ケロロ軍曹 転生して早々記憶喪失!? であります!   作:リボーン2期待ってます

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記憶喪失前エピソード:日向家編

内容的に当然なんだけど、過去編の方がギャグやりやすいわ。


失う前の彼は⑤

 体育祭。それは一年で最も情熱を燃やすイベント……と言ったらちょっと過言か。取り敢えず魂が燃え上がる行事とでも言っておこうか。

 

 僕らの通う吉祥学園でも当然それはある。つーかそれ明日。つい先日、クラスで誰がどの競技に出るのかの話し合いが行われた。別に学級委員でも体育委員でもないのに僕が教壇に立って進行を務めたのは今更ながら疑問だ。

 

 で、肝心の種目決めなんだけど、正直出るなら男女二人三脚が良いんだけど、何故か今年は廃止されたんだよね。東谷さんなら組んでくれると踏んでたんだけどなぁ。

 色々と悩んだけど障害物競走や短距離走に参加する事にした。クラスの得点源である日向はそこまで点数にならない親子二人三脚を強く希望したのもあるので、運動部は得点の高い種目を選ぶのが暗黙の了解になったんだ。

 

 なんでこんな話をするのかと言うとクルルに用があって日向家に来てたんだけど、クルルへの用を済ませて日向と冬樹君に一言挨拶してから帰ろうと日向家リビングに顔を出したら……

 

「軍曹〜!軍曹はカエルでしょ!?」

 

「ケロン人です」

 

「明日雨にしてよ〜!」

 

「そう言われても、吾輩、未来から来た便利な猫型ロボットじゃないであります!」

 

 こんな風にケロロに泣きつく冬樹君がいたからだ。間違いなく明日の体育祭の件だろう。そこで何とかできないから君らは国民的アニメになれなかったんだよ。

 

「日向、冬樹君どうしちゃったの?」

 

「それがね……」

 

 一応話を聞けば運動音痴の冬樹君は体育祭そのものを取りやめて欲しいレベルで嫌がっていたのだが、普段仕事で忙しいお母さんが体育祭を観に来られると知って、お母さんに失敗する所を見られたくない冬樹君は尚更体育祭を嫌がって駄々を捏ねるに至る…と。

 

「体育祭なんてのがあるなら、オカルト大会でもやってくれなきゃ不公平だよ……」

 

「逆にオカルト大会って何?」

 

 能力使って調べる気にもならないけど、謎過ぎるワードに僕は堪らずツッコミを入れた。見ればそこかしこに逆さまになったてるてる坊主が吊るされている。あるよねこーゆーおまじない。

 

「全く、冬樹ったら往生際が悪いんだから……ん?ママからだ」

 

 プルルル……と日向のスマホが鳴った。お母さんから電話が来たらしく、嬉しそうに出る。……可愛いと思ってしまった。なんか不覚。

 

 しかし、お母さんからの話を聞いていく内に日向の表情に陰りが出て、暗くなっていく。微かに聴こえる内容によれば、原稿が遅れてるとか何とか。……確か漫画編集の仕事だっけ?僕の読んでない雑誌だけど。

 

「……ううん、平気。気にしなくて良いから、ママもお仕事頑張って」

 

「姉ちゃん……」

 

 冬樹君も電話の内容を察したんだろう。どう声を掛けて良いか分からないようだ。

 

「……そういう仕事だもんね。いつもの事だし、冬樹も良かったじゃん。ママにヘッポコな所見られなくてさ」

 

 ……明らか強がってるね。声がもう泣きそうだった。明日のお弁当の準備と言ってキッチンに向かう様は正直見ていて辛かった。

 

****

 

 帰り道、四季は秋からの電話を受けた夏美の事を思い返していた。学校でも目に見えてルンルン気分で過ごしていたのは小学校時代から仕事で忙しくて一緒にいられる機会の少ない母が体育祭を観に来てくれる事への喜びなのは四季でも分かる。

 

「……日向、親子二人三脚に出るって言ってたな」

 

 四鷹小学校の運動会では日向家の母の姿を見た事はない。もしかしたら偶々見かけていないだけで、普通に来ていたのかもしれないが、少なくとも四季は小学校の運動会で秋の姿は一度も見ていない。

 

 保護者参加型の競技に日向秋が出場している所を見た事がない。

 

(だから日向は親子二人三脚にあんなに拘ってたんだよな……)

 

 日向家の内部事情をそこまで知っている訳ではないし、知ろうとも思わないが、父親不在で母親も仕事で家を空ける事が多い為、実質的にほとんど姉弟で生活しているのは知っている。

 夏美は姉である為、半ば母親代わりのような形で家事に追われ、弟の面倒を見ている事も知っている。だから夏美に多くの負担が行っている事は分かるし、少し歪だとも思った。だから夏美が潰れたりしないように時折手を貸す事もあるし、そこら辺は気にかけてるつもりだ。

 

 そんな夏美は親に甘えたい気持ちを普段は押し留めているのも見れば分かる。

 

 だからこそ、親子二人三脚で母と一緒に走りたいという想いは強いのも容易に想像が付く。

 

「家族で運動会ね……」

 

 運動会に親が来てくれる。四季にはもう二度と訪れる事のないイベントだが、その有り難みと重要性は分かるつもりだ。

 

(……)

 

 ほんの数秒間、四季の瞳が渦巻き模様になる。

 

 解決策を頭の中に出した四季はスマホを取り出した。

 

「……女の子が泣くのは見過ごせないからね。後はドロロにも頼んでケロロ達が余計な横槍入れないようにしとこ」

 

****

 

 吉祥学園の体育祭は赤組と白組に分かれてのものだ。クラス毎に赤組白組に振り分けられるのだ。

 

 夏美が2年女子短距離走でぶっちぎりの1位を取り、桃華も裏人格が出て1年女子障害物競走でトップ独走したりと中々に白熱する中、冬樹の出場する1年男子短距離走の時間となる。

 

「はぁ……」

 

 母が来れない事でみっともない姿は見せずに済むがそれでも冬樹の気分は憂鬱だった。こういう運動が苦手な事実は変わらず、大勢の前でビリになる姿を晒すと考えると気分が沈む。

 

 流石に夏美も冬樹の気持ちは察しているのか、せめて大きな声で応援しようと息を吸う。その時だった。全く別の方向から慣れ親しんだ声が聞こえて来たのは。

 

「冬樹〜!頑張れ〜!」

 

「「ママぁ!?」」

 

 日向秋。夏美と冬樹の母親である。仕事の関係で来られそうになかった母が来れた事に夏美も冬樹も驚く。夏美は瞬く間に嬉しそうな顔をしたが、反対に冬樹の気分は一気にブルーになる。

 

(ママにへっぽこな所見られるなんて最悪だよ〜!)

 

 運動音痴の身としては体育祭など公開処刑の場でしかないのだ。慕っている親にそんなみっともないる所を見られるのは拷問に近い。応援してくれる母の言葉も重荷にしかならないのだ。

 

「冬樹ってば、折角ママが間に合ったのに……」

 

 弟の変化を読み取った夏美はここで気合を入れられない弟に呆れ気味だ。しかし夏美と冬樹とでは考え方が違う。夏美には嬉しくても、冬樹には追い込む要素でしかない。

 

「そ、そんなぁ〜。ママにまでかっこ悪い所見られるなんて……」

 

 やる前から辛そうな冬樹を元気付けたのは全く別の人物だった。

 

「かっこ悪くなんかないぞ冬樹君」

 

「よ、夜早先輩!?どうしてここに……?」

 

「次、僕が出る2年男子の障害物競走だからね。それより、自分がかっこ悪いなんて決め付けちゃ駄目だ」

 

 次の種目の為に待機していた四季が落ち込む冬樹を見かねて、こっそり近付いて来たのだ。

 

「それってどういう……」

 

「どんな結果だろうが、全力を尽くした奴がかっこ悪いもんか。本当にかっこ悪いのはどうせ駄目だと決め付けて、本気でやらずに結局みっともない結果になる奴だ。だから頑張れ。頑張った奴はかっこ悪くなんかない。そんな君を笑う奴がいたら、僕がそいつを怒鳴り散らしてやる」

 

 茶化すでもなく、まっすぐに冬樹の目を見てそう言う四季に一瞬気圧される冬樹。そこで数日前に体育祭を楽しみにしていた夏美の言葉を思い出す。

 

『スポーツってのは頑張る事に意味があるんだから』

 

 あの時は運動が得意な姉が勝手な事を言ってるだけだと思ったが、冬樹の気持ちに寄り添った上でそう言ってくれる四季の言葉はすんなりと受け入れられた。

 

 冬樹は深呼吸してから応援してくれる母を見て、覚悟を決めた。

 

(駄目で元々!やるだけやってみよう!)

 

「そんな訳だから、余計な手出ししないように。それは冬樹君への侮辱だよ」

 

「っ!?」

 

 冬樹のサポートの為に生徒の中に紛れていた桃華親衛隊の一人の服を掴み、引き摺って四季は次の種目の待機場所に向かった。

 

 ピストルの音と共に冬樹は走り出す。大方の予想通り、冬樹が真っ先に遅れを取った。他の走者達は足の遅い冬樹からどんどん距離を離してゴールに近付いていく。

 

 それでも冬樹は四季の言葉を信じて必死に走った。最下位になろうとも全力で頑張ろうと思って走った。

 

 その時、隣のレーンの走者が足をもつれさせてすっ転んだ。

 

「「冬樹ーー!頑張れーーー!!」」

 

 母と姉の応援が聞こえた。冬樹は必死に彼を追い抜いてそのままゴールした。最初から駄目だと諦めて走っていれば彼が転んで、立ち上がるまでの時間があっても追い付けなかっただろう。

 

「……やった。ビリじゃない!他の人より先にゴールできたんだ!!」

 

 ブービー賞だが、万年ビリの冬樹からすれば大金星だろう。冬樹は照れ臭そうな笑顔で旗を掲げて母と姉に向けてVサインを出した。

 

 

 

 

 続いて四季が参加する2年の障害物競走。ハードル走に平均台競走とありがちな障害物をこなしてからの第三課題はコスプレだ。

 専用の更衣室に入って指示通りのコスプレをしての全力ダッシュでゴールを目指すというものだ。

 

 四季はハードル走と平均台競走を容易くトップでこなして、更衣室に飛び込む。そしてデフォルメされたカエルの着ぐるみを着て出て来た。

 

(カエル……なんかケロロみたいだなぁ)

 

 今頃体育祭に横槍入れようとしてドロロに邪魔されてるであろう宇宙人を連想しつつ、ぶっちぎりのトップでゴール。

 

「でもこれ走りづらいんだよね。歩くのも覚束ないし」

 

「それで1位取ったのかお前……」

 

「夜早っちらしいけどさ」

 

 カエルの着ぐるみの感想をクラスメイトに伝えるとその運動スペックの高さに半ば呆れられていた。

 続いて短距離走でも1位を獲得してクラス席に戻ろうと歩いていると次の親子二人三脚の待機生徒達の様子が目に映る。

 

「ママ!」

 

「夏美もお待たせ、何とか間に合ったわ」

 

「お仕事大丈夫なの?」

 

「ええ。先生が623とシーズの俺達ラジオの公開生収録の席当たったから絶対予定空けるんだって、凄い気合いの入りようでね……。猛スピードで原稿完成させちゃった。やる気の問題だったわね」

 

「何それ羨ましい!……でも、ママが来れて良かった!一緒に走れるもんね!」

 

 仕事の都合で体育祭に来れそうになかった母親が間に合った。その事実だけで夏美は嬉しそうだった。それに加えて一緒に体育祭の競技に参加できるのであればその嬉しさは更に一入だろう。

 

(……良かった良かった)

 

 日向親子の様子を横目に四季はその場を去る。

 

「行くわよ夏美!」

 

「うん!」

 

 その後の親子二人三脚の結果は態々詳しく語るまでもないだろう。親子揃って高いその運動神経により、日向親子がぶっちぎりの1位でゴール。

 その様子をクラスの応援席から四季は何とも言えない表情で眺めていた。

 

 それからも各クラスから様々な種目に参加する者がいる為、四季はクラスの友人の応援の為、競技の様子が良く見えるポイントを探して移動していると、親子二人三脚を終えた日向秋と鉢合わせした。

 

「あら夜早君!入学式以来かしら?」

 

「……ども。お久しぶりっす」

 

 一応は秋とも面識のあった四季は軽く会釈する。

 

「今日は来られるかかなり怪しかったんだけど、来られて良かったわ。夏美は親子二人三脚に出場するって聞いてたから、私が来れなかったら棄権しなきゃいけなかったから」

 

 友達の応援に行きたいのだが、ナチュラルに秋の話が始まってしまう。競技が始まる前に応援場所を確保したい四季に構わず秋は話を続ける。

 

「でも夏美はこういう運動系のイベント大好きだから、もっと色んな種目から選び放題だったのに、どうして棄権する可能性も高かった親子二人三脚を選んだのかしら?」

 

 鈍感な所は親子三人共通しているようだと決して人の事は言えない感想を抱く四季は、敢えて夏美の意図を説明する。

 

「……日向はアレで結構寂しがりですからね。こーゆー行事に親が来てくれる事のありがたみをあの歳でちゃんと分かってる子は貴重ですよ」

 

「……貴方も同い年よね?でもそっか」

 

 何目線だと聞きたくなるような語り方に戸惑う秋。しかし四季の言葉で夏美の気持ちは伝わったらしく、もっと一緒にいられるようにしなければと反省する。

 そしてここからは四季を敢えて呼び止めている理由に触れる。

 

「ウチで担当している先生、ラジオの生収録の席が当選して間に合わせる為にやる気出してくれたのよね」

 

「……」

 

「でも結構な職権濫用じゃない?特定のリスナーに枠を無理矢理あげるのって。それにあの先生が俺達ラジオのファンだなんて何処で知ったの?」

 

「はてさて、なーにを言ってるのかさーっぱりわかりません」

 

「……ありがとね」

 

 棒読みですっとぼけながら四季は友達の応援の為にトテトテ歩いて行く。そんな後ろ姿を見送りながら秋は小声でお礼を言うのだった。

 

(誰かの助けになろうって行動する所は初めて会った時から変わらないわね……。本当に初めて会った日の事なんて覚えてないわよね……)

 

 あの時も一人で泣いていた夏美を助けてくれて、秋が見つかるまで手を繋いでそばにいてくれた。探りを入れた事があるから知っているが、夏美の方はしっかり覚えていた。

 四季と初めて出会った日の事を思い出しながら、友達を応援している四季にモジモジしながら顔を赤くして話しかける夏美にエールを送る。

 

「頑張れ夏美。ちゃんと見てくれてるからチャンスは全然あるぞー♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 最後の締めはクラス対抗大縄跳びだ。1年、3年と各クラスが跳んで記録を叩き出し、クラスの所属する赤組白組の得点となっていく。そして最後は2年生が決める為に次々と大縄跳びをこなしていく。

 

 現在の最高記録は芋碁理恵率いるB組の51回だ。このままでは1位の得点は赤組のものとなってしまう。そして大トリを飾るのはA組だ。これで勝てるかで赤組白組の勝敗が決まる。

 

 学級委員でもないのにクラスのリーダーとなっている四季がA組全員の前に出て音頭を取る。

 

「行くぞぉ!!今こそ僕らA組の団結力を見せてやる時だぁーーー!!」

 

『オオオオーーーッ!!』

 

「A組の大縄跳びが1位になれば、白組の勝ちだぁーーー!!」

 

『オオオオーーーッ!!』

 

「目標は52回じゃない!100回だ!!何がなんでも跳び続けるぞぉーー!!」

 

『オオオオーーーッ!!』

 

 四季が音頭を取った事でA組は気合も入って改めて一致団結。唯一の男女混合競技の為、夏美や小雪も一緒に盛り上がっている。

 男子の中でも特に背の高いバスケ部所属山本とバレー部の太田が回し役として、掛け声と共に縄を振るう。

 

「「せぇーのォ!!」」

 

『いーち!!』

 

 ビシッ!

 

 誰かが縄に引っかかった。

 

『『えぇーーーー!?』』

 

 そして左手で真っ赤になった顔を隠しつつ、右手を挙げて四季が名乗り出た。

 

「あんな事言っといてなんだこいつ!!」

 

「着ぐるみ脱がねえからだろ馬鹿!!」

 

 今年度の吉祥学園体育祭、白組敗北。




赤組白組
話の都合上、2年B組は赤組。2年A組と1年B組は白組だった。

四季
地の文でカエルの着ぐるみを脱いだとは一切書いてないので、障害物競走の後もずっと着ぐるみを着て体育祭に参加してた。
駄目だと決め付けてなんかはいないが全力を尽くしたとは口が裂けても言えないのでかっこ悪い。

男女二人三脚廃止
クソボケと組みたがる女子が多過ぎて昨年色々とトラブルになった。昨年の四季の相方は芋碁理恵が勝ち取った。四季と組めなかった女子が舌打ちしまくって相方の男子で泣く人が続出した。

冬樹
寄り添って話してくれる四季のアドバイスは結構素直に受け入れられる。

日向秋
ひょんな事から夜早四季=覆面DJシーズである事を関係者以外で知ってる唯一の人物。四季の広過ぎる交友関係を深くは知らないので相方の623の正体までは知らない。最後の大縄跳びには流石に爆笑。夏美が四季とくっ付くなら大賛成。

ドロロ
出てないが四季から秋関連の説明を受けたので画面外でケロロやギロロが体育祭に横槍入れるのを阻止していた。四季からの信頼はケロロ小隊の中でもトップ。
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