カードゲーム世界で考察配信したら、黒幕っぽくて楽しい 作:暁刀魚
三人が一斉に何もせずターンを終了し、俺のターンが再びやってくる。
ここで俺が何か行動を起こさなければ、きっと教皇もジャスティスも行動を起こさないだろう。
いや、教皇は多分どれだけドローしても手札が良くならないから起こせないと言うのが正しいな。
もし良くなるとしたら、それは俺の積み重ねてきた”流れ”が崩れる時だ。
「ドロー!」
だからこそ、ここは俺が動かないと行けない。
ドローした札を見て、俺はすぐに行動を起こすと決意する。
こんなことなら最初のターンから動いておけばよかったが、流石に教皇がノーアクションするほど手札死んでるとは思わなかったし、仕方がないだろう。
しかしこの状況をどうにかする方法を、俺は見つけた。
なんとか……なれ!
「俺は<ダークナイトメア・カーテンドール>の効果により相手の場に<ダークナイトメア・デコイドール>を、特殊降臨します」
「また自爆戦法……? でも、だとしたら1ターン目に動かなかった理由は何?」
そんなもんないよ――
こほん。
俺が現在使っている【ダークナイトメア】は、相手の場にモンスターを送りつけて、それを利用しこちらのモンスターの効果を使用するデッキだ。
場合によっては、先行ワンキルも可能。
それ以外の動きも優秀なデッキである。
陰湿というほど陰湿ではないが、俺の手にはやたらと馴染む。
どうしてだろうね?
うう……手が疼く……ファンサービスしたい……
「俺はスペルを一枚伏せ、これでターンを終える!」
「相手にモンスターを渡すだけでターンエンド……!? ちょっとトゥルーホープ、ちゃんと考え合ってのことなんだよね!?」
「ふふふ……」
今度はちゃんとあるよ――
こほん
理由は単純、
といっても教皇――ハイエロファントのデッキはモンスターを一体並べただけじゃ特にできることはない。
しかし、ジジイの方はどうだろう。
あいつもその配下の鼠も、上位降臨を主体とするデッキを使用していた。
なら当然、ジジイ本人も上位降臨が必要なモンスターである可能性が高い。
上位降臨をした上で何をするかは、またそれぞれ違うけどな。
鼠は上位降臨した時だけ効果を発揮するモンスターを使用し、ジジイは手札のモンスターを上位降臨の触媒にできるデッキだ。
さて、教皇は次のターン、どう出るか――
「私のターンです! ふふ、ふふふ! トゥルーホープといいましたか? おそらくこのモンスターは、私の起こした行動に反応して効果を発揮するのでしょう! ですが、触媒にしてしまえば、その機会は永遠に訪れません!」
「いわんこっちゃないよ!」
教皇の勝ち誇ったような言葉に、ジャスティスが俺を睨む。
大変申し訳ない。
しかし、こうするしかなかったのだ。
というわけで、行け! 教皇!
ジジイが変化したカードを呼び出すのだ!
「さぁ、<デコイボマー>を触媒として現れなさい! そして私とともに死ぬのです! <
降臨するは、とにかく巨大な鼠。
しかしこの鼠は実際に大きいわけではなく、映像だ。
ホログラフの巨大鼠、といったイメージ。
「そして、<虚栄の鼠>の効果――」
そして、教皇はその効果を宣言する。
さて、どんな効果かな。
まぁ大した効果ではないんだろうけど――
「このモンスターは特殊降臨ができず、そしてこのモンスターがフィールドにいる限り、お互いのモンスターを特殊降臨できない!」
――――――――それは。
それは――陰湿カードじゃないか?
一瞬だけ、思考が止まる。
心拍数が急上昇する。
汗がぶわっと溢れ出る。
だって、だってこの陰湿カードは――
「俺の……
二人に聞こえないほど小さな声で、こぼす。
そりゃそうだ。
ジジイは今まさにこの瞬間、カードになったばかり何だから。
手に入れる機会なんて、あるはずもない。
だけど、だから、だからこそ――
「――――欲しい」
ああ、ほんと。
ここまでずっと、今後のために努力してきたのだ。
幾重にも策を張り巡らせ、そして上手く行き過ぎたせいで破綻した。
でも、なんていうか……アレだ。
もう、しーらね。
黒幕とか、暗躍とか、ガバとかどうでもいい。
今眼の前にある陰湿カードの方が、俺にとっては重要だ。
欲しい、欲しい、欲しい――!
「参ります! <虚栄の鼠>で<カーテンドール>を攻撃!」
「――よこせ」
「……なんですか?」
「そいつを……よこせぇ! 俺は攻撃宣言時に<ダークナイトメア・シャッフリング>を発動!!」
「トゥルーホープ!? 急にどうしたの!?」
あーもう面倒な暗躍なんてやってられるか!
黒幕は引退だ!
また来週!(※競馬を来週まで引退するニュアンス)
というわけで俺は、ここまでの流れをぶった切って私欲を優先することとした。
「俺は自分の場の【ダークナイトメア】モンスターと、相手フィールドのモンスターのコントロールを入れ替える!」
「な、なんですって!?」
「これで、<虚栄の鼠>は俺の物だ……!」
自分フィールドにやってきた<虚栄の鼠>を、俺は愛おしく受け入れる。
ああ、新しい陰湿カードだ。
俺の……俺だけの陰湿カードだ!
このままコントロールを維持した状態でバトルを終了させて、どさくさに紛れて自分のものにするぞ!
カードゲームの世界なら……というかこの世界なら割とよくあることだ!
「く、くく、ははは! あははははははは!」
「い、一体何を……」
「どういうことなの!? 答えてよ、トゥルーホープ!」
「ああ、まさしく――」
俺は、今まで自身が身につけていたサングラスを外す。
代わりに、あるものを装着するのだ。
それは――ヴェルライトのマスク。
「――真実の希望など、虚栄にすぎない」
「な、あ……」
「貴方、まさか――」
同時に、コートの色も変化する。
ああ、これはいいな。
前回人前に姿を晒した時は時間がなくて地味な服装だったが、こういうコートは黒幕みたいでちょうどいい。
驚愕する二人を他所に、俺は宣言した。
「俺は――ヴェルライト。俺が求めるのは希望ではなく、光。この世界の真実の光だ!」
今明かされる衝撃の真実に、教皇もジャスティスも目を見開く。
そのまま、畳み掛けるように俺は教皇へと呼びかけた。
「――実に良くやってくれたな、教皇。君のおかげで、俺は安全に<虚栄の鼠>を手に入れることができた。感謝するよ」
「はうっ!!」
途端、胸を抑えて倒れる教皇。
そして、動かなくなった――
教皇、本名波浪フェニ、享年二十(?)。
死因――尊死。
ルール上、もし仮にバトル中ユーザーが死亡した場合そのユーザーは敗北となる。
これにより、教皇は一瞬でバトルから排除された。
まぁ、ギャグ死だからそのうち復活するだろう。
しかし、このバトルを教皇が続けられなくなったことは事実。
これで、まずは一人。
「ま、まさかこれまでトゥルーホープとして活動してたのは、全てこの時のためだったの!?」
「そうだ」
――いや、実際はそんなこと一切考えてませんでした。
「私に接近したのも、私と教皇が知り合いだと知っていたから!?」
「そうだ」
――そこは知ってたけど、ジャスティスを選んだ理由は違います。
「わざと最初のターンで何もしなかったのは、教皇に攻撃させるため!?」
「そうだ」
――<シャッフリング>の効果を勘違いしているようだけど、<シャッフリング>はいつでも使えるスペルです。
けど、俺はそのすべてに「そうだ」と返す。
もうここまで来たら、後は野となれ山となれ。
もうしーらね、の精神である。
「そう、そっか……騙してたんだ、最初から。私との活動は、単なる友情ごっこに過ぎなかったんだ……」
「そうだ」
――あ、なんか教皇が一瞬だけ起き上がろうとして、また死んだ。
ヴェルライトとジャスティスの友情、という部分だけ聞いて脳が破壊されたらしい。
南無。
……いや、これ後々大変なことにならないか?
………もうしーらね。
「でも、でもね……? 私……本気で信頼してたんだよ? やり方は最悪だけど、トゥルーホープはどんなダークユーザーだって倒してしまうすごいライトユーザーなんだ……って。それも、嘘だったの?」
「そうだ」
「――――違う」
……あれ?
「違う! 絶対に違う! 貴方はヴェルライトじゃない、トゥルーホープ! 私が信頼した、最低最悪のライトユーザー!」
「……」
「――こういう時だけ、そうだって言わないんだね」
そうやって、儚げに笑うジャスティスを見て、思う。
……なんか、割と上手くいってね?
何もかもを投げ出して、ノリと勢いで正体を暴露した。
けど、なんかジャスティスは俺の想定通りに、
これ、俺が望んでいた通りの結果じゃないか?
「……私は信じるよ。貴方はヴェルライトじゃない。正義の心を持った、トゥルーホープなんだ!」
「俺に心はない、また裏切るだけだ」
「なら、もう一度信じる! 心ができるまで、貴方を信じる!」
一部(教皇の方を見る)無視できない爆弾もあるけど、ジャスティスとの関係はこれが正解だ。
――よし、全部上手く行ったな!
ふう、ここまで大変だった。
「……バトルは終わってない。いつの間にそうしたのか知らないけど、バトルロイヤルルールが適用されてる。――最初からこの事を見透かしてたんでしょ」
「……ふっ」
「続けるよ! ハロちゃんは死んだ! だから次は私のターンだ!」
「味方をサラッと殺すのはどうかと思うぞ」
というか、しれっと教皇の正体をバラすんじゃない。
いや俺も教皇が何者かっていうのは把握してるし、ジャスティスもそう思ってるんだろうけどさ。
もうちょっと仲間のプライバシーは守ろうね。
こほん。
かくして、俺達はバトルを再開し――――普通に俺が勝った。
流石に普通のデッキで特殊降臨を封じられると……厳しいっすね、うん。
俺のロックギミックは特殊降臨がなくてもなんとかなるので、さくっと勝ちましたよ。
さて、何にしてもこれでテンバイヤのジジイは撃破され、ジャスティスという第三者に俺の正体を晒すことができた。
おそらく次が、今回の戦いを締めくくる最後の戦いになるだろう。
それにしても、一つ今回の反省をするなら――多分、正義感が強くて単純なライトユーザー相手には、変な策を弄するより普通にやったほうが……早い。
多分ややこしいことせずに、最初から適当なタイミングでじゃんじゃじゃーんしてれば巧く言ってたと思いますよ。
ジャスティス編は以上となります。
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