ケロロ軍曹 転生して早々記憶喪失!? であります! 作:リボーン2期待ってます
「ゲホッ……ゴホッ……!!」
物凄い勢いで咳き込む四季。四つん這いになって土手へ水を吐き出す。その様は物凄く苦しそうだ。
「うえええええんっ!!」
ずぶ濡れになった幼い男の子が大きなタオルに包まれながら泣いていた。それ程に怖かったのだろう。苦しかったのだろう。
「本当にありがとうございます!!」
そして男の子の母親らしき女性が泣きながら必死に頭を下げて四季にお礼を言っていた。一方四季はそれを気にする余裕がなく、今も咳き込んでいる。
この男の子は川で溺れてしまっており、それを偶々見かけた四季が川に飛び込んで決死の救出撃を繰り広げたのだ。
四季は必死に泳いで男の子を助けたのは良いものの、息継ぎの最中に川の水を少々誤飲しかけてむせていた。
咳が止まっても男の子を助ける為に無我夢中で泳いだ反動でゼーハー言って息を整えようとしていた。
「ゼェ……ゼェ……あー…もう疲れたなんてレベルじゃない」
「ったく、こーゆー時ホント後先考えねぇんだから……」
「助けるのは良いけど、お前が溺れたりしたら元も子もないんだぞ?」
一緒に下校していた佐藤と鈴木も感心する一方で、相変わらずの有様に半ば呆れていた。タオルを取り出して制服のままずぶ濡れの四季の身体を拭くがほとんど無意味だ。しかし水分を拭き取る事以上に労いの意味があった。
少しずつ泣きじゃくる様子に落ち着きを見せる男の子を見て鈴木はスマホを取り出して119番に連絡する。
「取り敢えずその子、一旦病院に連れてった方が良いよな。四季もだけど」
「……僕も?」
「川の水飲んじまったかもしれねぇだろ?腹下す前に薬貰っとけ。それに大怪我しても後先考えないその頭を診て貰え」
「酷い」
その様子を遠くから野次馬に紛れて眺めていた冬樹は四季も男の子も無事な事にホッとする。
「夜早先輩、相変わらず無茶するなぁ……」
この手の光景を見るのは初めてじゃないし、何なら5、6回では済まない数見ているのだが、それでも慣れられるものでもない。偶に小雪などが途中で助太刀に入る事もあるが、今回彼女の姿はない。
事態は終息したので、野次馬達も散り散りになっていく。冬樹も買い物当番があるので早く帰ろうとその場を離れようとする。
「月神さん……?」
歩く先で同じく野次馬の中にいたのだろう。同学年の友人である月神散世がジッと泣いてる男の子にしがみ付かれる四季を見ていた。
「夜早四季……二年生の、それどころかウチの学校の中心人物。今の救出劇と言い、スクープになりそうね」
****
「成程ね……。川で溺れた少年、そして決死の救出劇。相変わらず夜早は話題に事欠かないねぇ。今回の活躍を記事にすればスクープ間違いなし!」
その日の夜、吉祥学園新聞部。通称KGSのメンバー三名が四季達が運び込まれた病院の前に立っていた。
「この病院に夜早先輩も例の少年も運び込まれてます。最速インタビューは私達が頂きましょう」
彼女は月神散世。KGSの情報収集担当。身軽でどんな場所にでも潜入して情報を集めるぞ。
「助けられた男の子の写真も撮るんだな……」
山裏帝明。KGSのカメラ担当。狙いよりもエッチな写真を優先しようとする所が玉に傷。
「近い内に夜早の救出劇はニュースにもなるだろう……。先を越されては二番煎じにしかならん!最速でスクープにするのは我々だ!」
新聞部部長、通称デスク。本名を把握している者はいない。何故ならそこまでこの人物に興味を持つ人がいないから。
スクープの為なら証拠写真の捏造も辞さない。ジャーナリストとしての嗅覚は確かだが、やり方に問題がある人物。
そして彼らは四季の救出劇を取材しに来たのだが、面会できない事も考慮し、こっそり病院内に侵入する事にした。
相手側の迷惑を考えていない辺り、この新聞部はモラルが致命的に欠けていた。
診察室で座る四季に担当医は呆れた顔で対応していた。
「また君か夜早君……」
「またって、前回退院してそれきりだと思うんですけど」
この医師とは記憶のない四季でも面識があった。連れて行かれたのは記憶を失った四季が目を覚ました病院だったのだ。
「いや何……以前からこうだったからね」
「……」
医師の愚痴に近い話を聞いて四季の表情は暗くなる。
心なしか診察室に来た時点で四季は明らかに学校や川で見た時よりもぐったりしており、表情も辛そうだった。
(あんなに憔悴した夜早見た事ないぞ……)
KGS三名は診察室に忍び込み、物陰や話が聞こえる別の部屋に隠れて盗聴していた。こんなスキルだけ妙に高い三人である。中でもデスクは四季の姿を直接視認できるベストポジションに隠れていた。
「全く……人助けも良いが、君はもう少し自分を省みなさい。子供を助けても君自身が死んでしまうような事があれば本末転倒だよ?」
医師の言う事は尤もだろう。KGSもこれまで四季が首を突っ込んだ騒動をいくつか知っていて、記事にもしているが、本人が本当に危ない目に遭っている事件もあった。高等部の天王寺麻美が更生した一件など正にそれだ。
(でもあの夜早がそれであんな憔悴するか……?助けられたなら、それで良かったで終わらせるような奴だぞ?助けられなかったならああもなるだろうけど……)
「君、最近あまり眠れてないだろう。ストレスの多い環境だとは思うが、それなら尚更睡眠を疎かにしてはいけない」
(睡眠不足……学園生活で彼がストレスを感じている……?)
そして医師はここで爆弾発言を落とした。
「記憶喪失を周りに隠しながらやって行くと決めたんだろう?それがどれだけ大変な事かは分かっているはずだ。だからこそ、睡眠はしっかり取りなさい」
医師の言葉の衝撃で、夕方の救出劇の事など彼らの頭からは吹き飛んだ。
「夜早が記憶喪失……?」
吉祥学園新聞部の三人はあまりの事実に思わず顔を見合わせて黙り込んだ。
病院を後にしたKGS三名は改めて手に入れた情報を振り返る。
・記憶喪失は以前の入院で病院内で目覚めた時に発覚したもの。
・入院理由である大怪我が記憶喪失の直接の原因と見て間違いない。
・失った記憶は一部などではなく、これまで14年間生きてきた人生のほほ全て。人間関係も含むエピソード記憶そのもの。
・夜早四季本人は記憶喪失である事を隠して生活している。
・本人以外で記憶喪失を知るのは病院関係者の一部と学園の教員のみ。
・教員からの情報ありきとはいえ、誰にも悟られずに学園生活をこれまで通りに送れる本人の演技力とアドリブ力も高い。
「……ざっとこんな所か」
病院内をくまなく探り、得られた情報を箇条書きで纏める。次第にデスクの表情はニヤけて歪んでいく。
「間違いない!学園の人気者、夜早四季は記憶喪失だ!これはとんでもないスクープになるぞ!!」
録音機と勝手に病院から持ち出したカルテのコピーを掲げて、スクープの裏取りをした事に喜びを露わにする。
「証拠もバッチリだ!担当医直筆のカルテのコピーに、診察の録音!もう捏造を疑われる事もない!」
疑われるも何も、自分から捏造をしまくっているのは周知の事実なので、このまま記事にしても誰も信じない。だからこそのカルテのコピーと何よりも診察の録音だ。勿論違法である。
「にしても全く気付かなかった。大した役者だよなぁ。本当に俳優になれるんじゃないか?」
今回はあくまでも溺れていた男の子を救出した事をインタビューして記事にしようとしていた。しかし思わぬ所から情報が転がり込んで来た。デスク本人の言う通り、普段の学園生活の中で四季に怪しい所なんて全く無く、記憶喪失だなんて思いもせず、気付ける要素も全く無かったのだ。
役者になれるという評価も間違っていないだろう。
ウキウキ気分で撤収しようとするデスク。帰ったら記事の編集作業が待っているのだ。しかしここで黙り込んでいた月神が口を開いた。
「これ、記事にするのやめませんか。私達の心の中にしまっておくべきじゃないですか」
新聞部としては耳を疑いたくなる発言だった。驚くデスクに月神は続けてその理由を主張する。
「事実なら、何でも記事にして良い訳じゃないと思います!記憶喪失を隠しているなら、夜早先輩にも相応の事情があるはずです!」
「知った事ではない!我々には報道の自由がある!スクープになればそれで良いんだ!何より、記憶喪失の真実を知らないでこれまで通りに接している人達からすれば、夜早四季は嘘吐きの詐欺師のようなものじゃないか?それを暴いて何が悪い!それにその事情とやらも明るみにすれば本人の口から聞き出せる!そうなりゃまたスクープになる!」
対するデスクの主張に月神は絶句する。まさかここまでモラルのない人だとは思わなかった。いやまぁ、以前ならば月神も似たような考えで動いていたが、ケロロ小隊の存在を明るみにしようとして痛い目を見た経験もあり、月神自身、別件だが四季に恩もあるのだ。
何よりも、その恩絡みで恋する乙女の気持ちを知っている。これを知った四季に想いを寄せる女子生徒の気持ちを考えてみたのだ。
知らない方が幸せな事もある。そう考える程度には、人の感情に寄り添える子だった。
「夜早先輩に忘れられてると知ったらショックを受ける人も沢山います!そんな思いをさせない為に夜早先輩は記憶喪失を隠しているんじゃないですか!?」
これは勿論月神の想像でしかない。だが、これまで誰も四季の記憶喪失に気付けなかったのは、単に演技力の問題ではなく、四季自身が素で行動しており、それが以前の四季と合致しているから。ならば四季の性格や考え方は変わっていない。そう考えれば強ち間違った推論でもないだろう。
(冬樹君のお姉さんだって……絶対ショック受ける)
「あいつ全部忘れてるんだからそれは無いだろ。……ん?て事はあの芋碁理恵や日向夏美に告白された時も何も知らなかったんだよな?日向夏美が三年のサブロー先輩を好きだと思っていた自分の勘違いすら知らなかったのか?ここも深掘りすれば面白い事実がまた出て来そうだな……」
しかしデスクは取り合わない。それどころか退院後の四季を取り巻く恋愛事情への影響に興味を持ち始め、二匹目のドジョウを狙う算段までしている。
「これは……流石に記事にできないです。しちゃいけないと思います」
「しつこいなぁ。面白ければ良いだろ。山裏、お前もそう思うだろ?」
月神の主張を切り捨てるべく、多数決に持ち込もうと同じく黙りを決め込んでいたカメラ担当、山裏の意見を求める。
「正直あの人苦手なんだな……。前にスクープを狙ってこっぴどく怒られたんだな」
「なら今回のは仕返しに丁度良いじゃないか。向こうが覚えてなくても恨みは消えないってな」
しかし山裏もまた、月神寄りの意見を持っていた。
「でも、あの時怒られて、その後色々手を回してくれたから今ここにいられるんだな。あそこで見捨てられてたら、僕はこの学校にいられなかったんだな……」
山裏は普通のスクープよりも、年頃の男子らしくムフフな方面でのスキャンダルを好む。しかしそれは多くの人の顰蹙を買う。それ関連でやらかした事もあり、立場を完全に失いかけた事もある。
先程も言った通り、その時四季にはこっ酷く怒られたが、助けてくれたのもまた四季だった。
「そんなの向こうは覚えてないんだ!やったもん勝ちだ!これは記事にする!明日の学園新聞の一面はこれで独占だ!」
多数決にしようとしたのは自分なのに、不利になっても記事を書く事を強行しようとするデスク。月神は何としても今回の記事を書く事をやめさせようと反論する。
「記憶がなくても、以前のように自然に人助けをしているなら、何も変わってなんていないと思うんです!部長だって散々助けて貰ったんでしょう!?恩を仇で返すんですか!?冬樹君とあの宇宙人達の時みたいに!」
「し、しかし夜早四季は何も覚えていないのに、それ隠してみんなを騙して……」
「記憶が失くなっていても、夜早先輩の本質は何も変わっていません!だったらそれで良いじゃないですか!」
記事にするかしないかで揉めに揉め続けるデスクと月神。山裏は二人に挟まれてオロオロしている。
そんな三人に別方向から話しかける者達がいた。
「悪いけど、その記事は書かせないよ」
「そこのお前だけは全然懲りてねぇみてーだな」
その二つの声にKGSの三人は聞き覚えがあった。一人は学園の先輩として。もう一人はかつてスクープを狙ったターゲットとして。
「お、お前は日向家の宇宙人!?」
「と、サブロー先輩なんだな!?」
黄色いカエル型宇宙人、クルル曹長。そして吉祥学園の先輩であるサブロー。何故この二人が一緒にここに来て、自分達に接触して来るのか。
そんな疑問をぶつける前にクルルが先手を打った。
「そんじゃま…記憶、消しとくぜぇ」
クルルのヘッドホンからアンテナが出て放たれた脳波で三人は今回の記憶を消されて同時に眠りこける。
眠っている三人の手荷物を取り、サブローは漁り始める。手書きのメモに不法侵入して持ち出したカルテのコピー、録音機。パソコンやスマホ。四季の記憶喪失に関する情報を全て消す為だ。
「こいつらは少しでも興味を持てばやると思ってたが、怪しむ前に別の切り口から辿り着くとはな」
「四季君が溺れてる子助けてまた病院行ったって聞いたから、心配になって来てみたけど、危ない所だったね」
ここにサブローとクルルが来たのは夕方の騒動を聞いて、四季を心配したからだ。何か一つでも掛け違えばこのままサブローとクルルは何も知らず、明日の朝には学園中に四季の記憶喪失が暴露されていただろう。月神と山裏は反対気味だったが、肝心の新聞部部長があの姿勢では止められなかったのは想像に難くない。
「そんな事したら自分達の立場もアウトなの分からねーのかこの馬鹿共はヨ」
「この対処法も四季君の地雷踏んでるけどね……」
サブローは新聞部の確保した四季の記憶喪失に関する記録を消しながら答える。例え四季の記憶喪失を隠蔽する為とはいえ、彼らの記憶を一部消去というやり方は実際に記憶喪失になっている四季からすれば受け入れられるものではないだろう。
サブローは記事にする事に最後まで反対した月神を一瞥する。
「……黙ってる事を選んだこの子に免じて、俺もこのくらいで許してあげるよ」
油性マジックでデスクの顔に散々落書きをして今回の事は終わりにする事にした。
クルルは日向家に戻る道の途中、吐き捨てるようにこの隠蔽の本質を述べる。
「今回はギリギリで阻止できたが、いつまでも隠し通す事なんざできやしねェよ。いつかは必ずバレる。その時が来たら……地獄だぜ」
デスク
吉祥学園新聞部部長。本名不明。
原作からして写真の捏造や不法侵入をしたりとジャーナリストとしての分別が欠片もない人物。ケロロ小隊の存在を暴こうとして失敗してケロロ達に記憶を消されそうになったのを冬樹に助けて貰ったのに、記事を書いたりしたから多分これくらいならやる。
山裏帝明
原作やアニメで彼が夏美にやろうとした事を知っていれば、別件ではあるがどんな事をやろうとして四季に滅茶苦茶怒られたか、予想は可能。尚、被害者は夏美ではないがシャレにならない事なので四季に止められなかったら、明るみになって多くの女子に嫌われて男子からも関わるのを拒否られて真面目に学校にいられなくなっていた。その自覚はあるので、四季に対しては苦手意識と恩が共存してる。
月神散世
アニメと変わらず冬樹が好き。四季からアドバイスを貰って冬樹との仲は少し進展してる。具体的には偶に一緒にお昼食べるくらいには。その為恩を感じている。お嬢様?知らない子ですね。
読みたい展開は?
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ケロロ小隊の借金問題
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ラブコメパート(つまりギロロの脳破壊)
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記憶喪失前エピソード
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記憶喪失問題