カードゲーム世界で考察配信したら、すべての黒幕だと思われた 作:マクロコスモス
俺が黒幕を始めてから半月が経過した。
その間に、俺が壊滅させた組織は数しれず。
例えばある時は、俺に取材依頼をかけてきた悪の組織のカバー企業に逆凸をしかけたり。
「じゃあ今日は、先日から大量に来ている取材依頼に直接凸って行こうと思うぞ」
:それコンプラ的に大丈夫なのか?
「全然大丈夫じゃないが、諸事情で問題ない」
:なにそれ……
:お、繋がった
『はい、もしもし』
「――――本日は取材の件で連絡させてもらいました。境界新聞様。いや、こういった方がいいかな? 秘密結社ボーダーグラウンドの諸君、ごきげんよう。俺がヴェルライトだ」
『なっ――――』
:あっ
:あっ
:あっ
とか、そんな具合に。
なおその後案の定バトルに発展。
フィールドにいる限り、モンスターの効果発動回数をフィールドに存在するモンスターの種類の数までに制限するカードを中心としたデッキで封殺した。
何故か名前的なシンパシーを感じるな。
他にも、例えば――
『おい、どういうことだ! 何故この拠点にアルカナ・クランが襲撃を仕掛けている!』
『ありえない! この拠点の迷彩設備は完璧のはずだ!』
複数のボイスチェンジャーによって変換された怒号が、室内に飛び交っている。
ここはある犯罪組織の拠点であり、組織が収集してきた無数のカードが眠っているのだ。
その中心部には幹部たちがリモートで会議を行うための空間があり、見た目は一言でいうとゼーレのアレである。
そして、どういうわけか本来なら見つかるはずのないこの拠点が、ライトユーザー組織のアルカナ・クランに露呈。
複数のライトユーザーから襲撃を受けているため、幹部が緊急で会議を行っているのだ。
やれ、今すぐこの拠点にある自分の情報を削除しろだの、あのレアカードは絶対に持ち出せだの。
喧々諤々で、何の意味もない議論がかれこれ数時間は続いていた。
そんな会議に、一つ爆弾が放り込まれる。
『――誰かがここをリークしたのではないか?』
『……!』
『……そ、それは! この場に裏切り者がいるだと!?』
そこからはもう阿鼻叫喚。
元々会議の体をなしていなかった会議は完全に崩壊、罪のなすりつけ合い、足の引っ張り合いに以降。
彼らはこのままアルカナ・クランが拠点を制圧するまで、このバカみたいなやり取りを続けるだろう。
――なお、言うまでもなく裏切り者の可能性を提示したのも、ここをアルカナ・クランに通報したのも俺だ。
まず、どうやって俺が普通なら発見できないはずの拠点を発見したのか。
答えは単純、取材依頼を送ってきた連中を脅して、つながりを漁ったのだ。
彼らの中に裏切り者はいない。
強いて言うなら、彼らの外に裏切り者がいたといったところか。
にしても、会議に参加してる連中がボイスチェンジャーかましてたのはよかったな。
俺もちょっと声を加工してるから、混ざっても全然気にされなかった。
いやまったく、悪い奴らが右往左往しているのは楽しいなぁ!
――そして、俺のメインコンテンツはやはり考察配信だ。
「今回取り扱うのはここ最近人さらいをすることで問題になってる悪の組織、ダークバインド・オブシディアンについてだ。長いのでDBOと略すが、こいつらの使うデッキ、【オブシディアン】のモンスターは全員人型だ」
正直、俺の考察はすべて推測だ。
確固たる証拠があるわけではない。
本当にあっているかどうかは、とりあえず答えを出してみるまでわからない事がほとんど。
確証が持てない場合は配信で考察を披露せず、ある程度情報を集めた上でライトユーザーにぶん投げることにしている。
とはいえそれでも、今まで一度として考えが的外れだったことはないのだが。
――何故か。
「……ようするに、【オブシディアン】のモンスターは全て、DBOにさらわれた人たちだ。彼らはモンスター名や衣装、ポーズなどを用いて助けを求めている。そしてそれらを紐解けば、彼らがどこに囚われているかもわかるというわけだ」
いくらメタ読みといっても、普通に考えればどこかで限界がくる。
はっきり言って、極論から極論を発展させたような考えも多いからだ。
しかし、俺は考察を外さない。
『――対戦相手が見つかりました。エラー、不正なアクセスを検知』
だってこの世界には――
■
さて、ヴェルライトとしての黒幕活動中はともかく、普段の俺はあくまで一介の大学生だ。
大学には少数ながら友人がいて、そいつらと適当に毎日を過ごして生きている。
学内での俺の評価は、どこにでもいる普通のモブ、だろう。
理由は学内でマギロアバトルをあまりしないからだ。
基本的に、この世界で人々の注目を集めるのは容姿や性格よりもマギロアバトルの実力とスタイル。
俺の場合、デッキがデッキだからなぁ。
基本的にバトルをするのは、熱帯とか本名で参加しなくていいショップ大会とかそういう時だけだ。
「おう、多田敷、聞いたか? 今日も黒幕様は絶好調みたいだ」
「おはよう、またその話題か?」
「そりゃそうだろ。今ヴェルライトの話をしなくて、いつするんだよ」
そして、数少ない友人と学食で昼食を取りながら話をする。
話題は当然、”黒幕”ヴェルライトについて。
ヴェルライトの狙いは果たしてなんなのか。
正義のため? 大いなる野望のため? 様々な憶測が飛び交っている。
ただ一つ確かなのは――
「まさかヴェルライトの暗躍で秘密結社ボーダーグラウンドの拠点の地下に眠っていたギャラクシー★ザウルスが目を覚ますとはなぁ……」
――ちょっと事態が斜め上にむかっているな、という点。
なんだよギャラクシー★ザウルスって。
安易な語尾は流行らないドン。
「そもそもそれを目覚めさせる要因になったのが、例の犯罪組織が作った地下拠点の崩壊と、上層部がヴェルライトに喧嘩を売ってる隙にDBOにとらわれていた人たちが地下から脱出しようとしたことが原因なわけだが……果たしてヴェルライトはどこまで読んでいたんだ?」
「さぁなぁ」
まったく読んでないよ。
そんなチェーンを組む意図は一切ありませんでした!
いや、一応この3つの事件には繋がりみたいなものがあって、同時に解決したらそれをトリガーに別の事件が発生するだろう、とは思っていたのだ。
実際に事件が起きるかのテストという側面もあった。
でもギャラクシー★ザウルスが生まれるとは思わないザウルス……
ちなみに事件は、こうなることを想定してアルカナ・クランに情報をリークしたので、アルカナ・クランがなんとかしてくれました。
いつも悪いね!
んでまぁ、一つ言えるのは――
「
「
と、その時である。
何やら学食の入口のほうが騒がしい。
多分この感じからして――
「おいみろよ、波浪フェニ様だぜ!」
――波浪フェニ。
俺が通う大学の有名人といえば、間違いなく彼女のことだろう。
容姿端麗成績優秀、人当たりもよく何よりバトルが強い。
いつも彼女の周囲には人がいるから、その騒がしさで彼女が近くにいることはすぐに分かる。
にしても、なんというか――
ハイエロファントだよなぁ、彼女。
先日俺に接触しようとしてきたライトユーザー、アルカナ・クランのハイエロファント。
そのビジュアルは写真がネット上のあちこちに残っているため、調べればすぐに出てくる。
んで、俺は見た瞬間波浪フェニだとピンと来た。
仮面で顔をかくしてこそいるものの、それ以外は明らかに波浪フェニなんだもの。
仲間内での愛称がハロであるのは、人前でハロと呼んでも名字の波浪を略したものだと言い張れるからな気がする。
ともあれ。
「ところで、波浪フェニとアルカナ・クランのハイエロファントって似てると思わないか?」
「は?
それを認識できるのは、
この世界にはお約束というものが存在する。
仮面をかぶれば正体がわからない、物語は一つの事件に集束していくもの――正義は必ず悪に勝つもの。
そんなお約束が、この世界を支配しているのだ。
それもこれも、ある”力”が運命にすら干渉してしまうのが原因なのだが……
まぁそのお約束に、主にメタ読みと正体隠しの面で俺も世話になっているわけだ。
「……っていうか、なんだありゃ」
「ん、どうしたんだよ」
――考え中に、めちゃくちゃ真面目なトーンで友人が声をかけてきたから、思考を中断し耳を傾ける。
それと同時に視線を波浪フェニの元まで向けると――
そこには、全身をヴェルライトグッズで覆い尽くした変人の姿があった。
「ええ……」
缶バッジだの、Tシャツだの、帽子だの。
あらゆる部分にヴェルライトに関するグッズが張り付いているのだ。
コレに対して、俺から言えることはただ一つ。
ヴェルライトは公式からグッズとか、一つも出してないからな!?
セクシー! NO! ギャラクシー!
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