カードゲーム世界で考察配信したら、黒幕っぽくて楽しい 作:暁刀魚
――バトルは、拮抗の中で進んでいた。
ハイエロファント――教皇の操る【
相手モンスターの効果を妨害する効果が多く、保管庫利用のギミックも豊富。
モンスターをほぼ一切採用せず、かつ除外を多用してくるデッキには弱いが、そんな陰湿デッキそうそう出くわすものではない。
対する蛇男のデッキは、至って単純。
彼のデッキは――
「私は”フルメタルモンタージュ・スネーク”を特殊降臨! このモンスターは
構成カードが全てモンスターの、【フルメタルモンタージュ】デッキ。
機械で組み上げられた蛇のデッキだ。
保管庫が全てモンスターである時に、自身の効果を発動することができる。
一見すると、モンスター効果を妨害する効果が多い教皇のデッキの方が有利に見えるバトルだ。
しかし、実際の相性はそこまで単純ではない。
「”守護天使サリエル”の効果! 保管庫から”守護天使”モンスターを降臨させます! ”守護天使ウリエル”を特殊降臨、その効果で”フルメタルモンタージュ・スネーク”を破壊!」
「くっ……先ほどから執拗にこちらのモンスターを破壊してきますね。ですが……既に”スネーク”は効果を発動しています!」
教皇のデッキは、相手の効果を無効にすることもあるが、基本は破壊による妨害がほとんど。
加えて一度に妨害できる回数は限られる。
対する蛇男のデッキは全てがモンスター、一体のモンスターが破壊されても、別のモンスターは破壊されたモンスターの効果で貫通が可能。
普通、デッキはモンスターとスペルに分かれる。
このうちモンスターの方を機能停止させることで、スペルを腐らせるのが教皇のデッキ。
しかし全てがモンスターになってしまうと、腐るスペルがなくなってしまい、妨害が足りない。
結果、両者の相性はほぼほぼ五分といっていい具合に落ち着いていた。
それでも、教皇は果敢にバトルを進め――
「現れてください。”大守護天使ルクスアーク・ミカエル”!」
「くっ……しまった……!」
自身のエースを場に呼び出した。
形勢は、教皇に傾いている。
ゆえにこそ、教皇は力強く蛇男に問いかけた。
「――なぜ、このようなことをするのです、テンバイヤ」
ここまで、テンバイヤは自身がこのビル屋上に現れた理由を語っていない。
バトル前の煽りも、全て教皇に関するものだ。
今、このバトルは配信されている。
であれば、語らなかったのは配信で詳細を明らかにするためだろう。
ゆえにこそ問いかけた。
自身が不利な状況で、果たしてテンバイヤが考えを明かすかは微妙なところだが、しかし蛇男は教皇の問いかけに答えを示す。
「――ふむ、ではお話しして差し上げましょう。我々の目的を」
高らかに、メガネをクイッとさせていないにもかかわらず声でメガネをクイッとさせながら、黒い影は語りだした。
「我々、天命媒介を導く者たちの夜会はこの世界の秩序を守るため、マナを収集し続けてきました。収集したマナが一定量存在することで、この世界に強い天命の”保険”が発生するわけです」
:結局略したらテンバイヤになるじゃねぇか、死ね。
「考えてもみてください。この世界はあまりにも危険が多すぎる。一枚のカードで容易に世界が滅び、悪に落ちたユーザーがそこら中を跋扈しています。このような世界、”保険”がなくては安心できないでしょう?」
:その保険のために集めるマナは、お前らが勝手に事件をより危険なものにして得たマナだろうが、死ね。
:なんで事前に事情を明かした上で、希望者から募らねぇんだよ、死ね。
:だいたい、お前らが集めたマナを一部還元した結果、小中学生がムキムキになってより効率的に事件が解決できてるじゃねぇか、集めすぎだろそのマナ。死ね。
:今お前がいる一帯に、世界を滅ぼす要因は物理的に存在しねぇぞ、いらねぇだろその保険、死ね。
「そして今、その保険を使う時が来たのです! 黒幕などと抜かして世界の天秤を傾け、混沌へと秩序をいざなうヴェルライトこそ、全ての敵!」
:そもそもヴェルライトはお前らがちょっかいかけなければ、お前らに喧嘩売らなかっただろ、死ね。
:その全ての敵とやらが、ダークユーザーを捕まえまくって秩序を作ってんだぞ、死ね。
「今眼の前にいる教皇と名乗る女は、ヴェルライトに人生を狂わされた! うら若き少女にヴェルライト・レディなどと名乗らせ、小間使いにしている! これこそ悪!」
:そもそもお前らが小中学生を搾取しなければ、ヴェルライト・レディは生まれてないだろうが、死ね。
「我々”天命媒介を導く者たちの夜会”は、すでにあのヴェルライトによって、二人の同志を失いました。もはや、私に未来はないと言ってもいい。ですが、私たちが集めたこのマナでもって、ヴェルライトを葬ることが、いずれは夜会が齎す真なる秩序を約束するでしょう!」
:死ね
:死ね
:死ね
「すなわち……集めたマナを使ってバトルをすることで、バトルを有利に進めようということですか」
「そのとおり! これほどのマナがあれば、もはやヴェルライトなど恐るるに足らず! 何しろこのマナは、世界を三度救っても余りあるほどの量なのだから!」
正確に言えば、テンバイヤにおける蛇男が所属する一派の集めたマナだ。
構成員が二人欠けたことで、蛇男一派は壊滅が確定と成った。
ならば集めたマナは、他の派閥に掠め取られてしまう。
そんなもったいないことをするくらいなら、ヴェルライトにぶつけてしまおうというのが蛇男の策。
他のテンバイヤにとっても、ヴェルライトは脅威になりうる存在。
これを消滅させたのであれば、マナの使い道としては重畳。
もしかしたら、他の派閥が自分を招き入れてくれるかも知れない、そんな打算もある。
「さぁ、あのくだらない男を、ここで消してしまいましょう! 我ら”天命媒介を導く者たちの夜会”に栄光を!!」
――蛇男はコメントなど見ていない。
もはや完全に自分の世界へと浸っており、対峙している教皇の言葉すら、聞いているかどうかは怪しいところだ。
聞きたい言葉しか耳に入らず、自分こそが世界の中心だと疑っていない。
彼の中では、今の演説で多くの支持者を得られたことになっていた。
あまりにも、歪んでいる。
「――参ります。”大守護天使ルクスアーク・ミカエル”! 奴の醜悪な魂胆を破壊しなさい!」
「ふん、醜悪なのは我々に歯向かう貴様たちです。迎え撃ちなさい、”フルメタルモンタージュ・ウロボロス”!!」
教皇と蛇男のエースが激突する。
両者の打点は全くの同一、このまま戦えば同時に消滅だ。
やがて、激しい攻防の末に双方が爆発。
煙が辺りを覆う。
「ふん、これで貴様の攻撃は終わり。私が次のターンで勝利を――」
「――――貴方の目的はヴェルライト様の撃破、であればそのマナはヴェルライト様相手にしか使えないのではないですか?」
「ひょ?」
爆風の中から、顔をのぞかせた教皇が問いかける。
鋭い視線が蛇男を射抜いた。
「つまり――
「なっ、貴様……!」
「――”ルクスアーク・ミカエル”は破壊された時、デッキの一番上のカードを保管庫に送ることで場にとどまります!」
爆風の中から、教皇のエースが再び姿を現す。
さらに、その姿は明らかに先程よりも力強い!
「そして、破壊が戦闘によるものだった場合、攻撃力を上昇させてもう一度攻撃ができる!」
「貴様ぁ!」
「これが通れば、私の勝ちです!」
相手の場にモンスターはいない、デッキの特性上伏せられたスペルもない。
手札に対抗策はあるかもしれないが、それでもフィールドにモンスターがいない状態からできることは限られている。
この状況を、どうにかする方法は蛇男にない――
勝利を確信した教皇。
しかし、それにたいして蛇男は――嗤った。
「く、くく、ははははは! ええ、ええ……認めましょう! 貴方は強い。何より、この場に現れたのがその証拠」
「……何がおかしいのです」
「加えて私の準備は不完全、あのヴェルライトがムキムキ小中学生などというハーブか何かでもキメているとしか思えない方法で、こちらのマナを圧迫してきたせいです」
ヴェルライトの狙い通り、蛇男がこの場に姿を現したのはマナの集まり過ぎにより、処理能力限界を越えたからだ。
そのうえで、蛇男は問題なくヴェルライトに勝利できる方法を用意してきた。
それが、彼の抱える巨大なマナ。
だからこそ――
「私は! もしあなた達が私に勝利した場合、このマナを
「は――――?」
教皇は、言っていることが理解できなかった。
本当の本当に、まったくもって何一つ。
「私のライフを削り切りますか? それとも特殊勝利で勝利しますか? どちらでも構いません。貴方が勝利した時点で、世界を三度救えるマナは、世界を三度滅ぼせるマナへと変化します! 貴方も見たでしょう、マナというのは非常に危険な力だ。ちょっと多量に注ぎ込んだだけで小中学生をムキムキにさせ、暴走させてしまうほどに! それが爆発したならば――」
「ま、待って……ください? 仮にもあなた達は秩序を守るのでしょう? そんな、そんなもの――」
「――ふむ、秩序ならば守っているではないですか、
蛇男は、
「もしや、誤解があるのですか? 我々が秩序を守ることで、この世界はより円滑に運営ができるのですよ? この世界のマナはただそこにあるだけでは、消費されていくだけのリソースに過ぎません。誰かが管理しなければ、ムキムキ小中学生を生み出すだの、如何わしい格好を幼い女子にさせるようなことにしか使われないのです!」
教皇の顔が、理解できないという驚愕から少しずつ、怒りへと変わっていく。
「そういった無駄な消費を抑えるためにも、いつ滅びるかわからない世界を守るためにも、私たちは秩序を作り上げたのです。あなた達は、その秩序の中で生活を許されているだけの存在に過ぎない。我々は本来なら消費されるしかないマナを集め、あなた達に適正な形で
「――黙りなさい」
これまで、教皇は誰かに激しい怒りを向けたことはなかった。
向けるほどの人生経験がなかったのだ。
だが、理解した。
眼の前の存在が、怒りを向けるべき正しい相手だ。
この世界に、存在してはいけない悪だ――!
「ならば、ここで貴方を倒します。そのマナの自爆によって、私が消えてしまうとしても」
「な――」
「他の者たちは、貴方が世迷言をのたまい始めた時点で、避難を始めているでしょう。この辺り一帯をふっとばしたとしても、犠牲になるのは私と貴方だけです」
「何を言っているのです!」
「それもこれも、あなた達が無駄に事件を振りまいたせいで、人々がその混沌に適応してしまったからですよ?」
毎日ダークユーザーの事件が当然のように起きている世界では、一般人の対応もそれは手慣れたものになるだろう。
そして人のことなどリソースを得るための駒としか見ていないテンバイヤに、そんなことを理解することは不可能。
「このマナは、世界を滅ぼすマナだと言っているのですよ!」
「であれば、世界を救うマナを私は私の意思で生み出します! 何より、この配信は多くのモノが視聴している。彼らの意思が、貴方を敵視し私に力を与えてくれるでしょう! そのマナで爆発を抑え込めば、消えるのはこの辺り一帯と、私と貴方だけで済むはずです!」
「そんなはずはない! 私が明かしたこの世界の正しい形を、奴らは受け入れているはずです!」
ありもしない幻覚を勝手にみながら、蛇男はのたまう。
対する教皇は、怒りのままに手を振り上げ、トドメの一撃を蛇男に対して放とうと――――
「――――その必要はない、教皇」
その瞬間、教皇と蛇男の前に、一人の男が現れる。
一体どのようにして現れたのか、まるで最初からそこにいたかのように、男は――
「――ヴェルライト……様」
ヴェルライトは、立っている。
その衣装は、初めて配信をした時とはずいぶん変わっていた。
トゥルーホープの衣装を色返し、マスクを身につけ、さらにはライブラリの色も変化している。
彼が手をかざすとライブラリが展開され、ヴェルライトは言った。
「俺が、この男とバトルをする。こいつはもはや、この世界には存在してはいけない癌だ。存在自体が世界を腐らせる。――その腐敗に、君を巻き込むわけには行かない」
「あ、ああ……あああああ!」
――ヴェルライトが、自分を慮ってくれている。
それは、教皇にとってあまりにも光栄としか言えない状況だった。
これまでの活動が全て報われたかのような幸福感。
そして、この状況を教皇の勝利以外の方法で終わらせるには一つしかない。
「ヴェルライト様……後を……お願いいたします!」
「――任せろ」
――――サレンダー。
幸福に満ち足りた教皇は、降伏によって自爆を自身の犠牲で防ぐという凶行を終わらせた。
幸福な教皇だけに。
ダークユーザーとのアンティバトルに敗北した場合、ライトユーザーは消滅する。
その後ダークユーザーを倒せば戻ってくるが、眼の前の蛇男を倒さない限り教皇は帰還しない。
「――くく、ははは……ははははは! まさか、貴方の方から私に与してくれるとは思いませんでしたよ、ヴェルライト!」
「何を言っている――今からお前は敗北するんだ」
「それこそ、無茶な話です。私には、世界を三度滅ぼすマナがある。何より、仮に貴方が勝利しても貴方ごとマナで全てを吹き飛ばして差し上げましょう。――詰んでいるのですよ、最初から貴方は」
「……愚かしいな」
ヴェルライトは一つ息をこぼしながら、続ける。
「――この状況から、お前を詰ませる方法などいくらでもある。しかし、だ――もはや、お前に生ぬるい終わりなど、与える価値もない」
「ほう?」
「お前には、
ヴェルライトは、あるデッキを装着し、構える。
そして――
「マギロアバトル、エンチャント」
「ふん……エンチャントです!」
最後のバトルが、始まった。
というわけで蛇戦最終バトルです。
最終バトルでヴェルライトは何を使うでしょうクイズ。
あたった人にはヴェルライトとのバトル権をプレゼント……
オモシロイと思っていただけた方は、高評価や感想いただけますと励みになります。
よろしくお願いします。