カードゲーム世界で考察配信したら、黒幕っぽくて楽しい   作:暁刀魚

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22 もうしーらね!

 三人が一斉に何もせずターンを終了し、俺のターンが再びやってくる。

 ここで俺が何か行動を起こさなければ、きっと教皇もジャスティスも行動を起こさないだろう。

 いや、教皇は多分どれだけドローしても手札が良くならないから起こせないと言うのが正しいな。

 もし良くなるとしたら、それは俺の積み重ねてきた“流れ”が崩れる時だ。

 

「ドロー!」

 

 だからこそ、ここは俺が動かないといけない。

 ドローした札を見て、俺はすぐに行動を起こすと決意する。

 こんなことなら最初のターンから動いておけばよかったが、流石に教皇がノーアクションするほど手札死んでるとは思わなかったし、仕方がないだろう。

 しかしこの状況をどうにかする方法を、俺は見つけた。

 なんとか……なれ!

 

「俺は<ダークナイトメア・カーテンドール>の効果により相手の場に<ダークナイトメア・デコイドール>を、特殊降臨します」

「また自爆戦法……? でも、だとしたら1ターン目に動かなかった理由は何?」

 

 そんなもんないよ――

 こほん。

 俺が現在使っている【ダークナイトメア】は、相手の場にモンスターを送りつけて、それを利用しこちらのモンスターの効果を使用するデッキだ。

 場合によっては、先行ワンキルも可能。

 それ以外の動きも優秀なデッキである。

 陰湿というほど陰湿ではないが、俺の手にはやたらと馴染む。

 どうしてだろうね?

 うう……手が疼く……ファンサービスしたい……

 

「俺はスペルを一枚伏せ、これでターンを終える!」

「相手にモンスターを渡すだけでターンエンド……!? ちょっとトゥルーホープ、ちゃんと考えあってのことなんだよね!?」

「ふふふ……」

 

 今度はちゃんとあるよ――

 こほん

 理由は単純、教(・)皇(・)の(・)展(・)開(・)を(・)助(・)け(・)る(・)た(・)め(・)だ。

 といっても教皇――ハイエロファントのデッキはモンスターを一体並べただけじゃ特にできることはない。

 しかし、ジジイの方はどうだろう。

 あいつもその配下の鼠も、上位降臨を主体とするデッキを使用していた。

 なら当然、ジジイ本人も上位降臨が必要なモンスターである可能性が高い。

 上位降臨をした上で何をするかは、またそれぞれ違うけどな。

 鼠は上位降臨した時だけ効果を発揮するモンスターを使用し、ジジイは手札のモンスターを上位降臨の触媒にできるデッキだ。

 さて、教皇は次のターン、どう出るか――

 

「私のターンです! ふふ、ふふふ! トゥルーホープといいましたか? おそらくこのモンスターは、私の起こした行動に反応して効果を発揮するのでしょう! ですが、触媒にしてしまえば、その機会は永遠に訪れません!」

「いわんこっちゃないよ!」

 

 教皇の勝ち誇ったような言葉に、ジャスティスが俺を睨む。

 大変申し訳ない。

 しかし、こうするしかなかったのだ。

 というわけで、行け! 教皇!

 ジジイが変化したカードを呼び出すのだ!

 

「さぁ、<デコイボマー>を触媒として現れなさい! そして私とともに死ぬのです! <虚栄の鼠(ヴァニティ・モルモット)>!」

 

 降臨するは、とにかく巨大な鼠。

 しかしこの鼠は実際に大きいわけではなく、映像だ。

 ホログラフの巨大鼠、といったイメージ。

 

「そして、<虚栄の鼠>の効果――」

 

 そして、教皇はその効果を宣言する。

 さて、どんな効果かな。

 まぁ大した効果ではないんだろうけど――

 

 

「このモンスターは特殊降臨ができず、そしてこのモンスターがフィールドにいる限り、お互いのモンスターを特殊降臨できない!」

 

 

 ――――――――それは。

 それは――陰湿カードじゃないか?

 一瞬だけ、思考が止まる。

 心拍数が急上昇する。

 汗がぶわっと溢れ出る。

 だって、だってこの陰湿カードは――

 

「俺の……持(・)っ(・)て(・)い(・)な(・)い(・)……陰湿カード」

 

 二人に聞こえないほど小さな声で、こぼす。

 そりゃそうだ。

 ジジイは今まさにこの瞬間、カードになったばかり何だから。

 手に入れる機会なんて、あるはずもない。

 だけど、だから、だからこそ――

 

「――――欲しい」

 

 ああ、ほんと。

 ここまでずっと、今後のために努力してきたのだ。

 幾重にも策を張り巡らせ、そして上手く行き過ぎたせいで破綻した。

 でも、なんていうか……アレだ。

 

 もう、しーらね。

 

 黒幕とか、暗躍とか、ガバとかどうでもいい。

 今眼の前にある陰湿カードの方が、俺にとっては重要だ。

 欲しい、欲しい、欲しい――!

 

「参ります! <虚栄の鼠>で<カーテンドール>を攻撃!」

「――よこせ」

「……なんですか?」

「そいつを……よこせぇ! 俺は攻撃宣言時に<ダークナイトメア・シャッフリング>を発動!!」

「トゥルーホープ!? 急にどうしたの!?」

 

 あーもう面倒な暗躍なんてやってられるか!

 黒幕は引退だ!

 また来週!(※競馬を来週まで引退するニュアンス)

 というわけで俺は、ここまでの流れをぶった切って私欲を優先することとした。

 

「俺は自分の場の【ダークナイトメア】モンスターと、相手フィールドのモンスターのコントロールを入れ替える!」

「な、なんですって!?」

「これで、<虚栄の鼠>は俺の物だ……!」

 

 自分フィールドにやってきた<虚栄の鼠>を、俺は愛おしく受け入れる。

 ああ、新しい陰湿カードだ。

 俺の……俺だけの陰湿カードだ!

 このままコントロールを維持した状態でバトルを終了させて、どさくさに紛れて自分のものにするぞ!

 カードゲームの世界なら……というかこの世界なら割とよくあることだ!

 

「く、くく、ははは! あははははははは!」

「い、一体何を……」

「どういうことなの!? 答えてよ、トゥルーホープ!」

「ああ、まさしく――」

 

 俺は、今まで自身が身につけていたサングラスを外す。

 代わりに、あるものを装着するのだ。

 それは――ヴェルライトのマスク。

 

「――真実の希望など、虚栄にすぎない」

「な、あ……」

「貴方、まさか――」

 

 同時に、コートの色も変化する。

 ああ、これはいいな。

 前回人前に姿を晒した時は時間がなくて地味な服装だったが、こういうコートは黒幕みたいでちょうどいい。

 驚愕する二人を他所に、俺は宣言した。

 

「俺は――ヴェルライト。俺が求めるのは希望ではなく、光。この世界の真実の光だ!」

 

 今明かされる衝撃の真実に、教皇もジャスティスも目を見開く。

 そのまま、畳み掛けるように俺は教皇へと呼びかけた。

 

「――実に良くやってくれたな、教皇。君のおかげで、俺は安全に<虚栄の鼠>を手に入れることができた。感謝するよ」

「はうっ!!」

 

 途端、胸を抑えて倒れる教皇。

 そして、動かなくなった――

 教皇、本名波浪フェニ、享年二十(?)。

 死因――尊死。

 ルール上、もし仮にバトル中ユーザーが死亡した場合そのユーザーは敗北となる。

 これにより、教皇は一瞬でバトルから排除された。

 まぁ、ギャグ死だからそのうち復活するだろう。

 しかし、このバトルを教皇が続けられなくなったことは事実。

 これで、まずは一人。

 

「ま、まさかこれまでトゥルーホープとして活動してたのは、全てこの時のためだったの!?」

「そうだ」

 

 ――いや、実際はそんなこと一切考えてませんでした。

 

「私に接近したのも、私と教皇が知り合いだと知っていたから!?」

「そうだ」

 

 ――そこは知ってたけど、ジャスティスを選んだ理由は違います。

 

「わざと最初のターンで何もしなかったのは、教皇に攻撃させるため!?」

「そうだ」

 

 ――<シャッフリング>の効果を勘違いしているようだけど、<シャッフリング>はいつでも使えるスペルです。

 

 けど、俺はそのすべてに「そうだ」と返す。

 もうここまで来たら、後は野となれ山となれ。

 もうしーらね、の精神である。

 

「そう、そっか……騙してたんだ、最初から。私との活動は、単なる友情ごっこに過ぎなかったんだ……」

「そうだ」

 

 ――あ、なんか教皇が一瞬だけ起き上がろうとして、また死んだ。

 ヴェルライトとジャスティスの友情、という部分だけ聞いて脳が破壊されたらしい。

 南無。

 ……いや、これ後々大変なことにならないか?

 ………もうしーらね。

 

「でも、でもね……? 私……本気で信頼してたんだよ? やり方は最悪だけど、トゥルーホープはどんなダークユーザーだって倒してしまうすごいライトユーザーなんだ……って。それも、嘘だったの?」

「そうだ」

「――――違う」

 

 ……あれ?

 

「違う! 絶対に違う! 貴方はヴェルライトじゃない、トゥルーホープ! 私が信頼した、最低最悪のライトユーザー!」

「……」

「――こういう時だけ、そうだって言わないんだね」

 

 そうやって、儚げに笑うジャスティスを見て、思う。

 ……なんか、割と上手くいってね?

 何もかもを投げ出して、ノリと勢いで正体を暴露した。

 けど、なんかジャスティスは俺の想定通りに、俺(トゥルーホープ)を信頼しながらも俺(ヴェルライト)を敵視している。

 これ、俺が望んでいた通りの結果じゃないか?

 

「……私は信じるよ。貴方はヴェルライトじゃない。正義の心を持った、トゥルーホープなんだ!」

「俺に心はない、また裏切るだけだ」

「なら、もう一度信じる! 心ができるまで、貴方を信じる!」

 

 一部(教皇の方を見る)無視できない爆弾もあるけど、ジャスティスとの関係はこれが正解だ。

 ――よし、全部上手く行ったな!

 ふう、ここまで大変だった。

 

「……バトルは終わってない。いつの間にそうしたのか知らないけど、バトルロイヤルルールが適用されてる。――最初からこの事を見透かしてたんでしょ」

「……ふっ」

「続けるよ! ハロちゃんは死んだ! だから次は私のターンだ!」

「味方をサラッと殺すのはどうかと思うぞ」

 

 というか、しれっと教皇の正体をバラすんじゃない。

 いや俺も教皇が何者かっていうのは把握してるし、ジャスティスもそう思ってるんだろうけどさ。

 もうちょっと仲間のプライバシーは守ろうね。

 こほん。

 

 かくして、俺達はバトルを再開し――――普通に俺が勝った。

 流石に普通のデッキで特殊降臨を封じられると……厳しいっすね、うん。

 俺のロックギミックは特殊降臨がなくてもなんとかなるので、さくっと勝ちましたよ。

 さて、何にしてもこれでテンバイヤのジジイは撃破され、ジャスティスという第三者に俺の正体を晒すことができた。

 おそらく次が、今回の戦いを締めくくる最後の戦いになるだろう。

 それにしても、一つ今回の反省をするなら――多分、正義感が強くて単純なライトユーザー相手には、変な策を弄するより普通にやったほうが……早い。




多分ややこしいことせずに、最初から適当なタイミングでじゃんじゃじゃーんしてれば巧く言ってたと思いますよ。
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