カードゲーム世界で考察配信したら、黒幕っぽくて楽しい 作:暁刀魚
「――先行は俺だ」
「……バカな、我がマナを以てしても、先行を取れないだと?」
蛇男とのバトルが始まった。
あのクソみたいなカスの主張によって、世界中は俺に対してこの男をどうにかしろという念を送りつけている。
それがマナとなって、俺に力を与えてくれるのだ。
そして何より――
「俺は”メタルテック・フレイムヘッジ・ドラゴン”を降臨させる!」
「……あのハレンチ女のカードですか! まさか、それで先行ワンキルをするとでも? 無駄なことです、それでは私が自爆するだけですよ!」
「自分で言ってて悲しくならないのか? ――だが、そうじゃない。こいつの役目は、あくまで先攻を取ることだ」
布太梳モエから俺は”フレイムヘッジ”を借りてきた。
このカードは、彼女が先行ワンキルをしたいと強く願ったことで生まれたカード。
マナが集まれば集まるほど、俺が先行を取る確率は高まる。
ただマナを集めてそれを使うという方法しか用意していなかった蛇男と比べると、強烈な補正の入った俺のほうが先行を取れる”パワー”があるのだ。
「続けて、俺はスペル”増殖する羊”を発動、”フレイムヘッジ”を保管庫に送ることでフィールドに四体までトークンを生成する」
「そのようなトークンで何を……」
「さらに、スペル”団結バンド”を発動。増殖する羊で生み出したトークンに装備、これによりトークンの攻撃力は自分フィールドにいるモンスターの数だけ800アップする」
これにより、装備したトークンの攻撃力は3200、奴のデッキに《これ以上の攻撃力のモンスターはいない》。
ここに来るまでの最中、ライブラリを使ってやつが使用するカードを調べておいた。
この世界のカードは膨大な数があるとはいえ、調べれば同じデッキを使っている者は出てくるものだ。
ジャスティスから聞いた話だが、俺の使った【狂気魔導書群】は他にも使い手がいるそうだ。
しかも、教皇ことハイエロファントと浅からぬ因縁があるらしい。
それと同じように、いくら特別っぽいやつが使うデッキでも、情報は残っている。
「最後にスペルを一枚伏せ、ターンエンド」
――これで、すべての準備は整った。
「く、はは! はははは! 大言壮語した割には、その程度で終わりですか!? まだ教皇の最初のターンの方がまともな動きをしていましたよ!」
「さて、どうかな」
「ちょっと攻撃力の高いモンスターを呼び出すのに手札を使い切る。いったいいつのバトルをしているのやら。バトルとは――こうするのです! 私のターン!」
蛇男は、意気揚々とカードをドローした。
そこに俺はすかさず、問いかける。
「――このタイミングで発動するカードはあるか?」
「ふむ、あるわけないでしょう」
「であれば、こちらがスペルを発動する」
これこそが、今回のデッキにおいてもっとも肝となるカード。
世界中から集めたマナで、初手に呼び込んだカードだ。
「俺は――”ポジションスイッチ”を発動する」
そのカードに、蛇男は首を傾げる。
「……なんです、そのカードは?」
「まぁ、知らないだろうな。このカードが発動している間、フィールドでもっとも攻撃力が高いモンスターはスペルの効果を受けない」
「はあ?」
「そしてこのカードが破壊された場合、もっとも攻撃力の高いモンスターが破壊される」
はっきり言って、そこまで強いカードではない。
たまたま俺が陰湿デッキ大好きで、こういうデッキも一応用意していたから今回使っただけだ。
だが、それはこのデッキが陰湿デッキとして劣っているというわけでは決してない。
むしろこのカードとデッキこそ、このマギロアバトルというゲームの根本的な”バグ”とも言える。
「く、ははは! そのようなカード、一体何の意味があるのです! 私のデッキにスペルは一枚も入っていないというのに!」
「さて、どうかな」
「ああいえ、そのカード、対象は貴方だけではないのですか。とすると、こちらのモンスターがもっとも攻撃力に高くなった際にそのカードを破壊すれば、私のモンスターを道連れにできる……と」
「流石に、その程度のことは理解できるか」
「――バカにしているのですか?」
いくらなんでも、このカードの
だが、それ以上については全く頭に入っていないように思える。
ゆえにこそ――
「では、貴方という雑魚を、世界を三度滅ぼすマナによって手に入れた完璧な手札で蹂躙してさしあげましょう! 現れなさい!」
蛇男は、何ら疑いなくモンスターを降臨させようとして――
「”フルメタルモンタージュ・スネーク”! …………
――
「何が、何が起きているのです! 反応しなさい! ライブラリ!」
「さて、それじゃあ――ここからは授業の時間だ」
俺は、笑みを浮かべて語りだす。
ああ、この瞬間が一番楽しい。
中には状況を理解しているものもいるのだろう、配信のコメント欄には嬉々として「死んでよ~」と書き込む者の姿も見える。
「まず、俺の場にはもっとも攻撃力が高いモンスターとして、スペルを装備したトークンがいる。しかしこのトークンに対して俺の”ポジションスイッチ”が効果を発揮したら、さてどうなるだろうな」
「……攻撃力アップは、全てスペルの効果によるもの。スペルの効果を受けられなくなった結果――攻撃力は0になる」
「そう、そしてその場に別のモンスターが降臨した場合、現在トークンの攻撃力は0であるために、”ポジションスイッチ”の効果は降臨したモンスターに移る」
「そ、そんなことをすれば……スペルの効果を受け付けるようになったトークンの攻撃力がもとに戻り……」
そう、これによって――
「――
そしてこの無限ループは、どうやっても処理できないループだ。
ライブラリには、カードの効果を処理する能力が備わっている。
言ってしまえばそれは、裁定を決定するジャッジ機能。
この機能は、発生した無限ループを処理するために、ある決定を下すのだ。
「結果、
「な、な、な、ぁ……!」
「この状況をどうにかするには、スペルで”ポジションスイッチ”を破壊するか、攻撃力3200以上の攻撃力のモンスターを場に出すか、あるいは攻撃力0のモンスターを場に出すか」
残念ながら、蛇男のデッキにそれらのカードは存在しない。
「――
この状況、蛇男の特殊なデッキでなければ本来は発生し得ない完全ロック。
だけれども、成立した。
成立するからには、使いたくなるのが陰湿デッキ使いってものだよなぁ。
「ふ、ふ、ふざけるなぁああああああああ!!」
ああ、その顔――最高だ。
「このようなふざけたデッキで! 神聖な戦いを愚弄する気ですか!」
「――どのようなデッキだろうと、デッキはデッキだ。この世に不要なカードはない。ちょっとバグっているカードがあるだけだ」
「ずっと、ずっと、ずっと……我々の邪魔ばかりする愚鈍なカスが! 黒幕などと名乗る愚か者が! 狂信者風情が神の代弁者を名乗るな! 衣装がハレンチすぎる! 黒幕に加担するなど正義が聞いて呆れる! どいつもこいつも、我々に楯突く失敗作だろうがあああああああ!」
「――失敗したのは、お前の作戦だよ」
うろたえた様子で、蛇男が叫ぶ。
そして――
「で、ですが……仮に私を詰ませたところで、何だというのです? あ、貴方が勝てないことに、変わりはないでしょうが――」
「そうだな、俺は勝てない」
この勝負の、根本的な問題だ。
確かに蛇男を詰ませることには成功した。
しかしそれでは、まだ何も解決していない。
無論、俺はその解決策を既に準備しているが。
「だが、お前が自爆する条件は、
「何を――」
「
すなわち――
「サレンダーしろ。お前自身が負けを認めて、このバトルを終わらせるんだ」
教皇がそうしたように。
蛇男が自分から敗北すれば、マナは爆発しない。
「そん、な……こと! 誰が認めるものですか! 私は、最後まで戦い続け――」
「ああ、それなら――」
俺は、用意された椅子に腰掛けながら呼びかける。
それはいつの間にか現れたヴェルライト・レディこと布太梳モエが、バトルの最中に用意したものだ。
「
「――――!!」
椅子の他には、テントと食料、それから暇をつぶすための本なんかも用意してある。
「ターンを回したくないなら、ご自由にどうぞ? 俺はその間、こうして自由に休憩させて貰うぞ――味方のいないお前には、休憩手段なんてないけどな」
「あ、あ、ああああああああああああっ!!」
こいつは明らかに人外で、食事は必要ないかもしれない。
しかし――はたしてこの状況で、補給もないままずっと立ち尽くした時、精神の疲弊に耐えられるかな?
常に上位者として振る舞い、俺の行動に癇癪を起こすような奴が。
はたして、何時間この状況に耐えられるだろう。
「――――さぁ、好きな死に様を選べよ、
かくして、ここにテンバイヤとの戦いは決着を見た。
配信のコメント欄が「死んでよ~」一色に染まるのを見ながら、俺は満足げに頷くのだった。
というわけで正解はボールポジションでした。
なんでこんなカード刷っちゃったんでしょうね。
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