ケロロ軍曹 転生して早々記憶喪失!? であります! 作:リボーン2期待ってます
A.大好きです。だからこそ、主人公のヒロインは夏美なのです。夏美が他の男と真剣に愛し合う姿を見て脳が壊れるギロロを想像するだけで飯が美味い。これからもこの歪んだ愛を貫いていきます。
自室の勉強机にて日向夏美は窓からの景色をぼんやりと眺めていた。
うっすらと窓に映る自分の顔を観て視線は自身の唇へと向き、その指でゆっくりと優しく唇に触れる。
(キス……しちゃった。夜早くんと……)
紛れもない事故だったが、確かにこの唇と彼の唇がしっかりと重なり、粘膜同士が密着し合うあの感覚が忘れられない。そしてそれは相手が意中の人である四季だったからこそのもの。
(……もう一回、ちゃんとしたいな……)
だからこそ、もう一度したいと考えてしまう。恐らくあの時のケロロの乱入がなければ夏美は振られていた。当然、キスなんてできなかっただろう。
告白する前日にさつきから一方的に告げられたアドバイスが脳裏に過ぎる。
『夜早君みたいな鈍感タイプにはいっそ不意打ちでキスするくらいで良いの!案外そーゆーので意識してくれたりするんだから!そういう誘惑だって大事なのよ!』
もしさつきのアドバイスが的を射ているのなら、今頃四季は前よりはほんの少しだけでも夏美の事を意識してくれるのだろうか。
あのキスをきっかけにさつきの言う誘惑ができるのなら、ここから巻き返す事もできるのだろうか。四季と正式に恋人になれるのだろうか。
(ううん、なれるかじゃない!なりたい!絶対に!そして今度は夜早くんとお互いに想って、ちゃんとキスしたい!)
ならば今自分は何をするべきかを考える。さつきのアドバイスを元に四季に意識して貰うには……
「……もっと良いリップクリーム買おっと」
いつでも“二回目”ができるように。とりあえず四季が意識せざるを得ない部分でのアピールも兼ねてケアはしておく事にした。
****
「「あっ」」
月曜日、登校して教室に入るとまず最初に日向と鉢合った。
「お、おはよ……夜早くん」
「……おはよう、日向」
もう顔が熱い。日向と顔を合わせた瞬間、あの時のキスがフラッシュバックしてまともに目を合わせる事もできない。刺激が強過ぎる。
「「……」」
どうにか日向の顔を見ようとしても日向の唇に目線が行ってしまう。……妙にいつもよりぷるんとしているように見える。
日向の方もいつも以上に顔を真っ赤にしてモジモジしている。
気不味い空気の中、クラス中の視線がこちらに集まって来たので、すぐに日向から離れて席に着く。……不味い、クラスメイト達がすげぇニヤニヤしてこっち見てくる。
「ちょっと夏美!何よ今の!夜早君となんか進展あった訳!?」
「なんか夜早君の反応もいつもと違うし、もしかするの!?」
「もしかするって……あれはその、そんなんじゃ……」
師走と霜月に詰め寄られ、瞬く間にまた顔を真っ赤にして蒸気を噴き出す日向。やめてくれ、既にボロ出まくってるから。
これ以上この場にいると間違いなく飛び火して最悪キスした事が知れ渡る恐れがあったので朝のHRが始まるまで屋上に避難する事にした。
屋上から校内を見渡すという現実逃避をしながら溜め息を吐く。
一体いつからこの学校はこんなに居心地悪くなったんだ……?記憶失くしてからか。居心地良かった事なんてないもん。
「だーめだ。日向の顔がまともに見れない……」
自分の事を好きだって言ってくれる相手と事故とはいえキスをして平然としていられる訳がない。
……転生してからの記憶が消えてるから今世でのファーストキスの相手はあの日向夏美なんだよなぁ。あの感じからして向こうもファーストキスだったみたいだし。これで意識するなという方が無理がある。
そんな事を考えていると突然、背後から勢い良く誰かが抱き着いてきた。
「四季くーん!」
「うおっ!?」
「お久しぶりです!四季くん!」
背後からというより、上からのしかかられたような……。
屋上なのに上から抱き付かれた。その事実にある可能性が思い浮かび、振り向けば吉祥学園のブレザーではなく、セーラー服を着た女の子がニッコニコで僕に笑顔を向けていた。
彼女の名前は東谷小雪。アニメではドロロとコンビを組んでいた忍者だ。何でも女の子でありながら日向に好意を向けていると前世で聞いた事がある。
そして僕が退院して学校に登校してから、これまで一度も顔を合わせた事がなかった相手だ。
一応教師からクラスメイトである事は聞いてたが。呼び方は普通に苗字にさん付けだって言ってたな……。正直日向に告られてから一番どう接して良いか分からなかった相手だ。その上、彼女はこれまで一度も登校していなかった。嫌な推測がいくつも浮かぶには十分過ぎる。
「あ、ああ久しぶり……。てゆーか、なんで最近学校来なかったの?」
「実は四季くんが入院したと聞いて、ドロロにお留守番頼んで薬草を採りに行ってたんですよ!」
「へ?」
薬草……?
意を決して学校に来ていなかった理由を尋ねてみれば、その理由は僕の入院がきっかけなの?てかドロロは一緒じゃなかったんだ。
東谷さんはちょっとドヤ顔で、いくつかの薬草…というか花を袋から取り出して見せてくる。
「忍の里よりもっと遠い秘境の地に極小数のみ生える薬草です!これで四季くんの怪我もだいじょ~び!他にも色々あります!」
それで今の今まで登校してなかったんだ……。てか僕が退院してからもう二、三週間経つんだけど。もう怪我自体は治ってるし。やっぱこの子、ちょっとズレてるよな……。
で、肝心の薬草とやらはサフラン、セイボリー、ローズマリー……色々あるけどパッと見で分かるのはこれくらいか。中には本当に忍者以外には分からないものもあるんだろう。
「これを煎じて飲めば精りょ……じゃなくて、怪我なんてすぐ治ります!」
「ごめん、一応もう治ってるんだ……。退院してるし」
何と言うか……申し訳ない気分だ。苦労を水の泡にしてしまって。
……てかなんか東谷さん、息荒くね?忍者でもこの薬草集めるのはそんなハードだったのか。休みを挟む事なく学校に直行して来たのかもしれないな。
でも怪我をした僕の為に学校休んでまで薬草を採取しに行ってくれた気持ちは素直に嬉しい。そこまでしてくれたお礼と心配させたお詫びも兼ねて後で休んでた分の授業のノート見せてあげよう。
すると今度はクラスメイトからの詰問から逃げて来たのか、日向が屋上にやって来た。
「あ!いた!夜早くん、そろそろ授業が……」
「あ!夏美さん!」
「こ、小雪ちゃん!?今までどうしてたの!?全然学校来なくて心配してたのよ!?ドロロに聞いても教えてくれないし!」
日向を見つけると今度は日向にも嬉しそうに駆け寄って抱き付く東谷さん。抱き付かれて勘違いしそうになったが、どうやらその辺はアニメで観たのと変わらないらしい。
「何でも怪我して入院した僕の為に薬草を採りに行ってくれてたんだって」
「や、薬草……?」
「えへへ、ドロロには秘密にして貰ってたんです。私が頑張りたかったから!」
困惑する日向をよそに少し東谷さんの様子を観察する。と言うのも、結局日向に好意を寄せているのなら、僕への対応も少し違和感があるからだ。確かアニメだと恋敵のギロロに対してそこそこ辛辣な扱いをしてたと思うんだよな。日向の作ったお菓子を巡ってギロロを縛り上げたシーンとかなかったっけ?逆にサブロー先輩に対してはそもそも絡みを確認した事ないから分かんないし。
周りから見て相当にバレバレだった日向から僕への好意についても、東谷さんだって気付いていたんじゃないか?だからこそ、さっきの話で聞いた僕の為に薬草を採りにいって二、三週間学校を休んだという話が不自然に思えた。
で、実際の所東谷さんな日向と僕を遠ざけたり牽制したりする様子も無い。そもそもがそういう妨害とかをするタイプの子じゃないのかもな。じゃあアニメでのギロロへの扱いは何?
考察していると東谷さんは僕と日向双方の腕を掴み、東谷さん自身の腕と組ませて来た。
「さ、授業が始まりますから、四季くんも夏美さんも行きましょー!」
「ちょ!?小雪ちゃん!?」
……いや、もう邪推はよそう。そこまでしてくれた東谷さんに失礼だ。
確かなのは東谷さんはアニメ通りに日向が大好きで、そこに並べられる位に僕への好感度も高いって事だ。
つまり記憶喪失前、東谷さんとはそのレベルで仲の良い友達だった訳だ。うーん、サブロー先輩並に罪悪感を感じそうで胃が痛い……。
「ふふ…今夜こそ、三人で……」
聞き取れなかったけどこの子なんか妙な事口走ってない?
****
日向家の人達が学校と仕事に行っている日中、ケロロ小隊は地下のケロロの部屋にて全員が勢揃いしていながらもどんよりとした空気で来客を待っていた。
これは、人の恋路を金儲けに利用しようとした罰なのか、部下を御しきれなかった隊長の不甲斐なさが招いた事なのか、はたまた他の惑星を侵略しようという行為自体が間違っていたという証明なのか。
何かしらの技術でケロロ達の眼前の空間に歪みが生まれ、次元を切り裂いて人一人が余裕で通れるサイズの穴が開く。所謂超空間ゲートと呼ばれるものの一種だ。
「宇宙裁判所の者です。ケロン人のケロロ軍曹さんですね?」
「どうもー!宇宙税務局でーす!」
(遂にこの時が来てしまったであります……)
とうとう宇宙裁判所から通告された期限の日。差し押さえの予告で示されたのが今日だった。今日までにケロロ小隊は未払いの借金を全額返済しなければならなかったのだ。でもできなかった。
クルルが確保した夏美と四季のキスシーン。それを宇宙中に有料配布する事で多少は稼げたが、支払わねばならない額には到底届かず、そちらもまた課税対象でもある。数百億の負債の内、20億程削るのが精一杯だった。所詮は前回の恋愛リアリティーショーの二番煎じの作戦と言った所か。
「あのぅ……せめて基地内で差し押さえされる箇所と使用して良い箇所で分けて貰う事って……」
「あ〜駄目駄目。アンタら自分達が滞納している額本当に分かってる?そんな生温い妥協ができる立場でもないんだから、仕事の邪魔しないで」
揉み手をしながら、せめて一部だけでも基地の使用継続を交渉しようとするも突っぱねられる。
職員達は地下秘密基地内を念入りに調査、観察して勝手に入れないように諸々のチェックを進める。これが終われば行政の事務的な手続きだけなのに、ケロロ達には全てが物凄く長い時間に感じた。死んだ魚のような目で基地が差し押さえされる所をただ眺めている事しかできなかった。
「じゃ、全額払い終わるまでこの基地は立ち入り禁止ねー」
「税金はしっかり払わないと駄目ですよ。貴方達軍人でしょ?税金の重要性が分からない訳じゃないんだから」
全ての項目チェックなどの手続きが終わるとそれだけ言ってケロロに書類を手渡し、再び超空間ゲートを通って税務局員と裁判所の使いは去って行った。
ケロロの部屋にある冷蔵庫型の超空間ゲートには鍵付きの鎖が巻かれてもう開く事ができない。
基地に入らなければ内部の設備は使えない。入れない以上はこれまでのような大規模な侵略作戦や資金稼ぎは不可能。冗談抜きでケロロ小隊は地球侵略の為の活動を宇宙全体に影響する国家権力にてほぼ全て封じられてしまった。
「これから僕達どうすれば良いんですか……?」
「これは……修行と呼ぶにはあまりにも……」
「あ〜あ、詰んだな」
「すまん…っ!ケロロ……!!全部俺のせいだ……!!」
不安を口にするタママ。流石に焦りを禁じ得ないドロロ。やさぐれるクルル。涙を流し、謝罪するギロロ。その謝罪はケロロの耳には入らない。ケロロは今、あの地下秘密基地でのガンプラを作った思い出や作ったガンプラを飾った思い出、未開封のガンプラを大事にしまった思い出……それらを全て思い返していたのだ。
(全部……失くしちまった……)
汗と涙の結晶だったガンプラを売り払い、手付かずの限定品もネットオークションに出す羽目となり、他にも色々金策を練って、結局何も残らなかった。
この場にいるのが仲間だけになったからか、ケロロの足取りが覚束なくなり、フラフラと揺れ始めた。
「あはっ…あはは……あははははっ!!」
仰向けに大の字になって倒れ込み、乾いた笑いを無理に搾り出すケロロ。その表情は虚無そのもの。だが次第にくしゃりと歪んでいき、目の奥が熱くなる。堪えようにも目から溢れる涙を止める事は叶わない。
「うわあああぁぁぁぁぁぁん!!!」
良い歳こいて大号泣。目も当てられない姿に隊員達は誰も何も言えない。クルルですら気まずくて自重する程だ。彼らにとっての地獄がそこにあった。
ケロロ小隊・地下秘密基地、差し押さえ決定!
東谷小雪
多分百合というより両刀。夏美を「どんな殿方より」なんて風に言ってたので、女の子が好きなのではなく、好きになった相手が女の子だったってパターンかと。つまり男も普通に恋愛対象にはなる。アニメedでサブローに抱き付くシーンもあるし。
四季に対しては見ての通りだが、夏美大好きなのも変わらない。
原作漫画では媚薬使ったりと少々手段を選ばない面もあったが、この小説は基本アニメ寄りではあるが原作とミックスしてる部分もあり、上記の解釈も踏まえて、「四季と夏美を両方とも手に入れようとしている」が基本路線。
夏美とサブロー先輩が脳焼かれてんだから、そりゃこの子だって脳焼かれてますよ。
やべえ、ケロロいじめすぎた……4話書いてた時点ではここまで追い詰める事になるとは思わなかった。ケロロに対してはそんな歪んだ愛はないんだ。