ケロロ軍曹 転生して早々記憶喪失!? であります! 作:リボーン2期待ってます
主人公である四季にはケロン人の特定のパートナーは作りません。ある意味記憶喪失前はクルルとサブローとでトリオ組んでたっぽく描写してますが、色々と設定があるので。
……はて?誰か忘れてるような?
「えぐっ……ぐすっ……うぅ……」
日向家のリビングにて、体育座りでソファに座ったケロロ軍曹はずっと泣きじゃくっていた。
理由は明白。とうとう地下秘密基地が宇宙裁判所より差し押さえられてしまったからだ。これではもう借金返済の為の大規模な金策も本命の地球侵略も何もできない。
「ふーん、結局地下の秘密基地は差し押さえ喰らっちゃったのね」
「超空間ゲートも封じられちまったからな。もう俺らでも出入りはできねぇぜ。勝手に繋げたら宇宙の豚箱行きさ」
「そもそも侵略者の時点でそうならないのがおかしいと思うんだけど…」
事前にモアのアンゴルストーンなどといった不可欠なものは最低限、基地から日向家へと運び出してはある。それでもケロロ小隊は失ったものが多過ぎた。
「軍曹、元気出してよ。ほら、スターフルーツ買って来たよ」
あまりにも惨めなその姿に友人を元気付けようと冬樹は買い物袋からケロロの好物であるスターフルーツを取り出す。だが、ケロロは見向きもせずに鼻水を啜り、泣き続ける。
「重症ね……」
「ほっときな。その内開き直ってガンプラ作り始めるさ」
基地を寝床としていたクルルは現在、ケロロの部屋で共に生活しているが、あの状態のケロロをどうにかしてやる気はないようで、お金の計算をしている。同じ空間にいて気にしない辺り、やはり嫌な奴である。
「伍長も庭でずっとしょんぼりしてるし……」
「ある意味先輩が今回の一件の引き金だからな。相当に堪えてんだろ」
「ま、私としてはこれであいつらの地球侵略ができなくなったんなら、万々歳なんだけどね。勝手にデートを宇宙中に配信した事だって許してないし」
「姉ちゃん、いくら何でもそんな言い方しなくても……」
一先ずケロロ達による地球侵略は当分不可能な事も判明した為、夏美としては本当にありがたい。というか、弟も母も彼らの侵略行為に対して危機感が無さすぎると思う。そこら辺の苦労と危機感を共有して一緒に色々考えてくれるのは基本的に四季くらいだ。
「けど宇宙の税金の事なんて私達にはどうしようもないじゃない。それも数百億なんて一生かかってもどうにかできるレベルじゃないわよ」
そんな台詞をよそにクルルはパチパチとそろばんを使ってお金の計算を続ける。計算機ではなくそろばんを使っている辺り、本気でケロロ小隊が金銭的に困窮している事が伺える。というか、逆に良くそろばんなんて使えるものである。電卓くらい使えよ。
(この状況を巻き返す方法なんて、四季の能力に頼るしかねぇが、元々そこまで自由に使えるモンでもねぇし、記憶が無い上に脳のダメージ状態からしても意識的に使わせれば負担でぶっ倒れかねねぇ。無理だ……)
記憶を失くす前ならばクルルが頼めば交渉次第では能力を使って助けてくれただろうが、記憶のない今ではクルルの事すら、変な宇宙人で地球侵略を企む禄でもない侵略者という認識だろう。脳の負担問題がなくても引き受けては貰えない可能性も高い。
現状手詰まり。時間経過と共に四季の脳のダメージ回復を待ちつつ、打算塗れで信頼関係を築き直すのが優先事項と結論付けたクルルは、そのままソファの上でふて寝した。
「軍曹……」
****
グゥゥゥ……
金銭的にも精神的にも追い詰められた事でまともに食事も喉を通らなかったケロロは腹が鳴る事でやっと空腹である事に気付く。
(そういえば、ここ二日まともに食べる時間すらなかったでありますな)
ついでに言えば日向家の家事もだ。今回は事情が事情故に夏美も見逃してくれたのだが、ケロロはまだそこまで頭が回っていない。
まずは何かしら腹に入れようと思い、自室からリビングに来たケロロ。すると何やら庭の方から香ばしい匂いが漂って来た。
「ゲロ?」
「あ!軍曹やっと来た!」
ケロロが来た事にすぐに気付いたらしい冬樹が窓を開けて身を乗り出し、ケロロの前に顔を出す。
「冬樹殿……これは?」
庭を見てみれば日向姉弟だけでなく、サブローと小雪、そしてケロロ小隊のメンバーが勢揃いしており、皆でバーベキューコンロを囲っていた。
「お邪魔してまーす!」
「前に言ってたじゃん。僕の退院祝いでバーベキューする予定だったって。それも兼ねて君の慰め会だよ」
そう言って現れたのはエプロンを着けてお盆に肉や野菜を乗せて運ぶ四季だった。このバーベキューはケロロを元気付けたい冬樹に相談された四季が提案したものだった。
「四季殿……」
冬樹は網の上で焼けた肉と野菜の串を一本取ってケロロに手渡そうと差し出した。
「一緒に食べよう?軍曹」
「……冬樹殿ォ〜!!」
うるうると涙を滲ませて、感極まり滝のように涙を流す。こんな追い詰められた状況にあっても自分を元気付けようと優しく接してくれる冬樹の友情はケロロにとって何よりも救いだった。
「小雪殿、こちらのお肉も焼けたでござるよ」
「わぁ!ありがとうドロロ!」
「クルル、直接網の上にカレーぶっかけるのはNG。お皿に取った後、こっちのカレースパイスで味付けして」
「チッ、まぁ今日は従ってやるか」
地球人もケロン人も関係なくバーベキューを楽しみ始める。そんな中、この日向家の庭を拠点とするギロロだけは今回の差し押さえの原因となった故か、バツが悪そうに不干渉を決め込むかのように座り込んでいる。
四季は意を決して憔悴しているギロロに肉と野菜を盛り付けた皿を渡す。
「ホラ、焼けたよ。遠慮しないで食べてよ」
「あ、ああ……」
ぎこちないながらもギロロはそれを普通に受け取り、食べ始める。拒絶されなかった事に四季は内心ホッとする。夏美関連の事で彼には嫌われている疑惑があったからだ。
四季としては別にギロロを嫌ってなどいないのだ。侵略者のおっさんなのに侵略対象の異星人かつ未成年の女子中学生に惚れ込む上にスケベな目で見るその嗜好には心底ドン引きしているが。ぶっちゃけ異種族恋愛を見て楽しむ趣味は無いのだ。
(でも普通に受け取った辺り、ギロロとの距離はいまいち分からないな……)
変に距離を詰めても違和感を持たれて記憶喪失の発覚に繋がるかもしれない。
ケロロを慰める会である事は否定しないが、四季にとってこの場は自身とケロロ小隊との関係を見極める情報収集の場でもあった。だからこそ、一番気不味い相手である夏美がいるのを承知で来たのだ。
そんな四季の思惑など知らない夏美、泣きながらバーベキューの肉を頬張るケロロの背中を軽く叩く。
「シャキッとしなさい。アンタ隊長でしょ?ガンプラ禁止令は解除してあげるから」
「夏美殿……」
肉や野菜が盛り付けられた皿を手に泣きながらもケロロは巻き返す決意を表明する。
「吾輩、こんな事では挫けないであります!いつか必ず借金を全額返済して、地下侵略基地を取り戻し、必ずや
「てゆーか、七転八起?」
「流石軍曹さんですぅ〜!僕は何処までも着いて行きます!」
「いや侵略はやめて」
ボソリと呟く四季の嘆願など誰も聞いてはいない。まぁ侵略者にそんな頼みを聞いて貰えない事など分かりきっているが。
次々と肉も野菜も消費されていくので、補充しようと四季と夏美はキッチンで新しい分を切り分ける。
「日向、次これ出そうか」
「オッケー。じゃあ切り分けちゃうね」
持って来た食材を吟味して次に出すものを決めると夏美がそれを受け取り、包丁で切り分ける。
(あれ?これなんか夫婦みたいじゃない?)
「……ふぅん?」
夏美と四季のやり取りに何かを感じ取ったのか、サブローは含み笑いを浮かべた。ギロロはぐぬぬ顔してる。
四季は夏美が切り分けた食材をテキパキと手際良く焼いていき、それぞれの皿へと盛り付けていく。
「夏美さんもそうですけど、四季くんもやっぱりお料理上手ですよね〜!」
「まぁ、ウチ親いないからね。必要だから身に付けただけ」
「謙遜しなくて良いって。俺また今度四季君のオムライス食べたいな」
「夜早先輩のオムライスってすっごく美味しいですもんね!」
「吾輩は四季殿のナポリタンが好きであります!」
(え、アンタ達食べた事あるの……?)
サラリと弟とボケガエルが重要事項を語り、愕然とする姉。サブローはともかく、冬樹もそのオムライスの美味しさを知っており、ケロロすらも四季の手料理を食べていた事に途轍もない敗北感を覚えた。
(僕、この面子に料理振る舞った事あるんだ……)
そして本人も予想以上にケロロ小隊やそのパートナーメンバーと親しくしていた事に衝撃を受けていた。どうも想定していた以上に自分の立場はアニメで見たメンバーと深い関わりがあるようだ。
つまり、行動や言動次第で彼らには記憶喪失がバレる可能性が非常に高い。
「……」
「それじゃあ、〆と行こうか!」
バーベキューが盛り上がってきた所でサブローはスケッチブックを取り出し、実体化ペンでスラスラと何かを描き込んでいく。
全てを描き終えたらそれを夜空へと向け、スケッチブックから花火が打ち上がった。
特大ケロロ花火が夜空を照らす。思わず誰もがその花火に魅入る。
『おお〜』
「吾輩、何だか侵略に成功した気分であります!侵略の暁にはこの花火をもっと大きく打ち上げるであります!」
「そっか!楽しみにしてるね軍曹!」
「ちょっと冬樹!?楽しみにしちゃ駄目よ!!」
冬樹の物凄く危うい発言にギョッとする夏美。四季は侵略が物凄く難しいこの状況でもそんな事を言えるケロロに半ば呆れつつも、借金と差し押さえ問題について知った際の疑問を思い切ってケロロにぶつけてみる事にした。
「ねぇ、ちょっと思ったんだけどさ」
「ゲロ?」
「宇宙には普通に宇宙全体の為の税金や裁判所とかあるんでしょ?」
「え、ええまぁ…正直今思い出したくなかったでありますが」
四季はこんなにデリカシーが無かっただろうかと思いつつも、質問に答えていく。肯定を受けた四季は本命の質問をする。
「その税金の支払い、宇宙の弁護士とかに相談しなかったの?」
物凄く現実的な解決法だった。
「だってさ、商売して儲けたお金を全額返金したのに、その返した売上分の税金は全額払えって、普通におかしくね?」
「そ、それは……」
ケロロ自身、全く思い浮かばなかった。ただただ送られてきた請求書に金が無いとテンパり続けてどうやって支払うかしか考えられなかった。
「僕も税金の仕組みとか宇宙どころか日本のだってそこまで把握してないけどさ、全額免除とまではいかなくてもいくらか減額とかされないの?情状酌量の余地はあるみたいだし」
「……」
四季の疑問にケロロは口をあんぐりと開けて絶句。確かに言われてみればその通りだ。それに相談するだけなら無料だと公言している宇宙弁護士にそれなりにいる。実際に減額するには弁護士にいくらか依頼料と払う必要も出て来るだろうが、それでもトータルで考えれば全然少なくて済む。
(え、じゃあ吾輩が絶望してた時間は何?さっさと弁護士に相談してればもしかしたら基地の差し押さえって防げてたかもしれないって事?)
だが、ケロロ達に侵略基地が戻って来る可能性を提示された事に対して夏美は苦言を呈する。
「ちょっと夜早くん、そんな事言ってこいつらが基地を取り戻しちゃったらまた侵略とか言い出して……」
「でもこれ日向達にとっても切実な問題じゃない?地下の基地が他の宇宙人に売却とかされちゃったら、全く無関係の宇宙人が地下基地を介して日向家に勝手に入って来たり……」
「うげ…それは勘弁。……まだこいつらに基地が戻って来る方がマシね」
ぶっちゃけ今更ではあるがそれでも宇宙人侵入の頻度が格段に増えるのは嫌過ぎる為、妥協する事にした。
基地を取り戻す目処が立ちそうな中、ドロロは先日まで不在だった小雪を労う為に小雪のコップに麦茶を注ぐ。
「しかし小雪殿、四季殿のために採取してきたという薬草、無駄になってしまわれたでござるな」
「良いの。四季くんがこうして元気になってくれたなら。それに……」
サフランやセイボリーを取り出して怪しい目で四季と夏美の二人を凝視する。瞬間、二人の背筋に悪寒が走った。
「本命はこっちの薬草だから……ふふふ」
「ドロ?」
(なんかまた薬盛ろうとしてるですぅ……!)
小雪の狙いを唯一察したタママは戦慄する。以前、小雪が四季に媚薬を盛ろうとした際に近くに冬樹がいた事で、冬樹がそれを飲みそうになり、小雪が冬樹狙いなのではないかとタママのパートナーである西澤桃華が誤解してトラブルが起きた事を思い出して、あの時の恐怖が蘇る。二人がドンパチ始めてケロロが黒焦げの十段アフロになったのだから。
「ん?モモッチ……?あ、モモッチ呼ぶの忘れてたです」
(割とひでぇなこの子)
何故急にパートナーの事を思い出したのかは知らないが、最初からこの集まりに呼んでやれば良いのにと思う四季であった。
そんな薄情なタママを一瞥してからこうして日向家の庭で盛り上がる面子を見てセンチメンタルな気分になる。
(……こうやって、バーベキューしてワイワイするくらいには仲良かったんだな)
「……四季くん?」
四季を凝視していた小雪は彼に違和感を感じた。
この時、小雪が感じた違和感が何だったのかは彼女にはまだ分からない。だが、この時の小雪の目には、四季の様子が以前と違って見えた気がした。
****
翌日、宇宙の弁護士に早速電話して相談したケロロは、テンションが爆上がりして日向家リビングをピョンピョンと跳ね回っていた。
「イヤッホーイ!全額返済はまだ遠いけど、80億程支払い減額できそうでありまーす!!」
「額がデカ過ぎて色々麻痺してるわね……」
ハイテンションなボケガエルを見て夏美は肩を落とす。
それでも100億以上の支払いが残っているのだから哀れである。その現実に気付いた時、またどんよりとした空気を纏う事になるのだろう。
(昨日のバーベキューで夜早くんがボケガエルに入れ知恵しちゃったから、またすぐ侵略の為に変な作戦やりそうよね……)
夏美としては四季の助け舟を出さずにいられない所は本当に大好きだが、これはやっぱり勘弁して欲しかったかもしれない。
同時に昨日のバーベキューで、一緒にキッチンで作業した事を思い出す。あの時も思ったが、まるで夫婦のようなやり取りだった事に自然と頬が緩む。
「夜早……夜早夏美、か」
夫婦という単語から連想してついつい一つの未来を予想……というか妄想してしまい、呟いて顔を赤くする。ちょっとニヤつく顔を抑えられそうにないかもしれない。
「クルル殿!ケロン人用AEDを!ギロロ殿の心臓が動いていないでござる!」
「ああ、アレなら支払いに充てる為に売っちまったぜ」
夏美以外のバーベキュー参加者
実は記憶喪失前の四季の手料理を食べる機会がそれなりにあった。
因みにクルルが四季にカレーの作り置きを頼んだらハヤシライスを作り置きされた事がある。美味かったからこそムカついた。
小雪の四季へのアプローチ
感想で夏美以上にヤバい事なりそうと言ってた人がいたけど大正解。本気で貞操狙われてます。クソボケなので当然記憶があろうとなかろうと気付いてない。
最終的な被害者は必ずケロロ。
夏美視点での小雪→四季
何となくそうじゃないかと疑ってる段階。鈍感な夏美でも少しは察するレベルでのスキンシップの激しさ故。恋敵への警戒というより、素直にアプローチできる小雪が羨ましいという認識。自分も狙われているとは知らずに。