カードゲーム世界で考察配信したら、黒幕っぽくて楽しい   作:暁刀魚

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20 計画通り

 俺の狙いは至って単純、ライトユーザーに協力者を持つこと。

 ただし、布太梳モエやハイエロファントのような狂信者ではダメだ。

 程よくこちらを警戒してくれて、疑ってくれて、その上でこちらの能力を信頼してくれる相手でなくてはならない。

 何しろ俺がほしいのは、俺のことを客観視して第三者目線で判断してくれる相手なのだから。

 一応、自分の活動が世界にどういう影響を及ぼすかは、解っているつもりだ。

 しかし、全てを全てコントロールできると思っているほど傲慢でもない。

 実際、俺に感化された狂信者二名はなんかこう、すごいことになった。

 どうしようアレ、特に布太梳モエ。

 

 なので! 次こそ俺は、信頼のおける第三者を用意するのだ! ついでにそいつをからかって遊べたら楽しそう!

 

 後者が本音じゃないかって? 知らんなぁ。

 ごほんごほん。

 ともかくそのために、ここまで俺はジャスティスにトゥルーホープを印象づけてきた。

 ダーティではあるものの、優秀なライトユーザーである、と。

 少なくともそれは、かなり成功しているんじゃないかと思う。

 俺のことを警戒しながらも、実力を疑っていない様子はかなりの手応えを感じる。

 後は、劇的なタイミングで俺がヴェルライトであると明かすだけだ。

 

 何故劇的なタイミングじゃないと行けないかと言えば、勢いで流せないからだ。

 普通に明かしたら、警戒値が跳ね上がってしまうだろう。

 けれども、最高のタイミングでかっこよく正体を明かせば、雰囲気に流されてくれるはずだ。

 少なくともジャスティスはそういうところがあると、俺は知っていた。

 

 非常に生真面目で、けれども思考は柔軟。

 狂信にまで至ってしまったハイエロファントに、教皇としての活動を許したのはジャスティスだという。

 それとなくハイエロファントからそう聞き出した時、俺は彼女しかいないと思ったのだ。

 根本的にお人好しなのだ、ジャスティスは。

 どれだけ相手を警戒していても、そこに正しさがあると判断すればほだされてしまう。

 事実、最初は厳しい視線を向けていたトゥルーホープに、今は自分がこいつをなんとかしなきゃ行けないという使命感を見出していた。

 

 だからこそ、この作戦は成功する。

 俺はそう確信していた。

 そしてついに、自身の正体を明かす計画の最終段階に入ったのだ。

 

「俺はヴェルライト……そして奴が追いかける敵、”テンバイヤ”を追う者。ジャスティス――真実のために、俺に力を貸してくれませんか?」

 

 だからそう、ジャスティスに呼びかけた。

 そして――

 

 

「え? やる! やるよ!? え、今すぐやる! どこにいるの!? あのクソゴミを自分の手で消し飛ばせるの!? どこどこ!? 早くボコボコにさせて!?」

 

 

 ――あっれぇ?

 と、内心首をかしげることとなった。

 え、なにこれ。

 

「……食いつきすぎでは?」

「いやだって乗るでしょ! だってあのクソゴミゲボカスアホアホテンバイヤをボコボコにできるんだよ!? 死ねとしか思えないカスをこの世から消滅させられるのにやらないやついる!? いないよね!?」

「落ち着いてください」

「これが落ち着いていられるか!! 今すぐ消毒だ!!」

 

 本気でテンバイヤが憎い人だ!?

 

「ええと……つかぬことをお伺いしますが、ライトユーザーとしての活動以外は、どんな活動をなさってらっしゃるんですか?」

「イラストレーターだけど? 私が描いたグッズとかが死ぬほど転売されまくってんだけどこちとら?」

「アッハイ」

 

 普通の転売屋のガチめの被害者だった――――

 ああうん、それはもう殺すしかないね。

 

「それで! どうやって! テンバイヤを追い詰めるの!? 知らないとは! 言わせないよ!!」

「顔が近い、顔が近いです!!」

 

 まずい。

 ただでさえ想定と違うのに、あまりに勢いがありすぎて普段の敬語口調が崩れている!

 いや、そこは勢いで誤魔化せるから問題ないとして、ここからどうやって立て直す!?

 ……とりあえず、鼠取りの方法は教えよう。

 マナを探知できないタイプだったらいいんだけどなぁ……

 

 ――なお、流石に見た目が魔法少女なだけあって、マナは探知できました。

 どうすんべ。

 

 

 ■

 

 

 こうなったら、かなり危険だけど計画を変更するしかない。

 本来の予定では二人でテンバイヤに勝負を挑み、その中でピンチを演出しつつ正体を明かす予定だった。

 しかしこのまま俺が正体を暴露しても、テンバイヤに対する殺意が強過ぎてヴェルライトに共感してしまい、警戒してくれなくなるだろう。

 だったらとりあえずリスクを承知で元の路線に何とか戻せないか試すしかない。

 確かにジャスティスにはテンバイヤぶち殺したるな側面があるとしても、本質はヒロイックなライトユーザー。

 それを信じて、ここは王道を攻めるしかない。

 

 俺はまず、布太梳モエとジャスティスが鼠を狩りまくるのを待った。

 ある程度狩れば、鼠の親玉がこちらに攻めてくるだろう。

 というか、本来ならこうなる前にちょっかいをかけてきていてもおかしくないのだが、動きはなかった。

 それだけ大きな策を用意しているか、はたまた別の要因か。

 とにかく、そろそろ仕掛けてきてもおかしくはない。

 その間俺は、考察暴露配信を控えることにした。

 ネット上で勝負を仕掛けられると困るからだ。

 トゥルーホープがヴェルライトであると知っている人間は、ジャスティスだけでなくてはならない。

 そうして待つことしばし、布太梳モエとジャスティスから、ほぼ同時に鼠が発見できなくなったと報告を受けた。

 

 ――頃合いだろう。

 

 俺は配信を行うことにした。

 ただし、その配信は生配信ではなく、録画だ。

 

「久しいな、リスナーの諸君!」

 

:死んでよ~(挨拶)

:死んでよ~(挨拶)

 

 ――俺の配信は、すっかり配信開始の挨拶が「死んでよ~(挨拶)」になってしまっていた。

 (挨拶)までがワンセットだ。

 なんでこうなったんだろうね?

 そこから俺は、鼠に関する話をつらつらと聞かせる。

 

「――すなわち、この鼠を使いテンバイヤは幼い少年少女の正義感を刺激、強引に働かせていたんだ。その過酷さは実に悲惨だ。何しろ、彼らは三時間も眠れれば十分眠れたと言い張るくらいに追い詰められていたのだからな」

 

:いや……ええ……

:流石にそれはカスだろ

:ちょっと理解できない

:死ね

 

 リスナーの反応は、困惑が七割と行ったところ。

 あまりにも、敵の所業が悪辣すぎるのだ。

 死ねとか言ってる場合じゃないレベルで、非道である。

 やっと内容を理解した者たちが、一部死ねと言い始めているくらいで。

 こうして思い返すと、本当にろくな存在じゃないなこいつら。

 というわけで、ここでなんとかする。

 

「――来ましたか」

 

 録画配信が流れる様を、俺はテンバイヤと初めて出会ったビルの上で見ていた。

 そして、そこにテンバイヤが襲撃を仕掛けてくる。

 何しろ、その録画配信を録画した場所が、このビルの上だからな。

 

「お主、トゥルーホープか。――ヴェルライトはどこへ行ったのじゃ!」

 

 現れたのは、黒い影。

 背が低く、ローブをまとっているような印象を受ける。

 そのシルエットはどちらかといえば鼠を思わせるが、配下と違い完全な人型だ。

 鼠のような老人、といった感じだな。

 

「人前に姿を表さず活動していたトゥルーホープの活動については把握できても、この配信が録画であるということは把握できないのですね」

「録画じゃと……?」

「興味深い、なぜ貴方達には把握できることと、出来ないことがあるのか。いえ、あなた達の存在自体は反吐が出るので興味があるのは把握できることの法則性だけですが」

 

 何にしても、それはバトルの中で確かめるのがいいだろう。

 この世界において、相手の真意を図る上でカードバトルほど確かな手段はないのだから。

 

「――ふん、だが見ておれ、儂らには切り札がある。これならば貴様を打倒できるじゃろう」

「ほう、切り札ですか?」

 

 ――――()()()()

 予想通りだ。

 どうしてそう思うのかといえば、あの鼠がはっきり言って弱いからだ。

 初めて邂逅したテンバイヤと比べて、マナ総量が少なすぎる。

 これは、もともと鼠を使役しているテンバイヤが弱いからではないかと推測していた。

 そして実際、眼の前に現れたジジイは()()

 いや、強いならそれで問題ないのだが、この状況で劇的に俺の正体をバラすには相手が強くないと意味がない。

 すなわち――

 

「この切り札であれば、かのヴェルライトすら容易に滅ぼせるはずじゃ!」

「さて、それはどうでしょうね」

「ふん、せいぜいほざくがいい! 現われろ――」

 

 ――()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のだ!

 ジジイが手をかざし、その前に魔法陣みたいな光が出現する。 

 その中から――

 

「――マギロア・キラー!」

 

 

 ()()()()()()()()

 

 

 ――――ん?

 

「…………」

 

 ジジイは、両手を空に掲げたまま動かない。

 ……こいつ今、なんて言った?

 

「――貴方、マギロア・キラーといいましたか?」

「そ、そうじゃ。儂が用意した切り札。貴様を殺す最強のダークユーザー!」

「ええと、そいつ……」

 

 俺は思わず、天を仰ぐ。

 そして、ぽつりと。

 

()()()()()()()()よ?」

「えっ」

 

 街をひょこひょこ歩いているところを、さくっと。

 酒を買うためにコンビニへ出ているところだったために、ライブラリを宿に置いてきてしまったために抵抗もできず。

 ()()()()()()()()()()()

 こう……SNSを使ってオンライン上の飲み友達になって……上手い具合にだまくらかして……

 マギロア・キラーって生粋の快楽主義者だから、割とチョロくて……

 まさかテンバイヤが用意した手先だとは思わなかったんです……

 で、その後札闇武会への駒として使って……警察に捨ててきました。

 

「道理で探しても探しても見つからないわけじゃ……」

「今までそちらから行動を起こさなかったのは、マギロア・キラーが見つからなかったからなのですね……」

「呼び出せばワンチャン行けるんじゃないかなー、と思って試してみたが、ダメだったのう……」

 

 えーと今は……多分、収監中ですね。

 召喚されなかったのは、多分手元にデッキがないからだろう。

 ええと、要するに、だ。

 

「終わりじゃ――――」

 

 俺の計画は、()()()()()()()()のだ――――




策士系主人公は策に溺れた後の七転八倒が一番面白いんだから!
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