カードゲーム世界で考察配信したら、黒幕っぽくて楽しい   作:暁刀魚

22 / 22
22 もうしーらね!

 三人が一斉に何もせずターンを終了し、俺のターンが再びやってくる。

 ここで俺が何か行動を起こさなければ、きっと教皇もジャスティスも行動を起こさないだろう。

 いや、教皇は多分どれだけドローしても手札が良くならないから起こせないと言うのが正しいな。

 もし良くなるとしたら、それは俺の積み重ねてきた”流れ”が崩れる時だ。

 

「ドロー!」

 

 だからこそ、ここは俺が動かないと行けない。

 ドローした札を見て、俺はすぐに行動を起こすと決意する。

 こんなことなら最初のターンから動いておけばよかったが、流石に教皇がノーアクションするほど手札死んでるとは思わなかったし、仕方がないだろう。

 しかしこの状況をどうにかする方法を、俺は見つけた。

 なんとか……なれ!

 

「俺は<ダークナイトメア・カーテンドール>の効果により相手の場に<ダークナイトメア・デコイドール>を、特殊降臨します」

「また自爆戦法……? でも、だとしたら1ターン目に動かなかった理由は何?」

 

 そんなもんないよ――

 こほん。

 俺が現在使っている【ダークナイトメア】は、相手の場にモンスターを送りつけて、それを利用しこちらのモンスターの効果を使用するデッキだ。

 場合によっては、先行ワンキルも可能。

 それ以外の動きも優秀なデッキである。

 陰湿というほど陰湿ではないが、俺の手にはやたらと馴染む。

 どうしてだろうね?

 うう……手が疼く……ファンサービスしたい……

 

「俺はスペルを一枚伏せ、これでターンを終える!」

「相手にモンスターを渡すだけでターンエンド……!? ちょっとトゥルーホープ、ちゃんと考え合ってのことなんだよね!?」

「ふふふ……」

 

 今度はちゃんとあるよ――

 こほん

 理由は単純、()()()()()()()()()()()だ。

 といっても教皇――ハイエロファントのデッキはモンスターを一体並べただけじゃ特にできることはない。

 しかし、ジジイの方はどうだろう。

 あいつもその配下の鼠も、上位降臨を主体とするデッキを使用していた。

 なら当然、ジジイ本人も上位降臨が必要なモンスターである可能性が高い。

 上位降臨をした上で何をするかは、またそれぞれ違うけどな。

 鼠は上位降臨した時だけ効果を発揮するモンスターを使用し、ジジイは手札のモンスターを上位降臨の触媒にできるデッキだ。

 さて、教皇は次のターン、どう出るか――

 

「私のターンです! ふふ、ふふふ! トゥルーホープといいましたか? おそらくこのモンスターは、私の起こした行動に反応して効果を発揮するのでしょう! ですが、触媒にしてしまえば、その機会は永遠に訪れません!」

「いわんこっちゃないよ!」

 

 教皇の勝ち誇ったような言葉に、ジャスティスが俺を睨む。

 大変申し訳ない。

 しかし、こうするしかなかったのだ。

 というわけで、行け! 教皇!

 ジジイが変化したカードを呼び出すのだ!

 

「さぁ、<デコイボマー>を触媒として現れなさい! そして私とともに死ぬのです! <虚栄の鼠(ヴァニティ・モルモット)>!」

 

 降臨するは、とにかく巨大な鼠。

 しかしこの鼠は実際に大きいわけではなく、映像だ。

 ホログラフの巨大鼠、といったイメージ。

 

「そして、<虚栄の鼠>の効果――」

 

 そして、教皇はその効果を宣言する。

 さて、どんな効果かな。

 まぁ大した効果ではないんだろうけど――

 

 

「このモンスターは特殊降臨ができず、そしてこのモンスターがフィールドにいる限り、お互いのモンスターを特殊降臨できない!」

 

 

 ――――――――それは。

 それは――陰湿カードじゃないか?

 一瞬だけ、思考が止まる。

 心拍数が急上昇する。

 汗がぶわっと溢れ出る。

 だって、だってこの陰湿カードは――

 

「俺の……()()()()()()……陰湿カード」

 

 二人に聞こえないほど小さな声で、こぼす。

 そりゃそうだ。

 ジジイは今まさにこの瞬間、カードになったばかり何だから。

 手に入れる機会なんて、あるはずもない。

 だけど、だから、だからこそ――

 

「――――欲しい」

 

 ああ、ほんと。

 ここまでずっと、今後のために努力してきたのだ。

 幾重にも策を張り巡らせ、そして上手く行き過ぎたせいで破綻した。

 でも、なんていうか……アレだ。

 

 もう、しーらね。

 

 黒幕とか、暗躍とか、ガバとかどうでもいい。

 今眼の前にある陰湿カードの方が、俺にとっては重要だ。

 欲しい、欲しい、欲しい――!

 

「参ります! <虚栄の鼠>で<カーテンドール>を攻撃!」

「――よこせ」

「……なんですか?」

「そいつを……よこせぇ! 俺は攻撃宣言時に<ダークナイトメア・シャッフリング>を発動!!」

「トゥルーホープ!? 急にどうしたの!?」

 

 あーもう面倒な暗躍なんてやってられるか!

 黒幕は引退だ!

 また来週!(※競馬を来週まで引退するニュアンス)

 というわけで俺は、ここまでの流れをぶった切って私欲を優先することとした。

 

「俺は自分の場の【ダークナイトメア】モンスターと、相手フィールドのモンスターのコントロールを入れ替える!」

「な、なんですって!?」

「これで、<虚栄の鼠>は俺の物だ……!」

 

 自分フィールドにやってきた<虚栄の鼠>を、俺は愛おしく受け入れる。

 ああ、新しい陰湿カードだ。

 俺の……俺だけの陰湿カードだ!

 このままコントロールを維持した状態でバトルを終了させて、どさくさに紛れて自分のものにするぞ!

 カードゲームの世界なら……というかこの世界なら割とよくあることだ!

 

「く、くく、ははは! あははははははは!」

「い、一体何を……」

「どういうことなの!? 答えてよ、トゥルーホープ!」

「ああ、まさしく――」

 

 俺は、今まで自身が身につけていたサングラスを外す。

 代わりに、あるものを装着するのだ。

 それは――ヴェルライトのマスク。

 

「――真実の希望など、虚栄にすぎない」

「な、あ……」

「貴方、まさか――」

 

 同時に、コートの色も変化する。

 ああ、これはいいな。

 前回人前に姿を晒した時は時間がなくて地味な服装だったが、こういうコートは黒幕みたいでちょうどいい。

 驚愕する二人を他所に、俺は宣言した。

 

「俺は――ヴェルライト。俺が求めるのは希望ではなく、光。この世界の真実の光だ!」

 

 今明かされる衝撃の真実に、教皇もジャスティスも目を見開く。

 そのまま、畳み掛けるように俺は教皇へと呼びかけた。

 

「――実に良くやってくれたな、教皇。君のおかげで、俺は安全に<虚栄の鼠>を手に入れることができた。感謝するよ」

「はうっ!!」

 

 途端、胸を抑えて倒れる教皇。

 そして、動かなくなった――

 教皇、本名波浪フェニ、享年二十(?)。

 死因――尊死。

 ルール上、もし仮にバトル中ユーザーが死亡した場合そのユーザーは敗北となる。

 これにより、教皇は一瞬でバトルから排除された。

 まぁ、ギャグ死だからそのうち復活するだろう。

 しかし、このバトルを教皇が続けられなくなったことは事実。

 これで、まずは一人。

 

「ま、まさかこれまでトゥルーホープとして活動してたのは、全てこの時のためだったの!?」

「そうだ」

 

 ――いや、実際はそんなこと一切考えてませんでした。

 

「私に接近したのも、私と教皇が知り合いだと知っていたから!?」

「そうだ」

 

 ――そこは知ってたけど、ジャスティスを選んだ理由は違います。

 

「わざと最初のターンで何もしなかったのは、教皇に攻撃させるため!?」

「そうだ」

 

 ――<シャッフリング>の効果を勘違いしているようだけど、<シャッフリング>はいつでも使えるスペルです。

 

 けど、俺はそのすべてに「そうだ」と返す。

 もうここまで来たら、後は野となれ山となれ。

 もうしーらね、の精神である。

 

「そう、そっか……騙してたんだ、最初から。私との活動は、単なる友情ごっこに過ぎなかったんだ……」

「そうだ」

 

 ――あ、なんか教皇が一瞬だけ起き上がろうとして、また死んだ。

 ヴェルライトとジャスティスの友情、という部分だけ聞いて脳が破壊されたらしい。

 南無。

 ……いや、これ後々大変なことにならないか?

 ………もうしーらね。

 

「でも、でもね……? 私……本気で信頼してたんだよ? やり方は最悪だけど、トゥルーホープはどんなダークユーザーだって倒してしまうすごいライトユーザーなんだ……って。それも、嘘だったの?」

「そうだ」

「――――違う」

 

 ……あれ?

 

「違う! 絶対に違う! 貴方はヴェルライトじゃない、トゥルーホープ! 私が信頼した、最低最悪のライトユーザー!」

「……」

「――こういう時だけ、そうだって言わないんだね」

 

 そうやって、儚げに笑うジャスティスを見て、思う。

 ……なんか、割と上手くいってね?

 何もかもを投げ出して、ノリと勢いで正体を暴露した。

 けど、なんかジャスティスは俺の想定通りに、(トゥルーホープ)を信頼しながらも(ヴェルライト)を敵視している。

 これ、俺が望んでいた通りの結果じゃないか?

 

「……私は信じるよ。貴方はヴェルライトじゃない。正義の心を持った、トゥルーホープなんだ!」

「俺に心はない、また裏切るだけだ」

「なら、もう一度信じる! 心ができるまで、貴方を信じる!」

 

 一部(教皇の方を見る)無視できない爆弾もあるけど、ジャスティスとの関係はこれが正解だ。

 ――よし、全部上手く行ったな!

 ふう、ここまで大変だった。

 

「……バトルは終わってない。いつの間にそうしたのか知らないけど、バトルロイヤルルールが適用されてる。――最初からこの事を見透かしてたんでしょ」

「……ふっ」

「続けるよ! ハロちゃんは死んだ! だから次は私のターンだ!」

「味方をサラッと殺すのはどうかと思うぞ」

 

 というか、しれっと教皇の正体をバラすんじゃない。

 いや俺も教皇が何者かっていうのは把握してるし、ジャスティスもそう思ってるんだろうけどさ。

 もうちょっと仲間のプライバシーは守ろうね。

 こほん。

 

 かくして、俺達はバトルを再開し――――普通に俺が勝った。

 流石に普通のデッキで特殊降臨を封じられると……厳しいっすね、うん。

 俺のロックギミックは特殊降臨がなくてもなんとかなるので、さくっと勝ちましたよ。

 さて、何にしてもこれでテンバイヤのジジイは撃破され、ジャスティスという第三者に俺の正体を晒すことができた。

 おそらく次が、今回の戦いを締めくくる最後の戦いになるだろう。

 それにしても、一つ今回の反省をするなら――多分、正義感が強くて単純なライトユーザー相手には、変な策を弄するより普通にやったほうが……早い。




多分ややこしいことせずに、最初から適当なタイミングでじゃんじゃじゃーんしてれば巧く言ってたと思いますよ。
ジャスティス編は以上となります。
面白いと思っていただけた方は、高評価いただけると励みになります。
よろしく願いいたします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

(ガワだけ)胡乱なカードゲームおじさん(作者:十田心也)(オリジナル現代/冒険・バトル)

【バトルワールド】▼それはただのカードゲームに非ず▼それは世界中の人々を熱狂に導き、いまだ醒まさせない▼ある国では1枚のカードを手に入れるため、世界有数の富豪が一文無しになり都市が壊滅した▼またある国では、そのカードゲームが最も強い者が皆を率いるリーダーとなった▼長年争っていた両国が、1回のカードゲームの勝負で終戦に合意したこともある▼カードゲームの枠を超え…


総合評価:4377/評価:8.35/連載:29話/更新日時:2026年08月26日(水) 18:30 小説情報

魔法少女の敵役、命欲しさにドノツラフレンズになる。(作者:ドノツラフレンズ)(オリジナル現代/冒険・バトル)

魔法少女の敵役俺「(死にたくねぇなあ……せや!何食わぬ顔で味方面してやろ)ハッハッハ!!しょうがないから仲間になってやる!」▼魔法少女「えっ!?貴方って最初から味方じゃなかったんですか!?」▼俺「えっ?」▼魔法少女「えっ?」▼だいたいこんな感じのお話。


総合評価:5335/評価:8.42/連載:6話/更新日時:2026年08月15日(土) 21:41 小説情報

転生闇落ちガチ勢トレーナー(害悪厨)が心を折るまでの話。(作者:地霊殿の壁)(原作:ポケットモンスター)

無敵のチャンピオン・ダンデ相手に四度目の敗北の味をキメるまでの話でもある。▼一旦は一話で完結の予定。▼反響が良ければ続くかもしれない。▼26/7/4/07:00 総合日間3位.


総合評価:6339/評価:8.18/連載:3話/更新日時:2026年06月29日(月) 18:01 小説情報

OVA:共鳴を使わない男を、共鳴最強の世界三位にぶつけてみた(作者:檻@102768)(原作:俺の切り札は光らない)

 共鳴最強の世界三位。▼ 対するは、エニグマを握るモブ。▼ 望むカードを引き寄せる者。▼ 望むカードを引かずとも、勝ち筋へ辿り着く者。▼ 共鳴という奇跡が実在する世界で。▼ その頂に立つ共鳴使いへ、共鳴を使わない男が挑む。▼ これは、奇跡に祈らない男のエキシビションマッチ。▼※フツオくんのエニグマで、共鳴最強の世界三位に挑む番外編です。▼※一話は導入。▼※二…


総合評価:15716/評価:9.18/連載:21話/更新日時:2026年08月15日(土) 18:00 小説情報

この乙女ゲームの攻略情報は、妹だけが知っている〜主人公の師匠ポジになってしまった兄より〜(作者:ゲスト047562)(オリジナル現代/冒険・バトル)

どうやら俺は転生したらしい。▼と思ったら妹?その口調、さては貴様も前世覚えてるな?というか今世でも兄妹とか、どんな偶然だよ。▼おい、この世界お前の好きな乙女ゲーだよな?俺ゲームしかしてないから知らないんだよ。基本的に主人公周りとは関わらない方針で行くからよろしく。▼ねえ?何で主人公ちゃんが俺に銃向けてんの?おかしくない?え?ラスボスクリアしたよな?後方師匠面…


総合評価:4846/評価:8.12/連載:21話/更新日時:2026年08月24日(月) 17:00 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>