カードゲーム世界で考察配信したら、黒幕っぽくて楽しい 作:暁刀魚
【“仮称”テンバイヤ未成年略取事件概要報告】
報告者:『アルカナ・クラン』所属 マジシャン
本件は、先日ヴェルライトによって暴露された“仮称”テンバイヤなる組織がこれまで行っていた未成年略取事件に関する概要報告である。
かねてより、ライトユーザーは非常に激務であることが知られていた。
中には世界中を飛び回り、休む暇もなくダークユーザーと戦う者もいる。
ボクはこのブラックすぎる状況に、以前から警鐘をならしていたが、この度その原因の一端が解明されたのだ。
それが“仮称”テンバイヤによる未成年略取である。
この世界にはマナと呼ばれる特殊なエネルギーが存在する。
このマナは、ユーザーのドローや相性の良いカードに影響を与えるエネルギーだ。
保有するマナが多ければ多いほど、そのユーザーは強いユーザーであると判断する基準にもなる。
そしてこのマナ、時には運命にすら干渉するというのは、ライトユーザーの間では有名な話。
より大きな事件になればなるほど、発生するマナの量は大きくなる。
つまり、意図的に事件の規模を大きくすれば、発生するマナも増加するわけだ。
これを実際に行っているのが“仮称”テンバイヤなる組織であることは、既に周知の事実。
しかし今回、そんな“仮称”テンバイヤが、未成年のユーザーに対しても行っていたことが判明した。
対象となったのは、ダークユーザー事件を解決した経験のある、将来的なライトユーザー候補と目される少年少女。
彼らは正義感が強く、眼の前の困っている人を見過ごせない。
そして困っている人を助けることでもマナが発生する。
それに目をつけた“仮称”テンバイヤは、意図的に大量の事件を起こしたのだ。
これによって、少年少女は常に眼の前の事件を解決しなくてはならなくなり、結果として大人も真っ青な過重労働を強いられてきた。
これを“黒幕”ヴェルライトが暴露したのである。
当然ながら、これには世論の怒りが爆発。
“仮称”テンバイヤに対する義憤の他に、ライトユーザーは一体何をやっているのかという声も上がった。
これは実に由々しき自体であり、我々は解決に乗り出す必要がある。
しかしここで、とんでもない事実が発覚したのだ。
考えてみれば、当然の話。
正義感の強い少年少女は、のちのライトユーザー候補。
そして現在のライトユーザーは、かつての正義感の強い少年少女である。
彼らは眼の前で起こる事件に、疑問を抱くことなく立ち向かってきた。
そしてそのまま大人になってしまったのだ。
そりゃライトユーザーが激務になるわけである。
我が『アルカナ・クラン』にもこういったライトユーザーは多く、ジャスティスやワールドを始め、ワーカホリックがとにかく多い。
特にジャスティスは副業の方でもやりがい搾取にあっているのだから、もう少し落ち着いた生活を送ってほしい。
結果として、今回“仮称”テンバイヤの未成年略取事件において、取り組むべき問題は以下の二つであると判断した。
一つ、未成年が“仮称”テンバイヤに略取されないための対策を立てる。
二つ、現在主流となってしまっている略取被害者のライトユーザーの意識改革。
はっきり言って、どちらも非常に難しい問題ではある。
特に前者は一度対策を立てても、“仮称”テンバイヤがそれに対応してくる可能性は高い。
これを解決するために、ライトユーザーのブラック労働に危機感を覚えるライトユーザーを集め、会議を行った。
以下はその参加者リストである。
>参加者リスト
・『アルカナ・クラン』マジシャン(主催)
・『運命調律委員会』ラケシス(副主催)
(中略)
・『無所属』トゥルーホープ
・『アルカナ・クラン』ジャスティス
・『アルカナ・クラン』ハイエロファント
皆、それぞれに強い危機意識を持ち、今回の件に対する対策案を考えてくれた。
なお、ジャスティスとハイエロファントはブラック労働側のライトユーザーなのだが、何故か参加するといって聞かなかったので参加を許可した。
結局なんの役にも立たなかったけど、なんだったんだこいつら。
ひとまず、一番妥当な案として未成年略取の対象となっている少年少女に対し、一時的なライトユーザーライセンスを発行するという案が採択された。
もともと彼らは、事件に巻き込まれダークユーザーと戦う頻度が高い。
本来であれば一般市民がダークユーザーと戦った場合、詳しく聴取を取る必要があるのだが、それが結果として少年少女の拘束時間を延ばすことに繋がっている。
これを防ぐために、既存のライトユーザーが保証人となって、一時的なライセンスを発行するという仕組みだ。
一時ライセンス持ちの子どもの事件処理は、保証人となったライトユーザーが担当する。
問題は結局ライトユーザーの負担が増えてしまうことだが、ひとまず世間のライトユーザーに対する悪評を拭うことが最優先だ。
ライトユーザーへの不信感は、社会全体への不安に繋がりかねない。
そしてここで、一人のライトユーザーから面白い案が出た。
――今のライトユーザーの現状を、
ということだ。
確かに、それなら市民がライトユーザーの悲惨な現状を目の当たりにして同情してくれるはず。
“仮称”テンバイヤというヘイトの矛先があるのも実にいい。
全部あいつらが悪いということにして、ライトユーザーへの風当たりは受け流してしまおう。
何より素晴らしいのは、普段知られていないライトユーザーの活動を、一般の人にも知ってもらえること。
普通の人のライトユーザーに対する印象は、いつの間にか起きた事件をいつの間にか解決している人たち、という認識のはず。
中にはボク達『アルカナ・クラン』のようにアイドル的な人気を獲得しているライトユーザーもいるが、それは少数だ。
いや、一部のオタクは熱心に推し活してくれてるけどね。
ともかく。
知られるということは、ふとした時に市民が助けてくれるかもしれないということ。
本来ライトユーザーがそういった他人の助けを頼むのは好ましくない。
実際に提案したら、総スカンを食らうだろう。
しかしそれでも、逃げたカード泥棒を追いかける時にどこへ逃げたか教えてくれるだけでも、こちらの仕事は楽になるはずだ。
というわけで、ボクは早速その場にいる者たちへ、ここ最近起きた事件について色々と聞いてみることにした。
えー、なになに?
都市部から車で一時間くらいの場所にあるウエスタンな街で、爆弾で自分ごと洞窟を爆破してくるリアリストと戦った?
相棒のバイクに乗って意気揚々と出陣したら、突然ロケランで吹き飛ばされた?
ダークマターザウルスに進化して、暗黒宇宙で決戦兵器を破壊した?
……何をどうやったらそんなトンチキイベントが連続して発生するんだよ!
市民が宇宙猫になっちゃうよ!
もうちょっと真面目な話を上げようよ!
え、その場合は市民がドン引きするような、やたらとハードな事件しか話せるネタがない?
敗者が必滅したり、高所から落下して崖に激突したり?
…………バカ!!
崖に激突して生きてるのは何なんだよ!
ええい、こうなったらありのままをさらけ出すという提案したトゥルーホープくん、何かいい案はないのかい?
……ヴェルライトに暴露してもらう?
それだぁ!!
PS.ところで会議中ずっと思ってたんだけど、ジャスティスとハイエロファントが参加したのって、絶対トゥルーホープ目当てだよ。
若くて、見てくれも悪くなくて、何よりバトルも強い。
かなりの優良物件だ。
そろそろ婚期を気にしそうなジャスティスが欲しがるのもわかる逸材。
でも一体、どこでこんな優良物件見つけてきたんだよ!
時間全然ないくせに、おかしいだろー!
だいたいさぁ、『アルカナ・クラン』はアイドル視もされる由緒ある女性ライトユーザーチームなんだよ?
色恋とかさぁ、そういうのどうかとボクは思うわけよ。
特にトゥルーホープみたいなさぁ、雰囲気たっぷりの怪しいチャラ男と付き合ったら大炎上待ったなしよ?
それを火消しするべく動き回る、こっちの身にもなれってもんだ。
あーあ、どこかにイケメンでボクに優しくて趣味にも理解のある人があらわれないかなー!(以後、報告書より長い色恋に対する愚痴は省略)
付記。
なお、長時間の会議により脳が茹っていたため採択されかかったヴェルライトへの暴露依頼はギリギリのところでジャスティスとハイエロファントによって阻止された。
その後、改めてトゥルーホープから「事務担当のライトユーザーの仕事を見せればいい」と提案を受ける。
参加していた事務担当のライトユーザー達はこの提案に懐疑的だったが、後日『アルカナ・クラン』のマジシャンを対象に密着取材を行ったところ、一気に市民から同情の声が集まった。
ブラック労働改善を掲げていた事務担当ライトユーザーが一番ブラックだったこと(無自覚)が世間にバレてしまったからである。
その後さらにトゥルーホープが「事務は一般人でもできるんだから人を雇って投げろ」と提案。
ライトユーザーのブラック労働問題に一つ、大きな改善が見られた。
いくらなんでも死ねすぎた案件を処理。
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