ケロロ軍曹 転生して早々記憶喪失!? であります! 作:リボーン2期待ってます
少し本格的に物語を動かします。
「人手を増やすであります」
それはある日、突然ケロロ軍曹の口から出た案だった。
バン!とちゃぶ台を両手で叩く。その目には涙が浮かんでいるがそれはちゃぶ台を叩いた手が痛かったのか、それともこれから語られる内容が理由なのか。
「借金完済の一手として計画した冬樹殿と桃華殿のキス作戦も失敗!その為にバイトをすっぽかしたから纏めてクビ!新しくバイトを始める事はできたが、それでは以前の繰り返しであります!」
「てゆーか、旧態依然?」
ケロロ小隊全員でバイトをして稼いでも月100万届くかどうか。その状態に戻しても100億以上の借金の前では焼け石に水だろう。
「だからモモッチとフッキーを利用するのはどうなのかと思ったんですぅ。そんな簡単に上手く行くなら、とっくにモモッチはフッキーとカップルになってるです」
タママは先日の失敗を愚痴るがそんな事を振り返る余裕などケロロ小隊にはない。一日でも早く借金を完済し、侵略前線基地を取り戻さなければ本命の地球侵略など夢のまた夢なのだから。
しかしその為の稼ぎの策が今の所思い付いていないのが現状である。
「こうなれば次の大儲け作戦を思い付き、実際に成功するまではこなすバイトの数を増やすしかないのであります!」
「正論だが、今も尚いくつものバイトを掛け持ちしている状態だぞ。スケジュール的に無理ではないか?」
「そう。身一つでできるバイトには限界がある。ならばその身を増やすしかないのであります……!」
身を増やす。ギロロの疑問に対してケロロはそう言った。そしてこの会議の冒頭でも同じ事を言っていた。
「分裂であります」
それがケロロが見出した新たな策。大儲けではなく、現状を少しでもマシにする為の一手。
「我輩達自身が分裂し、身体を増やす事で同時刻に複数のバイトを並行してこなすであります!そうすれば増えた分だけバイトをこなせて給料も増える!少しはマシになるというもの!」
(案そのものは悪くないのだが、それでまずやる事がバイトなのか……)
本来ならば侵略作戦にこそ、使われるべき案。それをバイトの為に使うというケロロの主張に微妙な顔をするギロロ。まぁ小隊の財政状況的に仕方のない事ではあるのだが。
「だがどうやって分裂などする気だ?そんな予算も設備も今の俺達には無いぞ」
「クルル曹長」
「あいよ。こいつが分裂の為の装置だぜぇ」
そう言ってクルルが取り出したのは以前、夏美を大人化させた発明品、『人生が二度あれば銃』に良く似た感じの銃型の装置だった。この銃の光線を浴びれば分裂できるという寸法なのだろう。
「そ、そんなものいつの間に……!?」
「冬樹殿と桃華殿のキス作戦で偶然得た副産物……夏美殿と四季殿の二度目のキス写真!これでクルル曹長が10億ほど稼いでくれたお陰で、開発資金を確保できたのであります」
ケロロが掲げたお化け屋敷での夏美と四季の二度目の事故キス写真を見せられてギロロは吐血する。
税金分とは別に全てを返済に回す事はせずに、新たな稼ぎの元手とする事にしたのだ。その使用方法の一つがこれだ。
「だがこれは十分な設備も無しに作るしかなかったからな。性能チェックなんざ当然できやしねェ。ぶっつけ本番で試すしかねェ訳だ。クククー♪」
「ギロロ伍長…じゃなくて三等兵!この実験はまず貴様が受けるであります!そもそもの原因なんだから!」
「う、うむ…」
クルルの装置の実験台など普段は断固拒否だが、借金の原因である事を持ち出されれば流石に断れず、ギロロもクルルの実験を受ける事を承諾する。
クルルの構えた銃の光線を真正面から浴びるギロロ。
「う、うおおおおおおっ!!?」
尚、今日もドロロは忘れられて会議に呼ばれず、バイトに汗水流していた。
****
ある休日、四季はまたフランスへ戻った雨音を空港で見送った後、寒空の下、空を眺めて黄昏ていた。ここは地元にある大きな枯れ木が目立つ高台である。
最近はこうして一人でゆっくりする時間などあまり取れない。学校では多くの友人……特に小雪が四季を一人にしてくれず、学校から帰れば妹である雨音と過ごす。ラジオの収録の日はサブローやスタッフと話さなければならない。全てを知っている振りをして。
(……ずっとこの先も騙し続けるのか。僕に笑顔を向けてくれる人達を)
たった一人の妹に孤独を突き付けたくなかった。そう思って徹底的に記憶喪失を隠す事にした。だがその時はその為にどれだけ多くの人を騙す事になるのかを本当の意味では理解していなかった。
(一度死んで、転生で二回目の人生を貰ったと思ったら、14年間の記憶失くしてこれだもんな)
こんな事態想定できるはずもない。想定していたのは前世の記憶を持ったまま赤ん坊からやり直す人生だ。いや、実際にはそうやってまた生きて来たんだろう。だがその記憶を失くした。
これまで一緒にいた家族についてすら、覚えていない。
(僕、何の為に生きてるんだろ……)
「もう!何なのよこんな所に連れて来て!……あれ?夜早くん……?」
ふと、背後からそんな声がした。あまりにも聞き覚えのある声だった。
その声の主を予想して振り向けば大当たり。日向夏美が立っていた。その隣にはギロロの姿がもある。が、そのギロロを見て四季は固まった。
ギロロは何故か巻き髪をした金髪のカツラを被ってタキシードを着て薔薇の花束を持っていた。
(うわ、何これ気持ち悪すぎ……)
夏美に告白でもするつもりなのだろうか。絵面からして相当に気持ち悪いのだが。四季は思わず夏美に近付いて耳打ちする。
「日向、ギロロどうしちゃったの?いつもより更にキモくなってるけど」
「それがね……ギロロが大変な事になっちゃって」
聞けば何とギロロが七人に分裂してしまったのだとか。分裂したギロロ達はそれぞれ性格が違い、意気地なしもいれば、韓流スターのような笑顔を浮かべる者、妙な家庭的な者もいたそうだ。
そして何より過激派の軍人の面が出て一気に地球を制圧しようとした者もいて、そいつと一悶着起こして場が混乱したタイミングを狙ってこの金髪巻き髪のギロロが夏美をここに連れ出したのだと言う。
「その理由がバイト掛け持ちする為に分裂……?凄い技術なのに使い道アホ過ぎない?」
「一応クルルの装置の光線をもう一度浴びせればギロロの本体に戻されるらしいんだけど……それを分裂した数だけやんなきゃいけないみたいで……」
「しかもギロロの隠れた性格面が反映される形で分裂……ねぇ。次から次へとトラブルに事欠かないね」
夏美から事の経緯を聞いた四季は呆れる他ない。理屈としては理解できなくもないが、仮にも侵略者が分裂を使ってやる事がバイトでの荒稼ぎなのか。
そしてワナワナと震えて四季と夏美を交互に見ていたギロロの分裂体、ギロぽんは遂に我慢の限界を迎え、四季を指差して叫ぶ。その目にはメラメラと嫉妬の炎が燃えている。
「四季!貴様は……夏美を幸せにできるのか!?」
「は?」
「本当に夏美を愛しているのか!?」
「ちょ、ギロロ!?」
ギロぽんのいきなりの発言に夏美は顔を赤面させる。ギロぽんが何故そんな事を言うのかは鈍さ故に理解できないが、言葉の意味そのものは分かる。そしてその問いの答えこそがあの日の告白の返事となる事も。
心臓をバクバクと鳴らしながら、恐る恐る四季へ目を向ける。
「……」
(え、何でそんな考え込むの?)
ギロぽんの問いに四季は即答できなかった。正直、あの事故キス以来、夏美を意識する事が増えたのは事実だからだ。不意に夏美の顔が視界に入ればその唇に視線が行く事があるのも自覚している。ドキリとするのも事実だ。しかも二回目すらあった。更に夏美を意識せざるを得ない。
だがこれが恋愛感情なのかと問われるとYESとは言えない。……気がする。記憶を失くす前からも四季は夏美の気持ちに気付いていなかったようだし、半端な原作知識で夏美はサブローを好きだと決め付けていた。
(それに……結局日向が好きなのは記憶を失くす前の僕だ)
記憶を失くす前から好意を向けていたのだから当たり前の話だ。何があったのかは分からないが、記憶を失くす前の四季が夏美と交流し、人間関係を積み重ねた結果が夏美が四季に向ける好意だ。
仮に今の四季が夏美の告白を受け入れて、交際したとしよう。でもその今の四季にはこれまでの人生の中での夏美との積み重ねなんて一切ない。
それは夏美が好きになった四季ではない。
(そんなの、詐欺じゃないか……)
応えられない。応えていいはずかない。何も知らないのに、何も覚えていないのに知っている、覚えていると偽っているのだから。
(答えなんて最初から決まってるじゃないか……)
考え込む四季に痺れを切らしたギロぽんは四季に飛び掛かろうとする。
「僕は……」
「貴様の愛の深さ、この俺が確かめてやるーー!!」
瞬間、上空から一筋のレーザーが撃ち出され、ギロぽんに命中。そのまま撃沈した。
咄嗟にその方向を見れば
「あれは……!」
あのギロロも分裂体と見て間違いないだろう。彼こそ冷酷非情な面が分裂したギロッペ。先程、日向家にてギロロ本体が侵略の足を引っ張る原因として夏美を始末しようとした個体でもある。
「あのギロロ、凶暴なの!気を付けて!」
すると遅れてまた別のギロロがやって来た。
「夏美ぃーーー!」
「新手!?また分裂したっていうギロロ!?」
「違う!俺は本体だ!というか、何でお前が知ってるんだ!」
「日向に聞いたからだよ……」
曰く、本体との事。まぁ分裂の時点で本体もクソもない気がしたが、今は襲い掛かってくる冷酷な面を有するあのギロッペとやらの対処が優先である。
ギロッペはジッと四季を見つめてから、妙に大きなライフル銃を構える。
「貴様からは嫌な感じがする……生かしてはおけん!!」
「ギロロアンタね……夜早くんに傷一つでも付けたら許さないわよ!!」
「いや本体俺……」
ギロッペの発言が聞き捨てならない夏美は怒りの叫びを上げる。本体のギロロの切ない主張は聞き流された。
ギロッペは問答無用で四季と夏美目掛けて銃を乱射。四季、夏美、ギロロは咄嗟に大きな木の裏側に隠れてレーザー型の銃撃から逃げて凌ぐ。
「不味いな……あのギロロ、完全に僕ら二人を殺しに来てる」
夏美は地球防衛最終ラインとして。四季は夏美が想いを寄せる恋敵としてと言った所か。あのギロロは随分と過激なようだ。
対抗手段はやはりギロロの持つ武器くらいか。
「ギロロ、武器は?」
「小隊の財政難でほとんど売却された!その数少ない武器をあいつに独占されている!」
「じゃあアンタ何の為に来たのよ!!」
武器もなく駆け付けたギロロへの夏美のツッコミは尤もだが、言外に役立たずと言われたギロロは意気消沈する。
木の裏側に隠れていた事はバレバレだったので、すぐにギロッペは回り込んで正面から銃撃してくる。四季は咄嗟に夏美の手を引っ張り、駆け出す。夏美のツッコミに意気消沈していたギロロ本体は出遅れて、ビーム弾が直撃してアフロになった。
「さっさと二人纏めて消してやるぜ」
逃げる二人を背後から更に銃撃。後ろからの爆発に煽られて揃って前方へ吹っ飛ぶ。
「うわっ!?」
「きゃああっ!?」
四季が夏美を押し倒す形で覆い被さる。顔の位置は一致しており、あと数センチでキスする事になる距離だった。
間近でお互いの顔が目の前にあり、目が合う事で二人して固まってしまう。当然、これまでの二回の事故キスを連想するには十分であり、みるみる顔が赤くなっていく。
「……ぁ」
「っ…!」
四季は慌てて、夏美の上から退いて夏美に手を差し伸べて立ち上がらせる。夏美もドキドキしながらもその手を取る。
「……ごめん」
「ううん……」
「なんか……日向とはこんなんばっかだね」
「そう……だね」
(な、何だこの空気……)
妙に甘酸っぱい空気を醸し出す四季と夏美を前にアフロで蹲るギロロは戦慄する。だがギロッペは待ってくれない。
「戦場で馴れ合いとは余裕だな」
追撃として今度はミサイル弾が放たれた。お互いに気を取られていた四季と夏美はその場から動けなかった。逃げる時間は……ない。
「な、夏美ぃーーーーー!!」
(あ、ヤバい……これ、日向も僕も死……)
死を明確にイメージした事で脳が刺激され、あるスイッチが入った。
その証拠として、四季の瞳にグルグルとした渦巻き模様が浮かび上がった。
自分の胸板に頭部を当てさせる形で夏美を抱き寄せ、しゃがむ事で紙一重で弾丸を回避した。夏美の手を引っ張り、駆け出す事で後方からの爆風からギリギリで逃げ延びる。
(あんな最小限の動きで躱しただと……?)
ギロッペはギロロの軍人としての技量も、目も引き継いでいる。それ故に素人が偶然で躱せるような攻撃でなかった事は彼自身が一番理解している。それ故に不可解だった。
「よ、夜早くん……?」
「日向、僕のそばを離れないで」
「は、はい……」
混乱しているのは夏美も同じだ。明らかに避けられないはずの弾丸を四季は夏美を守りながら躱してみせた。そして疑問に持つ前に離れるなと言われて顔が一気に熱くなった。
四季は一切ギロッペから目を離さなかった。
「フン、どの道仕留める事には変わらん!!」
今度は回り込んで再び真正面から直接銃で射殺しにかかる。
いつの間にか拾ってその手に握られていた礫が投げられ、ギロッペの顔に命中して照準がズレて上空を弾丸が通過する。
(何故……俺の動きが読まれた……!?)
ここで初めてギロッペは四季の顔を真正面から目で捉えた。
(なんだ……?あの目は?)
四季は渦巻き模様が浮かぶ瞳でジッとギロッペを見据えている。
(“答え”が分かる。スッと出てくる。即座に頭に浮かぶ……。日向を守り抜きながらこのギロロを止める方法も分かった。後は実行するだけ……)
一瞬、この現象に対する疑問が浮かぶがそれすらも全ての“答え”が出て解消される。ならば次は目の前にいるギロロの分裂体への対処だ。どうすればこの場を凌げるのか、根本的に命の危険を解消するにはどうすれば良いのか。それら全てにも“答え”が出せる。
5分後、
「……マジかよ」
空中から好き放題銃を乱射するギロッペの猛攻に対し、四季はベンチを盾にしたり、石を投げたり、土をギロッペの眼前で撒いたりと、その場にあるもので凌ぎ続けていた。夏美を庇いながら。恐らくは当事者である夏美も状況を上手く理解できていないだろう。偶に抱き締めながら攻撃を躱すのでその度に赤面して、頭が真っ白になっている。
「ゲロォーッ!!不味いでありますよぉーー!!またギロロが四季殿と夏美殿を襲ってる構図になってるであります!!これを二人のカップリングファンの宇宙人達に見られたらまた炎上して、軍のイメージも低下!!我輩達の立場が更に悪くなっちゃうであります!!」
まず炎上を恐れるケロロ。しかしクルルの焦りの理由は他にあった。クルルの視線は四季の渦巻き模様となっている瞳に集中していた。
(間違いねぇ、能力が発動してやがる……!それも無意識にやってんのとは訳が違う!四季の奴、自覚して使ってる!!)
今クルルが最も警戒していた事態。それは四季の特殊能力が発動する事。その能力の詳細をメリットからデメリットまである程度把握しているからこそ、避けたかった事態。
(やべぇぞ……脳味噌にダメージ負ってんのに能力を……それも先輩相手の戦闘なんかに使ったら!!)
クルルは明確に焦っていた。この後四季に訪れる出来事もまた予測できていたから。
一方ギロッペは明確に苛立っていた。数と質は限られているとはいえ、軍人がいくつもの銃火器を使いながらも、地球の一般人相手に女を守りながら自分の攻撃を凌がれ続け、攻め切れないでいる状況に。
(あと一手……ここであのギロロは行動に出る。それでチェックメイトだ)
「こうなればここら一帯纏めて吹き飛ばしてくれるわ!!」
「ちょっと!?良い加減にしてくんない赤ダルマさん!?」
ケロン星の科学技術を使い、次に虚空から取り出したのは射出口が中々に大きいバズーカ砲。そこから出される弾丸も相応に大きく、これを放てば丸ごと全て爆破できるだろう。チマチマした攻撃を逸らされたりして防がれるなら、凌ぎ切れない大規模攻撃。定番と言えるだろう。
「終わりだ!!」
「君がね」
四季に向かってバズーカを構えるギロッペ。
ここで四季の方も人一人ぶっ殺すのに丁度良いサイズのコンクリートの破片を全力投球。ギロッペが銃を乱射した事で砕けた足場のものだ。それがギロッペの構えたバズーカの射出口に吸い込まれるようにすっぽり入る。
瞬間、引き金を引いたバズーカが内側から爆発してギロッペは地面に物凄い勢いで叩き付けられた。なんか頭部から赤い液体がドクドク出てるが気にしない。
「ぐはああああっ!?」
クルルはすかさずギロッペに分裂から戻す為の光線を放ち、ギロロ本体に還元する。
「のああああああっ!?」
そしてギロッペが受けたダメージが全てギロロ本体にフィードバックした。再び黒焦げアフロになってギロロは倒れた。
「噛ませ犬治して出直して来なよ全く……」
「ほへ〜」
攻撃を凌ぐ中で何度も抱き締められた夏美は真っ赤になったアホ丸出しの表情で惚けていた。
ケロロがギロッペに滅茶苦茶にされた高台の後始末に悩む中、四季は頭の中で今の出来事……正確には発動した能力について改めて自覚する。そしてこの先自分の意思で使う為の“答え”を真っ先に出す。
(にしても驚いたな。まさかこの能力を転生特典って奴で貰ってたのか……。でもこれがあればこの先記憶喪失を隠し通す事も、地球侵略を防ぐ事も……)
この能力の詳細もこの能力を自分が持っている理由についても既に“答え”を出していた為、色々と納得すると同時に今後の使い道まで考え始める。
一方、正気に戻った夏美は変わらず顔を赤らめながら四季に歩み寄る。
「あ、あの夜早くん……。助けてくれてありが……」
「ん、ああ日向も無事で何より……」
たらり。
「……え?」
四季は鼻血を流していた。ポタポタと血が滴る。そしてすぐにその他の異変も一斉に四季を襲った。
「ゔぶ…っ」
最初に来たのは強烈な吐き気だった。
続けて頭が割れる程痛い。なのに苦しむ事も泣く事もできずに動悸が激しくなり、呼吸も難しく感じる。足元も視界も安定せず、身体の重心といったバランスが崩れ始めて立っていられなくなる。
ぐにゃり。と視界が曲がった。
心配する表情の夏美がいる正面に前のめりになり、夏美の他の女子と比べても大きい胸に顔から突っ込む。
「ちょ!?夜早くん!?……え?」
夏美はいきなり四季が自分の胸に顔を埋め出した事に驚くが、すぐに違和感に気付いた。明らかに四季の身体が重い。全体重がそのまま倒れかかって来ていたのだ。それに四季の顔や身体から出ている汗が尋常じゃない。息も荒い。まるで過呼吸を起こしているかのように。
「夜早くん……!?」
すぐに夏美一人では支えられなくなり、地面に叩き付けられる結果を防ぐ為にゆっくりと慎重に寝かせるので精一杯だ。恥ずかしがる余裕もなく、自分の太ももを使った膝枕をするしかない。
「ぁ……ぇ……」
四季はそんな事を気にする程思考に余裕がない。夏美の胸に顔を埋めた事も、膝枕されている事も気付いてすらいない。
ぐるりと視界が反転し、強烈な目眩と共に意識を失った。
「夜早くん!?しっかりして!!」
意識が闇に沈む中、目に映るのは涙を浮かべて叫ぶ夏美の顔だった。
倒れた四季に呼びかけるも、完全に気を失っている。その顔色は見るからに青くなっていき、良好とは言い難い状態である事は夏美にもすぐに分かった。呼吸も荒い。
同時に夏美の脳裏にある出来事が浮かんだ。
以前の大怪我による入院。
その時の事は詳しくは知らないし、今の四季は怪我もしていないので状況も違うが、それを知った時の不安と恐怖が蘇る。このままでは四季がどうなってしまうのか。恐怖で頭が真っ白になる。
一方でこうなる事を読んでいたクルルは端末で準備をしていたが、予想以上に早かった事に内心舌打つ。せめて準備が完了するまで保てば良かったのだが。
(やっぱりこうなったか!オーバーヒートを起こしてやがる!そもそも脳にダメージ負った状態で好きに使える能力じゃねぇんだ!こうなるのは目に見えてたってのに!!)
クルルは想定していた事ではあるが、できる事なら来て欲しくなかった状況を前に冷静に周囲に指示を出す。
「今すぐ四季を日向家に運ぶぞ!あそこなら最低限の道具は揃ってる!救急車呼んで病院に運ぶよりかは早え!」
「りょ、了解であります!」
ケロロはクルルが隊長みたいな振る舞いをしている事にツッコむ余裕などなく、慌ただしく
尚、ギロロは放置。
ギロロ
アニメとは経緯が違うが分裂して出た個体はほぼ同じ。ただし経緯が違う事で行動も少し変わった。
四季の能力
転生特典として神様から貰った能力。何の能力を貰ったのかは本人も使うまで知らされていなかった。
普通は訓練されてもいないのにいきなり使いこなせるものではなく、発現しても必然的に不安定なものとなる。
IQ190の天才でも訓練しなければ能力を常に使い続けると脳がもたない為、普段の生活では本能的に能力を閉ざすという。
そこまでの頭脳を持たない四季では更に安定させられない。その上、記憶喪失になる程に脳にダメージがあればどうなるかなど言うまでもない。
読みたい展開は?
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ケロロ小隊の借金問題
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ラブコメパート(つまりギロロの脳破壊)
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記憶喪失前エピソード
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記憶喪失問題