カードゲーム世界で考察配信したら、黒幕っぽくて楽しい 作:暁刀魚
――そして、テンバイヤのジジイは敗れた。
普通にそこまで強くなかったのだ。
というか、一人目がマナの量からしてえげつないほど強かったっぽい。
アニメだったら、それこそ最強クラスの敵だったはず。
下手したらラスボスだ。
対してこっちは……1年アニメの1クール目ボスとかそのくらい。
悪くはないんだけど……ほんと、悪くはないんだけど……それだけだ。
マギロア・キラーは調べた限り、2クール目――つまり話の半ばの強いボス、くらいの実力はあったんだけどな。
惜しい……
「バ、バカなぁあああ……こんなこと……こんなことあり得ぬぅぅううう……」
それは俺の台詞だよ。
お前が弱いせいでさぁ、責任とってよね、責任!
イヤほんと、どうするよここから……
ああ、ジジイが消えていってしまう。
まって、もう少しまって、大事なのここからだから。
とか思っていたら――
「――トゥルーホープ!」
ジャスティスがたどり着いてしまった!
どうしよう、マジでノープランだ。
とりあえず……何か……何かないか……!?
「貴方、無事なの!? ついさっきまでここでヴェルライトが配信をしてたはずなんだけど!」
「無事? さて、どうなのでしょうね。これを無事と言うべきか、そうでないと呼ぶべきか。答えは二つに一つです」
「それって……」
俺はライブラリを手元に展開し、操作する。
くそ、何かいい情報はないか?
ここからいい感じにジャスティスへ正体を明かすための方法は、何かないのか!?
そう考えながら、俺は適当極まりないベラ回しをする。
「世の中には真実があり、そしてそれは深く、深く覆い隠されています。故に真実は深く、そして恐ろしいのです。深く底のような場所に潜り込んだ真実は、だからこそ深い真実となり得るのでしょう」
「深い……」
何を言ってるんだろうこいつ。
そしてやはり、ジャスティスは勢いで流すのが一番だ。
この何一つ中身がない俺のつぶやきを、まるで大事なことであるかのように反芻している。
……このまま行けるか?
「……って、もっとわかりやすい言葉で話して! そんなんじゃ、相互理解はできないよ!」
くっ、ダメか!
むしろ相互理解したくないから、こんなこと話してるんだよこっちは!
だが、時間稼ぎは成った!
俺は確かに見つけたぞ、この状況をひっくり返す手段!
ライブラリに素早くメッセージを入力、ある人物に向けて送り出す。
すると――
「この時を待ちわびておりました! ヴェルライト様ぁあああああああ!」
ビルを凄まじい勢いで駆け上がり、ハイエロファントが現れる。
駆け上がった勢いでジャンプして、四足で着地した。
もはや人間の挙動をしていない。
ハイエロファント……いや、今は装い的に教皇か。
「ハ……教皇!? どうしてここに!?」
「自力で脱出を!?」
「そんな病院から脱走したみたいに言わないで!」
「そんな意図はありませんよ」
ミームに反応しただけです。
オタクはすぐにミームで鳴き出すからな、しょうがない。
「うふふふふ! これを! これを手にすれば良いのですね! ヴェルライト様ぁ!!」
「これは……暴走してる!? ヴェルライトは教皇になんて吹き込んだの!?」
「アレを見てください」
俺が指さす先では、教皇が消えゆくジジイのテンバイヤを引っ掴んでいた。
「な、何をする! やめるのじゃ!」
「貴方をここで消滅させたらぁ、何かしらの方法で復活してくるかもしれません! ですので……再び、貴方をカードに!!」
「ぬ、ぬおおおおお!?」
先日倒したテンバイヤは、カードにしてから消滅させた結果、復活していない。
なら確実に倒すならカードにして、それを使ったファイトで消滅させるのが確実だ。
という話をSNSのダイレクトメッセージを用いて教皇に行い、この場まで呼び出した。
おそらく、録画配信でこの場所が映った時点で待機していたのだろう、やってくるまでは一瞬だ。
今まで姿を見せなかったのは、ヴェルライトがこの場にいないから。
何にしても、カードになったジジイを教皇はデッキに投入。
ライブラリを構える。
「く……やめて教皇! ここで戦っても何も得られない!」
「いいえ、そうではありませんジャスティス! 私はヴェルライト様に導かれたのです! このバトルは、神の思し召し!」
「来ますよ、ジャスティス。構えてください」
「……しょうがないな!」
俺はここで、こっそりデッキを入れ替える。
ついでに、バトルはタッグマッチで教皇と戦うルールではなく、一対一対一のバトルロイヤルに設定。
教皇は見てないだろうし、雰囲気に流されてジャスティスも確認しないはずだ。
これで……軌道修正する!
「マギロアバトル――エンチャント!」
「エンチャントですううう!」
「くっ……エンチャント!」
■
そして、恐るべきことが起きてしまった。
俺は手札を見ながらワナワナと震える。
いや、震えてるのは内心だけだけど。
側から見る分には、至って平静を装っているように見えるだろう。
しかし実際には、ただただ愕然としていたのだ。
なぜなら――
て、手札が良すぎる!
え、そっち!?
と思うかもしれないが、そっちだ。
おいおいこれじゃあMEの勝ちじゃないか、ってなるくらい手札がいい。
今回俺は、途中でデッキをヴェルライトにスイッチできるように混ぜ物デッキを使っている。
ファンサービス旺盛な【ダークナイトメア】デッキに、陰湿なロックギミックを搭載しているのだ。
そしてこれは、ぶっちゃけ純正デッキの方が強かったりする。
だとしてもなおロックギミックを混ぜたのは、途中で正体を明かしてデッキをスイッチさせるという目的だけでない。
あえてデッキパワーを下げる狙いもあるのだ。
こうすることで、多少苦戦しやすくなる狙いがあったが……それでもなお、俺の手札が良過ぎた。
それもこれも、ここまで計画が上手く行き過ぎた弊害だ。
俺の狙いはともかく、現実で起きた出来事は俺にとってかなり都合がいい偶然である。
これを引き寄せられるくらい、俺のマナが溜まってしまっているということ。
結果として、苦戦するどころか、このまま二人がかりで妨害を受けてもそれを貫通できるくらい手札が揃っている。
実際はジャスティスが俺を妨害することはないだろうから、さらに簡単だ。
ど、どうする……!?
いや、まだだ……まだ俺の策は潰えていない!
俺のターンは、まだ終わってない!
そう考えつつも、俺は回ってきた自分の先行1ターン目を――
「――ターンエンド」
「な、トゥルーホープ……あなた、何をするつもりなの!?」
「ふふふ……それは見てのお楽しみ……ですよ」
驚愕するジャスティスに、意味深な言葉を返す。
何をするつもりかっていえば、何もせずにボコられるつもりですが?
これなら、いい感じにピンチを作ることができる!
完璧な作戦だ!
「では、私のターンですね! ドロー!」
そして、続く教皇のターン。
教皇はそこで初めて手札を眺めた。
ちらっと視線を向けて、そして動きが止まる。
…………ちょっと待て?
「ふふ、ふふふ、ふふふふ!」
怪しく笑う教皇。
しかし!
これは!
あれだ!
「
めちゃくちゃ事故ってる!
なんてことだ。
いやしかし、考えてみれば凄まじく当然だ。
今回、教皇はかなりマナの流れが悪い。
伏線なんてほとんどない乱入、相性の悪いジジイカードをデッキに入れる、俺の爆破に複数回巻き込まれて噛ませポイントを貯めているなどなど。
彼女のドロー力を鈍らせる要因はあまりにも多いのだ。
で、やることのない教皇は――
「ターンエンドです!」
そのままターンを終了した。
やべえぞやべえぞ。
そもそもこのままバトルにならないんじゃないかこれ。
なんなら、ジャスティスが一方的に教皇をボコって終わりだ。
いや、しかし何ならそれでいいのかもしれない。
ここまで破綻した計画を続行することは不可能。
であれば、素直にこの事件を終わらせて次に行くべきだ。
うん、それがいい。
と言うかそれしかない!
俺は期待を込めて、ジャスティスを見る。
さあ、今の君は相当マナが溜まっているはずだ。そのドロー力で事故りまくった教皇をワンキルして――
「そう、そっか……わかった。何か狙いがあるんだね、トゥルーホープ! なら、私はそれを信じるよ!
あっ。
――かくして、ジャスティスは俺を信頼して何もせずにターンを終了した。
そしてこれにより、俺は真の狙いを明かさず教皇をボコってバトルを終了させることができなくなったのだ。
そんなことをしたら、ここまで作った流れが全て牙を向きかねない。
こうして誰一人動くことなく、バトルはぐだぐだになることが決定した。
ど、どうしよう。
いやでも――
ま、まだ俺のターンは終わってないから……(震え声)
ぐだ……ぐだ……
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