カードゲーム世界で考察配信したら、すべての黒幕だと思われた 作:マクロコスモス
それから、色々とすごいことになった。
まずどうでもいい方から処理していくと、やはりあの挑戦者は例の企業の社長だったらしい。
社長は何者かに唆され、社員を騙して不正アプリを開発した。
それを外部の闇バイトに引っかかった連中に流し、カードを強盗させて上前をはねていたらしい。
闇バイトに引っかかってた連中はともかくとして、社員は事情も知らされず謎のアプリを開発しただけなのでお咎めなし。
まぁ会社は無くなりそうなので、それはそれで可哀想だが。
とりあえず、捕まったのは社長と実行犯連中だけだ。
残念ながら社長をそそのかしたヤツにはたどり着けなかった。
社長を逮捕したと思ったら、いつの間にか牢から姿を消していたらしいからな。
カードにされて持ち去られたのだろう。
警察は何してるんだって非難轟々だが、正直あまりこれに言及するものは多くない。
――”黒幕”ヴェルライトの話題に比べれば、捕まった悪人がカードにされて消えるなんてよくある話だからだ。
いやそれをよくある話って、どうなんだよ。
連日、ネットでは”黒幕”ヴェルライトに関する話題でもちきりだ。
正体は誰なのか。
どうやってカード強盗の真実にたどり着いたのか。
一体どうしてその奥にいる黒幕について知っていたのか。
あまりにも謎が多すぎる。
ヴェルライトのチャンネルの登録者数はすでに十万人を超えていて、今も大幅に増加傾向。
何だったら昼間のワイドショーでも取り上げられているくらいだ。
当然ながら、取材の依頼も各所から届いている。
まぁ受けるつもりはないけどな。
単純に面倒なことも理由の一つだが、三分の一くらいが悪の組織のダミー企業とかダミーライターからの依頼だからだ。
黒幕をやり始めてわかったが、この世界は悪の組織が多すぎる。
こないだの社長みたいに、社員は一切そのことを知らされていないけど、悪に加担してる企業とかもあるしな。
逆もまた然りだから、一応社会の秩序は守られてるけど。
なんで解ったかって?
まぁ理由はいろいろだよ。
企業名やライター名が親玉のもじりで隠す気あるのか? って感じだったり。
露骨にこちらの情報を引き出そうとしてくる依頼文だったり。
中には下っ端が語尾を使うタイプの悪の組織で、その語尾をそのまま依頼文でも使うふざけた連中もいる。
この辺りは、ホビアニ故の緩さって感じだな。
まぁ、世間と悪の組織に関してはどうでもいい。
世間が盛り上がってる分には、どれだけ炎上しようと他人事みたいなものだし、面白いだけだからいい。
取材依頼をぶん投げてきた悪の組織に関しては、後でまとめて紹介配信でもしよう。
問題は――
『貴方が”黒幕”ヴェルライトですね。アルカナ・クランのライトユーザー、ハイエロファントと申します。お話を聞かせていただいてもよろしいでしょうか』
――正義の味方も、俺を探っているということだな。
それはマギア大戦をオフでプレイしているときのことだった。
マギア大戦は、この世界で尤も普及したネット対戦用ツールだ。
だから、時にはマギア大戦内部で事件が起きることもある。
これに対して、この世界の秩序を守る正義の味方は、直接それに介入することがあるのだ。
今回みたいに、公式の許可を取って俺に直接連絡を取ってくるなんてことも可能。
「ライトユーザーか、思ったよりも早い接触だったな」
ライトユーザーってのは、要するに正義の味方。
悪の組織のユーザーは、ダークユーザーなんて呼ばれることもあるな。
コーホー。
『ヴェルライト、貴方はすでに二つの事件を解決に導きました。世間は貴方に多大な注目を寄せています』
「……そうか。それで君は、アルカナ・クランのハイエロファントと言ったな? なぜ君が俺に連絡を取ってきたんだ」
『アルカナ・クランは主にサイバースペースでの事件を担当しています。加えて、機械帝国メタリカの捕縛にも関わっていました』
「なるほど、関係者ってことね」
俺は手元のパソコンを操作しながら、アルカナ・クランのハイエロファントという女性から話を聞いていく。
いや、女性かどうかははっきりしないけど、少なくとも声は女性だ。
『ですから、私たちライトユーザーは貴方の真意が聞きたいのです。貴方の行っている行動は、秩序を守る行為、正しいことは事実です。しかし、ライトユーザーではない人間が行うのは、あまりにも危険であるということは理解していただきたく思います』
「――それは、俺が危険な存在であるということへの警戒も含まれているのか?」
『……どうとでも解釈していただいて構いません。私の要求はあくまで二つ』
ライトユーザーとして活動するのには許可が必要だからな。
普通に考えて、誰も彼もが正義のために行動してたら正義が暴走してしまう。
とはいえ色々と特例は多いし、俺もきちんと事情を説明すればライトユーザーとして承認されるだろう。
が、しかし。
『あなたに関する事情をこちらに教えていただきます。そして、ライトユーザーへの登録を――』
「――お断りする」
『えっ』
君は俺が自分の提案を断らないと思っていただろう。
確かにその方が合理的だし、社会秩序を思うなら絶対的に正しい。
――だが断る。
理由は幾つかある。
その正義が必ずしも正しいという思い込みが気に入らない、純粋に面倒くさい、断ったら気持ちいい。
いくらでも、理由は挙げられるだろう。
だが何よりも――
「
だって、どうせ後から正体がバレても、特にお咎めがないからだ。
何しろ違法行為は何もしてないし。
めちゃくちゃ怒られるだろうけど、すでに短時間で組織を二つも壊滅させてるんだ、その有能さを買われるだろう。
とはいえそれも、バトルに勝てたらの話だが。
『……アンティバトルを申請します! 勝利すればこちらの要求を呑んでいただきます! 無論、こちらが負ければそちらの要求を呑みましょう!』
「了解、こちらの要求はこれ以上の干渉をしないこと、だ」
よし、こんなものかな。
別のモニターに移されていた”あるもの”を閉じて、ついでにマギア大戦内で行っていた作業も中断。
直後に送られてきたハイエロファントを名乗る女性からのバトル申請を了承した。
『マギロアバトル、エンチャント!』
「エンチャント」
ライトユーザーもアンティバトルを要求するのかよ、と思うかもしれないが、ぶっちゃけそれが一番手っ取り早いのだ。
だってここはカードゲーム世界、最終的にカードで全てを決するのだから。
だったら最初からアンティバトルとしてお互いの要求を明らかにしたほうが賢明だ。
そしてここでバトルを受けないという選択肢はない。
何故なら受けた上で勝てば、仮に違法行為でも見逃してもらえるからだ。
まぁ、もちろんガチの違法行為なら普通に別のライトユーザーに挑まれるだけだが、今回は何も悪いことはしていない。
他にも勝負を挑んでくる連中はいるだろうが、少数のはずだ。
それくらいなら許容範囲。
――で、勝負の結果は。
「スペルカード、”狂気魔導書群 セラエノ”を発動。コレによりデッキから三枚を異次元に除外。そっちのデッキ切れだな」
『な、何故……一度も攻撃が通りませんでした……!』
ほぼ一方的にこっちがボコって終わりました。
なんでって?
「さて、何でだろうな? 君に教える義理はない。自分で考えることだ」
『ま、まるで……私の全てを見通しているかのような。そんな……貴方は一体何ものなのですか!?』
「――まだ、君が知るべきではないことだ」
『……っ!』
答えは単純――調べました。
ライトユーザーってのは、時にアイドル的な人気を博すものだ。
特にアルカナ・クランってのは全員が美少女の人気ライトユーザー組織らしい。
各地でバトルをした目撃情報があり、そこから向こうのデッキを調べるのは簡単だった。
通話が入った時点で、バトルになる想定で別モニターを使って調査をしつつ、マギア大戦ではデッキをイジってたからね。
ピンポイントメタもまるっと投入した。
いやぁ、我ながらずるい手段だ。
最高に気持ちの良い勝利である。
『……そうですか、
――――ん?
『解りました。貴方の真意に私がまだ届かないというのであれば、私はまだ何もかもが足りていないのでしょう』
「……君は何を言ってるんだ?」
『こちらを試しているのですか? であれば心配はいりません。貴方の意思、確かに受け取りました』
――いや。
まて、まてまて。
なんかこれ、絶対よくない方向に勘違いが発生しているぞ!?
『ヴェルライト。貴方の大いなる意思、私には未だその一端も掴めていません』
「……」
『ですが必ず、いつかその企みの全て、私が明らかにしてみせます!』
やっぱり、なんかこう……勝手に俺を変な方向に持ち上げてるタイプの勘違いだ!
今のファイト一つで何を理解したんだよ!
というかチョロすぎだろ大丈夫か!?
「ま――」
『では、いずれ運命の導きが我々を引き合わせることを願って』
――通信が切れてしまった。
いや引き合わせるじゃねぇんだわ。
「……ふぅ」
とりあえず、天を仰ぎながら一言。
「なんだったんだ……今の」
どうしようかなぁ、これ。
いやまぁ、どうにもならんか……こういうタイプの勘違いなら、悪い方向には行かないだろうし。
よし、気にしないことにしよう。
というわけで、俺は気を取り直して再びランクマに潜るべくマウスを動かすのだった。
何故か相手のターンに手札から発動したスペルカードでデッキを削りきっています。
不思議ルーンねぇ……