カードゲーム世界で考察配信したら、すべての黒幕だと思われた   作:マクロコスモス

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3 いとも容易く行われるえげつない行為

 マギロア。

 この世界におけるカードゲームの名称。

 魔術の知識を意味する言葉で、プレイヤーであるマジックユーザーは、バトルの中でその深奥へと潜っていくのだ。

 ルールはコストの存在しないライフ制カードゲーム。

 モンスターを呼び出す降臨には複数の降臨方法が存在し、様々な特性を持っている。

 まぁ、よくある……というと少し特殊だが、万人が想像しやすいルールだ。

 なんで想像しやすいんだろうな……

 

 さておき、現在俺はそれをネット上でバトルが行えるサービス、マギア大戦にて某企業の手先を迎え撃っている。

 場所は自室、一人暮らしでちょっと高いマイクの機材がある以外は本当に普通の部屋だ。

 ああでも、椅子がライブラリになってるところは前世から考えると普通じゃないかな。

 コレがなかなか、雰囲気があってガジェットとして好きなのである。

 ともあれ。

 

『先行は私だ』

「さすが不正アプリのハッカー、先行後攻を自由に決めるのはお手のものか。先行を取れないと勝てないデッキだからな、それくらいのハンデは必要か」

『…………私は、”テックハック・ケルベロス”を降臨。効果で【テックハック】モンスターを手札に加える』

 

 一応、バトル開始前にカード強盗のバトル履歴は確認しているが、先行率は脅威の98%だ。

 それもこれも、先行後攻を決定するライブラリの機能をハッキングしているからだろう。

 時折先行を取れないのは、相手の方が不思議パワーを使っているからだな。

 

「だけど不思議だよなぁ、カード強盗の戦績を見せて貰ったんだが、どうして勝率が十割に達してないんだ? 視聴者はカード強盗の勝率ってどれくらいか知ってるか?」

 

:えーと、8割くらい?

:流石に十割は無茶だとしても、連日報道されてるくらいだし、9割はあるんじゃないか?

:確か不正して必ず先行とってるんだろ? だったらまぁそれくらいは勝ってもらわないと。

 

()()。今、少ないって思っただろ。実際少ないよな。仮にも先行を必ず取れる不正をしてるのに、そんだけしか勝ててないっておかしいよな」

『黙れ、バトル中だぞ』

「そして真実を突きつけられると、向こうは反論もできなくなるわけだ」

 

 さて、バトルは特にこちらから妨害を飛ばすことなく進む。

 単純に手札に誘発がね……なくてね……

 

「さて、今回俺が見つけた企業だが、おそらくこの配信を聞いている誰もが一度は名前を聞いたことがあるはずだ。数年前まで、バンバン広告出してたからな」

『バトル中だぞ、黙れといっている!』

 

:というか、勿体ぶらずに企業の名前を公表してくれよ

:いやでも証拠とかないんじゃね? それで名指ししたら普通に名誉毀損とか言われてもおかしくないだろ

 

「というかそれ以前に、今はその企業の名前を口に出せないんだ。――――ほらな?」

 

:なんかノイズ走った!

 

『貴様は今、我が社のハッキングを受けている。リアルタイムの検閲などそうむずかしいことではない!』

「ってわけだ。まぁ、安心してくれ、証拠ならあるよ……んで、話を戻すと、その企業は少し前までめちゃくちゃ儲かってたわけだが……最近、業績が低下しているんだ」

 

:資金繰りに困ったから犯罪に手を染めたってことか

 

「そういうこと。それもこれも、業績が悪くなったのは先代社長がなくなって、二代目の社長になってからだそうだ」

『黙れと言っているのが聞こえないのか! だが、その減らず口もここまでだ!』

 

 と、そこで画面の向こうの相手がいよいよエースを降臨させるらしい。

 

『現われろ! ”ハックテック・サイバーデモン”!』

 

 俺の前に現れるは、だいたい名前通りの見た目をしている悪魔のモンスター。

 せっかくなので、VRゴーグルのスイッチを入れて、目前に現れた大型エースを拝んでおいた。

 この世界の熱帯も、パソコンの画面上に存在するのはDCGよろしく普通にカードが並んでいる盤面だ。

 しかしVRゴーグルを使用することで、現実さながらの電脳フィールドを眼の前に展開することもできる。

 現実さながら、ってのも変な話だが。

 

『”サイバーデモン”は自分、または相手ターン中に一度、”ハックテック”モンスターを蘇生できる!』

「それで、さっき降臨させてた降臨時にバックとかモンスターを破壊するハックテックで妨害するわけか」

『それだけではないぞ! ククク、貴様はもうおしまいだ! スペルを二枚伏せ、ターンを終了する!』

 

 ――さて、盤面を一度振り返ってみよう。

 相手の場にはモンスターを蘇生できるエース。

 あとそれによって蘇生された蘇生効果持ちのモンスター。

 こいつも場に【テックハック】モンスターがいれば相手ターンに蘇生が可能らしい。

 保管庫――このゲームにおける墓地――にはすでにモンスター破壊とバック破壊のモンスターが送られている。

 つまりバックとモンスター破壊が見える状態で構えられているようだ。

 更にはエースには他にも妨害がありそうな雰囲気。

 バックの二枚も、他のデッキの傾向から言って妨害だろう。

 誘発なしで気持ちよく展開させてしまった。

 向こうも、正面から突破しようとしてきたらいくらでも防いでやろうという気概を感じる。

 いやあ、大変だなぁ。

 

「俺のターン。じゃあまずは――」

『さぁ、どこからでもかかってくるがいい。貴様の行動など何一つ無意味であると証明して――』

 

 

「手札の【トラベルバード】と相手フィールドの”サイバーデモン”を触媒に、”トラベルバード・ユリカモメ”を上位降臨」

 

 

:えっ

:うわっ

 

『は……?』

「続けていくぞ」

『ま、待て待て待て! ”サイバーデモン”の効果を使わせろ!』

「何を言っているんだ。触媒にされたらそのまま即保管庫に行くに決まってるだろ。”ユリカモメ”は相手フィールドにしかモンスターがいない時、相手のフィールドのモンスターと手札の【トラベルバード】を触媒に上位降臨が可能だ」

『ふざけるなあああ! スペル”リトライ・テックハック”で”サイバーデモン”を蘇生降臨……なぜスペルが発動しない!?』

「二体のモンスターを使って上位降臨した”ユリカモメ”がフィールドにいる時、お互い特殊降臨は行えない」

 

:死んでよ〜

:鶏肉くいてぇ

 

 相手の使うデッキがほぼわかってる上に後攻確定なんだから、それ相応のデッキを持ってくるに決まってるだろ。

 トラベルバードは、相手のモンスターを触媒にして耐性を貫通させつつモンスターを降臨させることを得意とするデッキだ。

 いやぁ、気持ちいいなぁ。

 それから俺は、半ば一方的にバトルを展開した。

 相手のバックを一層し、蘇生モンスターも倒して敵にターンを渡す。

 そして相手がモンスターを展開しようとしたところで――

 

「俺はスペル、”風雷のトラベルバード”を発動。こいつの効果で、相手ターンに相手モンスターを触媒として上位降臨が行える」

『待て待て待て、特殊降臨は行えないのではなかったか!?』

「何を言ってるんだ? これは()()()()()()()()()()()()()だが?」

『ふざけるなあああああ!』

 

:うわぁ

:死んでよ〜

 

 どうやら”テックハック”には場に”テックハック”がいる時効果を発揮できるモンスターが多いようだ。

 なので相手の場に”テックハック”が存在できないよう立ち回ればいい。

 簡単な話しだ。

 

「で、話を戻すと、さっきの二代目社長なんだが、まぁこれがかなりのボンクラで、やることなすこと失敗だらけだそうだ。そんなやつが今回、どうしてこんな大胆なカード強盗に手を染めたのかっていうのは、結構気になるよな」

 

:確かに

:そんな知恵回らなそう

 

『黙れ、黙れ!』

「……なあ、証拠はあるって言ったよな?」

『……!』

「この言葉の意味、――アンタならわかってるだろ、()()()()

『黙れ!』

 

:社長!?

:この刺客、社長本人だったの!?

 

『な、違う!』

「今更否定しても意味ないだろ、誰がどう見ても今の反応は黒だ。それにこれは賭けバトル。俺が勝てば――俺の要求を呑んでもらうわけだし」

『っ!』

 

 そして、こいつはもう詰んでいる。

 何もできずにターンをこちらに渡した時点で、向こうに打つ手がないのは確実だ。

 

「俺のターン」

『……か、金ならいくらでも払う! 不正アプリのオリジナルデータならどうだ!? だ、だから頼む……金で手を打ってくれえええ!』

「――それで、証拠はあるって言ったよな?」

『い、嫌だ……それを話せば、俺が消される! お、俺は大企業の社長なんだぞ! そんな、惨めな最後……!』

「別にカードにされるだけで、死ぬわけじゃないんだから少しくらいいいだろ。それに――」

 

 俺は、モンスターを展開させ、喉元に刃を突きつけながらいう。

 

 

「俺に話したほうが、マシな末路を迎えると思うが?」

 

 

:えげつな……

:こ、こいつ……

 

『あ、あぁあああ、あぁああああああ――――』

 

 ――落ちたな。

 さて、ここで種明かし。

 ()()()()()()()()()()

 マシな末路? いや俺に話しても警察にとっ捕まるか黒幕にとっ捕まってカードになるかのどっちかだと思うが……

 でも、こうして追い詰められた上で雰囲気をだせば、適当に話してくれるだろうと踏んでいた。

 ゴリ押しもいいところ。

 なんにしても、圧倒的なアドバンテージを利用しての上から目線。

 なんて――なんて心地よいんだ。

 

 確信していたのは勝負を挑んできたのが社長である、という点だけだ。

 公式に履歴が残ってるバトルで使ってるデッキが、今使ってるテックハックと似たようなデッキだったからな。

 この世界にはカードとの相性みたいなものが存在するので、そこからメタ読みが可能だ。

 

「それで、一つだけ聞いておこう。お前の言う崇高な使命って、結局なんだったんだ?」

『や、やめろやめろやめろ!』

「ああやっぱり……お前のレベルが低いだけだったんだな。残念だ。――じゃあな、やれ、”ユリカモメ”」

 

 かくして俺は、勝負を仕掛けてきた悪の組織の社長を一方的にボコボコにし――

 

:く、黒幕……

:黒幕だ、こいつ……!

 

 ――初めて”黒幕”という呼び名を使われるのだった。

 いやあ、楽しかった。




ユリカモメくんは触媒なしの通常降臨することもでき、一体だけ触媒での降臨、二体での降臨も可能。
それぞれ降臨時に別の効果を発動できる優秀なトラベルバードふわ。

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