カードゲーム世界で考察配信したら、黒幕っぽくて楽しい 作:マクロコスモス
かくして、布太梳モエは闇堕ちした。
……多分。
俺は最初、完全に手駒として手中に収め、堕落を覚えさせ怠惰な生活をさせるつもりだった。
お菓子は好きな時に食べていいし、昼寝は好きな時にしていい、そういう生活を送らせつつちょっと俺を手伝ってもらえればそれでいいと思っていたのだ。
しかし結果として、彼女に起きた変化は見た目ほど大きくない。
見た目と言動が変わり、先行ワンキルが大好きになり、そして人を使うことを覚えた。
それ以外の要素はさほど変わっていないのだ。
あいも変わらず、布太梳モエは人助けに邁進している。
ただ、人を使うことを覚え、さらには効率化を意識した結果、現在は自分の時間を確保しつつ八時間睡眠ができる程度に状況は改善しているらしい。
やりたいことがあって、健康を犠牲にしないなら、まぁやらせておくのがいいのだろう。
俺はそこまで、部下を縛るタイプの上司じゃない。
まぁ、見た目と言動が変わりまくっているのは間違いないが。
さて、そんな布太梳モエに頼んでいるのが鼠狩りだ。
最終的にマナの中に潜む鼠を全て狩り尽くせば、その親玉が出てくるという寸法だ。
あるいは、それより先にマナの供給が途絶えた親玉が行動を起こすか。
どちらにせよ、ここからテンバイヤの幹部を引きずり出せればそれでいい。
基本的には布太梳モエに行動を任せ、向こうから指示を求められたらそれに応える感じで進めている。
布太梳モエ闇堕ちのために、アグレッシブに暗躍しすぎたからな。
ちょっとくらいはゆっくりしよう。
とはいえ、たまには直接布太梳モエの状況確認は必要だ。
実際に今の布太梳モエが何をしているのか、少しばかり見に行ってみよう。
「――みんなありがとなぁ♡ 俺、みんなのおかげですっげーたすかってるよぉ♡」
――――そして、布太梳モエが青少年の癖を虐殺している現場に出くわした。
そこは、彼女が普段から拠点にしているという公園だ。
彼女より少し年下の少年少女――以前泣かせたアンナという少女もいるな――が、布太梳モエの前に集まっている。
そんな彼女たちの前に、悪堕ち衣装で笑みを振りまく布太梳モエ。
犯行現場が、そこにあった。
「……モエねえちゃん……なんか変わったよな……」
「でも……前より元気そうだし……」
ひそひそと、俺のユーザー特有超聴力に少年少女のささやき声が聞こえてくる。
もともと、布太梳モエは悪堕ち前から青少年の性癖ブレイカーだった。
まぁ太いし快活だし距離感バグってるからなぁ。
男女問わず、幼い子の色んなものをぶち壊して回っていたらしい。
当然ながら本人に自覚はないが。
「それじゃあ今日も、一日一個、いいことしよう♡」
「はーい!」
「おー!」
そんな彼女が集めた俗称”性癖お亡くなり少年少女隊”は、一日一個、いいことしよう運動を展開している。
俺が提案した活動を、彼女なりに続けているようだ。
しかしなんだな……一日一個といいことをかけてるんだろうが、なんとなくいかがわしい言い回しに聞こえるのは気のせいか?
「俺、腰が痛くて困ってるお婆ちゃんを助けたぜ!」
「えらいぞー♡」
「うぅ……」
多分、パックを手渡す時に甘い声で褒めつつ、頭を撫で回すのが悪いと思うんだけど……
「わ、私……ダークユーザーを倒しましたっ!」
「お、それはすごいな! でも、あんまり危険なことはだめだぞっ?」
「あうう……」
危ないことをしたら叱り、それはそれとして褒める。
なんとも、上手い具合に布太梳モエはやっていけているようだ。
――闇堕ちしたといっても、ダークユーザーになったわけではない。
ヴェルライトとの繋がりはいずれ露呈するだろうが、悪いのはヴェルライトということで布太梳モエは被害者扱いだろう。
だから基本的に、普段の生活はあまりかわっていないようだ。
まぁ、悪いことではない。
と、思っていたら――
「あっ」
布太梳モエがこっちを見た。
やっべ。
それから全員へのご褒美を終えてから、布太梳モエは俺の方に駆け寄ってくる。
少年少女の視線が、一斉にこちらへ向けられた。
まずい――
「――ご主人様ぁ♡」
「――――――――――――――――――――へ?」
少年少女たちの脳が、一斉に爆発した。
布太梳モエは、勢いよく俺の腕に抱きついてくる。
少年少女たちが、さらさらと砂に還っていった。
少年少女――――!
「来てくれたんだぁ、ご主人様ぁ。えへへ、俺、うれしいぞ」
「あ、ああうん……様子が気になってな」
まずいまずい、脳破壊された少年少女たちだったものが、こちらを見ている。
ギャグ表現なのでそのうちもとに戻るだろうけど、大惨事には変わりない。
「と、とりあえず……そっちもやることは終わったんだよな?」
「うんっ! みんなほんっとうに頑張ってくれるんだぁ。だから俺も、ご主人様のために頑張りたいな」
「……じゃあ、場所を移すか」
そうして俺は、逃げるように公園を後にした。
すまん、少年少女たちよ――
ちなみに、この時の俺はヴェルライト衣装ではなく、ただの黒マスク男である。
以前ショップ大会で子どもを泣かした時のマスクとは違うマスクだから、気付かれることもない。
それはそれとして、黒マスクの大学生は……完全に寝取り竿役なんだよな……
――――なお、これ以降布太梳モエの一日一個いいこと活動の参加者は、爆増したらしい。
なんでだよ!!!!!
■
「えーと、それで……なんだ? 最近困ってることとか、あるか?」
「困ってることかぁ、うーん」
俺達は現在、二人で街を歩きつつ布太梳モエの近況を聞いていた。
布太梳モエの発育がいいから、大学生と美女のカップルにしか見えないな。
「毎晩ぐっすり眠れてるし、毎週遅刻しててほとんど参加できなかったショップ大会にも参加できてるし……えへへ、俺……こんなに幸せでいいのかな……」
「そうか……」
なんかこう……よかったね!
「ああでも、ショップ大会だと鼠相手にしてる時と違って、うまく先行取れないんだよなぁ。お陰でデッキを先行ワンキルに寄せられなくて大変だぜ。それはそれで、バトルできるだけでも楽しいけど」
「そこは、マナが足りてないからだな。大事なバトルであればあるほど、マナが味方してくれるんだ」
「へー、まぁ日常は普通のバトルを楽しめってことだな。これまで通りだ」
なんて、つらつらと話をしつつ。
それから、ふとあることに気付いた様子で、布太梳モエは複雑そうな顔をする。
「あ、そういえば……一つ困ってることがあった……」
「困ってること?」
「…………学校でシオンと会うのが気まずい」
「ああ……」
思いっきり悪堕ちして敵に回る感じで出てったけど、普通に日常生活送ってるからな……
シオンは布太梳モエを悪堕ちさせたのはヴェルライトだと知っているが、これが原因で通報するべきか判断がつかないのだろう。
なんかエッチになったこと以外は、むしろ前より生活環境が改善されているのも大きい。
というか、なんなら家族や他の友人も、むしろ今の方がいいんじゃないかと思っているようだ。
「あとうちの学校、お嬢様学校だから、学校で変身すると風紀がまずい」
「お嬢様学校!?!?」
「そこ驚くところか!?」
「ごめん!」
「いいぞ!」
マジかよ……ああいやでも、確かに以前出会ったシオンの服装は、かっちりした女子校の制服って感じだったもんな……
あと、布太梳モエの悪堕ち衣装は、任意のタイミングで変身可能な衣装だ。
なのでここで変身を解くと、元のお嬢様学校の制服を晒すことになり、俺が捕まる。
怖い。
「君が堕落方向に闇堕ちしてたらサボればいいじゃないか……と提案していたんだが」
「……サボらないぞ。今の俺は、自分のやりたいことを全部、自分を犠牲にせずやるって決めてるんだ。学校だって、全力だ」
闇堕ちとは――
「あと……アレだ。シオン以外の友達が……ちょっとうざい」
「うざいって?」
「好きな人ができたんだろ、とか言ってくる」
「ああ――――」
まぁ、今の闇堕ちスタイルはともかく、明らかに普段の雰囲気も変わってるからな。
そう思うのも不思議じゃない。
が、実態は――
「好きな人とか……失礼だろ。俺は……ご主人様の手足なんだから……♡」
「ああ……」
……はい。
どうしよう。
次回から新展開と言ったな、すまんありゃ嘘だ。
正確に言うと、この話自体はどこかしらで入れる予定だったんですが、色々勘案した結果今回いれようということになりました。
というわけで今度こそ次回は新展開です。
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