Fate/世界で超絶美形と魅了:EXになって転生したった 作:プル山門左衛門
神代ギリシャに転生した主人公が大英雄になる話です。
もしくは主人公が酷い目にあう話です。
――――フォスティノス。
ギリシャにおいて【輝く星】という名を与えられたこの英雄は後にアルゴノーツの一員として数々の冒険を繰り広げヘラクレス、アキレウスに並ぶギリシャ最大最強の英雄の一人として名を残した。
その中でもフォスティノスの伝説で有名なのが美の女神に並びかねない程に美しいと評された容姿、そして特異な身体だろう。昼になれば男、夜になれば女になるという特異な体質を持って生まれた彼、あるいは彼女は幼い頃から美しい容姿と相まって男女関係無く人々を魅了した。
何故そんな身体になったのか。その理由は不明だが、フォスティノスの祖母は女神ハルモニアーであったからだと言われている。その後、色々な苦難と試練を味わう事となるがこの時点でフォスティノスでも誰も彼もを魅了する存在だったのである。
――――サーヴァントとして召喚されるフォスティノスがスキル魅了:EXを持っている所以だった。
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【悲報】Fate/の、それもギリシャ神話の時代に転生した件について。
この世界に転生しフォスティノスと名付けられて早六年、今朝ようやく納得出来たその事実に打ちひしがれ、思わず膝をついて絶望する。
いやさ、前々からなんかおかしいなとは思っていた。
現代日本じゃないのは見て分かるし、かといってナーロッパ感じもしないし、本当に昔々の大昔の世界だっていうのは理解していた。
服装も古代ギリシャの人達が着ているものっぽかったし、ゼウスとかヘラとかポセイドンとかなんかギリシャ神話の神々の名前が出て来るなって思ってもいた。
でも最近の異世界転生でも他の神話の神々が転生やってるところもあるし、もしかしたら名前が同じの神が居る異世界なのかもと自分に言い聞かせていた。
転生なんて経験してるから余計にそう思ってしまったのかもしれない。神に会って転生したわけじゃないから神の存在が半信半疑だったってのもあったが。
それでも自分の身体が昼は男、夜は女に変わったりしてたしインチキ占い師っぽい見た目の人から「こ、この子には他者を魅了する力がある!」と言われたり会う人会う人に結婚を申し込まれたりしてたから「やっぱり居るんじゃねぇかファッキンゴッド」と名も知らない神に心の中で中指を立てていた。
だけど、一週間前に見てしまった。
――――この地に降臨したゼウスという神が、Fate/のゼウスの姿をしていた事に。
それは村で行われている祭りでの出来事だった。
偶然にもゼウス様が村に来てくださいましたと村長が言った。
小さな祭りで崇めている神も沢山居たが、気まぐれに姿を見せたと言っていた。
ギリシャの神は気紛れだからそういう事もあるのかもしれない、そう自分に言い聞かせてしっかり一週間考え込んで、この結論になったわけである。
「いやだぁ…………」
ただでさえギリシャの神々が居るのに加えてまさかのFate/世界だったっていう地獄の追撃を喰らう羽目になり、思わず絶望の嘆きを口にする。
ただでさえ、ただでさえ性別が入れ替わる身体で苦労してたのに、男女問わずに求婚されまくる事に苦心してたのにこの情報量はキツすぎる。
何が悲しいって知ったからって何も変わるわけじゃないというのがね。
いや、ある程度は予想がつく。
性別が入れ替わる身体というのはギリシャ神話ではよくある話ではないが実際ある。
カイニスとかがその代表例だ。
僕の場合は父さんが女神ハルモニアー*1の血を引いていると言っていた。ギリシャ神話を全て網羅してるわけじゃないし、そもそもそこまで知らないから断言は出来ないけど話を聞く限り調和の女神だと言うし、その性質が男女入れ替わる身体として出てきてるんだろう。
そして求婚されまくる事も、多分僕は魅了のスキルを持っている。
それもかなり高レベルの、ディルムッド・オディナ以上のやつ。魅了:EXだ。いや、流石にそこまでは無いが。
これがあればハーレムだぜうははははー、とはならなかった。
確かに可愛い娘沢山いるよ?
アタランテとかメディアとかエウロペさんとかメデューサさん姉妹とかポルクスとかパリスきゅんとかアルテミスとかデメテルとかペルセポネとかアフロディーテとか。
でも皆地雷やん。それも自動追尾式の核地雷。しかも相手が居たりするし。
触れたら死ぬと分かってて触る程、僕は性欲に狂ってるわけじゃない。例え一夜の過ちだけだったとしても、僕は絶対に嫌だ。
それに性別が入れ替わる身体というのが厄介過ぎる。
何が厄介ってこの魅了、性別関係無いのである。
男も女も老人も若人も子どもも、果てには動物でさえもだ。
やっぱり魅了:EXだろ。六歳の、それも性別が入れ替わり続ける奇妙な身体をした子どもに誰彼構わず結婚を申し込んでくるのマジで怖過ぎるって。
今の所一番恐怖したのは仲睦まじい夫婦が目の色を変えて僕に婚姻を申し込んできた時ぐらいだろうか。二人揃ってああなるのは本当に怖かった。
「うん、決めた。僕は平凡に生きる」
何かの間違いで英雄になってしまったら、あの恐ろしく強い人達に手篭めにされてしまう。
いや、そもそも目立つ真似なんかしたらゼウスとかポセイドンとか下半身に脳がある連中に目をつけられかねない。第二のカイニスとかマジで洒落にならん。
かといって女神もゴメンだ。第二のオリオンになりたくない。
こんな一昔前のネット小説にあるようなニコポ、ナデポを悪化させた能力で無双なんか出来るわけないし、その方が良いに決まってる。下手したら死ぬより酷い目にあうなんて事もあるわけだし。
独身で一人寂しく生きる。それが僕が目指すべき第二の人生だ。
「ねえちゃーん、いっしょにかいものいこー!」
「あ、うん。今行くよー。後ある意味間違っちゃいないけど今男なんだからお兄ちゃんな」
家の外から聞こえた弟の声で我に返り、家の外で待ってる家族の下へと向かう。
今生の僕の家族は父と母、そして弟の四人家族だ。
家族仲は非常に良い。
「お待たせ。じゃ、行こっか」
小さく幼い弟の手を優しく握りしめ、今日も買い物に向かう。
新しい家族になってから続く同じ毎日だ。
「えへへ、ねえちゃんほんとうにきれいだなぁ。おれしょうらいねえちゃんとけっこんするよー」
「はいはい。兄弟で結婚は出来ないよ」
ギリシャ神話の神々は兄妹で結婚してたりするがそれは神々だけ。
人間の場合も実はあったりするがそれでもタブーだった筈だ。
「お、フォスティノスか。今日も本当に可愛らしいな。流石はアフロディーテ様に並びかねないとまで言われるだけの事はあるぜ。どうだい? おっちゃんと結婚しないか?」
「しません。そもそもアフロディーテ様に失礼ですよ」
「そうだよあんた。フォスティノスがあんたみたいな毛むくじゃらのおっさんと結婚するわけないだろ。でも本当に可愛らしいね。まるで宝石のようだよ。おばちゃんがもう少し若ければ結婚を申し込んだというのに」
「そんな事ないですよ。それに結婚するつもりないですし」
今日も街に出ればいつものように結婚を申し込まれる。
これでもまだマシな方だ。いつもの顔馴染みの人達しか居ないからこの程度で済んでいる。
この港町の外からやってきた人が僕を見た瞬間、物凄い勢いのまま結婚を申し込んでくるのに比べればこんなのはまだ笑って流せる。
とはいえ、ここまでされればどんなに鈍感でもロリコンショタコンとかじゃなく、自分に問題があると分かってしまう。
僕自身には分からないが、どうやら僕は容姿以上に魅力的に見られるらしい。いや、実際のところ容姿も凄い。
男女入れ替わっても変わらない銀色の髪に赤い瞳、神が作ったとしか思えないような左右対称で均整の取れた完璧な容姿。
誰が見ても美しいとしか思ないような芸術的な顔だった。
そんな容姿に加えてあの占い師が言った魅了の力があればこうなるのも当然と言うべきか。
気のせいであってほしいんだけどなぁ。
「相変わらずだなフォスティノス」
「笑い事じゃないんだけどね」
「お前がそれだけ特別って事だよ。皆、お前の事が大好きなんだ。俺も自分の子じゃなければ結婚を申し込んでたかもしれない。ハルモニアー神はアフロディーテ様の娘だから、その美貌がお前に引き継がれたのかもしれないな」
「冗談と思っておく事にするよ。アフロディーテ様に失礼だし…………それよりもほら、早く行かないとお魚売り切れちゃうよ!」
いくら美しくてもここまで来ると害にしかならない。
僕は将来、平凡に何も残さず無意味に生きていくんだ。
父親の手を掴み、引っ張って連れてこうとした瞬間だった。
少し離れた所から火の手が上がっているのを発見したのは。
「っ、父さん! あそこ火事!!」
「なんだって!?」
「僕ちょっと行ってくる! ここで待ってて!!」
「フォスティノスっ!?」
弟の手を父親に託し、そのまま火事になっている家へと向かう。
火の手が上がった事で町の人達は皆、恐怖で叫びながらその家から離れている。
人混みの隙間を縫って行くと燃える家に手を伸ばす女性と、その女性を必死になって抑える男性が居た。
「あ、あの子が…………!」
「ダメだ! もう…………」
察するに燃えてる家はあの二人のものらしくら中に家族、多分子どもが居るらしい。
状況把握、全部を理解したとは言わないがやらなくちゃいけない事は分かった。
周囲を見渡し、中に水が入ってるヒュドリア*2をかついで火事になっている家を見上げている男を発見。
「そこのお兄さん! その水を全部僕にぶっかけて!!」
「え、あ」
「良いから早く! 間に合わなくなる!!」
「わ、分かった…………!」
混乱してるのか、男は戸惑いながらも僕に水をぶっかける。
思ったより冷たい。でもこれで何とかなる。
着ていた服の裾を千切り、口元全体を覆うマスクと足を覆う簡易的な靴にする。
「よし」
これにて準備完了、前世でやった避難訓練で学んだ知識があるから最低限の用意は出来た。
後は、無事であることを神に祈るしかない。
心の中でそう思いながら燃え上がる家の中に飛び込む。
口元を覆っているからといってガスを吸い込まないわけじゃない。だから、ここからは最速最短で助ける方向に移行する。
本当に今生の身体のスペックが高くて助かる。
一階は居ない。人の声も、呼吸音も聞こえない。で、あるなら上の階だ。
水で濡らしてるとはいえ滅茶苦茶あっつい。息を止めてるのも厳しくなってきた。
急いで二階に上がり、周囲を確認する。
聞こえたのは赤子の泣き声。ここから南、すぐ近く――――。
「居たっ!!」
急いで赤ちゃんの下へ向かう。
その途中、焼けた木片が赤ちゃんに落ちてくる。
「させるかっ!!」
駆けながら腕を振るって焼けた木片を払う。
痛みはある。が、我慢出来ないわけじゃない。
「助けに来たよ!」
僕がそう言って顔を覗き込むと、安心したからか赤ちゃんは笑い出す。
呑気なものだ、一瞬だけそう思いながらすぐに赤ちゃんを抱えて勢いよく壁を蹴り破り家の外へと飛び出す。
眼下には弟を連れた父と母、そして僕を見て驚く夫婦。
「助けたよ!!」
赤ちゃんの負担にならないように着地し、夫婦に赤ちゃんを差し出す。
僕の手の中で笑う赤ちゃんを見て、夫婦は涙を流しながら受け取り優しく抱きしめていた。
「フォスティノス!!」
父が自分を呼ぶ声が耳に届く。
「父さん」
「大丈夫!? 怪我は――――ああ、腕が…………っ!」
母が僕の左腕を見て心配そうに声をあげる。
左腕はさっき木片を払った際に傷付いたのか血が出てた。
「ねえちゃん、いたくないの?」
「えっと、うん。痛いかな? 我慢出来るけど」
「我慢なんかしなくて良いのよ! 早く手当てを…………」
「ならちょっと汚れたし洗い流したいな」
僕がそう言うと父が何処からか持ってきたヒュドリアを傾けて傷口に水をかける。
染みて痛いけど、これで汚れも洗い流せるだろう。
「…………フォスティノス、どうして火の中に飛び込んだんだ?」
父がしゃがんで僕と視線を合わせる。
「あの人達の子どもがまだ中に居るって分かったから」
「怖くはなかったのか?」
「怖く、なかったわけじゃないよ。身体が勝手に動いたんだ」
あの時は一刻も早く助けなくちゃいけないと思ってたから恐怖の感情は何処かにやっていた。
今更ながら僕ってこんな英雄的行動を取るような性格だっただろうか?
もしかして身体に影響されてるのか?
そう思いながら視線を赤ちゃんを抱き締める親子に向ける。
その光景を見て、胸の内が温かくなった気がした。
「でも。あの人達のあの顔を見る事が出来て、良かったなって思ったんだ。だから、痛いのもそんなに気にならないかな」
「…………そうか」
父は短く呟くと僕の頭の上に手を乗せる。
「もしかしたら、お前は英雄になれるのかもしれないな」
「いやぁ、僕に英雄は向かないんじゃないかなぁ?」
頭を撫でながら呟く父にそう返事をしながら傷の治療を受ける。
これが僕の、フォスティノスの日常。
今日のような出来事はそうそうないけど、困ってる人を見かけたら勝手に助けて胸の奥が温かくなる。
英雄とかにはらならないし、誰かと結婚するつもりもない。
そのまま生きられるだけ生きて、普通に老いて死ぬ。
この時はそう思っていた。
「ふぅん、貴方が私に並びかねないと言われてるフォスティノスね」
赤い髪の美しい女神と出会うその時までは。
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フォスティノスという英雄にとって関係が深い女神は二柱居る。
その内の一柱がアフロディーテであり、もう一柱の女神との関係も考えるとある人物との関連性が見られる。しかし、違うのはアフロディーテはフォスティノスに嫉妬し呪いを与えた女神である。
そしてアフロディーテの呪いが切っ掛けとなり、フォスティノスは英雄への一歩を踏み出す。
この呪いによって家族はおろか、暮らしていた町の住人全員が命を落とした事によって。