カードゲーム世界で考察配信したら、黒幕っぽくて楽しい 作:マクロコスモス
テンバイヤ暴露事件から一週間ほどの時間が経った。
アレから世間は大賑わい、”黒幕”ヴェルライトとテンバイヤの件で話題は持ちきり。
いやぁクソみたいなテンバイヤはいくら滅殺されてもいいですからね。
とはいえ、連中は今回こそ迂闊な作戦で逆手に取ることができたけれど、厄介な存在には変わりない。
何しろ、
一体どうやって? と思うかもしれないが、方法はいくらでもある。
マギア大戦のログをハッキングしたか、マナを用いて運命を覗き見たか。
まぁ何にしろ、高い情報収集能力を有しているということだ。
とはいえ、幸いなことに俺の正体まではバレていない。
バレていたら、向こうはいくらでも俺を好きにできるはずだ。
逆にこちらとしても残念なのは、アレ以降向こうの足取りが辿れていないということ。
巧妙に姿を隠し、見つからないようにしている。
伊達に俺が暴露するまで、一度もその存在を公にしたことのなかった組織だ。
そう簡単に尻尾を掴めるはずもない。
三度俺とテンバイヤが激突するとすれば、こちらの網に向こうがかかるか、向こうが仕掛けてきた時。
焦っても仕方がない。
よって俺は、別の策を走らせることにした。
といっても完全にテンバイヤと無関係というわけでもないぞ。
テンバイヤの足取りを探りつつ、俺自身の目的を果たすための一手だ。
そして、その第一歩として俺は――
――場末のショップ大会で陰湿デッキを使って、小学生を泣かせていた。
「びえええええええええええええええ!」
:死んでよ~(幻聴)
いや、あの、違うんですよ。
俺はあくまで、ある目的でこのショップを訪れる必要があって、そこに目的の人物がいなかったから時間を潰す必要があっただけなんですよ。
そうなるとショップ大会に出場するか、フリーをして時間を潰すかの二択になるわけでして。
後者は、陰湿デッキ使いの俺がフリーを申し込んでも、デッキがバレた時点で逃げられるの確定なんですよ。
これでも俺、カジュアルの場で陰湿デッキを使うのは避ける程度の良識はあるんですよ(ほんとだよ、しんじて)。
だからガチの場であるショップ大会に参加したわけなんですけど、まさか小学生と当たって泣かすとは思わなくて。
:死んでよ~(幻聴)
はい……多田敷ヒカル死にます……(ふわ~)。
というわけで、やらかしながらもショップ大会は優勝。
ショップの空気はひえっひえになってしまったわけだが――
「おいあんた、何してんだよ!」
そこでようやく、お目当ての人物が現れた。
俺が探していたのは――”主人公”。
この世界で時折現れる、悪を倒し人々を守る正義の味方。
カードバトルが大好きで、熱血だったりクールだったり、お馬鹿だったり頭がよかったりする。
そんな、カードゲームには欠かせない存在を、探していたのだ。
加えてその人物は、俺にとっても無関係な存在ではない。
「子どもを泣かせる悪いやつは、俺と”
ただ、なんというか。
一つだけ、誤算としか言いようのないことがあった。
それは――
――現れた主人公が、どこからどう見ても女だったということか。
そ、そう来たかぁ――――
年齢は多分十代半ば、中学生か高校生かはわからない。
背丈はそのくらいの年頃の女子の平均程度。
そして髪は短く、癖のある感じ。
あと、なんかこう……身体の一部がこう……
「アンナちゃんを泣かせたのはお前だな! 俺は
:うお、コレはふだすきじゃなくてふとすぎ……(幻聴)
だまりゃ!
セクハラだぞてめー!
まぁ要するに、色々と発育が良いのだ。
とにかく、布太梳モエというこの少女が、俺の目当てとしている主人公だった。
ネットでしか存在を知らなかったから、女子であるというのはびっくりだが。
「くっくっく……いいところに来たな、布太梳モエ! そんなに俺と勝負したいなら、受けて立とう!」
「いいぜ、今日は人助けでショップバトルに遅れちまったからな、その分バトルへの”燃え”は高ぶってるぜ!」
かくして、互いにライブラリを構える。
基本、カードショップは中央にライブラリの使用を想定して大きめの空間があり、そこでバトルを行えるようになっているのだ。
「マギロアバトル、エンチャント!」
「エンチャント!」
■
――で、そのままボコボコにされたってわけ。
だってこうやって主人公に負けるのは、ある意味で一番美味しいポジションですからね。
きっちりいい感じに一度は布太梳モエをピンチに追い込んでから、華麗に逆転された。
これはこれでいい経験だったが、俺としては一度ピンチの陥った時の凍りついたショップの空気にヒヤヒヤしたよ。
最後はちゃんと布太梳が勝って、和気あいあいとした空気に戻ってくれて良かった。
さて、これにてショップでの目的は完了。
俺はその後、路地裏で”彼女”がやってくるのを待っていた。
ただし、その姿は先ほどまでとは違う。
先程までは雑に黒マスクで口元を覆っているだけだったが、今回はちゃんと”あの”マスクを付けているのだ。
俺が黒幕っぽく振る舞うために用意した――
「――ヴェルライト、何の用だ!」
――”黒幕”ヴェルライトとしてのマスクを。
現れたのは、布太梳モエだ。
俺は布太梳モエとのバトルが終わったあと、彼女にあるメッセージを手渡した。
それは小さな紙のメモで、中には「我が主”黒幕”ヴェルライトがお前を探している」とかそんな感じの文章が記されている。
そして、この路地裏に来るよう指定したのだ。
「こうして、直接お目にかかるのはこれが初めてだな。俺は”黒幕”ヴェルライト。会えてうれしいよ、布太梳モエ!」
俺が黒幕であるということを強調しつつ、こう呼びかけた。
「いや、こう呼んだほうがいいかな? ――
「……っ!」
「俺がこうして黒幕を名乗る以前から、俺の配信を見てくれてありがとう」
そう、俺が布太梳モエを選んだ理由は非常に単純。
過疎配信時代の俺のリスナーであるからだ。
ぶっちゃけ、主人公の運命を背負うユーザーであれば、この作戦で声をかける主人公は誰でもいい。
おそらく波浪フェニも主人公属性だろうから、やろうと思えば彼女でもいいだろう。
怖いから遠慮するけど。
そのうえで、俺のリスナーである布太梳モエを選んだのはごくごく当然の成り行きと言えるだろう。
「……だから、何の用だってきいてるんだよ、ヴェルライト!」
「いや、何。君に一つ頼みたいことがあってな」
俺は一歩、布太梳モエへと近づく。
手を差し伸べながら、マスクの下で薄っすらと笑みを浮かべて。
「俺と――世界を救ってみないか?」
「……はぁ?」
如何にも怪訝そうな、布太梳モエの様子。
俺はそこに、畳み掛ける。
「君は――悩んでいるのだろう?」
「……何いってんだよ、そんなことないっての」
「いや、ある。君がそれに気づいていないだけだ」
「それこそ、何言ってんだかわかんねぇよ、俺は悩んでなんかいねぇ!」
「今は気付かなくてもいい。何、いずれわかるさ、いずれな」
――詐欺師の文句である。
もしここで悩んでいるのなら、畳み掛けていけばいい。
そうでないなら、今は気づいていないだけだといって、相手に疑念を植え付けるのだ。
「だが、俺のもとで世界を救えば、嫌でも気づくことになるぞ」
「な、にを……」
「――
そう、お気づきだろう。
今回の作戦、俺の目的は単純だ。
布太梳モエを闇落ちさせる。
実に――黒幕っぽいだろう?
布太梳モエの見た目の方向性はだいたいライザ。
うお、これは布太梳……
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