カードゲーム世界で考察配信したら、黒幕っぽくて楽しい 作:暁刀魚
俺が行動を起こすためには、どうしても二人の協力者が必要だった。
特に、ライトユーザーとして動ける協力者と、ダークユーザーとして動ける協力者が必要だったのだ。
これに対し、ジャスティスは当然として布太梳モエも闇堕ちしているからダークユーザーとしての活動が可能。
ジャスティスの方は俺の指示に従わない可能性も高いが、事態が動けば正義のために行動を起こさざるを得ない。
布太梳モエはダークユーザーではないが、顔を仮面で隠してダーク・モエとか名乗らせればいいだろう。
え、それは流石にダサい? 布太梳モエもそう思うか、俺もそうなんだよ。
というわけで名前は布太梳モエに考えて貰いつつ、ジャスティスと二人で俺の作戦に乗ってもらう。
布陣としては完璧だ。
なお、ぶっちゃけライトユーザーはハイエロファントでも良かったりする。
しかし以前言った理由で、ある程度第三者な立場の協力者が欲しいのでジャスティスを勧誘した。
ハイエロファントが布太梳モエと出会った時に脳破壊で命が危ないからとか、そういう理由じゃないぞ。
なりそうで怖いのは確かだが。
ともかく。
これで準備は整ったわけだが、一つだけ問題がある。
――言うまでもなく、布太梳モエの格好だ。
この格好の学生を侍らせてることにたいして、果たしてジャスティスがどんな反応を示すやら。
「――ご主人様ぁ♡ これから人と会うって、どんな人なんだ?」
「ああまぁ、うん、協力者ってやつだよ」
今日も今日とて、脳破壊系闇堕ち褐色ギャルな布太梳モエ。
俺の腕にべったりで、周囲からは若干嫉妬の視線が痛い。
とはいえ今の俺は怪しい黒マスク男、どこからどう見ても竿役チャラ男さんだ。
もはや無敵といっても若干過言。
さて、ジャスティスとの合流場所は人前ではない。
今は町中を歩いているけれど、集合場所は例のビルの屋上だ。
あそこに集合すると、ひと目につかないし場所もわかりやすいしでちょうどいいんだよね。
「どんな人なんだろうなぁ……」
「あんまり驚かせるなよ?」
「驚かせないぞ、だってご主人様がそういうんだから」
さて、問題は格好だけではない。
布太梳モエの反応も、正直読めないのだ。
だってこんなべったりしてるんだぞ?
普通こういうのって……執着心とか……あるものじゃん?
本人はこう言っているけれど、果たしてどうなることか――
「――――待ってたよトゥルーホープ……ってうわああああ! トゥルーホープが未成年略取してるうううううう!」
はい。
ジャスティスの反応はある意味で案の定でした。
屋上にて、先に来ていたジャスティスが俺と布太梳モエを見て叫ぶ。
でも未成年略取ではない!
「あのクソ鼠といっしょにするんじゃない! あと今はヴェルライトだ!」
「こ、この人がご主人様の言ってた協力者……? も、もしかして、アルカナ・クランのジャスティスなのか!?」
「ご主人様!? っていうか協力者って何!? 私のことを変態の仲間だと思ってる!? 死んでよ~(挨拶)!」
――カオスだ!
全員が全員、別々のことに驚いている!
ただ、一つだけ意外なこともあった。
「自首しなよトゥルーホープ! 今ならまだ情状酌量の余地も認められるかもしれないよ!」
「な、だ、ダメだぞ! ご主人様は俺のご主人様なんだ! つ、捕まえるとか……ダメだぞ!」
「一体どうやれば、こんな素直な子を闇堕ち褐色ドスケベ衣装の配下にできるのさー!」
この女、普通にドスケベとか口に出している――!
というか、布太梳モエがスケベ衣装なのを指して、俺を変態と呼んでいるわけではないな、こいつ。
「……っていうかさ、思ったんだけど」
「思ったんだけど?」
「――――この衣装、デザイン良すぎじゃない?」
「えっ?」
驚いたのは布太梳モエだ。
そんなこと、思ってもみなかったらしい。
布太梳モエはあまり漫画とかゲームはやらないタイプだ。
カードゲームかスポーツばかりしている、TCG世界でなければオタクとは無縁の陽のもの。
対して、思い返してみればジャスティスは、副業でイラストレーターをしているオタクだ!
コミュ力という点においてはどっこいではあるものの、割と立ち位置は対極。
そしてジャスティスはクリエイター目線で布太梳モエの格好を見た結果、ハレンチだとか騒がなかったのだ!!
「いやぁ、こういうデザインのライトユーザーやダークユーザーはいっぱいいるけどさぁ、これほんっとすごい出来だよ」
「――――よくあるデザインなのかぁ」
「まぁ……結構?」
そっかぁ――正直あんまり気にしてなかったから、ヒーロー衣装のデザインがハレンチだって気付かなかったなぁ……
「なんかご主人様が遠い目をしてる……素敵……」
「っていうかえっと……」
「あ、えと……布太梳モエだぞ、よろしくな」
「モエちゃんだね。モエちゃんって、この衣装自分で作ったの?」
「あ、うん、闇堕ちした時に、自然とこうなったんだ」
「へぇー、素敵! モエちゃんセンスあるよ!」
あ、なんか布太梳モエが結構照れてる。
というか普通に照れてる。
ジャスティスの方も視線を合わせて……いや合わせるまでもなくジャスティスの方が背が低いな。
……まぁとにかく、雰囲気だけは視線を合わせて布太梳モエが話しやすいようにしている。
少しだけ、空気が緩んだ。
で、そのタイミングでジャスティスが突っ込んだ話をする。
「っていうか、モエちゃんってどうして闇堕ちしたの?」
「あ、えっと……実は俺、例のテンバイヤの被害者で――」
そうしてかくかくしかじかと語られる、衝撃の真実。
結果――――
「たいへんだったねぇええええええ! もう大丈夫だよぉおおおおおおお!!」
ジャスティスは号泣しながら布太梳モエをよしよししていた。
ほ、絆されてる――
「っていうか、やっぱりトゥルーホープはいい人じゃん! こんな大変な目に遭ってる子を、方法はともかく助けたんだから!」
「方法はともかく、で流していいかはわからんが……」
「そこで自分からそう言っちゃうところが、特に!」
「そこはまぁ……俺もちょっとだけ感じてるぞ、ご主人様……」
「味方はいないのか、味方は!」
俺は黒幕のヴェルライトだぞ!
「というか、ジャスティスって布太梳モエの過労を普通に労れるんだな」
「君は私を何だと思ってるのかな?」
「ワーカーホリックのライトユーザー兼イラストレーターだが……」
「さ、流石に若い子がこんな風に無茶してたら、可哀想だって思うよ!」
「……少しだけ、昔の自分を懐かしんでたりしないか?」
「…………」
あ、目をそらした!
「というか、今のジャスティスはどうなんだ。今だって布太梳モエが笑えないブラック労働をしてるだろ!」
「今の私はいいんだよ、大人だし。それに――」
「それに?」
「――やりがいが、ありますから」
ダメだこりゃ。
「……なぁ、ご主人様」
「どうした?」
「こーいうのを、やりがい搾取って言うんだよな?」
「ああ、こうなっちゃダメだぞ、布太梳モエ」
「わかった!」
「なんでぇ!」
布太梳モエは、力強くうなずいた。
まぁ、ともかく、だ。
とりあえず、ジャスティスは普通に布太梳モエを受け入れてくれた。
布太梳モエの方も、案外普通にジャスティスと話をしている。
執着心とか、大丈夫なんだろうか。
「――ところでご主人様、ジャスティスさん」
「どうしたんだ?」
「ん、どうしたの?」
とか思っていたら――
「――二人は付き合ってるの?」
「違うぞ」
「違うよ」
ぶっ込んできた。
そして即答してハモる俺達。
あ、これまずいやつだな?
「違うのか!? でもそんな息ぴったりなら、やっぱり二人は……そういう関係なのか!?」
「違うってば! むしろ人としては嫌いな部類に入るくらいなんだから! デッキも陰湿だし!」
「そこまで堂々と言うことないだろ! というか、陰湿デッキは別にいいだろ!」
「死んでよ~!」
「やるのか!?」
「……やっぱり息ぴったりだ」
はっ。
言い争いに発展した俺とジャスティスは、布太梳モエの発言で我に返る。
いや、まったくそんなつもりはないんだが……今更否定しても、布太梳モエは信じないだろう。
ジャスティスと顔を見合わせて、剣呑な視線を向けられた。
いや、言わんとしてることはわかるが……いや俺からは聞きにくいだろ、そっちが聞いてくれよ。
と視線を送ると、仕方ないなぁ……とジャスティスはため息をした。
「モエちゃんってこのへんた……トゥルーホープのことをご主人様って呼んでるけど、他の女の人とご主人様が付き合っても気にならないの?」
「え、なんで気にしなきゃいけないんだ? だって
――ああ、まぁ。
考えてみれば自然な話。
布太梳モエは俺に自主性を委ねた。
結果がこの状況。
要するに布太梳モエは――
「むしろ、ご主人様がどんな女の人と付き合うのか、とっても気になるんだ!」
「――――
「こら!」
思ったけど言わなかったことを、ジャスティスが口にする。
良くないオタク仕草だぞ、それは!
こほん。
「とにかく、二人の顔合わせも済んだことだし、ここからは対テンバイヤに関する作戦の話をするぞ」
「お、おう!」
「むう、私はあんまり納得行ってないんだけど……言っておくけど、君に協力するのはこれがテンバイヤに関することだからだよ! 君の悪事には手をかさないんだから! でもテンバイヤの抹殺は人類の使命だもんね。今すぐ殺す? 私はいつでもボコボコにできるよ」
「ひえ」
しまった、ジャスティスの殺意は本物だ。
闇堕ちしてるはずなのに布太梳モエが怯えてるぞ。
まぁ、ジャスティスの協力を取りつけられたのは僥倖である。
「まず、俺達は先日、例のクソ鼠をカードにして捕獲した」
「めっちゃ楽しそうだったよね」
「いいなぁ、俺も直接見たかったぜ……」
「あのあと、そのカード使ってるの?」
「いや? 持ってない陰湿カードだったから欲しかっただけで、効果自体は代替カードがあるからな」
「それはいいや、ざまぁないね」
陰湿カードは陰湿カードでも、結局はテンバイヤのカードだ。
ハイエロファントも返してくれとは絶対に言わないしな。
と、いかん、話が脱線している。
「――で、退治したあと、クソ鼠とその端末が持っていたマナ、どうなったと思う?」
「え、ええと……」
「ま、まさか……」
「そう、
そう言って、俺はライブラリから一枚のカードを取り出した。
白紙のカードだ。
何も描かれてはおらず、けれども見るものが見ればそこに詰め込まれた大量のマナを感じ取ることができるだろう。
「それをどうするの!?」
「当然、テンバイヤのクソ野郎みたいに自分のものにはしない。還元する」
本来の持ち主に、あるべき姿で返すのだ。
ただし、このマナの持ち主は本来――布太梳モエのような”主人公”が生み出したもの。
「ところでこのマナを還元したら――どうなると思う?」
そう言って俺は、マナの一部を布太梳モエの前でかざす。
これは間違いなく、彼女が生み出したマナだ。
ジャスティスと布太梳モエは、いまいちピンと来ないのか同時に首をかしげる。
なんか面白い絵面だな。
ともかく、答えは単純。
俺は布太梳モエにマナを返すと――
――布太梳モエがムキムキになった。
「ええ……」
「I'm the perfect user」
「なんで英語!? しかも発音がすごい流暢!? なんで!?」
「そういうもんだよ」
その後、布太梳モエはもとに戻った。
とはいえこれで、俺の”考察”は実証されたのだ。
マナを還元すれば、還元された者たちは圧倒的な”暴”を手に入れる。
そんな者たちが世に解き放たれればどうなるか――
「――とりあえず、作戦の第一段階として、この街周辺にいるダークユーザーには
一人残らず、跡形もなく、ダークユーザーはこの街周辺から消え去ることだろう。
というわけで最後の一人をぼこりに行きます。
カード筋肉は嗜みです。
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