ケロロ軍曹 転生して早々記憶喪失!? であります! 作:リボーン2期待ってます
日向家の地下室。そこはケロロ軍曹の私室となってはいるが、ケロロ小隊の地球侵略の最前線基地の入り口でもある。
その部屋は今真っ暗であり、突然そこにいたケロロにスポットライトが当たった。
「ゲロゲロリ。前回の恋愛リアリティーショー大作戦……これは実に惜しかった。サブスク登録宇宙人の数は二億人を突破し、本来ならば1000億以上の利益が見込めた……」
語られるは前回失敗した作戦。次の瞬間、ケロロは号泣しながら喚き始めた。
「それが全額返金ってどういう事!?返金したのに税金は払えってどういう事!?結果数百億赤字ってどういう事!?予算がないどころか借金!?これで侵略!?笑わせるなァーーーーッ!!!」
正に魂の叫び。普段から無駄遣いやアホな作戦に資金を費やして結局失敗……と浪費を繰り返してほとんど底を尽きかけていた地球侵略予算。それを補充しようとした資金稼ぎ。それが恋愛リアリティーショー大作戦だった。
「仕方ないですよ。折角ナッチーとクソボケをくっ付けて、そのついでに大儲けしようとしたのに、伍長さんが全部台無しにしちゃったんですから」
「本部も相当お冠だぜぇ。今頃センパイも本部で散々絞られてるだろうからなぁ」
だがそれも侵略者であるにも関わらず現地民である日向夏美に惚れてしまったギロロ伍長が彼女が他の男の物になる事に耐えられずに激昂。その結果、二人の恋の行方を見守っていた宇宙中からブーイングを喰らい、サブスクで稼いだお金は全額返金。それはそれとして税金は払わねばならず、残ったのは赤字だけ。
タママは本部に連行されたギロロの事が気掛かりなのか、彼の今後を案じる。
「反逆扱いされちゃうって事ですかね?これだけの損害ですし、除隊なんて事も……」
「さぁな。それよりも俺達には優先するべき事が山積みだぜ」
「そうだよ!この赤字補填しないと吾輩、もうガンプラ買えないであります!!」
ギロロの個人的理由でのやらかし故に本部からの資金援助は先に突っぱねられた。ケロロ小隊は自力でこの数百億のマイナスを巻き返させばならない。
「そこで、新たな金策として今度は地に足付けたプランで行くであります!」
ケロロが取り出したのは奥東京ラジオ局の公式ホームページから印刷した資料。『623とシーズの俺達ラジオ』に関するものだ。
「顔出しNGの覆面DJコンビ・623とシーズ!その素顔を暴いて二人の素顔にかかっている懸賞金を頂くであります!」
「でも覆面DJの顔を知りたいなんて懸賞、儲かるんですか?」
「心配ないのだよタママ二等。ネットにはそういう懸賞が大量にある。数十万円程度のものから数百万円規模のものまで……それら全てを掻き集めれば……」
「全額合わせても全然足りそうにないけどな」
「ちっさい所からコツコツやってくの!いきなり1000億規模の稼ぎが見込める作戦なんて早々ないの!」
恋愛リアリティーショー大作戦を再チャレンジする考えもあったが、あんな事があってまたサブスク登録をしてくれる宇宙人などほぼいない上、あのデートは夏美の友人がセッティングしてくれたもの。夏美本人に四季をデートに誘う度胸など無い。結論、実現不可能だった。
「それに夏美殿も常日頃から623とシーズの素顔を知りたがっている……それを教えてご機嫌取りすればどうにかガンプラ禁止令も……」
「それが本命じゃないですか?」
ケロロには日向家の家事労働によって得られるお小遣いがある。ケロン軍とは別枠の収入なので、夏美に課せられたガンプラ禁止令さえ何とかなればガンプラを買い続ける事はできるのだ。……何とも情けない話である。
「でも結局どうやって突き止めるですか?」
これまで多くの地球のマスコミやパパラッチが突き止めようと挑戦した623とシーズの素顔。確かに成功すればそれなりの利益はあるだろうが、実現できなければ取らぬ狸の皮算用だ。
「問題ない……。既にあの男を雇い、向かわせた」
「ぐ、軍曹さんまさか……!?」
「クククー♪奴を使うのか……」
悪どい笑みを浮かべるケロロ。タママとクルルはケロロの言う『あの男』の正体を察して戦慄する。
「だから後は結果報告を待では良いでしょ。さて、ゲロロ艦長でも観よーっと♪」
清々しい程の他力本願。クッションに身を任せてTVをつけてアニメ鑑賞を始めた。
((これ今回も失敗に終わるな))
タママとクルルは既に失敗を悟り、後始末の方法を優先して考える事にした。
****
(はー…やっと収録終わったぁ)
夜9時を回ってラジオパーソナリティとして任された番組『623とシーズの俺達ラジオ』の収録が終わり、自販機で買ったカフェオレを飲んで一息。
(ラジオDJ……やっぱりこれ凄え疲れる。楽しいっちゃ楽しいけど、勝手が分からないから“シーズ”としての最適解が未だ掴めない……)
収録は二回目だが、慣れるはずもなく、ラジオDJとしての仕事に辟易とする。記憶喪失前に何をきっかけに始めたのか知らないが、そこからのハウツーがあるのとないのとでは大きく違う。
(にしても、僕はラジオなんて前世じゃ碌に聴かなかったけど、結構リスナーっているもんなんだね。ほぼ毎週葉書出してくれてる人もいるらしいし。先週格言に選んだナッチーさん……だっけ。滅茶苦茶感激したってコメントの葉書くれたな。なんかナッチーさんの葉書は結構好きかも)
尚、今週は番組内では読まなかったが。
記憶喪失前は好きでやっていたであろうラジオがストレスになりかねないが、ラジオネーム・ナッチーを筆頭とする応援の葉書はある意味癒しだった。
そんな調子で収録を終えた四季は帰宅する最中だったのだが、夜空に突然不快さを存分に含んだ快活な笑い声が響いた。
「はーっはっはっは!!」
(……何だ?全身からサブイボが……)
「とうっ!」
「うおっ!?」
シュタッといきなり目の前に成人男性が飛び降りて来た。その男が顔を上げた瞬間、四季は猛烈な嫌悪感に襲われた。記憶がなくても身体が覚えている程の嫌悪感。
何故か固定された表情。無駄に濃い顔とキャラ。大袈裟なのに無意味なポージング。それらが導き出すものは……あの自称宇宙探偵。
「久しぶりだな!少年っ!!」
「……どちら様ですか?」
『ケロロ軍曹』のアニメ知識がほとんどなくてもこの話の通じない暑苦しい馬鹿の事は印象に残っていた為、ある程度把握してしまっていた。
(疲れてるのにこんなのに付き合ってらんないよ……。この人に関しては原作知識ごと忘れても良かっただろ)
記憶があろうとなかろうとこの意味不明なハイテンション馬鹿とは心底関わりたくない。この男に関する知識と引き換えにラジオDJとしての記憶を戻して貰えないだろうかとすら思う。
「何ィッ!?この俺を覚えていないだと!?さては、記憶喪失だなっ!?」
「ブフゥッ!!?」
馬鹿丸出しの宇宙探偵の出鱈目推理。しかしそれは偶然にも全くのその通りであり、四季にとっては心臓に悪過ぎた。思わず飲んでいたカフェオレを噴き出してしまう程に。
「すみません、すみません!忘れたい程兄が鬱陶しくてすみません!」
(この人も苦労してんのね……)
いつの間にかウサ耳を付けた女性が現れて、ペコペコと頭を下げて謝罪を連発。彼女の名はラビー。アニメを観ている時も兄がこんなんで心底同情したものだ。
愚兄賢妹とは正にこの兄妹の為にある言葉だと思った。
「記憶を失くしてしまったのならば仕方ない!改めて名乗ろう!俺の名は!宇宙探偵556!!」
(まぁ、このお馬鹿さんから記憶喪失がどうとか話が行っても誰も信じやしないでしょ)
彼の名は宇宙探偵556。中途半端であやふやな原作知識によればケロロ軍曹の友人の宇宙人であり、探偵としてはお世辞にも優秀とは言えず、碌に仕事のないプー太郎でその癖自覚のないトラブルメイカーというのが四季の認識である。そばにいる妹の収入で生活を賄っている恥知らずという認識もある。
例え556からケロロ軍曹やその部下達、果ては日向夏美に記憶喪失だなんて話が漏れようとスルーされるのが分かった為、放置する事にした。この男に社会的信用は皆無なのが救いだった。というか、30分もすればどうせ忘れる鳥頭だ。
「で、僕に何か用?」
「今日俺は!宇宙探偵としての依頼を受け!謎の覆面DJコンビ、623とシーズの素顔を突き止めに来たんだ!」
「あ、そう…」
探偵としての守秘義務は全く意識にないらしい。
それにしても素顔晒したくないから覆面DJやってんのにそれを暴こうとするマナーの悪い奴は何処にでもいるものである。ネットで調べたが、何処の誰によるものかは知らないが二人の素顔の情報に30万以上の賞金を非公式ながらもかけている人までいるとか。
今日の収録後も奥東京ラジオ局の前には何処ぞの記者やパパラッチが二人の素顔を暴こうと大勢スタンバイしており、四季とサブローは裏口からコッソリと帰宅する事にしたのである。
(大体ラジオで喋ってるだけの奴の素顔なんてそんな気になるもんなの?)
記憶喪失故に自分のラジオパーソナリティとしての影響力をいまいち理解していない四季はマナーの悪い連中への呆れの感情しかなかった。
「それもう探偵としての範疇越えてない?普通にアウトだと思うんだけど。そもそも宇宙関係ないし」
「この依頼を達成すれば、なんと!報酬で500円も貰えるんだ!!見ろ!これが前払いで貰った100円玉だ!」
(駄目だ。何言っても通じない)
556との意思の疎通を図る事に関してはもう匙を投げた。そして500円で動くのは安過ぎる。ピンハネされているなんて次元じゃない。
探偵としての調査の相場も知らずに一攫千金レベルの依頼を安請け合いするこの馬鹿にサブローが623で四季がシーズだとバレる心配はなさそうだが、万が一623とシーズの素顔が公表されたら、その依頼人は必ず訴訟しようと決めた。主に556に関わる事になった精神的苦痛で。
「そういう訳で少年よ!623とシーズについて何か知らないか!?」
「うぜ〜…じゃなくて、知らないよ」
四季の前に現れて呼び止めたのは聞き込み調査の為だったらしい。人の話は碌に聞かない癖に自分の話は通そうとする姿勢にイラッとした。
痺れを切らした556は急に大袈裟な動きとポーズを取り、叫び出した。行動に脈絡がなさすぎるが、そういうキャラである事は理解しているので、心底嫌そうに556を見る四季。
「癒着!!」
(探偵としてそのキーワードは駄目じゃない?)
これこそ556の宇宙探偵モードへの変身。見た目はただバイク用のヘルメットを被っただけに見えるのだが、他に変化はあるのだろうか。
「ではいよいよ本命の奥東京ラジオ局に行くぞ!続け少年!」
何故か556の中では四季の同行は確定事項らしく、623とシーズの正体を突き止めるべく、走り出した。
奥東京ラジオ局とは真逆の方向へ。
「はーっはっはっは!良い知らせを待ってろよケロローーー!!」
「まってー!お兄ちゃん!」
(いや雇い主あのボケガエル?)
報酬の相場を説明せず、ワンコインで数十万はくだらないであろう仕事をさせる辺り、随分と薄っぺらい友情を見た。
走り出す556とそれを追うラビー。その様子を見送った四季は家に向かって歩き出す。
「さて帰ろう」
万が一ラジオ局に辿り着けてもそこにはもう四季もサブローもいないし、二人が覆面DJである事を結び付ける証拠のようなものもないので、556には正体を暴く手段もスキルもない。放置して問題ないだろう。多分。
できればもう二度と出会さない事を祈りながら帰路に着く。
(もう分かってた事だけど、やっぱ宇宙人と関わりあるんだよなぁ、僕。確か日向の弟君って結構推理力あるっぽいし、会ったら宇宙人関連の話の内容に気を付けないとすぐに記憶喪失がバレかねないな……)
探偵繋がりからさっきの迷惑野郎よりよっぽど探偵になれそうな人物を思い浮かべる。彼とも間違いなく顔見知りだし、充分な情報が集まるまで接触しないようにしようと考える。
「……?」
ふと、何処からか視線を感じた気がしたので周囲を見回すが、誰もいない。556のデカい声のせいで623とシーズ狙いのパパラッチが潜んでいるかもしれないと考えた四季は急いでこの場から離れる事にした。
「クククー♪万が一の場合はあの兄妹の記憶を消去しようと思ったが、問題なさそうだなぁ。……あの能力も流石に発動しねぇか。脳への負担を考えたら、今は絶対に抑えなきゃならねぇからなぁ」
****
翌朝、ケロロ軍曹はそろそろ手に入るである一攫千金とガンプラ禁止令解除の為の重要情報を今か今かと待ち侘びていた。
「さて、556の奴は623とシーズの正体を突き止めてくれたでありますかな?」
するとケロロ軍曹の前にいきなり異次元から繋がっているであろう穴が開き、見知った人物が現れた。
「宇宙警察・ポヨンポヨ!」
宇宙の平和を日々守り続けている宇宙警察官。そう名乗っている割に色んな星の侵略者を放置どころか侵略を合法としていたり、疑わしきはすべて検挙の横暴捜査というモットーを掲げているという本当に行政組織であるのか疑わしい存在である。
「ゲロ!?こんな朝っぱらからどうしたでありますか!?」
「これを渡しに来たポヨ!」
そう言って手渡されたのは一枚の請求書だった。それは多額の負債を抱えるケロロ小隊にとって最悪の知らせだった。
「こ、こりは……?」
嫌な汗が止まらない。そんな汗だくだくのケロロにポヨンはプクーッと頬を膨らませて説明を始めた。
「貴方が雇った宇宙探偵の556さんがやらかした分の請求書ポヨ!昨日の夜、街中の窓を割って侵入して623とシーズを探して大暴れしたポヨ!色んな家のドアや窓を大袈裟に蹴破って入ったり、レーザー竹刀で家具や機材を幾つも壊したり!あれじゃあ強盗と間違えられても文句言えないポヨ!」
「ま、マジで……?」
556が成果は出さず、迷惑ばかりかける人物である事を忘れていたケロロのミスだ。
「あの迷惑な宇宙探偵を雇ったのは貴方だから、その修繕費や街の
「ゲ、ゲロォーーーーーッ!?」
ケロロ小隊、借金追加!!
宇宙探偵556
実は記憶喪失前の主人公をマジギレさせた事があるほぼ唯一の人物。その際はケロロが夏美から受けるお仕置きの比ではない報復を受けた。
ギロロの処遇についてはもうちょっと待ってね。