?』

『近くに探索者いたら助けてくれ!』

『マジで誰かいないのか!』

『はよ帰還結晶使って逃げればいいじゃん』

『戦ってる最中に使えるわけ無いだろエアプ黙ってろマジで』

 

 奏では視界の片隅で流れるコメントを一瞬で読み思案する。

 

 緊急脱出用の《帰還結晶》砕けばダンジョン外の転移陣へ強制転送される、探索者協会支給の救命装備だ。しかし、帰還結晶の発動に数秒間の静止が必要となる。転移術式の起動中は周囲の魔力を安定させなければならず、その間に強い衝撃を受ければ術式は乱れ中断される。

 

 目の前には、休む間もなく襲い掛かるアーマーベア。

 

 奏一人が抑え込めば発動できるかもしれない。帰還結晶を使うなら、自分が時間を稼ぎ、その隙に二人を脱出させるしかない。

 

「……陽奈、詩織」

 

「え?」

 

「隙ができたら帰還結晶を」

 

「何言ってるの!?」

 

「これはリーダー命令」

 

「嫌だ! 三人で帰るって決めたじゃん!」

 

「……」

 

「奏だけ置いて帰るくらいなら、最後まで一緒に戦う!」

 

 詩織も静かに頷く。

 

「私も同意見です」

 

「詩織まで……」

 

「アルカディアは三人です」

 

 魔導書を握る手に力が入る。

 

「誰か一人だけ生き残るためのパーティではありません、生きるなら三人で、帰るなら三人で、それが私たちです」

 

 奏は小さく息を吐いた。

 

「……二人とも、本当に頑固」

 

「奏ほどじゃないよ」

 

「そうです」

 

 思わず笑みが零れる。

 

 こんな状況なのに。

 

 二人のおかげで肩の力が少しだけ抜けた。

 

「……分かった」

 

 盾を構え直す。

 

「三人で帰ろう」

 

「うん!」

 

「はい」

 

 その瞬間だった。

 

「グォォォォォォッ!!」

 

 アーマーベアが大きく咆哮する。

 

 ドォン!! 

 

 地面を砕きながら一気に距離を詰める。

 

「速っ!」

 

 陽奈が息を呑む。これまでとは踏み込みが違う。消耗している三人を見抜いたかのような、全力の突進。

 

「奏!」

 

 詩織が咄嗟に魔導書を掲げる。

 

「《土壁》」

 

 ゴゴゴゴゴッ──!! 

 

 奏の正面、アーマーベアとの間に分厚い岩壁が隆起する。数十センチはあろう岩盤が何層にも重なり、巨体の突進を受け止める。

 

 ドゴォォォン!! 

 

 激突。岩壁全体が大きく震え、洞窟中へ轟音が響く。

 

「止まっ──」

 

 次の瞬間。

 

 バギィィィン!! 

 

 アーマーベアの巨腕が岩壁を正面から叩き砕く。無数の岩片が飛び散り、粉塵が舞い上がる。

 

「……止められない!」

 

 詩織が僅かに目を見開く。《土壁》は第三層の魔物程度なら十分に足止めできる防御術式だ。しかし、消耗した状態で展開した岩壁では、アーマーベアの怪力を受け止め切れなかった。無数の岩片が爆風と共に四方へ飛び散る。

 

「っ……!」

 

 詩織の身体が衝撃でよろめく。咄嗟に撃った際の魔術制御が甘く、疲労と魔力の減りによる虚脱感で足元がふらついた。

 

 詩織の視界には赤い警告が浮かぶ。

 

 魔力残量:17%

 

「詩織!」

「詩織ちゃん!」

 

 奏と陽奈が叫ぶ。だが、その声よりも早くアーマーベアは砕けた岩壁を突き破り、奏の一瞬の隙を突き一直線に詩織へ迫っていた。

 

「しまっ──」

 

 魔法を撃ち終えた直後、新たな術式を構築する時間はない。陽奈も距離が離れすぎている。奏も体勢を立て直せない。

 

 間に合わない。

 

 アーマーベアの巨大な鉤爪が振り上げられる。一撃、それだけで人間なら致命傷。配信画面越しにも、その結末は誰の目にも明らかだった。コメント欄が凄まじい勢いで流れる。

 

『詩織さん!!』

『ダメだ!!』

『間に合わない!!』

『奏動け!!』

『陽奈ぁぁぁ!!』

『嘘だろ……』

『終わる……』

『やめろ!!』

『ごめん俺もう無理見れん』

『誰か助けて!!』

『救援まだなのか!!』

『嫌だ……』

『アルカディア……』

 

 その瞬間。

 

 ──パンッ!! 

 

 乾いた銃声が洞窟へ響いた。誰も予想していなかった方向からアーマーベアの横顔へ、褐色の光弾が一直線に飛来する。

 

 ドッ!! 

 

 光弾が頬へ命中し、巨体が僅かによろめいた。

 

「グルッ!?」

 

 その一瞬。ほんの一瞬だけ鉤爪が止まる。

 

「今です!」

 

 聞き慣れない男の声に反応し、詩織は反射的に後方へ飛び退く。振り下ろされた鉤爪は空を切り、轟音と共に地面を砕いた。

 

 ドゴォォォン!! 

 

 土煙が舞い上がる。

 

「誰!?」

 

 陽奈が声のした方向を見る。奏も盾を構えたまま視線を向ける。

 

 岩陰から一人の青年が姿を現した。二十歳前後。この場に似つかわしくない服装。右手には、この世界では見たこともない奇妙な形の銃。

 

 セルリアンブルーと黒を基調とした無骨な外観。銃身?にはチョコを思わせる装飾が施され、先端上部には掴みやすいレバーがついている。悠斗は両手でその銃──ヴァレンバスターを構え直した。

 

「はぁ……はぁ……」

 

 心臓がうるさいほど脈打つ。手も震えている。

 

 怖い。

 

 目の前にいるのは本物の魔物だ。さっき撃った一発だって、当たる保証なんてどこにもなかった。

 

 それでも。

 

 目の前で誰かが殺されるのを見過ごすことだけは、できなかった。アーマーベアがゆっくりと悠斗へ顔を向ける。赤黒い瞳が、新たな獲物を捉えた。

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