ケロロ軍曹 転生して早々記憶喪失!? であります! 作:リボーン2期待ってます
放課後、学生達なら部活に勤しむ時間。そんな時間に屋上で談笑する生徒が二人。
「じゃ、明日の収録はこのネタ使おうか」
「だね。使い古されちゃいるけど、需要はあるよ」
二年生の夜早四季と三年生の北城サブロー。この学校でも有名人と言える二人であり、学年を越えて対等な友情を結んでいる二人だ。
実はこの二人、周囲に秘密で正体不明の覆面DJコンビ、623とシーズとしてラジオ番組を担当しているのである。これはその打ち合わせだ。
「ところで先輩、そのスケボーどしたの?」
「ああ、コレ?帰りに遊んで行こうと思ってね。四季君も来る?」
「いや、僕部活行くから。遅れるとキャプテンにどやされちゃう」
「そっか。頑張ってねー」
打ち合わせが終わり、そろそろ部活に行かねばと考えた四季は屋上を後にしようとする。その時、奴は現れた。
「四季君!」
「ぐえっ」
突然サブローに制服の襟を後ろから掴まれて潰れたカエルのような声を出す四季。しかしサブローの目線は四季が進もうとした方向に向いており、それからすぐに上……空の方を見上げた。
「いきなり何すんの先輩!?」
「流石に四季君に何かしようとするのは見過ごせないなぁ。俺には見えてるよ?」
「何言ってんだこの人」
呆れ全開のジト目でサブローを見る四季。何故何もいないはずの虚空に向けてそんな事を言い出したのか。いつもの電波キャラ炸裂かと思ったが、今回ばかりは違った。
「ほぉ〜?アンチバリアで見えなくなってるはずの俺様が見えるたぁなぁ。変な
「!?」
突如サブローの視線の先の虚空に姿を現したのは
サブローにはこのナマモノが視えていたのか。よくよく見れば先程服の襟を掴んで四季が進むのを止めた先にはネットが広げられている。あのナマモノはこれで四季を捕まえようとしたという事なのか。
「しっかし気付いてたんなら、そいつを囮にして気付かねえフリして逃げる手もあったのに馬鹿な野郎だ」
「俺の親友を変なのが誘拐しようとしてんのを放置する訳ないじゃん」
(親友て。相変わらず重っ……いや助かったけどさ)
麻美との一件以来、四季に向ける感情が重いサブローに辟易しながらも四季はサブローと対峙するナマモノに意識を向ける。
(あの黄色いのは……そっか。とうとう来たのか……)
転生して14年。元々大して知らない上に14年もの時間でほぼほぼ薄れている知識に登場する宇宙人達の一人。クルル……階級は忘れたが軍人だったはず。多分。ぶっちゃけ博士とかそんな立場だったような気もするあの宇宙人とサブローの出会いはこんな感じだったのかと感慨深いようなそうでもないような気分になった。
「アンチバリアを見破るのは中々面白え。最初の
サブローを標的に定めたクルルは一本のペンを取り出すと持っていたスケッチブックにサラサラと何か描き込んでいく。そして描き終わるとそのページを切り離し、サブローの眼前に投げ捨てる。
紙が光り、巨大な掃除機が現れた。その掃除機の電源が入り、凄まじい勢いで吸引を始める。その目的は当然、サブローの捕縛だ。
その吸引に乗っかるかのようにサブローは持っていたスケボーにライドして滑空。同時に強烈な吸引に対し、四季は鞄からタオルを取り出して適当な小物を包んで吸引口目掛けてぶん投げた。
サイズ的に無理がある物を吸い込んだ事で掃除機を詰まらせて、サブローに対する吸引を中断させた。そのタイミングを狙って引き寄せる風を利用してクルルとの距離を詰めたサブローはクルルの持っていたペンを奪い取った。
「何だと!?」
(改造とか言ってたし、ここで先輩連れて逃げても他の誰かが被害に遭うだけだね……。確か地球侵略が目的だし、絆さなきゃテロとか洗脳とか普通にやるでしょこれ)
「……ちょっと、本腰入れて対処しなきゃヤバいな」
結論を出した時には既に四季の瞳がグルグルとした渦巻き状のものに変化していた。
(何だ?ありゃあ……)
クルルも即座に四季の瞳の変化に気付く。四季はクルルの挙動に警戒しながらも戻ってきたサブローに耳打ちする。
「タネは紙じゃなくて、そのペンの方だね。速筆で画力も高いサブロー先輩ならアイツ以上に使いこなせる」
「やっぱり?面白いもん持ってんじゃん」
睨み合うクルルとサブロー。しかしクルルはすぐに四季へと視線を移す。サブローに隙を突かれてペンを奪われたが、実体化させた掃除機を即座に使い物にならなくしたのは四季だからだ。いくら何でも機転が効くのが早過ぎる。
「……そのペンを返して貰おうか」
「これを使って何する気?」
「愛と正義と平和を守る」
(う、嘘くせー!思いっきり改造するとか言ってた癖に!)
勿論クルルとてバレバレなのを分かってて言っているのだろう。サブローはスケボーの裏面に早速実体化ペンで何かを描き込み、四季を脇に抱えるとスケボーに付属して現れたターボ機能を使い、屋上から空へと飛び出した。
「うおおおっ!?ちょ、これは無いでしょ先輩!!」
「チンタラやってると俺ら二人共捕まっちゃうからね!」
ジェットコースター顔負けどころか紐なしバンジーと遜色ない逃げ方に抗議する四季だが、サブローの意見自体は正論。サブローがクルルから実体化ペンを奪わなければ成立しない手だったが。
すぐにクルルは予備の実体化ペンを取り出して円盤を操縦し、二人を追い始める。
「勝負はこれからだぜぇ」
「ここまでおいでよ宇宙人君!」
四季はサブローによって小脇に抱えられながらもクルルとクルルが書いて実体化させた物からは目を離さない。いつの間にか鞄から取り出してたらしいノートの空白ページをサブローに向け、いつでも描き込めるようにスタンバイしていた。
クルルが次に描いて実体化したのは蜘蛛みたいな機動力重視のロボット。それを見た四季は間髪入れずに実体化すべき物を指示。
「粘着性の高い奴。鳥黐みたいなので拘束。発射するのが良いかな」
「OK!」
サラサラと四季がこちらに向けるノートに素早く描き込み、バズーカ砲のような武器を二つ実体化。四季とサブローで一つずつ持ってジェット噴射しながら突っ込んでくる所を次々と鳥黐弾を撃ち、蜘蛛型ロボの脚に着弾させ、地面に接着させた。拘束する為の網を発射する射出口にも鳥黐弾を命中させて封じてしまう。
「良いねえこのペン!四季君の指示もすぐにこなせる!」
「マジかよ……」
そのままターボ型スケボーで逃げる二人を見て一度止まるクルル。実体化ペンを奪われた事よりもクルルは四季の方が気掛かりだった。
(あいつ、何で俺の動きも実体化したものの詳細も対処法もすぐに分かる?まるで全部見透かされてるみてぇだ……)
物は試しと一旦逃げさせて先回りする事にした。四季がどう対応して来るかの分析をする為に。
一方でサブローに抱えられるのではなく、後ろに掴まる形に態勢を変えた四季は少しピンチを感じていた。
「ごめん、サブロー先輩。切れた」
「……マジ?もう?じゃあ取り敢えず出した答え教えて」
サブローも確認を兼ねて四季の顔を見ると目が既に渦巻き模様ではなく、普通の黒目となっていた。相変わらず安定しない能力だと思いつつも切れる前に出した答えを聞く事にする。
校庭まで来た二人は一度スケボーから降りて着地するが、既に周囲には部活動に勤しむ生徒が多くおり、いきなりターボ型のスケボーで空中を滑空して来た二人に周囲の注目が集まっていた。
「……先輩、何でここ選んじゃったの。目立ちまくりだよ」
「いやぁ、適当にすっ飛んでたらここに来ちゃって」
いくら何でも非日常過ぎる光景に誰もが呆然としていると上空から先程の蜘蛛型ロボットと酷似したロボットが落下して四季とサブローの前に降り立った。
「四季君、一応聞いとくけどアレは?」
「さっきのと同じ。切れる前に答え出しといて良かった」
また実体化させていた蜘蛛型ロボットの射出口が開き、捕縛用ネットではなく、小型のミサイルが何発も二人目掛けて発射された。追尾機能もあると事前に理解していた四季はおふざけ全開のダミ声で次の動きを指示する。
「サブえも〜ん!跳ね返して〜!」
「ひらりマント〜!」
サブローも同じくダミ声で某青狸のひみつ道具を実体化させて大きく振るって跳ね返す。追尾機能が動く前に蜘蛛型ロボットを爆破して木っ端微塵にしてしまった。
「……やっべぇなコレ」
もう大騒ぎである。突然現れたロボットが爆発して周囲の生徒達も大騒ぎしている。そんな時、奴は再び現れた。
「これ以上遊ぶ気はねぇぜ!後でじっくり分析してやるからよォ!!」
「チッ、まだまだァ!!」
クルルはすぐにもう一本の実体化ペンでスケッチブックに何やら描き込み、ガンダムみたいな強化スーツとビームサーベルを実体化。ジェットエンジンで高速機動をして四季へと迫る。
四季にその凶刃を振るう瞬間、同じくビームサーベルを実体化させたサブローが割り込み、剣戟を始める。
「クーククク♪甘えよ」
が、クルルは背中の射出装置から小型ミサイルを発射。サブローは咄嗟にポケットティッシュに描き込んだ盾を実体化させて爆発を凌ぐも、衝撃で吹っ飛び、実体化ペンも落としてしまった。
「……ずるくない?」
「クククー♪勝負あったな♪」
ビームサーベル片手にサブローに迫るクルル。しかしこの瞬間、彼はサブロー以上に警戒してた相手の事が頭から抜けていた。
「お前がな」
いつの間にかクルルの背後に立っていた四季が先程サブローが実体化させた鳥黐弾のバズーカ砲でクルルを後ろから撃った。
鳥黐弾で全身ネバネバとなり、地面に接着させられたクルルは無事な首から上を動かして後ろにいる四季を睨む。
「お前、いつの間に……!!」
「君の倒し方はとっくに答えが出てたからね。後は誘導するだけだった」
「成程なぁ。……だが甘かったな」
ヒラヒラと真上から一枚の紙切れが落ちて来た。
「さっきの爆発に紛れて描いといたのさ。丁度今実体化するようにな。保険って奴さ。ク〜ックックック……」
紙切れが光ると巨大な怪物のような植物が触手をうねらせながら四季とサブローを見下ろしていた。
「これが宇宙食虫植物、オードリーセブン!!早めのディナーを楽しみな!!」
「マジかよ!?」
『
そう叫び、その触手が一目散に四季とサブロー……ではなくクルルを鳥黐ごと捉えた。その勢いでクルルが持っていたもう一本の実体化ペンがどっかに飛んで行く。
「「「え?」」」
『さぁて、前菜にケロン人を頂こうかなぁ』
「……ご主人様を食う気かよ」
そのままクルルを丸呑みにしようとオードリーセブンは大口を開く。
「実体化させても反逆されてんじゃん!」
ツッコミを入れつつも、四季はクルルが持っていたビームサーベルを手に取る。そして
『ギャァアアアアッ!?』
クルルが食われる前にオードリーセブンの触手をぶった斬り、その痛みでクルルは空高く放り出される。しかし鳥黐でベタベタに拘束され、蔓まで巻き付いているクルルは動けない。このままでは地面に墜落してグチャグチャに中身をぶち撒けるグロッキーな光景となるだろう。
「先輩!」
「OK!」
呼ばれただけで四季の要求を読み取り、スケボーを蹴っ飛ばして四季に貸し出す。四季はスケボーに乗ると先程サブローがペンの力で実体化させたターボを駆使して一気に加速。落ちるか植物の蔓が再び絡め取るかする前にクルルを身体ごと掴んで助け出した。鳥黐のせいで制服にごとベタベタにくっ付いたが。
「……お前何のつもりだ?」
「助けるのに理由いる?」
「……」
それだけの短いやり取りの後、落とした実体化ペンを回収したサブローの後ろにスケボーで合流。サブローはクルルの落としたスケッチブックを拾い、いつでも実体化ペンで描き込めるようにスタンバイしていた。
そこでクルルも気付く。既に四季の瞳が再びグルグルの渦巻き模様となっていた事に。
「支柱で拘束!特別性ね!」
「りょーかい!」
夏休みのアサガオの観察に使われそうなプランターがオードリーセブンを取り囲み、真下から生えた支柱に蔓の触手が絡め取られる。逃れようとしてもその支柱から機械状の腕が伸びて触手を掴む。
『俺はアサガオじゃねぇんだよぉぉぉぉっ!!』
「サブロー先輩!小型ミサイル書いて!威力控えめ!セット!」
四季が指差した先を見てサブローも笑みを浮かべてペンを走らせる。
「OK、あそこだね?」
大口開いて喚くオードリーセブンの口内を指差し、そこに向けて実体化した小型ミサイルを射出。特に苦労する事なくミサイルは口の中に入り込み、そのまま胃の中へ。
数秒後、宇宙植物オードリーセブンは爆散し、破片一つ残らず消し炭となった。
「……驚いたな。
クルルも流石に感嘆する。何よりも即座に策を考え、実行する胆力においてこの二人は並の地球人のそれではない。
二人を見れば実体化ペンの事で盛り上がっており、四季の方は既に瞳も黒に戻っている。
「しっかし凄いペンだね。宇宙の技術ってすげー。四季君、これ新しく作れる?四季君用のも要るでしょ」
「作り方は
「実体化ペンで実体化させたモンは時間が経ちゃ消えるからそれは無理だな」
実体化ペンの量産を考えている二人にクルルは不可能だと告げる。見れば確かにクルルと四季の服をくっ付けていた鳥黐は既に消えている。しかしクルルはもう戦う気も実体化ペンを取り戻す気もないようで、キャップを一つ取り出す。
「俺様は借りを作るのは嫌いでなぁ、それはお前にやるよ」
クルルはサブローに奪われた実体化ペン用のキャップを投げ、ペンに蓋がされるとサブローが手に持つ実体化ペンに326と文字が刻まれた。
「マジ!?やっりぃ!四季君みたく、俺もなんか欲しかったんだよね!」
「もう一本のはどっか行っちゃったけど、良いの?」
早々量産できるものではないと分かった四季は一本失くしたのにサブローにあげて良かったのかと問う。しかしクルルは大して気にする様子もなく、むしろ四季の方に興味が向く。
「良いんだよ。それよりお前、中々面白え
「お?分かっちゃう?自力で見抜いたのは君で二人目だよ」
「一人目は……そっちのコイツか。てかお前の能力でもう一本の、探せるか?」
クルルに問われて、少し頭に手を当てると四季の瞳がまた渦巻き模様となる。
「んー、ちょっと待って……駄目だ。たった今消し飛んだみたい。ビームみたいなので。君の仲間の仕業だね。黒っぽい体色の子が知らずにやっちゃったみたい」
「そうか。なら仕方ねぇな。それはそれとしてアイツは後で泣かす」
たったそれだけの短いやり取りで四季の能力がどういう物なのかアタリをつけつつ、齎された答えもそのまま信じた。
哀れ、泣かされる事になる黒い宇宙人。
「俺の仲間の居場所を割り出せるか?」
「……もう答えは出てる。一人を除いて何もしなくても近い内に合流できるけど、一人は僕の友達の冬樹君の家にいるみたいだし、後で一緒に行く?」
「クククー♪本当に面白え能力だなぁ。それと……あいつらの記憶も消しておかねぇとな」
この三人のやり取り、裏でこっそり行われていたものではない。学園の校庭にて、衆人環視の元、堂々と行われていた。勿論さっきまでの二人とクルルの戦いも宇宙食虫植物との戦いも思いっきりこの学園の生徒達に見られていた。
クルルのヘッドホンのようなものからアンテナが出て振動するとそれを見ていた生徒達からこの件に関する記憶が消えていく。クルルはアンチバリアを起動させてサブローと四季以外には見えないように設定した。
「中々面白えじゃねぇか。お前らコンビ」
「今日から君も加えてトリオだよ♪」
(えっ、僕この電波二人とセット扱い!?)
まさかの宣言にギョッとする四季。嫌がってはいるがこいつもこの二人と大差ないのは見ての通りだ。
「俺様は君じゃねぇ。ケロン人のクルルだ」
「そっか。俺はサブロー。よろしくねクルル」
「……ま、いっか。僕は四季!夜早四季。これからよろしくクルル!」
これは、夜早四季が記憶を失くす前……ケロロ小隊のクルル曹長との出会いの記録である。
この辺はあんまり原作との変化はないけど、強いて言うならタママのおならのくだりはカット。後は授業中から放課後に変更したくらい。サブロー先輩サボらなくなってるから。