ケロロ軍曹 転生して早々記憶喪失!? であります! 作:リボーン2期待ってます
キャラ崩壊注意。まだ上手く書けてないので。
幼い頃、自分一人だけ迷子になった事があった。
デパートの屋上の遊園地で風船を手に母と弟を探す。自分がしっかりしなきゃ、
でも、寂しかった。泣きたくなった。誰かに助けて欲しかった。
『ママ……フユくん、どこなの……?』
持っていた風船が風に飛ばされて、ひとりぼっちになってしまった気がして、その場でしゃがんで蹲って泣く事しかできなかった。
でも、同じ年頃の男の子がしゃがんで目線を合わせて声をかけてくれた。
『大丈夫?』
手を差し伸べてくれた彼の手の温かさを、日向夏美は一度も忘れた事はない。
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日向夏美はかつてない焦燥に駆られていた。
どのくらいの焦燥かと言えば大好きなラジオ番組『623とシーズの俺達ラジオ』を聞く事すら忘れて、居間で弟と話している程だ。
「ええええっ!?よ、夜早くんが理恵に告白されたぁっ!?」
「もう学校中その話題で持ちきりだよ。遂に芋碁先輩が動いたーって」
話題は夏美にとって体育で何かと張り合う相手である芋碁理恵がある人物に告白したという噂を弟である日向冬樹が仕入れてきた事にある。そしてその告白の相手とは夜早四季。夏美の想い人である。
つい最近、彼が大怪我をして入院したと聞いた時は血の気が引く思いだった。その日は何一つ手に付かず、多くの不安に苛まれて涙した。入院した病院が何処なのかは教員のみが知る秘密事項とされた為、見舞いには行けなかったが、数日前に特段問題なく登校して来たのを目にした時は心底安堵したものだ。
だがそれは同時にある事態が水面化で動き出す予兆でもあった。
四季に想いを寄せる人物は何も夏美だけではない。先程話題に上がった人物である芋碁理恵もその一人だ。そしてその他にもそれなりに多くの女子生徒が四季に想いを寄せていたりもする。
好きな人が大怪我をして入院する。そんな状態になって絶望感に打ちのめされない人間がどれだけいるか。そして同時に連想するだろう。想い人がそのまま死んでしまったら。自分が想い一つ告げる事も叶わずにそのまま先立たれてしまったら。
現実的にあり得ない事ではないし、多感な年頃ならば余計に想像力を働かせて具体的にイメージしてしまう。夏美だってそんなネガティブな事を考えなかった訳ではない。
だからこそ、彼を失ってしまうという最悪の未来が具体的に想像できてしまったからこそ、後悔しないように、望んだ未来を手に入れたいと動き出す者がいるのは至極当然の事だった。
それが芋碁理恵による夜早四季への愛の告白である。彼と恋人となり、結ばれる未来を掴むべく、彼女は自ら動いたのだ。
そして肝心の夏美本人は今日は特売があった為、速攻で帰宅していた。その裏でスポーツと恋、両面でのライバルが共通する想い人に告白していたなどショックもショックである。
「そ、それで夜早くん……まさかOKしちゃったの?」
「そんな泣きそうな顔しないでよ……。保留だって聞いたよ。芋碁先輩が返事はまた今度で良いってどっか行っちゃったんだって」
その場で告白の返事を受ける勇気は流石に無かったらしい。一先ずホッとする夏美だが、事態は何も解決していない。後は四季本人の気持ち次第ではあるが。
「で、姉ちゃんはどうするの?夜早先輩に告白しないの?」
「簡単に言わないでよ!できるならとっくにしてるわよ!」
観察力の高い弟に自分の気持ちがバレている事は薄々勘付いていたが、確認を取る事なく、確信を持って告白をするのかと問いかける弟に反論になっていない反論をする。
「だってこのままじゃ夜早先輩取られちゃうよ?それに夜早先輩は姉ちゃんはサブロー先輩の事が好きだと思ってるし、このままじゃ勘違いされたままだよ?」
「……えっ?」
一瞬弟が何を言っているのか理解できなかった。が、すぐに我に返る。
「な、なんでそんな事に!?それになんでサブロー先輩!?私そんな素振り見せた事あった!?」
「全くないと思うけど、夜早先輩はそう思ってるんだ」
冬樹としても非常に不可解な事実だ。何故四季はあれ程までに分かりやすい夏美の好意に一切気付かず、あまつさえ、その矛先がサブローに向いていると思っているのか。全くの謎である。
だが弟に齎された情報を信じられない…否、信じたくない夏美は友人の一人、師走さつきに電話して恐る恐る確認を取る事にした。彼女は別に四季に好意を抱いている訳ではなかったので、最悪バレても問題はないはずだ。
「ね、ねぇさつき……。その……夜早くんの事なんだけど、えっと……夜早くん、私がサブロー先輩の事を好きだって思ってるって聞いたんだけど……」
電話相手の師走さつきは夏美が遂に残酷な事実を知ってしまったかと悟った。リークしたのが誰なのかなど意味は無い。ここまで来たら友人として夏美にしてやれる事はアドバイスのみだ。
『事実よ。夜早君は夏美の想い人はサブロー先輩だと思ってるわ。遂に知ってしまったのね』
さあっ…と夏美の血の気が引く。まるで四季が大怪我をして入院したと聞いた時のように。
「ほ、本当なの……!?」
『誤解を解きたいなら、やるべき事は一つよ夏美』
「やるべき事……?」
『告りなさい!!!』
これが漫画ならばさつきの目がドアップでカッと見開くシーンであっただろうと後に冬樹は母に語る。
「こくっ!?……で、でもいきなりそんな……てゆーか、な、な、何を言って……」
先程冬樹にも同じような事を言われたので別にいきなりではない。
『はぁ?……まさかまだ隠せてると思ってたの!?いっそぶちまけるけどね、夏美が夜早君を好きって事くらい、クラス全員どころか学校中の人は大体みんな知ってるわよ!?』
「えええええっ!?」
今語られる衝撃の事実……という程でもない。夏美の四季への気持ちは周囲の共通認識である。まぁ多少盛ったが。
「じゃ、じゃあどうしてそんな事になってるの!?周りから見て私そんなに分かりやすかったなら、どうして夜早くんだけそんな誤解してるの!?」
『それがま〜ったく分からないのよね。誰一人として夜早君のその勘違いの理由を暴けた者はいないわ。直接聞いたら夏美が夜早君を好きってバラさなきゃいけないし』
涙目になりながら、誤解の大元を聞こうにもそれだけは誰も把握していないと言う。それからも告白について聞いてもいないアドバイスを次々と告げられて、漸く通話を終えた。
(それって……夜早くんの中では私はサブロー先輩とくっ付く流れに……?)
逆説的に言えば夏美は四季に恋愛対象として見て貰えないという事である。
(い、いやいや!もしかしたらこれは単に冬樹とさつきが逆に勘違いしてるだけの可能性も!逆に!)
あまりの事態に何を血迷ったのか、藁にもすがる想いで我が家に居候している侵略宇宙人達にまで認識の確認を取り始める。
「はぁ?そんなんみんな知ってるに決まってるでありましょー?」
「やめてくれ……お前が俺にそんな話は……」
「ク〜ックックック……知らねえとでも思ってたのかい?」
「大丈夫ですぅ〜!僕はナッチーを応援してるですぅ〜!……良い加減気付けやあのクソボケがぁーーー…!!!」
常識を語るような呆れ口調のボケガエル。何故か吐血している赤ダルマ。嘲笑うかのような陰湿メガネ。むしろ焦ったくてずっとイライラしていた腹黒二重人格者。
「」
揃いも揃って宇宙人達ですら全てを把握していた事を突き付けられた。
半ばヤケクソと言わんばかりにスマホを取り出してもう一人の
『いや本当にね……どうして四季君がそんな結論に至ったのか俺が知りたいくらいなんだけど』
なんと、周辺人物ばかりか学校で関わりの薄いクラスメイトや先輩後輩まで至る人物の共通認識として日向夏美が夜早四季に好意を寄せている事と夜早四季は日向夏美がサブローの事を好いていると思い込んでいるという事が知れ渡っていた。
「ああああっ!!」
周囲の人間に想いの胸がバレバレだった羞恥心。肝心の想い人にはとんでもない誤解をされて、恋愛対象として意識されていないという絶望感。この二つを前に頭を抱えて悶える事しかできない。
「姉ちゃん……」
「むしろ隠せてると思ってたんでありますか……。そして勘違いされてる事にただ一人気付けてなかったとは最早哀れでありますな……」
変わらず頭を抱えて悶絶する夏美。哀れめば良いのか、励ませば良いのか分からない冬樹とケロロ。該当人物のクソボケ具合に苛立ちを隠せないタママ。一人だけ抜け殻になっているギロロ。それらを見て楽しむクルルの嫌な奴具合。正しくカオスな光景であった。
暫く悶絶していた夏美が漸く落ち着くと冬樹は話を最初に戻す。
「確か夜早先輩に告白した人って姉ちゃんとスポーツでライバルの人でしょ?良いの?このまま取られちゃって。小学校の頃からずっと好きだったんでしょ?」
「良くないわよぉ……」
最早小学生の頃からずっと想い続けていた事すら弟に筒抜けだった事に反応する余裕もなく項垂れる夏美。話の本題は結局夜早四季が他の女子と結ばれてしまう恐れがあるという事だ。
「ならもうお前さんも告るしかねぇんじゃねぇの?ク〜クックック…」
「だから簡単に言わないでよ!できるならとっくにやってるわよ!」
何故宇宙人に恋愛相談をしているのかという疑問を持つ余裕すら今の夏美には無かった。
(やれやれ……)
お節介にもケロロは夏美の背中を押す事にした。放置して失恋させれば地球侵略やガンプラ作りの邪魔をする気力もなくなるであろう事は分かった上でだ。
「ゲロゲロリ。まぁこのまま踏ん切りが付かなければ四季殿は夏美殿の本当の想いに一切気付く事なく、よりにもよって夏美殿のライバルとゴールイン!恋に破れた夏美殿は負け犬確定であります!」
「な、何よその言い方……!」
「経緯はどうであれ、ライバルは四季殿に想いを告げられて夏美殿にはそれができない!結局夏美殿の想いはその程度なんでありましょ〜?だったら潔く諦めるであります。人生諦めが肝心。そのまま意気消沈して我々の
「じょ、冗談じゃないわよ!」
失恋と地球侵略を繋げる理屈は普通に変だが、夏美の腰を上げるには充分な煽りだ。
「私だって、夜早君の事……す、好きだから!諦める事なんてできない!」
(え、侵略の方スルーすか?)
建前で言っただけとはいえ、地球侵略のくだりをスルーされて内心複雑なケロロだった。彼もまた庭で血を吐いて死にかけている赤ダルマをスルーしているが、まぁいつもの事である。
「それに好きな人に……他の人が好きだって勘違いされたままなんて、嫌……!」
日向夏美は立ち上がり、遂に決心する。
「私、夜早君に気持ち伝えてみる!」
『『おお〜』』
思わず感心してしまう侵略者一同。一匹だけ吐血しているが放っておいて問題ないだろう。
「で?いつ、何処でどんな口説き文句を言うつもりだ?ちょっとやそっとの遠回しな言い方じゃあ、あの鈍感マンは告白された事すら気付かねえぜぇ〜?それこそドストレートに行かなきゃなぁ」
「……623さんとシーズさんに葉書でお悩み相談してみようかな」
『ズコーッ!!』
茶化し半分でクルルが質問すると、我に返った夏美は両手の人差し指同士をツンツンさせながら目を逸らして現実逃避に近い事を言い出した。
ラジオ番組へのお悩み相談で告白の方法とタイミングを決めようとするヘタレ具合にケロロ達は揃って古いリアクションでずっこけた。まぁその番組のDJ二人の片割れは何故か番組を休業中なのだが。
「そんな葉書、読まれるのなんて来週でありましょーが!!早くしないといけないんじゃないでありますかぁ!?早いとこ告白しないと、それこそ先に告白した相手と付き合っちゃう〜なんて事も!!」
「そんなの絶対嫌!!」
「じゃあもう明日の朝には告白しないとじゃない?夜早先輩がいつ返事するかなんて分からないんだし」
冬樹はもう強引にでも告白させる流れに持って行く事にした。このまま行けばヘタレな姉はズルズルと告白を先延ばしにして結局失恋してしまうと確信してしまったので。
ならば多少強引なやり方だろうが、姉が幸せを掴める可能性に賭けるしかない。冬樹としても姉に後悔が残る形で失恋なんてさせたくないし、四季ならば姉の相手として最高の人選だ。成就させてあげたいという家族愛も大きな割合を占めているからこその行動だ。
「明日の朝……で、でも朝都合良く会えないと思うし、呼び出そうにも連絡先知らないし……」
「なら僕がメールして呼び出してみるよ。夜早先輩はマメにメールをチェックしてくれるから、朝に待ちぼうけなんて事にはならないと思うよ」
最早なりふり構う気は無い。スマホを取り出してメールを打ち始める冬樹。数秒遅れて事態を理解した夏美は食いつく。
「……ええええっ!?冬樹、アンタ夜早くんのメアド知ってるの!?私知らないのに!!」
ここ数年、何度も何度も聞こうとして聞けなかった意中の相手の連絡先。それを弟が普通に知っていた。本日何度目になるか分からないがショックである。
「軍曹達と出会う前にサブロー先輩と三人で釣りに行ってさ。その時に」
「釣り!?冬樹が!?」
よく四季と遊んでいるサブローの名前が出た事自体はそこまでおかしくはないが、まさかオカルト好きのインドア派の弟がアウトドアな事に興じていた事に驚きを隠せない。
「って、ちょっと待ってよ!いきなり明日の朝告白しろなんて言われても……」
そしてまたも我に返って話がサクサク進められている事に気付く。ブレーキをかけようとしても侵略者達はそれを許さない。
「手遅れになるでありますよ?ゲロゲロリ」
「ク〜ックックック……ここまでお膳立てされておいて、できませんでしたじゃ、もう望みはねぇなぁ。失敗したらもうアイツが他の女とくっ付いてイチャ付いてる事を見ている事しかできねぇ人生が待ってるぜぇ〜?」
ケロロとクルルは既にこの一件を自分達が楽しむ方向にシフトしていた。前者はそれなりに応援する気持ちもあるが、後者は失恋したらしたでネタになって面白いとか思ってたりする。
「〜!もう!こうなったらやってやるわよ!夜早くんは誰にも渡さないんだからーーー!!」
夏美のヤケクソ気味な決意の叫びが夜空に木霊する。その響きに当てられたのか、日向家の庭では一匹の赤ダルマが吐血して真っ白になって倒れていた。
このラストから1話冒頭に続きます。