カードゲーム世界で考察配信したら、黒幕っぽくて楽しい 作:マクロコスモス
――というわけで、実は布太梳モエを闇堕ちさせたり、暴露配信をする傍らでライトユーザー資格を取得したのでした。
もちろんヴェルライトとしてではない。
謎のライトユーザー、トゥルーホープとしてだ。
なお、トゥルーホープは本名を隠してライセンス登録を行っている。
そんなことできるのか? と思うかもしれないけれど、できるのだ。
具体的には、登録の際に記憶を失って何も覚えていないと嘘を言った。
創作だとよくいるだろ? 記憶喪失のキャラ。
そういう人物が正義の味方になるための仕組みがあるんじゃないかと、メタ的に考えて調べたんだよ。
そして、あった。
多分こういう都合のいい部分って、テンバイヤの差し金なんだろうな。
運命をよりダイナミックなものとするため、こういうのが重要だとあいつらは考えたんだ。
ありがたく、利用させてもらうとしよう。
さて、あれから俺は札闇武会を追い詰めていた。
裏からはヴェルライトの暴露配信で、表からはトゥルーホープとして正式に。
それ自体は順調に進んでいるが、ぶっちゃけ俺の本命は札闇武会ではない。
「あー、またいた! 今日こそはあなたの蛮行を許さないよ、トゥルーホープ!」
「奇遇ですね、ジャスティス。ですが残念ながらあえて言わせていただくと――一歩遅かったですよ」
俺は、自分が仕掛けた爆弾で札闇武会の拠点が吹き飛ぶのを背景に、アルカナ・クランのジャスティスと対峙していた。
あのハイエロファントが所属するアルカナ・クラン。
そのメンバーに接触するのが、俺の目的。
「あーもう! また爆破して! 今度はどうやって爆弾を仕掛けたの!」
「ヴェルライトが、拠点についての暴露配信をしていましたから。それを利用させていただきました」
「あ、あなたね……ライトユーザーがダークユーザーの情報を利用してちゃだめでしょ!」
「彼がダークユーザー? 確かに分類上はそうなりますが、俺には彼こそがこの世界に真なる光をもたらす存在に思えてなりませんよ」
……自分で言っていて少しむず痒いが、仕方がない。
俺はヴェルライト信者ということになっているからな。
ここ最近、自身の活動の情報収集にヴェルライトの暴露配信を利用するライトユーザーが増えていて、問題になっているらしい。
まぁそうなるように暴露配信してるしな。
正確に言うと、暴露だけして解決をライトユーザーに丸投げしているのだ。
仮に利用するつもりがなくても、利用せざるを得ないライトユーザーはいる。
中にはこうやって、ガチ信者となってしまうライトユーザーも……(ちらりと足元に倒れてるハイエロファントを見る)……いるな。
あ、ジャスティスが視線を逸らした。
俺の発言を聞いて、一瞬ハイエロファントのほうを見たからだな?
「とにかく、私とバトルして! 負けたらライトユーザーとしてのマナーをちゃんと叩き込んであげるんだから!」
「遠慮しておきます。今の俺は正規のライトユーザー、受ける理由がない」
そうして、俺はジャスティスのもとを去っていく。
彼女とコンタクトをとるのが目的なのに、去って行っていいのかって?
なに、問題はない。
理由はいずれわかるさ、いずれな……
――それから、俺はガシガシ札闇武会を追い詰めていく。
ヴェルライトとしての暴露、信者を用いての制圧、トゥルーホープとしての工作。
あらゆる方法を使って、だ。
そのたびにジャスティスは、現場でトゥルーホープと邂逅する。
「あなたね……今度は一体どんな方法で!」
「ちょうど、道端を歩いているダークユーザーを見つけたので、これを捕獲したんですよ」
「いや、どうやって……」
「そこは企業秘密というやつです」
「胡散臭いなぁ!」
「――で、そのダークユーザーを脅して、札闇武会と接触させてつり出させました。安心してください、そのダークユーザーはちゃんと警察に突き出していますよ」
「外道――!」
最近はライトユーザーやヴェルライト信者を警戒して、なかなか出てこないからな。
同じダークユーザーからの接触ということで、油断させたわけだ。
ほかにも、いろいろな方法で追い詰めていく。
そのたびに現場でジャスティスと出会うのだ。
「げっ」
「おやおや、ライトユーザーが開口一番に、同じライトユーザーへ発する言葉ではないですね、それは」
「わかってるくせに……!」
いや、さすがに頻度おかしくない? と思うかもしれない。
実際、最初のうちはジャスティスがいる拠点の近くにある場所を襲撃していたから、不自然はなかった。
しかし現在は、そこから車で半日くらいかかる場所を、俺は攻撃している。
なのにどうしてジャスティスが来るのか。
理由は二つ。
一つはハイエロファントこと、教皇を利用して誘導しているから。
彼女を通じて、ヴェルライト周りの情報はジャスティスに筒抜けだ。
そして教皇は必ずヴェルライトの暴露を聞いて現場に駆け付ける。
これを利用することで、ある程度ジャスティスにこちらの位置を伝えることが可能。
加えて――
「それにしても、何度もこうして出くわしてると、まるで運命がそうさせてるみたいで……釈然としないよ」
「ふふ、そういうこともあるでしょう。何しろマナは運命を狂わせる。一度結びついたマナは、因縁となってまとわりついてくるのです」
「チッ……」
今舌打ちしたぞ、このアラサー間近の魔法少女。
ともかく、そういうことだ。
この世界はマナの関係で因縁が収束しやすい傾向にある。
完全に無からイベントを起こすことは難しいが、理屈さえある程度通っていれば多少無茶な偶然でも必然となりうるのだ。
「それで、今回はどうするの」
「今回はいよいよ、札闇武会の中枢といってもいい場所を落とします。札闇武会一の武闘派”札月悪蔵”を落とします」
「ついにか……言っておくけど、今回もちゃんと私が目を光らせるんだからね!」
――そして、ジャスティスとトゥルーホープの関係にも、変化がみられるようになってきた。
具体的には、二人が協力するようになったのだ。
やり方は外道だが、死人を出してはいないトゥルーホープは正規のライトユーザーとしてとがめられるようなことはしていない。
加えて、その手腕が確かなこともまた事実。
ジャスティスも、実力に関しては一定の信頼をトゥルーホープに向けていた。
「今回の作戦はいたってシンプル、二人で乗り込みダークユーザーを倒します」
「こ、ここにきてそんなシンプルかつ大胆な……!?」
「問題ありません。シンプルにできるよう、ここまで札闇武会をおいつめてきたのですから」
そうして、俺たちは二人で敵アジト――廃墟の工場跡――へと乗り込む。
そこには――憔悴しきった様子のスキンヘッドなヤクザ男が、ボロボロのソファに座りこんでいた。
「おお、来たかい……お前さんたちが……ここ最近札闇武会を攻撃してるっちゅう、ライトユーザーじゃな」
「……め、めちゃくちゃ憔悴してる!!」
どういうことなのかと、ジャスティスが俺とヤクザ男――札月悪蔵に視線を行ったり来たりさせた。
「そりゃお前、あたりまえやろがい。俺ら札闇武会はここ数日、連日のようにお前さんたちの襲撃を受けてるんやぞ。部下は全員とっつかまった。俺ももう何日も寝れてへん。……こんなんでどうやって、気張れいうねん」
「そ、それは……」
「な? あとはこいつをたたくだけでいい。簡単なことだ」
「こ、この状況でも、あなたはまだ戦うの!? 札月悪蔵!」
困惑するジャスティスの言葉を受けて、札月悪蔵は立ち上がる。
「当たり前やろが! 俺ぁ札闇武会の札月悪蔵やぞ! 構えや! 俺の一世一代の花道、お前たちに見せつけてやるけんのう!」
「く、来るよ!」
「ええ、まいります」
――マギロアバトル、エンチャント。
勝負の火ぶたが切られ――
「俺は<ダークナイトメア・ボマードール>の効果。君の場に特殊降臨した<ダークナイトメア・デコイドール>を破壊。その攻撃力分のダメージを与える。これで終わりだ」
先行ワンキルで何もさせずに、終わらせた。
「せ、せめて……」
爆発に巻き込まれ、黒焦げになった札月悪蔵がこぼす。
「……普通のバトル、させてぇな……」
そして、倒れた。
隣で見ているだけだったジャスティスが視線をむけて、いう。
「……今のバトル――ヴェルライトみたいだった」
「そうですか?」
その視線は、警戒。
今更失望とか侮蔑とか、そういう感情はわいてこない程度に、意外性はないバトルだったんだろう。
「あなた……何者?」
「そうですね……あえて一言で言うなら――真実を追い求める者」
「真実……?」
さて、前振りは十分。
札闇武会は、俺の存在をジャスティスに印象付けるための前振りとして十分に活躍してくれた。
ここからは本題に入るべきだろう。
「俺はヴェルライト……そして奴が追いかける敵、”テンバイヤ”を追う者。ジャスティス――真実のために、俺に力を貸してくれませんか?」
俺とテンバイヤの戦い。
そこに――ライトユーザーを、引きずり込むのだ。
禁断の豹変キャラ融合!
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