ケロロ軍曹 転生して早々記憶喪失!? であります!   作:リボーン2期待ってます

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主人公が記憶喪失になって初のアニメエピソード。


一日アシスタントは誰!?

 毎度お馴染みラジオのお時間。僕の身内という事で雨音が見学する中、今日もいつものように葉書を読み上げつつ、623ことサブロー先輩のポエムと僕がそれっぽく言った事が格言扱いされてのざっくりとした内容でオンエア。

 

『突然ですが、ここでスペシャルイベントのお知らせ!623とシーズの俺達ラジオの一日アシスタントを募集しちゃいまーす!』

 

『オーディションの会場は勿論ここラジオ奥東京!放送日には623パートとシーズパートに分かれてそれぞれのアシスタントさんとトークしちゃおうって訳!』

 

 覆面DJなのに外部のアシスタントを使うのはこれ如何に。なんて思うけど、ぶっちゃけ記憶のない僕としては外部の人間の極一部になら別に構わない。というか、覆面DJというスタンスはサブロー先輩側の希望みたいだし。

 

 ネットで調べはしたけれど、僕もサブロー先輩もDJとしてはかなり人気があるっぽいので、それなりにオーディションに参加者もいるだろうね。

 

 必要事項の告知を終えて今回のラジオ放送も終わる。はてさて、オーディションはどうなる事やら。

 

「「お疲れ様でーす!」」

 

 今日も何とかオンエアを乗り切った……。このラジオの時間が一番キツいかも。ラジオDJの仕事ってただ喋れば良い訳じゃないから、ノウハウは掴めても記憶喪失の身としては結構精神的にも来るものがある。

 でも辞める訳にもいかない。生活費も学費も進学資金も、雨音の留学費用もこれで稼いでるんだから。記憶失くす前に引く程稼いでいたとしても投げ出す事はできない。ラジオDJ一本で全部賄えるんだから。どんだけ上手くやってたんだ僕。

 

「お兄!なんて言うか……凄かった!ラジオ番組の収録ってこんな感じなんだね!」

 

 僕の身内という事でオンエアの見学に来ていた雨音が興奮した様子で寄ってくる。折角日本に戻って来たんだからフランスに戻る前にラジオDJの仕事が見たいと言ったので態々見学の許可を貰ってこうして見せた訳なのだけど、その甲斐はあったらしい。

 

「でも一日アシスタントって言っても覆面DJなのに顔教えちゃうの?お兄は別に良いかもしれないけど、サブロー先輩さん的には避けたいんじゃないの?」

 

「心配ないって。予め息のかかった相手をオーディションに入れちゃえば良いんだから。最終的な決定権は俺達にあるし♪」

 

「それ詐欺やん」

 

 雨音の質問にサブロー先輩が朗らかに答えるけどそれって一日アシスタントの募集もオーディションも本当に形だけじゃん。

 てゆーか、クルルはラジオDJやってる事知ってるんだ……。まぁアニメでもサブロー先輩とはパートナーだったし、おかしくはないか。もしかしてアニメでもサブロー先輩、DJやってたのかな?

 

 雨音がラジオ局のスタッフと話しているのを遠目で見ながら一日アシスタントの件を誰に頼むのかをサブロー先輩と話し合う。

 

「俺はクルルに頼むつもりだけど、四季君はどうする?雨音ちゃんに頼むのも手だと思うけど」

 

「そうだねぇ、オンエアの日は雨音もまだギリ滞在してるし……」

 

 でも僕としては別に無関係の人間一人にくらいならシーズだってバレても構わないんだよね。口外しないように契約書とか書いて貰えれば良いし。なんかあったらそれで訴訟するだけだし。ぶっちゃけ記憶喪失さえ隠せるならそれで良いです。

 

「僕は……」

 

****

 

 この日、夏美は友人のさつきとやよい、そして小雪と一緒にラジオ奥東京に来ていた。理由は当然『623とシーズの俺達ラジオ』の一日アシスタントのオーディションに参加する為だ。受付を済ませて会場入りすればそこには既に何人もの女の子たちがいた。

 

「うわ〜すごい数」

 

「それにみんな可愛い子ばっかり!これみんな623とシーズのファンなの?」

 

「何だかハードル高そう!」

 

「何だかドキドキしますねぇ」

 

「気にしない気にしない!そんな緊張しなくても大丈夫よ。私達の目的は623さんとシーズさんの顔を見る事なんだから。合格するかはどうでも良いの」

 

 覆面DJの二人の素顔を見るチャンスだと考え、夏美は今回のオーディション参加を決めたらしい。

 オーディションの受験者はパッと見でも50人を超えているだろう。そのほぼ全てが女性であり、彼女達も623とシーズの顔を拝む目的でオーディションに来た事は想像に難くない。

 

 すると小雪がスンスンと何やら周囲の匂いを嗅ぎ始める。

 

「なんかさっきから四季くんの匂いがします」

 

「えっ!?夜早君の匂い!?」

 

 小雪の発言で一瞬にして顔を赤くした夏美が期待の眼差しで周囲をキョロキョロと見渡し始めた。

 別室で「何で分かんだよ怖っ!?」とギョッとする声が響いたが、彼女達がそれを知る事はない。

 

 そんな彼女達に近付く人影があった。

 

「やほー。夏美ちゃんと小雪ちゃん!」

 

「あ、雨音ちゃん!?雨音ちゃんもオーディション受けに来たの!?」

 

 夜早雨音。先程名前が出た四季の実の妹。入り口から夏美達が入って来るのを見て寄って来たのだ。

 

「夏美、知り合い?」

 

「うん。この子は雨音ちゃん。夜早くんの妹なの」

 

「ご紹介に預かりました!夜早雨音です!いつもお兄がお世話になってまーす!」

 

「「えぇ〜!?」」

 

 初対面のさつきとやよいも驚く。四季の家庭事情はそこそこ知れ渡っているが、この二人も先日までの夏美達同様、妹の存在は全く知らなかった。

 

「夜早君、妹いたの!?」

 

「あ、でもちょっと目元とか似てるかも……?」

 

 驚くさつきとやよいを他所に夏美は先程の小雪の発言に得心が行く。

 

「小雪ちゃんの言ってた夜早くんの匂いって、雨音ちゃんだったのね」

 

「う〜ん、確かに匂いも似てますけど、私が四季くんの匂いを間違えるとはちょっと思えないんですけど……」

 

「に、匂い……?」

 

 先日に続いて小雪が四季の匂いと言い出した事に戸惑う雨音。流石に人の匂いを正確に記憶しているのはアブノーマルなので、少し引いてる。

 

「雨音ちゃんも623さんとシーズさんのファンだったのね」

 

「まぁそんなとこ。またすぐフランス戻るからさ、日本での思い出作りの一環?」

 

 聞けば入院していた四季の様子を見る為に一時帰国していたらしい。そう言えば教師からは入院したとだけ聞いていたが、その怪我の原因までは教師達から説明がなかったと思い返す。

 

「ねぇ雨音ちゃん、夜早くんってどうして……「うわなんか変な被り物してる人いる。気持ち悪いなぁ」へ?」

 

 妹である雨音なら四季が入院する程の怪我をしていた理由を聞いているだろうと踏んで聞こうとしたが、雨音の意識は別に向いている。その方向を見れば地球(ペコポン)人スーツを着たケロロ、タママ、ギロロが女装して会場内に立っていた。モアもいる。

 

「ボケガエル!?ちょっとアンタ達こんなとこで何してんのよ!?」

 

 思わず駆け寄り問い詰める。

 

「あらぁ、夏美じゃない!すっごい偶然〜!」

 

「623&シーズファンの夏美ちゃんなら、ここにいるのは当然よね〜!ですぅ!」

 

 あまりにもわざとらしいケロロとタママの喋り方にイラッとする夏美。

 

「どうせ借金返済のお金儲けの為でしょ!メディアに出ればガッポガッポ稼げるとか、623さんとシーズさんの顔写真撮って懸賞金貰おうとか考えて!!それともメディアを乗っ取って地球侵略の足掛かりにでもする気!?」

 

「う…」

 

 全て図星だった。ケロロ小隊は借金完済の為、今日も金策に走っていた。このオーディションはその一環であり、借金完済後の地球侵略の布石にするつもりでもあった。

 

「ギロロ、アンタまで」

 

「そ、それは……うぬぅ」

 

 セーラー服を着込む女装には抵抗があったが、小隊の借金の原因はギロロにあるので、返済用の資金稼ぎも返済後の侵略の布石も逃す訳にはいかない。恥を忍んでこのオーディションを勝ち取るつもりだ。

 

(俺は戦士だ…!これまでの失態を挽回する為にも、何としても借金返済の金を稼がねばならん…!その為ならどんな恥辱にも耐えてみせる…!!)

 

「ドロロはどうしたんですか?一緒じゃないの?」

 

「あ。……多分今頃バイトかな?」

 

「また忘れてたのね……」

 

 ひょこりと顔を出した小雪に言われた事でケロロはドロロの存在を思い出した。彼は今日も一人小隊の為に汗水流してアルバイトに精を出していた。

 

「夏美ちゃん、この人達知り合いなの?」

 

「え!?えーと…」

 

 雨音に聞かれても返答に困る夏美。この様子だと雨音は四季からケロロ達の事を聞いていないのかもしれない。ならば勝手にこの侵略者達の事を話す訳にもいかない。

 さつきとやよいにも興味を持たれて、渋々知り合いだと説明し、ケロロ側にも雨音を紹介する。

 

「うっそ!?四季殿に妹いたの!?」

 

「お兄も知り合いなんだ……この変な人達」

 

 雨音とケロロ達を接触させてしまった事に頭を抱える夏美。一方で雨音はそんな夏美に向けられる熱い視線に気付いた。

 

(なんかこの赤っぽい人、夏美ちゃんを見る目がキモいんだけど……。お兄、守ってあげて……)

 

 雨音の中でギロロはキモい人で印象が決まった。

 

****

 

 会場の監視カメラを使ってオーディションに集まったリスナーの様子を見てみたんだけど、あまりにも想定外の人間ばかりが集まっていた。

 

「まさか日向と東谷さんにケロロ達まで来るなんて……」

 

 本当に完全に想定外。みんな俺達ラジオ聴いてるんだ……。嬉しいような、今回ばかりは余計なような……。しかも雨音とケロロ達が遭遇しちゃったし。頼むから雨音に余計な事吹き込まないでくれよ。

 

「あらら、これは面白いメンバーが揃ったねぇ。俺はやっぱりクルルを選ぶつもりだけど、四季君はどうする?今からでも雨音ちゃんに確定する?」

 

「先輩面白がってるでしょ……。審査は公平にやるよ」

 

 既に確定枠になってるクルルみたいに出来レースで雨音を選ぶ事も考えたけど、そういう不正は音楽の世界で生きようとしてて、この先色んなオーディションを受けるだろう雨音には良くないし、集まってくれたリスナーにも悪いので、今回は公平にやる事にしている。

 

 因みに出来レースを検討した理由として、覆面DJはサブロー先輩の意向でやってる面が強いから、仮に他の知り合いを合格させて四季=シーズと知られると芋蔓式に623=サブローとバレると思ったんだけど、サブロー先輩はあっけらかんと僕は交友関係が広過ぎて623の特定なんてできないでしょと笑って答えたので、僕のアシスタントは公平に選ぶ事にした。

 

 けどこんなに知り合いが集まるとか誰が思うよ。前世じゃ中学生が趣味でラジオ聴くとかほとんどなかったでしょ。多分。それがピンポイントで日向達とか。

 

 因みにアシスタントの審査方法は僕とサブロー先輩含む審査員四人でそれぞれ点数を付けてその総合点を競う。クルルの出来レースは僕とサブロー先輩の方で点数調整すれば良いだけだからね。

 

 仮に日向や東谷さん、ケロロなんかを採用する事になったら反応が面倒そうだけど、こっちの都合だけで弾いたりはしない。一日アシスタントに決まったらちゃんと僕がシーズだって明かすよ。

 

 ……にしても交友関係広過ぎ、かぁ。これって記憶喪失がバレるリスクもそれだけ大きいよなぁ。

 

****

 

『大変長らくお待たせ致しました!審査員の入場です!』

 

 司会を務めるラジオ局の社員の宣言に会場中が盛り上がる。

 

「夏美、遂に623とシーズとご対面よ!」

 

「うん!」

 

「ワクワク♪」

 

 いよいよ覆面DJとして顔が謎だった623とシーズの顔が明かされると誰もが期待した。しかし入場して来たのはラジオ奥東京のプロデューサーだという、ベニヤマなる男とアメリカの女優、メロディ・ハニーの二名。

 

 そして二人が着席するが、623とシーズに用意された審査員席には誰も座らず、スタッフの一人がラジカセを置いた。

 

「何よアレ……」

 

 再生ボタンが押されると録音されていた音声が再生される。

 

『やぁ、623です!』

 

『シーズでーっす♪』

 

『今日はみんな参加してくれてありがとう。覆面DJとしては僕もシーズ君もここで顔を出す訳にはいかないんだよね』

 

『そーゆー訳で僕らは別室で審査しますのでご了承くださーい。てかここで簡単に顔見せるなら最初から顔公開してるし』

 

 交互に語られる623とシーズの説明に多くのファン達が落胆する。それは当然夏美も同じ。夏美としては両方に会ってみたいが、特にシーズの方が気になっていた。以前の土井中海岸での水着美女漫才コンテストでも特別賞をくれたのだから当然だ。

 

『でもオーディションに合格した二人は別だよ。それぞれスタジオで僕とシーズ君と会おうね♪』

 

『オーディションのアピールの時に僕と623っち、どっちのアシスタント希望かを宣言してね♪』

 

「それぞれ会うって事は合格してもどちらか片方としか会えないんですね……」

 

「確かにラジオのオンエアも623パートとシーズパートに分かれるって言ってたもんね」

 

「623とシーズ……どっちに会いたいか……う〜ん、甲乙付け難い……!」

 

 オーディションの合格枠は二名分。どちらのアシスタントを望むのかも合格の難易度に影響してくる訳だ。何せここで参加者も別れるのだから。

 

(う〜ん、夏美ちゃんと小雪ちゃんにシーズの正体がうちのお兄だって教えたらどんな反応するか気になる……教えないけど)

 

 雨音は四季に好意を寄せる二人を見てふとそんな事を思った。

 そんなこんなで一日アシスタントのオーディションが始まった。それぞれが特技を披露して審査員を楽しませるという方式だ。

 

「ゲ〜ロゲロゲロ!ラジオと言えばトークが命!宇宙一の語り部と呼ばれた我輩の優勝は間違いなしでありますなぁ!」

 

(あいつにだけは負けたくない……!)

 

(な〜んか笑い方キモいなぁ)

 

 今から優勝を確信するケロロ。ケロロに対抗心を持つ夏美。ケロロをキモがる雨音。それぞれの思惑が交差する中、オーディションは進行していく。

 

 お菓子の爆食いをするタママ、変なポエムを詠むギロロ。瓦割りで一枚だけを割るモア。ケロロ小隊が変な芸を披露する中、夏美の友人のやよいの番がやってきた。

 

「623さんのアシスタント志望!霜月やよい、皿回しやります!」

 

 何処からか取り出した長い棒を使っての皿回し。最早曲芸と言っても良いレベルの高いものだった。

 

「やよい凄い!」

 

「あんな特技があったんだ!」

 

「私も初めて知りました!」

 

「へー…アレは凄いかも」

 

 審査員からも好評で夏美達が感心する中、ここでケロロが茶々を入れる。

 

「でもラジオって声だけなんだよね。そんな芸役に立つと思ってんの?」

 

 その指摘を受けたやよいの身体が硬直し、そのまま皿を落として割ってしまった。痛い所を突かれて思考が停止してしまったのだ。

 しかしここで審査員・ベニヤマがフォローを入れる。

 

「大丈夫ですよ。ラジオとは関係なく皆さんの個性を発揮して貰えればOKです」

 

 するとスタッフの一人のスマホの着信音が響く。電話に出て少し何かを話すと適当に黄色いメモ紙を一枚机から取ってケロロの前に来た。

 

「青空ケロ子さん、イエローカードです」

 

「ゲロォ!?」

 

 ケロロへの警告だった。

 

「シーズさんの意向です。霜月やよいさんへの明確な妨害行為と見做されました。次やったら結果を待たずして退場させるようにとの事です。アピールの際も少しばかり減点してスタートするとの事ですのでそのつもりで」

 

「そんな!?土井中海岸で我輩にガンガルをくれた優しさは何処へ!?」

 

 それは記憶と共に消え去った。

 

「さっすがシーズさん!ボケガエルの奴も自業自得よ!」

 

(お兄、結構厳しいなぁ……。アレは確かにどうかとは思うけど)

 

 ケロロの発言に思う所があった夏美はグッと拳を握る。雨音もまた、兄の判断を少し厳しいとは思ったがやよいの芸は素直に凄いと思ったし、わざと失敗を誘うような言動でやよいを小馬鹿にしたケロロの発言は気に入らなかったので良しとした。

 

「……というか、あのスタッフ今普通にシーズと話してたのか」

 

 ギロロの指摘を聞いた夏美はスタッフを凝視した。

 

「623さんのアシスタント志望!師走さつき、書道やります!」

 

 次はさつきの番だが『完壁』と書いて字を間違っていた。正しくは『完璧』である。

 お次は小雪の番がやって来た。

 

「シーズさんのアシスタント希望、東谷小雪です!私はお笑いで行きます!」

 

「え」

 

 瞬間、夏美は嫌な予感がした。小雪が自信満々にお笑いと言い出したからだ。

 

「面白い話をいっぱい仕入れてます!その中でも悪の十字架というお話がありまして……」

 

「小雪ちゃん、やっぱりオーディションもそのパターンなんだ……」

 

 滑り倒したのは言うまでもない。土井中海岸での漫才から彼女は進歩してなかった。いや、本人は進歩したつもりなのだろうが、方向性があまりにも間違っていた。

 そして次はいよいよ夏美の番だった。

 

「シーズさんのアシスタント志望!日向夏美です!」

 

 迷いに迷ったが、夏美は直感でシーズのアシスタントを選んだ。強いて理由を加えるなら、シーズの方がサイン色紙などを貰える機会が多く、縁を感じたからだ。

 

(シーズさんと言えば、大のサッカー好き!だったらここは好みを攻める!今、一番輝いてる私をシーズさんに見て貰おう!)

 

 スタッフの用意してくれたボールを蹴って夏美はリフティングを始める。器用な足技で華麗にボールをコントロールする様は見る者達を惹きつける。

 

(シーズさんに届け!私の想い!)

 

 最後は蹴り上げたボールを足首にフィットするトラップ。それを踏み付けてフィニッシュ。

 

(おお〜。これならお兄も食い付きそう)

 

「これはインパクトあったわ!」

 

「夏美いけるんじゃない!?」

 

「素敵です夏美さん!」

 

 相手の好きな分野でアピールするというのは簡単に見えて意外と難しい。好きだからこそ、場合によっては顰蹙を買う事もあるのだから。その不安を押し除けてここまでの技を見せた夏美は褒められた然るべきだろう。

 

 そして真打登場とばかりに堂々と審査員の前に出るケロロ」

 

「ボケガエル…!」

 

「シーズさんのアシスタント志望!青空ケロ子です!語りで真っ向勝負させて頂きます!」

 

 何故か会場は真っ暗になり、ケロロにスポットライトが当たるという演出が組まれ、ケロロはニヤリと笑う。

 

(アピール前に減点は予想外でありましたが、我輩の語りならばそれを挽回する事も簡単!むしろ減点された上で優勝するのであればインパクトも絶大というものであります!)

 

 ケロロは語った。語りに語りまくった。それはもう語った。心洗われるような感動の物語を。胸を打つ言葉、魂を揺さぶる叫び。そしていつしかオーディション会場は感動の渦に呑み込まれた。

 

「……そして、立ち去っていく老人の背に少年は手を振って叫びました。『おじさんこそが、僕のいきなり団子だったんだね!!』」

 

 終わり方こそ、なんかシュールだったがその内容は非常に感動的であり、会場中が感動の涙に包まれた。

 

「良い話……いきなり団子だけは意味分かんないけど、こんなに泣いたのはお兄の入院以来だよ……」

 

「うぅ、なんでボケガエルの話なんかで感動しなきゃいけないの〜」

 

 方向性が違う上に妙に重い発言をする雨音。ケロロに話に感動してしまう事に複雑な夏美。さつきへの妨害行為で減点がされていたとしても充分に合格が見込める内容だった。

 

「どうすか!?我輩の語りマジック!感動率100%っすよ!我輩の勝利は決まったも同然であります!」

 

『えー、次の方どうぞ!』

 

 ケロロの語りの後に呼ばれたのは雨音。夏美達は流石にケロロのあの語りを聞いた後では、手強い強敵である事は嫌でも理解していたので、雨音を心配する目で見てしまう。

 

「シーズさんのアシスタント希望します!夜早雨音!ヴァイオリン弾きまーす!」

 

 そんな事は知らんとばかりに雨音はヴァイオリンを弾き、五分間の演奏でその場にいる人達を揃って魅了してみせた。

 

 最初の一音が響いた瞬間、まるで時間が止まったように感じた。

 

 弓が弦を擦る度に生まれる音はただ綺麗なだけではなく、優しく語りかけるような音もあれば、胸の奥を強く揺さぶるような音もある。全ての音に演奏者である雨音の感情が込められていて、聴いている者達の心まで直接触れられているようだった。

 

「凄い……」

 

「音楽留学してるって聞いたけど……なんか納得」

 

 特に高音へと伸びていく旋律には、言葉では表せない程の美しさがあった。細く震える音なのに決して弱くなく、むしろその繊細さが強烈に心に残る。

 

 演奏が終わった瞬間、静寂が戻ってきた事が少し寂しく感じられた。

 拍手喝采。次の瞬間にはオーディション会場が拍手の嵐に包まれた。

 

「綺麗な音でしたね〜」

 

「Oh!ワタシ、とっても感動しまシタ〜!!流石は……いえ、何でありまセ〜ン!」

 

「我輩の方が……我輩の語りの方が……!!」

 

 審査員のメロディ・ハニーは席を立って雨音の前に来てその感動を伝え、ケロロはワナワナと身体を揺さぶりながらうわごとのように己の方が優れていると自分に言い聞かせている。

 

 今の演奏に誰もが感激し、夏美達も自然と雨音の元に駆け寄り、感動を伝える。ケロロの語りが言葉で感動を伝えるものならば、雨音の演奏は心に直接衝撃を与えて来た。

 

 が、次の瞬間に会場の扉を大きな音を立てて開ける者がいた。

 

「遅くなってごめんなさ〜い!623さんのアシスタント志望、クルル子でーす!ダジャレ暗算やりまーす!」

 

「えぇ!?」

 

「クルル!?」

 

 特別性らしく顔まで地球人風に偽装した地球(ペコポン)人スーツを着たクルル曹長だった。

 有無を言わせず、雨音の演奏の余韻をぶち壊し、ホワイトボードに暗算した計算式を書き込みながら、ダジャレを延々とお経のように唱え続ける。あまりの流れに会場は白けているが、審査員のベニヤマとメロディ・ハニーだけは爆笑していた。

 

 こうして、オーディションのアピールは全員が終了。暫くして結果発表の時が来た。

 新たに録音したカセットテープから623とシーズそれぞれの声が合格者を発表する。

 

『それでは僕623の一日アシスタントをして頂くのは……』

 

『ダジャレ暗算のクルル子さん!』

 

「イェーイ!」

 

「「「えぇーー!?」」」

 

 まさかのダジャレを使ったクルルが623のアシスタントの座を勝ち取る。同じく623のアシスタントを希望していたギロロとタママ、さつき達も唖然としている。

 

「クーックック♪事前に審査員の好みを調べておいたアタシの勝ちよー♪」

 

 クルルの作戦勝ちだった模様。しかしこれでケロロ小隊は金策の手段になり得る623の一日アシスタントの座を獲得した。この事実にケロロはニヤリと笑みを浮かべる。

 

「ゲロゲロリ。想定外ではありましたが、予定内。623のアシスタントを勝ち取ったクルルに続いて我輩がシーズのアシスタントになれば借金完済にまた一歩近付くというもの!笑いが止まらないであります!」

 

「アンタ、借金多過ぎてやっぱり感覚麻痺してるわね……」

 

 儲けでも完済そのものでもなく、それに一歩近付くだけで笑いが止まらないというケロロ。これまでの借金問題が悲惨過ぎて、それでそこまでの心境になるのが哀れに思う夏美であった。

 

『では623っちに続きまして、この僕シーズの一日アシスタントを発表しまーす!僕のアシスタントをして貰うのは……』

 

 ラジカセから聞こえてきたシーズの声で夏美は意識を切り替えて息を呑む。

 

(そうだ…!私はシーズさんのアシスタントを志望したから、シーズさんに会える可能性が残ってる……!)

 

(こっちは我輩が頂くであります!)

 

(面白い話には自信があります!きっと私です!)

 

 夏美、ケロロ、小雪。そしてその他大勢が息を呑んでシーズからの結果発表を待つ。

 

『ヴァイオリン演奏の夜早雨音さん!』

 

「やったぁ〜!!」

 

 選ばれたのはヴァイオリン演奏で会場中を魅了してみせた雨音だった。少なくともダジャレ暗算なんて披露したクルルよりかは遥かに納得のいく合格だろう。

 

(お兄はこういう時、私を贔屓しない!つまりこれは私が実力で勝ち取った合格!お兄とラジオで何喋ろっかな♪)

 

 しかし納得する事と悔しがる事は別の話。同じくシーズのアシスタントを希望していた者達は気分が沈む。

 

「ま、負けたであります……。我輩の語りが……ヴァイオリンに」

 

「そんなぁ……」

 

「私は準優勝くらいだったんですね……」

 

「小雪ちゃん、そんなにあの話に自信あったの?」

 

 敗北に打ち拉がれるケロロ。通過できなかった事に落ち込む夏美。謎の自信故に悔しそうな小雪。小雪の自信にある意味戦慄するさつき。

 アシスタントに合格したクルルと雨音はそれぞれ623とシーズの元に案内される事となり、ここでさつきが同行を申し出た。

 

「雨音ちゃんお願い!私達も付き添いでシーズさんに会わせて!」

 

 さつきの要望に対し、スタッフが待ったをかける。

 

「すみませんが、付き添いはNGです。勿論623やシーズの写真を撮るのも駄目です。外部に彼らの顔を特定できてしまう情報を漏らした場合は法的措置を取らせて頂くのでご理解を」

 

『そんなぁ〜』

 

 元々の目的であった、623とシーズの顔を見るという目的は達成できず、落ち込む女子中学生達であった。

 

 

 

 

『とゆー訳で、今回僕の一日アシスタントをして頂きましたあまっちさんでした〜!あまっちさん、何かご感想は?』

 

『私、普段フランスに留学してるんですけど、向こうでも623さんとシーズさんの俺達ラジオって話題になってて〜…』

 

「参加賞で623さんのポエムとシーズさんの格言がセットになった色紙は貰えたけど、やっぱり会ってみたかったなぁ」

 

 雨音がシーズと一緒にラジオのオンエアに出ている中、せめて何か情報を得られないかと局内で俺達ラジオの放送を聴きながら雨音が戻って来るのを夏美達は待っていた。

 

「シーズさん、どんな顔なんだろ?」

 

「写真撮ったら訴えられちゃうらしいし、口で説明聞くしかないわよね。それも大分限定されそうだけど」

 

 そんな話をしていたら、オンエアを終えた雨音が戻ってきた。放送を聴いていた時から分かっていたが、随分と楽しかったらしくルンルン顔だった。

 

「お疲れ様、雨音ちゃん」

 

「シーズさん、どんな人だった?」

 

「ん〜?秘密!言っちゃ駄目って言われてるし。そうだ!夏美ちゃん達にこれあげる!」

 

 シーズの情報については一切口外できないルールなので、当然口を割らない。しかしすぐに持っていたエコバッグからあるものを取り出して夏美に手渡す。

 

「これって……」

 

 夏美への名指しが記されたシーズの格言付きサイン色紙だった。夏美だけではない。小雪やさつき、やよいの分もあり、それぞれが名指しでサインされている。

 

「日向夏美さんへ……?な、名指しでシーズさんからのサイン色紙……!?」

 

「駄目元で頼んでみたらOK貰えたんだ♪」

 

「あ、雨音ちゃん!ありがとーー!!」

 

「こういう気を利かせてくれる所とかホント夜早君そっくり!」

 

「うんうん!正に兄妹よね!」

 

 自分達は会えなかったが、会えないなりにフォローをしてくれる親切さに目の前にいる雨音が四季の妹なのだとさつきとやよいは実感した。

 

(ホントはお兄からのサービスなんだけどね……)

 

 さつきとやよいも喜んでおり、小雪も受け取ったサイン色紙をジッと見つめている。参加賞の623との共同サインだけでなく、個別の名指しでのシーズ個人のサインまで手に入ったのは嬉しい誤算だろう。

 

 直接名前を入れてのサインにさつきとやよいが盛り上がって話す中、チョンチョンと雨音は夏美の肩をつつく。

 

「そうそう夏美ちゃん」

 

「ん?」

 

 雨音は夏美の耳元に口を近付けてそっと囁く。

 

「DJシーズって超カッコ良かったよ!ウチのお兄と同じくらいね♪」

 

「へ」

 

「じゃあね〜♪」

 

 用は済んだとばかりにスタコラサッサと去っていく雨音を見送りながら、先程の発言を振り返る。

 

(夜早くんと同じ位って……)

 

 雨音の発言から物凄いイケメンというイメージが湧いたがそれを裏付ける事ができないので悶々とするしかない。最後にこんな気になる発言をして去って行くのは正直ずるい。

 

「シーズさんってどんな人なの〜!?すっごい気になる〜!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……やっぱり四季くんの匂いがします」




小雪
最下位。
ドロロを介してクルルに貰った人力発電機と端末を使って俺達ラジオは聴いてる。夏美が俺達ラジオのファンなので興味を持った。シーズの声が四季に似ててちょっと癒し。
海の時は潮の匂いが邪魔してた。

夏美
アニメとは別の形で悶々とする事になった。

雨音
演技してる夏美を見ていやらしい目でデレデレになってたセーラー服の赤い人が正直キモかったです。通報しようか本気で迷いました。
実は結構ブラコン。

四季
記憶失くす前から必要なお金は全てラジオDJの仕事で稼いでいる。サブロー共々ラジオDJではおかしい程稼いでる。記憶喪失直後に見た預金通帳の額に滅茶苦茶驚いた。
演技してる夏美を見ていやらしい目でデレデレになってたギロロが正直キモかったです。
自分のアシスタントの審査は公平にやった。
真剣にやってる人を馬鹿にする事は許さない。

ギロロ
夜早兄妹からキモがられてるが知らぬが仏。

ケロロ
やよいへの妨害による減点さえなければ雨音を抑えて合格してた。

読みたい展開は?

  • ケロロ小隊の借金問題
  • ラブコメパート(つまりギロロの脳破壊)
  • 記憶喪失前エピソード
  • 記憶喪失問題
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