カードゲーム世界で考察配信したら、黒幕っぽくて楽しい 作:暁刀魚
マナが体内に充填されることで起きる効果の一つとして、バトルマッスルの強化が上げられる。
普段はそんなにパワープレイをしないのに、突然パワープレイが必要になった時だけ常人とは思えないパワーを発揮するのだ。
一言で言うとマサラタウンのサトシみたいになる。
いや、カードゲームとは関係ないけど、ホビアニってそういうちょっとどうかと思うレベルの身体能力がさらっと発揮されることあるじゃん。
そんな感じ。
そしてカードゲームにおいてマッスルは大事なので、そういったお約束を利用すればムキムキ主人公を作成することができるのだ。
健全なる精神は健全なる肉体に宿る、という言葉がある。
ムキムキになった主人公は、その持ち前の正義感と真っすぐな心までもがムキムキになり、より一層悪を精力的にボコるようになっていく。
加えて俺が……というかトゥルーホープが一時ライセンスを彼らに付与できるようにしたことで、事態は加速。
というか、俺がクソ鼠を討伐して未成年略取をやめさせたことで、彼らの時間がありあまっているのだ。
結果、現在――
「かくして、ご覧のように各地で正義のムキムキ小中学生が、ダークユーザーのアジトを襲撃する事件が起こったわけだ!」
:死んでよ~
:死んでよ~
:死んでよ~
――俺がヴェルライトとして配信で言っているようなことが、起きているわけ。
そんな俺の発言を待ってましたと言わんばかりに、大量の死んでよ~が飛んできた。
絶対コメントしたくてうずうずしてただろ、視聴者ども!
「安心していいぞ、ムキムキはマナが抜ければもとに戻り、彼らも落ち着く。まぁその頃には、多くのダークユーザーが塵と化しているだろうがな!」
:死んだよ~(ダークユーザー)
:死んだよ~(ダークユーザー)
:死んだよ~(ダークユーザー)
だからいいたいだけだろ、それ!
さて、これで配信は一旦終わりだ。
俺は適当に挨拶をして、死んでよ~(別れの挨拶)を受けつつ配信を閉じる。
それから、結構溜まっているジャスティスや布太梳モエからのメッセージに目を移した。
『ジャスティスだよ! こっちは正義のムキムキ小中学生事件に乗じて、各地のダークユーザーを一斉取り締まり中! あいっかわらず滅茶苦茶忙しいんだけど、君が言った通り細々とした作業を手伝ってくれるって名乗り出てくれる人がいっぱいいるんだ! おかげで何とか回せてるよ!』
さて、ジャスティスにはライトユーザーとして、今回の流れを後押ししてもらっている。
まぁやっていることは単純で、正義のムキムキ小中学生を支援しつつ、自分たちもダークユーザーの確保に努めるのだ。
これならどうせ、仮にジャスティスが協力を拒否しても、最終的には事情を知ってるライトユーザーが一人いることになるから結果は一緒だろう。
んで、次は布太梳モエ。
こっちは……ええと、アレだ。
『
それは……その二つのカードが大判焼きの呼び方並みに人のこだわりと争いの種を生み出すカードだからですかね……
たけのこの方がいいに決まってるのに、それを理解しないきのこ派の人間が存在してしまうから、争いが起きるんだ。
それはそれとして、ヴェルライト・レディというのはダークユーザーとしての布太梳モエの活動名だ。
何か考えてくれって言ったら、即これがでてきた。
ここ最近、俺に対する死んでよ~の数が増えているけど、多分原因はこれだとおもう。
こほん。
何にせよ、こうして俺はテンバイヤが掠め取ったマナを持ち主に還元しつつ、テンバイヤを追い詰める作戦も実行していた。
基本的な骨子は三つ。
一つは、ムキムキ小中学生によるダークユーザーの撲滅。
俺が住んでいる地域のダークユーザーには、根こそぎ殲滅していただく勢いで進行している。
これをジャスティスに、ライトユーザーの立場から支援してもらうのだ。
以前作った一時ライセンスが、早速大活躍である。
もう一つは、布太梳モエことヴェルライト・レディによる裏工作。
とにかくダークユーザーを壊滅させることが今回の作戦においては、重要となる。
そのために裏からダークユーザーとして悪の組織に忍び込み、破壊工作をするわけだ。
方法は多種多様、さっきみたいに不和を生み出して内側でゴタゴタを起こしたり、正面から無理やり押し通ったり。
これをやっている布太梳モエは非常に楽しそうだ。
なんというか、自分が俺の手足であるということを実感できるらしい。
で、三つ目は言うまでもなく――
「さて、それでは今日の配信だ」
:死んでよ~(挨拶)
――ヴェルライトの配信である。
「今回はここ最近話題になっている、ドーピングカードサポジトリー、いわゆるDCSについてだ。これを摂取すると、バトルマッスルが一時的に急激な成長を見せるという代物だな。昨今のムキムキ小中学生に対抗するためにダークユーザーが開発したようだ」
:ムキムキ小中学生よりずっとネーミングセンスがあるな。
「黙れ、つけたのは俺じゃない」
※ジャスティスです。
「ともかく、そのDCSを開発している組織についてだ。これまで、多くのムキムキ小中学生やライトユーザーが調査をしてきたが、その正体は謎に包まれていた。しかし今回、それを俺は突き止めた」
:マジかよ。
:死んでよ~。
:ここで死んでよはただいいたいだけだろ!
「この薬は座薬だ。不思議じゃないか? どうしてわざわざ座薬なんだ? 俺はそこを手がかりに捜査を行ったんだ。結果、バトルに勝利したら敗者のケツにカンチョーをすることで有名なイタズラダークユーザー組織“艦長王”が浮かび上がった」
:艦長王ってあのギャグ集団!?
:いやどう考えても艦長王のネーミングじゃねえだろDCS!
:あそこの幹部、全員プリケツザウルスとか、シリペンペンギンとかそういう名前だぞ!?
「だからこそ気付かれなかったんだ。だが、実際俺はこうしてヴェルライト・レディを通じて奴らがDCSを製造しているという証拠写真を入手している」
:またレディが手足のように使われてる……
:あんな美少女が手足とか、羨ましすぎるだろ……
:死んでよ~(嫉妬)
「それもこれも、全てはテンバイヤを追い詰めるためだ。作戦は順調に推移している、吉報を待て!」
:ならしょうがないな。
:俺もちょっとダークユーザー狩ってくるか……
:はよ死ねクソテンバイヤどもがよ
――とまぁ、こんな具合に。
で、そんな事を続けてはや半月。
気がつけばムキムキ小中学生の数も少なくなり、ダークユーザーの殲滅もだいぶ進んできた。
俺達三人は現在、ライブラリを通じて通話を行っていた。
『それで、結局この後何が起きるのさ。未だに教えてくれないよね、君』
「ああ、教えることは出来なかった。テンバイヤが観測している可能性が高かったからな」
『テンバイヤが観測……そもそもどうやって、あいつらはこっちを観測してるんだ?』
俺は、ここ最近起きている事件の詳細に改めて目を通す。
いくら少なくなってきたとは言え、ダークユーザーはこの世界だと畑で採れるくらいいっぱいいる。
テンバイヤが幅を利かせてきたせいだな。
とはいえ今回、その状況に少し変化がみられるのだ。
事件を確認して、いよいよ二人にも話して問題ないときが来た、と俺は判断する。
「簡単だよ、連中は
トゥルーホープがヴェルライトであると知られていなかったのが、特に顕著だ。
マナは事件現場かファイト中に多く発生する。
俺がトゥルーホープからヴェルライトに変身するタイミングで発生するマナでは、テンバイヤが俺を補足することなど到底不可能。
「奴らは何をするにしても、マナを介して行動する。マナの中に潜んでいるマナ生物……と言い換えてもいいかもしれないな」
『じゃあえっと、今回みたいな状況だと……どうなるの?』
「簡単だ、俺は小中学生達にマナを返した。結果として彼らはバトルマッスルを活性化させ、ムキムキ小中学生として各地のダークユーザーをボコボコにする。この時――マナはどうなるか、わかるか?」
『ええと……もともとムキムキになった子達にご主人様が注いだ分と、事件解決で発生したマナの分で――』
そう、マナは
「いくらテンバイヤ共がマナを集めているといっても、集めすぎれば破綻するだろう?」
『ま、まさか――』
そう、そのまさか。
今回俺がやっている作戦を端的に説明するなら、こうだ。
「テンバイヤを在庫過多で破産させる」
テンバイヤ対策のもっとも単純な方法、奴らが捌ききれないくらい大量生産するのだ。
「正確に言えば、奴らが対応できないくらいマナを生み出して、テンバイヤの行動を麻痺させる。向こうの行動が麻痺したかどうかは、ここ最近起きている事件の内容でわかるんだ」
『ええと……確か前にご主人様言ってたよな。艦長王が作った座薬の名前がDCSなのはネーミング的におかしい……って』
『テンバイヤが裏で糸を引いてたってこと? で、テンバイヤに余裕がなくなれば、ちょっかいをかけられなくなってく……』
「そういうことだ。そして――ほら、始まったぞ」
――追い詰められたテンバイヤは、必ず行動を起こす。
俺はパソコンに視線を向ける。
そこは、俺が普段使っている動画サイト。
そのトップページに、こういう生配信のページが表示されていた。
『天命媒介を導く者たちの夜会が正しき教えを民衆に説く』
ええとこのしゃらくさい名前が……奴らの組織名か。
「なげぇよ、略してテンバイヤでいいだろこれ」
『草』
『なんで草なんだ?』
『あえっと……』
ジャスティスのオタク仕草が布太梳モエにマジレスされてるけど、それはさておき。
今この配信は同接0人と表示されている。
しかしすぐに、多くのリスナーがこれを見るはずだ。
何しろ、あのテンバイヤの釈明配信なのだから。
あるいは、俺の作戦によって潜伏している余裕のなくなったテンバイヤの土下座配信か。
なんでもいい、早速これを見てみるとしよう。
すると――
『このファイトを、ヴェルライト様への忠誠の証といたしますううううううううううううう!』
――なぜか、教皇がそう叫びながら、テンバイヤにバトルを仕掛けていた。
なんで!?
なんで!?
PS.若干わかりにくいですがハロちゃんは教皇姿でバトルを仕掛けてます。地の文を教皇にしました。
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