カードゲーム世界で考察配信したら、すべての黒幕だと思われた 作:マクロコスモス
この世界にはお約束というものが存在する。
そしてそれは、半分はマナによって発生する代物だ。
マナは運命にすら干渉してしまう。
結果として、運命は人の意思によってねじ曲がってしまうというわけ。
これ自体は別になんら問題のない代物である。
基本、悪に走る人間は意思が弱いから、そうそう正義のために頑張るライトユーザーが負けることはない。
しかしもし仮に、そこへ手を加える輩がいるとしたら?
俺がその存在に気付いたのは、ハイエロファントを倒した直後くらいだ。
黒幕行為を働くために、色々と調べていたときのこと。
――あれ、これなんか……作為的じゃね?
そう思ったのだ。
なんというかこう、事件の規模がより大きくなるよう、細工をしている連中がいるのではないか。
元々、事件の裏に謎の黒幕がいるのは、カード強盗事件でもわかる。
何者かが奴に悪事の種を吹き込んで、そのように社長を動かしたのだ。
じゃあもしカード強盗が起きていなかったら、どうなっていたか。
社長の性根自体は元々よろしくない、資金繰りに困っていることも事実。
であればどこかで事件は起きていただろうが、カード強盗なんてものを起こす知恵はなかっただろう。
もっと小規模かつ、スムーズに事件は片付いていたはずだ。
――そこで俺は、この仮説を確かめるべく、ある3つの組織を同時に壊滅させた。
秘密結社ボーダーグラウンド、某犯罪組織(名前なんだっけ)、そしてDBO。
これらの組織は、調べたところそれぞれに小さいながらもつながりがあった。
この繋がりのせいで、それぞれを壊滅させるのが難しくなっていたのである。
特に某犯罪組織の拠点が隠蔽されていたのが厄介だったな、俺が台無しにしたけど。
んで、そうすると何故かギャラクシー★ザウルスとかいうそれら組織と全く関係ないバケモンが湧いてきた。
ギャラクシー★ザウルスは完全に想定外だったが、事件が起きること自体は俺の仮説通り。
なのでアルカナ・クランに情報をリークして対処してもらったが、いくらなんでもギャラクシー★ザウルスは無理やりすぎだ。
でも、そうしないと都合の悪い奴がいたとしたら?
「俺は、それをおびき寄せるために、こうして事件を起こしたわけだ」
――という説明を、思いついたとか、仮説を立てたとかそういう事情を抜きにして話した。
最初から、解っている感を出すために。
俺の行動の九割が行き当たりばったりだとか、リスナーが知る必要のない情報だ。
「暴走させてしまった者たち、それに襲われた者たちには悪いと思っている。しかし、最低限の配慮はしているつもりだ。何しろ暴走している彼らはバトルで倒せば正気に戻るし、あくまで暴走しているだけだから人や物に危害を加えることもない。襲われたといっても、大声を出されて追いかけられる程度だろう」
まぁそれはそれで怖いというのは確かだが、カードが盗られるか自分がカードになるかが普通の世界だと、本当にこれはただの悪戯程度のもの。
語尾が変な悪の組織があると以前にいったが、あんな感じの連中が起こす事件と同じ括りに入れられる。
つまり、
本来なら、この事件には”次”があるのだろう。
しかし俺が奴らにとってある想定外を起こしたことで、その”次”は不可能になった。
「さて、俺は暴走事件を起こすことで、各地に俺と繋がりを持つマナを展開させた。これにより、俺はあることが可能になったわけだ」
どうして可能になったかといえばとても簡単で――
非常に単純だ。
マナは人の意思、そのマナの根源である意思に「俺が黒幕である」と刷り込めばこのマナは全て俺が乗っ取れてしまう。
物理的に存在しないオカルトエネルギーを使ったのが、奴らの失敗だ。
「――マナに干渉する”黒幕”をこの場に召喚する」
本当はこんなに早く行動を起こすつもりはなかった、とか。
敵を呼び出した後は正直ほぼアドリブなんだよな、とか。
色々不安要素はある。
しかし、こうなってしまった以上やるしかない。
俺は手をかざし、あんまり感じ取れないマナ探知でもって周囲のマナを感じ取りつつ手をかざす。
「さて、君たちはこいつらが何のために存在しているか、知っているか?」
マナが俺の元へと集い、そして一つの形をなしていく。
「こいつらはマナに干渉するってことは、人の運命に干渉するってことだ」
それは――カードだ。
「人はより強大な運命に立ち向かえば立ち向かうほど、より多くのマナを生み出していく。つまり、事件がより過酷であればあるほどマナは増えていくんだ」
マナはカードを生み出すことができる。
であれば、黒幕をどのような姿で呼び出すかと考えた時、一番簡単なのがカードとして生成することだった。
この世界には人をカード化する技術があり、それによってカード化された人間もカードとして使うことができる。
DBOがそうだったように。
「しかし、そんなにマナが増えなくても、元々事件は解決が可能なはずだったんだ。であれば、増えたマナはどこへ行く? 介入する連中の元へいくならそれはまるで――」
その時だ。
『やめろ!』
カードから声が聞こえたのは。
「やあ、待っていたぞ黒幕。ようやく会えたな」
『貴様……我をこのようなカードに押し込め……愚弄する気か!』
「愚弄してるのはそっちだろう、人からマナを巻き上げて自分たちはそれを高みの見物、いい御身分だな」
『――貴様は、何もわかっていない!』
カードの性別がわからない声が、俺に向かってがなり立てる。
『この世界を維持するにはマナが必要不可欠なのだ。そしてマナには闘争が必要、我らはその助けをしているに過ぎない。これは必要なことなのだ!』
「お前たちがそんなことをしなくても、マナは生まれ世界は運行される。余計なお世話ってやつだろ」
『だが、我らが助けたほうがより循環するのは事実だ。むしろ貴様の方がそれを邪魔する悪である!』
――さて、ここで俺は今まで無視していた配信のチャット欄を見る。
どう考えても大荒れしているから、見たくなかったのだ。
しかし今回はそうも行かないし、何より次の一手のために必要なこと。
そして、案の定チャット欄はどちらかと言えば困惑の方が強く、俺が正しいとか、眼の前のカードが正しいとか、そういう判断ができなくなっているようだった。
元々、半ばまくしたてるように説明し、ふんわりとしか彼らが理解できないよう立ち回ったのだから、当然である。
しかし――
「なぁ、リスナー諸君。こいつらの存在を見ていると、ある連中のことを思い浮かべないか?」
『何を言っている……?』
「本来なら必要のない物の流れに介入し、自分が上前を跳ねる。それでいてそのことを、まるで正しいことかのように振る舞う。そういう存在を――俺達はよく知ってるはずだ」
俺が一言で、それを書き換える。
「こいつら、転売屋みたいだな?」
:は?
:死ね
:陰湿使いデッキは死んでよ~、転売屋は死ね
――その瞬間、
よし、成功だ。
この作戦の要、一度生まれてしまったヘイトは消えない。
しかし、より大きなヘイトでかき消すことは可能。
こいつらの背負う業ってやつが、あまりにも大きかったからできるなすりつけ。
『な、何故そのように、我に対して殺意を向ける! 我らは貴様らを正しく導き、救う存在なるぞ! 我らを侮辱するな! 我らを崇めよ! 我らを――!』
そして、状況はさらに変化する。
「ヴェルライト様ぁあああああああ!!」
えっ。
『な、なんだ!?』
:え、何!?
:全身ヴェルライトグッズの変態が壁を四つん這いでよじ登って乱入してきた!?
:でもこの変態カワイイぞ!
:いやでもこれをカワイイと思うのは無理だって。
待て待て待て。
何がどうなっていきなり波浪フェニが乱入してくるんだよ。
いや、これもお約束の一つか。
あんだけ大量にグッズ抱えて、この世界で一番洗脳されているであろう人物で、ここまで歩いてこれる距離にいるんだから。
運命がそういう風に導いてもしょうがないよな。
というか、俺がマナを各地からここに集めたんだから、それに惹き寄せられるのは当然か。
とはいえどうすんだよこれ――
「よく来たな、俺の信者。――待っていたよ」
「ヴェルライト様が私を待っていてくださったのですかぁあああああ!?」
「ああ、そうだ。だから――」
俺はライブラリにデッキをセットしながら、呼びかける。
「
『な――』
「はひぃ!!」
勢いよく、波浪はカードに手を伸ばす。
『やめ!』
「にがしませぇえええええん!」
『なんだこいつ、力が強すぎ……このグッズに付与されたマナで強化されている!?』
――自業自得だな。
ばらまいたお前が悪いんだよ。
「アンティだ! 俺が勝ったら、そのカードにはここで消えてもらう。そして君が勝ったら――好きにしろ」
「んひぃ!!!」
『ば、バカ……やめろ……!』
即座に波浪はデッキにカードを投入し、そしてライブラリを構える。
そして――
『
「マギロアバトル、エンチャント!」
「エンチャントですうううううう!」
――まぁ、結果は言うまでもないだろう。
その日、この世界に初めてその足跡を残した黒幕――もといクソ転売屋一味の一人は、こうして。
バトルで場に出されることすらなく、轢き殺された。
そしてコレが俺と――この世界の裏で暗躍するクソ転売屋との戦いの、始まりだったのだ。
というわけで、ここまでが序章となります。
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