カードゲーム世界で考察配信したら、すべての黒幕だと思われた 作:マクロコスモス
俺がグッズの類を出していないということは、すなわちコレが悪徳業者のアンオフィシャルな代物ということだ。
クソッタレがぁ……!
カードに関わる悪事は、好きにすればいい。
俺は楽しくそれを上から叩いて黒幕面するだけだ。
しかしカードがかかわらない悪徳商法は違うだろう。
しかもこうして俺のグッズが意図せず広まるということは……思ったよりも早く”敵”が行動を起こしたということでもある。
この後のことを想像すると、頭が痛い。
何にしてもこの世界はカードが全ての世界。
悪は、すべてカードで為すべきだ。
俺は自分でも性格が悪い自覚がある。
それでも、そんな俺でも許せないものはたしかにあるんだよ。
今回は、そういう許せないものの一つに波浪が巻き込まれている。
あいつが実はライトユーザーだとか、大学の有名人だとか、関係ない。
俺は立ち上がると、周囲が波浪の奇行に困惑してざわざわとする中、波浪に向かって歩いていく。
「おい、多田敷!?」
「――波浪、少しいいか?」
驚く友人の声を置き去りにして、俺は波浪に声をかけた。
周囲のざわめきが、さらに大きくなる。
「……申し訳ありません、どちらさまでしょう」
「こっちこそ急に悪い、多田敷だ。一つ聞かせてほしいことがあるんだ」
「多田敷さんですね、わかりました。お聞きしたいこととは、なんでしょう?」
周囲の注目が俺に集まっていく。
何だこいつという感情が矢になって無数に飛んできているかのようだ。
だが問題ない。
カードゲームで波浪を負かしたとかでなければ、注目が尾を引くことがないのがこの世界だからな。
「そのヴェルライトのグッズは、どこで手に入れたんだ?」
「ヴェルライト様に興味があるのですかっ!?」
「うおっ!?」
で、そしたら向こうのほうがぐいっとこちらに顔を寄せてきた。
まぁ、どう見ても厄介オタクなんだし、こうもなるか!
学食の空気が、一瞬にして困惑へ偏る。
「ヴェルライト様は人々を正しい道に導く全能なるお方、世間では黒幕と呼ばれていますが、それも一時的なそしりにすぎません。多田敷さんも解っておられるのですね!? 見てください、このチャンネルロゴグッズ、これこそが私の信仰の証! ああヴェルライト様、どうか無知なる我々をお導きください!」
「お、落ち着け落ち着け! 俺はそのグッズの出どころが知りたいんだ」
「グッズの入手手段ですね! はい、大学の購買にて購入させていただきました!」
「購買!?」
そんなところにあるの!?
いや、カタログから注文すれば結構色んなもの買えるけどさ、普通はないだろ!
逆に言うと、それだけ多くの場所で出回ってるってことだ。
「買ったのはいつだ!?」
「きょ、今日です。あまりにも衝撃的でしたので、購買の在庫を全て買い上げてしまいました」
「そんなに」
ええ――
学食の空気が、完全にドン引き一色へと変化した。
これなら俺に対する印象なんてほとんど残らんな。
とにかく、今日から展開が始まったなら、俺が知らないのも納得だ。
とりあえず、大学の購買にはないだろうが、探せばどこかに実物は存在するだろう。
それを探しに行こう。
「ありがとう波浪、助かったよ」
「いえ、多田敷さんにもヴェルライト様の導きがあらんことを……」
俺がグッズを探しに行くと察したからだろう、ぐいぐいと食いついてきた波浪がそっと引いてくれた。
ただ、そんな波浪には悪いんだが――
「――ちなみに、ヴェルライトは公式でグッズとか出してないから、それ全部非公式の偽物だと思うぞ」
「えっ」
俺はそう言って、学食をあとにする。
後方から「波浪さんが脳破壊されて死んだ――!」とか聞こえてくるけど、気にしない気にしない。
今は、近場のコンビニへ向かうとしよう。
■
案の定、複数のコンビニでグッズを見かける事ができた。
レジの眼の前で売っている店舗も多く、観察するには場所が悪いのがもどかしい。
買ってしまえばいいだろう、と思うかもしれないがこれは悪徳業者の非公式品、少しでも悪徳業者に金を渡したくないのだ。
普通に考えれば店頭に並んでいる時点でコンビニが入荷して、買っても利益はコンビニに入るはずだがこいつは経緯にオカルトが混じっている。
なんの予告もなく、一夜にしてグッズが全国展開とかあるわけないだろ。
「カードがかかわらない悪徳商法にオカルトとか、この世界でもそうそう聞かないぞそんなこと」
小声でこぼしながら、見つけたグッズを前に俺は思案する。
俺個人にビジュアルがないせいか、かなりグッズ作りには苦心しているようで、大抵は俺のチャンネルロゴや俺が配信内で使用したカードが使われているようだ。
前者はともかく、後者はカードが無から湧いてくることのあるこの世界だと、かなり何とも言えないグッズである。
いや、それは置いといて。
「――
やはり、というかなんというか。
こういうオカルトには、マナとよばれるエネルギーが絡んでいるものだ。
今回も、そうらしい。
マナというのは、マジックユーザーが所有するユーザーとしてのパワーみたいなもの。
強いユーザーが本気を出すと、マナがオーラみたいにゴォッってなるんだよな。
バトルをしたりすると発生し、そのエネルギーはカードを生み出したりこういうオカルト現象を起こしたり、まぁ色々な事象を起こすために使用される。
「マナの探知はあんまり得意じゃないんだが、やってみるか……」
マナを探知できるかは、人による。
強いユーザーでも探知できないことがあり、なんというかカードの精霊が見えるかどうか……みたいな感じがあるな。
俺の場合は、必要になると判断して何年もかけて習得した。
どうせ表舞台で活躍してなかったから、暇だったしな。
なお、転生者だからか才能はカスほどもなかった。
こういう時、転生者って才能に溢れてるか、まったくないかの二択だよな。
しかし二十年も練習していれば、流石にちょっとは使い物になるだろう。
俺はマナを辿って、このグッズがどこで作られたのかを探っていく。
「――正直、かなり面倒なことになるだろうな」
この後に起きることを想像すると、頭が痛い。
元々俺は、この世界の裏側に俺の行動を妨害してくるだろう”敵”が存在すると理解していた。
カード強盗を例の社長に吹き込んだ奴らのことだ。
そいつらが今回、どうしてこんなことをしてきたのか。一体何をするつもりなのか。
俺にはだいたい想像がついている。
とんでもなくろくでもないことだ。
既にグッズが販売済みで、回収とか無かったことにするのが絶対に不可能というのが致命的だ。
せめてSNSでもやってれば違うんだろうが、俺が直接発信するのはあのチャンネルの中だけ。
そもそも、これまで黒幕とか言われて好き勝手してきたやつがいきなり真面目なことを言っても、果たしてどれだけの奴が信じるか。
前世なら、詰んでいる。
いやそもそも、前世にこんな理不尽一方的に押し付けてくるオカルトがあってたまるかって話なんだが。
この世界だと、普通に起こり得てしまうんだよな。
「……こっちかな」
裏路地へと入っていく。
如何にも事件の起こりそうな雰囲気の場所だ。
俺はライブラリを起動すると、機能の一つであるドローンを展開する。
これがまた非常に便利な代物で、スマホの代わりにもなるし、ドローンとして偵察にも使えるし、配信のカメラとしても機能するのだ。
今はとりあえず、ホログラムの投影で空中にニュースサイトを表示しながら進む。
「今のところ、大きな事件は起きていないようだが……」
まぁ、時間の問題だろうな。
俺はライブラリに格納しておいた”あるもの”へ意識を向けた。
この後のことを考えると、必要になるからだ。
――この後に起きることは、既に想像がついている。
対応策も、万が一のことを考えて既に考案済み。
ギャラクシー★ザウルスはその予行演習だったと言ってもいい。
まぁ、ギャラクシー★ザウルスが出てくるのは想定外だったけど。
とはいえ、最後は結局出たとこ勝負だ。
じゃあ一体、何が起きるのかって?
答えはとても単純。
「――見つけた」
俺は、そこで一人の少女が、明らかにチンピラとしか思えない男に追いかけられているのを発見する。
ぶっちゃけ、カードゲーム世界ならよくあることだ。
この後少女がバトルに打って出るか、ライトユーザーが割り込むかはともかく。
いや、今回は決まってるな。
ただ、一つだけ異様なことがあった。
それは――
「ヴェルライト様、ばんざあああああい!!」
「いやぁ!」
やつが、
そう、どこの誰だか知らないが――グッズをばらまいた奴は、それを利用して洗脳行為を働いているらしい。
ああまったく、これだから悪徳業者は――
「残酷に、滅ぼさないといけないんだ」
そう、冷えた声音で俺はこぼした。
みんなも海賊版グッズを買うのは……やめようね!
黒幕要素に関しては、一旦区切りがつくところまで投稿終えてから今後の方針を考える予定です。
タイトルが若干変わるかどうかまで検討予定、皆様の反応を見ながら決めていきます。
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