カードゲーム世界で考察配信したら、すべての黒幕だと思われた   作:マクロコスモス

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2 じゃあやるか……黒幕

 俺、多田敷ヒカルはカードゲームが全ての世界に転生しても、そこまで大したことはしてこなかった。

 プロを目指してライバルたちと切磋琢磨したりとか。

 悪の組織を壊滅させるべく、正義を掲げて戦ったりとか。

 そういうことは一切してこなかった。

 だってキャラじゃないから。

 

 俺が陰湿デッキを好むのは、他のデッキじゃできないことができるからだ。

 一般的には多くのデッキが機能停止に追い込まれるギミックで、自分だけが恩恵を得られる。

 あるいは相手の攻撃を的確に制限し、一方的に自分のギミックを押し付ける。

 そういった、自分の都合がいい方向にゲームを動かすことに、()()()を感じるわけ。

 それをカードゲームの世界で例えるなら――

 

 単発ゲストとして登場し、視聴者に使用デッキなどで強烈な印象を残しながらも、以降は登場しない立ち位置、とか。

 本筋に関係ないゲストキャラが、いきなり現実でも猛威を振るっている陰湿ギミックを使ったら、視聴者も盛り上がるだろう。

 ちょっと違うけど、リボルバーがミラフォを使うのと理屈は同じだ。

 そういう感じの特別感が、俺は大好きなのである。

 おこがましい? 何のことかわからないですね。

 ちなみに、作品を代表するミームとか生み出せたら最高だと思う。

 おこがましいなこいつ……

 

 そういうわけで、俺はこの世界の様々な事件に自分から関わることはしてこなかった。

 普通に大学まで進学し、無名の一般人として日々を生きてきたわけである。

 まぁ、カードは普通にやってたけどね。

 というか、普通にのめり込んでいたと言っても過言ではない。

 ただ、人前でバトルをすることはあまりなかった。

 だって……陰湿デッキだし。

 友人相手に使ったら、友情崩壊待ったなしである。

 ホビアニ世界だとデッキ破壊とか”卑怯な戦法”扱いされやすいしなおのこと。

 おかげで、俺がバトルをするのはたいてい匿名で顔を隠せる場所ばかり。

 新しい場所でバトルをするたび名前をかえるものだから、知名度も低いだろう。

 配信者ヴェルライトだって、配信を始めてからつけた名前で、引退すればもう二度と使わないだろう。

 まぁ、あまり世界の危機に関わるつもりのない俺にとって、これが一番ちょうどいい塩梅ってやつなんだよな。

 

 ともかく、そうしてこれまで目立たない人生を送ってきた俺だが――この度まさかの大バズリを果たしてしまった。

 とはいえ、やめるつもりは毛頭ない。

 悪の組織に対する嫌がらせをこういう形でやるのは、俺が求める()()()を完璧に満たす行為なのだ。

 とてもではないが、やめられるとは到底思えない。

 さて、そういうわけだから早速だけど、次の考察配信を始めるとしようか。

 

 

 ■

 

 

「それでは、今回の配信を始めるぞ。ヴェルライトだ、よろしくな」

 

:よろしくー

:思ったより軽い!

 

 というわけで始まった配信。

 俺は早速、同接の人数がドカンと増えたことに戦慄していた。

 

 ――同接が千倍になってる!!

 

 5人から5000人、とんでもない変化である。

 まぁ有名配信者の同接としてはちょっと物足りない数値だが、零細の配信者が出していい数字ではない。

 登録者数もいつの間にか3万人を突破してるし、バズってすげー。

 

「今日もいつも通り、マギア大戦で熱帯しながらやっていくぞ」

 

:熱帯しながら悪の組織の秘密を暴露していくのか……

:なんかこう、もっと雰囲気出してくのかと思った

 

 それは俺も考えたんだがなぁ、バズったからっていきなり雰囲気出し始めるのはなんかダサいし。

 俺としては、ランクマのついでに気軽に話してるだけなんだから、そこまで仰々しくするのは趣味に合わない。

 これくらい気楽にやっていくのが、性に合っているのだ。

 マイクを先行投資ってことで新しくしたくらいかな。

 

「じゃあ早速だけど、最近カード強盗が問題になってるよな」

 

:俺も負けてカード盗られた……

:カード強盗は負けるのが悪いだろ

:そもそも襲われたことないからわからん

 

 うお……チャットの治安悪……

 野次馬が増えて、チャットの統制取れてないからなぁ。

 まぁいいや、面白いから放置しておこう。

 

 ――カード強盗とは、前世の頃に会ったカドショからカードを強盗するあれではない。

 強制で賭けバトル――この世界の用語でいうとアンティバトル――をさせられ、負けたらカードを奪われるのだ。

 

「あれ、一見一つ一つの事件の犯人はつながりがないようにみえるよな。使うデッキも、事件が起きる場所もバラバラだ。でも、アンティバトルを発生させるアプリは同じものが使われている」

 

:裏に黒幕がいるんじゃ、って言われてるよなー

:アンティバトル発生アプリって、ライブラリに不正アクセスしてバトルモードに移行させるアプリだよな?

 

 ライブラリ――まぁわかりやすく言えばデュエルディスクみたいなもんだ。

 マギロアはデッキを魔術書、カードをページに見立てるのでこう呼ばれる。

 

「じゃあそのアプリの出どころがどこかって考えたんだけど、カード強盗の使うカードには共通点があることに気付いたんだ」

 

:共通点? 種族もテーマ名称も全部別物だぞ?

 

「モンスターの効果が全部テンプレ。各テーマの共通効果とか、表記や発動条件の違いで微妙に惑わされるけど、あらゆるデッキの下級がサーチ、リクルート、モンスター破壊、バック破壊、蘇生、スペルサーチの六種で構成されてる」

 

:それは普通のことじゃないか?

 

 そう、普通のこと。

 カードゲームで強いデッキを組むなら、こういった効果のカードはかならず必要になる。

 だけど、()()()()()()がまったく同じフォーマットで作られていたら?

 

「普通だったらもう少し個性が出るだろ。後攻に強かったり、ミドルレンジのデッキだったり。だっていうのにカード強盗の使うデッキは全部、先行で展開して妨害を構えるデッキで、しかも事故の少ない安定しか考えてないデッキだ。何より――」

 

:何より?

 

()湿()()()()()()が採用されてない! もっと相手の行動阻害しようぜ! デッキ破壊したり特殊降臨に制限かけて通常降臨だけで戦ったり、そういう素敵なギミックが何一つデッキに存在しないんだ!」

 

:初見だが俺はすでにお前のことが嫌いだ

:死んでよ~

 

「で、考えた結果。カード強盗はアプリに加えてデッキも一緒に渡してるんじゃないかと考えた。その手間を省くために、フォーマットを統一してるんだ。すると、アプリを作ってるのは相当力のある組織ってことになる」

 

:でもそれが解ったところで何の意味もなくないか?

:具体的にどの組織がカード強盗をやってるんだよ

 

「だよな。だから俺はこの6つの効果を持つテーマのデッキを総浚いした。それだけだと数が多すぎるから、この6つ以外の効果を持つテーマを全部除外したんだ。その中に――そういうアプリやフォーマット統一デッキを用意できそうな巨大企業を一つ、俺は見つけた」

 

:企業!? 表向きは普通の企業だけど、裏であくどいことしてる……ってコト!?

:は? 大問題じゃん

:え、ていうかそこまで条件解ってれば、俺らでも特定できるよな?

:ってかどこの企業だよ、もったいぶらずに教えろよ。

 

「まぁ待てって、どうせすぐにわかることだ。そうやってアンティバトルを行うためのアプリを開発できるってことは――」

 

 ちょうどこのタイミングで、画面上でやっていたランクマが終了する。

 ちなみに勝ったぞ。

 そもそも今日は調子がいいので、ここまで無敗だ。

 んで、デッキを変更してから次の試合を始めるためにマッチングをしようとすると――

 

 

『対戦相手が見つかりました。エラー、不正なアクセスを検知』

 

 

 なんて、システム音声が聞こえてくる。

 

:ハッキングされてる!?

 

「そりゃあ、こんな大勢の前で自分たちの悪事をバラされそうになってるんだ。口封じくらいしようとしてくるよな」

『――ヴェルライトだな』

 

 マギア大戦の熱帯は、対戦相手との通話が発生しない。

 だからこうして相手が話しかけてくるってことは、これがハッキングによる不正なマッチングであることを雄弁に物語っているのだ。

 

『貴様は、我が社の崇高なる使命を邪魔した。愚かな行為だ。よってこれより処罰を執行する』

「カード強盗が崇高な使命ってことか? それはまた、ずいぶんとおめでたい使命だな。ああいやもしかして、低レベルだからカード強盗が崇高な使命ってことになるのか?」

『貴様……』

 

:おいおい、どうなっちまうんだよこれ

:やべぇよやべぇよ

 

 どうなるって、状況は明らかだろう。

 すでに、マッチングは始まっている。

 後はただバトルの開始を待てばいい。

 ――ああ、なんというか。

 

『理解できぬだろう……貴様には、我々の崇高な使命など!』

「語彙がそれしかないんだな。悪いけど――俺はすでに見通しているぞ? このバトルでそれを証明してやろう」

 

 ()()()()()

 最高の気分だ。

 人とは違う、普通ではない方法で悪の組織を追い詰めている。

 そして――

 

 

「マギロアバトル! エンチャント!」

『……エンチャント』

 

 

 これで勝てたら、最高の気分になれるだろうなぁ。

 そう思いながら俺は、バトルを開始するのだった。

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