Fate/世界で超絶美形と魅了:EXになって転生したった 作:プル山門左衛門
ヘラクレスとイアソンってケイローンの弟子ですけどFakeでの描写とかも見ると大人になってから会ったみたいですし。昔の神話って時系列滅茶苦茶でちょっと困る時がありますよね、まあ後世で継ぎ足されていったからなのかもしれないですが。
なのでイアソンの出番は先送りにします。
ペーリオン山に一頭の竜が地上へと降り立つ。
大地と農耕の神クロノスを父に女神ピリュラーを母に持つ完全な『神霊』にして、ケンタウロス族の大賢者であるケイローンは住居にしていた洞窟から姿を現す。
「これは…………
神であるが故にケイローンはその竜がオリュンポス十二神、軍神アレスの眷属であると気付く。
何故アレスの眷属が自分の下に現れたのか。
脳裏に疑問が思い浮かぶ中、竜は首を垂れる。
そしてその背に乗っていた銀色の髪をした仮面の少女がゆっくりと降りて来た。
一目見た瞬間に理解出来たのはアフロディーテの呪いがかかっている事、そして他者を魅了するその特異性だった。顔に装着している仮面で抑えられてなお圧倒的に人を惹きつけるその少女は隙間から覗き見える赤い瞳でケイローンを見た。
「貴方が、大賢者ケイローンですね」
少女は本調子ではないのかふらふらとした足取りながらも、力強い目でケイローンを見つめる。
「ぼ…………私は、フォスティノス。テーバイの外れにある小さな港町出身の、祖先に英雄カドモスと女神ハルモニアーを持つ者です。軍神アレスの導きの下、ここに参りました」
フォスティノスと名乗った少女は頭を地べたに擦り付けるように地に伏せる。
「どうか私に貴方様の教えを授けて下さい。お願いいたします」
弱々しく儚げで今にも命を散らしてしまいそうな程に脆い。
しかし、その瞳に宿る決意は決して折れないだろう。そう思わせるだけの気迫を感じた。
――――それが後に英雄となるフォスティノスと、彼あるいは彼女の師となるケイローンの出会いでもあった。
+++
ケイローン先生の下で学び始めてから早4年が経過した。
数多の英雄を育て上げて来た大賢者の異名は凄まじく、前世で教わった教師とは比較にしてはいけないレベルだ。
いや、神話に名を遺す大賢者なんだからただの教師と比較するのが間違いなんだが、それはそれとして結構なスパルタでもある。ただ本当に教え方が上手だし授業の内容も分かりやすくて面白い。勉強はあまり得意な方ではなかったが今では勉強熱心になるくらいには夢中になっていた。
熱心に勉強して身に付けなければ未来が無いという状況で、必死になってるから覚えようとしてるから身に付いているだけかもしれないが。
いずれにせよ強くなってるのは実感出来た。
「よし、出来た…………」
そして今、ケイローン先生から教わった魔術や錬金術を駆使してある物を作っていた。
実際のところ、ケイローン塾に来る前から町で暮らしていた魔術師や錬金術師から教わって似たようなものを製作していた事がある。独学に近かったし、納得のいくものが出来たわけじゃないから常に研鑽し続けて来た。
その結果、ついに僕が納得出来るものが完成したのである。
完成品を手に取って仮面の下で笑う。
「ついに完成した…………僕特性
「ついに完成したのか」
僕の背後で覗き見ていた歳下の男の子、アスクレピオスが興味深そうに見ていた。
「うん。漸く、漸く納得のいく物が出来た。前々から似たようなものは作ってたんだけどちょっと納得出来なったからね」
「しかしここまで多くする必要があるか? 身体用石鹸とその乳液とかいう液体だけでも十分だろう。身体用石鹸は汚れを落とす他に傷口を消毒して洗浄するのにも使えるし、その乳液にはアロエが入ってるから傷薬にも使える。だが何故態々髪用石鹸や髪の艶を保つ液体を作ったんだ?」
「単純に僕自身が髪の毛ゴワゴワしてるよりもサラサラしてる方が好きだからね。完全に好みだよ。頭皮の乾燥を防いだりとかも出来るけど」
「そういうものか」
「そういうものだよ。それに、髪の毛がボサボサな方とサラサラで綺麗な髪をした方、どっちが安心出来る医者だと見られるかって話でもある」
「…………まあ、納得はした。それはそれとして僕もいくつか貰っても構わないか? 特にこの乳液は使えそうだからな」
「良いよ。ちなみにこの乳液、肌荒れにも効果的だからね。お風呂上がりだと更に効果が出るから」
「肌の潤いを保つ、という事か。確かに肌荒れの予防にも使えるな。ありがたく頂こう」
僕が開発したものを幾つか持って去っていくアスクレピオスを後ろ姿を眺めながら、改めて完成品に視線を向ける。
「さて、後はこれをカリクローさんにもあげなくちゃ」
「それは嬉しいですね。妻も喜ぶと思いますよ」
「ケイローン先生」
背後から来たケイローン先生の方に視線を向ける。
ちなみにカリクローさんはケイローン先生の奥様の事だ。
「しかし、これらの身体を清める道具。その全てが美容の為の物だと思いますが…………自分の美に興味は無かったのでは?」
「美貌とかそういう美しさの興味は無いですよ。でも身綺麗にするのと不潔なのだったら清潔感がある方が良いと思うんです。人は見た目が全てとは言わないけど、汚いのと清潔感がある方だったら誰だって綺麗な方が良いから。だからこれは美とかいう以前の最低限の身嗜み*1ですね」
「後学の為に聞きたいのですが、ここに来る前も似たようなことをしてたのですか?」
「そうですね。流石に髪用石鹸とかは無かったので自作した石鹸で汚れを落とした後、髪の毛用に作ったアロエ、シトロン*2、ココナッツで作ったもので髪の毛を綺麗に、肌はアロエとココナッツで作った液体を塗ってた感じですね。街の人にあげたりしてましたし結構評判は良かったですよ? まあ簡単になんで美容に気を使ってる人と比べたらそんなに時間はかけてないですよ。お風呂上がりにやってただけですし」
「ちなみに入浴の頻度は?」
「今と変わらず毎日ですね*3。魔術でお湯は簡単に作れるので。朝身体を軽く洗い流して*4から夜はお風呂に入るのは今と変わらないです*5」
現代日本で過ごした記憶があるのに加えて、娯楽が少ないこの時代においてお風呂は僕にとって数少ない癒しでもある。
ケイローン先生の指導があったからシャワーも作れたし、石鹸や乳液も全部整 用意したからこれで現代日本基準のお風呂が楽しめるようになっている。と、いうか身体が汗でべとべとするのは嫌だし髪の毛がベタつくのも嫌だったから自重しなかった。
「…………貴方はよく学ぶ生徒ですが、理想が高過ぎるのが欠点ですね」
「そうですか? これでも妥協はしてるつもりですが」
「訂正します。貴方は自分の基準が高過ぎますね」
何処か困ったように笑うケイローン先生の言葉に僕は思わず首を傾げた。
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フォスティノスは自分の美について興味は無かったとされているが、身体を清める事は好きだったとされている。後のローマ帝国において浴場が栄えたのは彼の影響があったとすらいわれている。
また、フォスティノスが考案したとされている数々の石鹸やスキンケアクリームの効果は高く、ローマ帝国が滅亡して失伝されるまでの間、多くの人々に愛用されたと言われている*6。
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「カリクローさん。これ作ったんで良かったらどうぞ」
「あら、ありがとう。ねぇフォスティノス。やっぱり花嫁修行の方もやらないかしら? 貴方は夜は女の子だしもしかしたら誰かに嫁ぐって事もあると思うの。物覚えの良い貴方ならそんなに時間は掛からないし学ぶ事も少ないと思うから」
「遠慮しておきますよ。昼は男ですし、何より結婚する気が無いので」
「そう? 勿体無いと思うけど」
少しだけ残念がるケイローン先生の奥様、カリクローさんの話を受け流しつつ作った石鹸等を渡す。
後でアフロディーテの神殿にも捧げに行かなくちゃいけないな。
あんの阿婆擦れの事は思うところ沢山あるし許してはいない。が、それはそれとして問題児だらけのオリュンポス十二神の一角ではある。いくら嫌ってようが捧げ物くらい受け取るだろう。
美の女神なんだし僕みたいな美貌とか気にしない奴より美しくなって、僕なんか目に入らなくなるくらい優越感に浸ってほしいものだ。
ついでに呪いも解いてほしい。
「さて、真面目な話をしましょうか。フォスティノス、仮面の方を外せますか?」
「…………あまり外したくはありませんが」
「自分に掛けられた呪い、そして自分の持つ力を理解するのも必要な事ですよ。安心して下さい。我等も覚悟は出来てます。以前からどう変化してるのか、ちゃんと確認しておきたいので」
「分かってます。それにもしかしたら前より醜くなってるかしれませんからね。確認しとかなくちゃ」
ケイローン先生に促されるまま、仮面に手を伸ばしゆっくりと外す。
瞬間、鳥の鳴き声が、風の音が世界中のあらゆる音が消えたのではないかと思うくらいに消失する。
二人は仮面を外した僕の顔を見つめながら、口元に手を当てて思考する。
「…………やはり以前よりは制御出来てますね」
「それは僕の心が醜くなってるからですか?」
「前よりも美しくなってますね」
「ふぁっきん」
仮面を付けて告げられた事実に憤慨する。
ケイローン先生は息を吐きながら改めて僕に視線を向け直す。
「以前、呪いを掛けられた直後の出来事は覚えていますか?」
「忘れたくても忘れられません」
「その時に起こった出来事のような事はもう起こらないでしょう。恐らく、そんな大惨事になった原因は幼少から貴方を知っていたからこそ、心の美しさを直視してしまい精神が耐えきれなかったのでしょう」
「…………改めて思ったんですが、心の美しさだけであんな事になるんですか?」
「貴方しか引き起こせない特異な力だからですね。少しばかり説明しましょう」
そう言うとケイローン先生は僕の魅了や呪いについての解説を始める。
僕自身、この顔を忌み嫌い過ぎて剝がしたくなったくらいには目を背けていたかったくらいには嫌いだ。
だからこうして僕が今どうなっているのか分かっていないから教えてくれるのは凄い助かる。
ちなみに顔については一回剥がそうとした事がある。
自害は無理でも顔を剥がすくらいなら大丈夫でしょ、と軽い気持ちで決行してアフロディーテの呪いなのか四肢が何かに拘束されたが。その時にケイローン先生とカリクローさんに顔を見られ、事情を説明したら滅茶苦茶怒られた。
「先ず貴方には魅了という力があります。魅了の魔眼とは別の効果で、端的に言ってしまえばフォスティノス、貴方に対し強烈な愛情を抱きます」
「でも先生、僕男にも求婚されましたけど」
「貴方は夜になったら女になりますからね。性別は男女両方なのでしょう。なので異性、とは言いますが実質全てが対象なのでしょう」
「ふぁっきん」
「もっとも、貴方の魅了の場合人間だけじゃありませんね。動物はおろか神々にも有効です」
「がっでむ――――でもアフロディーテ様は何故僕に呪いなんかを掛けたんでしょう?」
「愛と言っても多種多様です。それは恋愛だったり親愛だったり親子愛だったり、一つしかないわけではないのです。愛憎だって、愛情の一つですよ」
ケイローン先生のその言葉を聞いて改めて自分の魅了という力にむかっ腹が立つ。
なんだよこの力、全然僕の役に立ってないじゃないか。いや、でもアフロディーテが僕なんかに愛憎するだろうか?
てか神々にも有効なのは普通に嫌だな。
女の時はゼウスとかポセイドンに近寄られないよう注意しようマジで。
「次は貴方の容姿についてですね。正直これもかなり人を惹きつけます」
「今は仮面のおかげで気にしなくてすみますけどね」
「そうでなくても身嗜みが整い過ぎて顔を隠してても顔が良いと悟られますけどね。兎も角、アフロディーテと同等の美貌は良くも悪くも人を惹きつけます。出会ったばかりの人間が婚姻を申し込むくらい」
「じーざす」
「それに加えて魅了もあるのだから手に負えません。見た瞬間に恋情、愛情を抱く。恐らくではありますがそれが前までの貴方でした」
改めて聞くと罰ゲームみたいなセットだ。
普通に生きたかったのに何でただ生きているだけで人の心を狂わせるんだよ。
「そして最後にアフロディーテの呪い。これは心の醜さを映し出す呪いです」
「…………疑問なんですが心の醜さを映し出す筈なのになんで心の美しさになるんですか?」
「その疑問に答える前にフォスティノス、貴方に問います。心の醜さとは何ですか?」
「えっと…………」
そう言われると返答に困る。
でもこういうのは大抵マイナスな言葉だった筈だ。
「妬み、嫉み、憎悪、嫌悪…………ですか?」
「大体あってます。が、それらは人が持っていて当たり前のものです。なのでそれらは醜さにはなりません」
「どんなものがあるんですか?」
「欲望です。といってもただの欲望ではありません。相手の都合を考えず、危害を加える事や意識して相手を傷つける事。そして己の欲望を満たす事。それらが醜さとなって現れる筈でした。ですがそれが無ければ現れることは無い」
「なら呪いは機能しないんじゃ」
「いいえ。アフロディーテの呪いは強制的に顔に出させるのです。醜さが無くても強引に表出させようとする。結果、強いて挙げるならと妥協するんです」
「…………なんか、凄いいい加減ですね」
「妥協した呪いによって映し出されるのは貴方の美しい心です。本来心とは目で見れるものではありません。当人の行いから垣間見える事は出来ますがすべては見れません。ですが、この呪いはそれを直接見せつける。それは自分がこういう人間であると相手に理解させるのです」
本来なら長い時間をかけたり、ふとした事で伝わる印象を強引に相手に焼き付ける。
要するにこの呪いは過程を省略して結果のみを相手に伝える。
「呪いは容姿の美しさを更に引き立て、容姿以上の美しさを持つ心を持っていると他者に理解させる。魅了、容姿、美しい心。その全てを見た時、他者を狂わせてしまうのです。自分の命を捧げる事すら惜しくないと思ってしまう程に…………貴方が命ずればなんでもするでしょうね」
改めて説明を聞いてあの時、故郷で何が起こったのかを理解する。
結局、彼等を殺したのは自分なのだ。
「よく分かりました。人前で仮面は絶対に外せないですね」
「…………全員が全員、そうであるとは限りませんよ。事前に分かっていれば何とか耐える事は出来ます」
「だとしても外せませんよ。僕は他人を自分の意のままに操りたいとは思わない」
あの時殺した皆は自分の意思で行動したわけじゃない。
僕が殺した、殺してしまったようなものだ。理解しろフォスティノス、お前が仮面を外せば人はまた死ぬぞ。
そう自分に言い聞かせながら服の裾をギュッと握りしめる。
「でも心の美しさなんてあてにならないですね」
自分の心が綺麗なわけが無い。
皆を死に追いやったくせに、綺麗なままでいるとかふざけんなよ。
「フォスティノス。貴方にとって綺麗な心とは?」
ケイローン先生の問いに僕は答える。
僕が思う、綺麗な心。
「世界中の全てを愛して、誰かが困ってたら力を貸して、悪いことには毅然と立ち向かう。そんな心ですかね?」
別にそうでなければ心が綺麗じゃないとは言わない。
でもここまで騒がれるのならそれくらい綺麗じゃないと僕が納得出来なかった。
+++
ケイローン先生の所で過ごす時間は僕にとってかなり過ごしやすかった。
先生に様々な事を教えられ、アスクレピオスと薬のことで色々考え、カリクローさんに押し切られて花嫁修行もする。
たまにケイローン先生に弟子入りする人がやってきて交流したりして過ごす、そんな毎日。
「我が名はアルケイデス! 賢者ケイローンに教えを請いに参りました!」
そしてペリオーン山に新しい風が吹く。
これが僕の、終生の好敵手との初めての出会いだった。
主人公を見たとある良妻狐の叫び。
「ぐぁああああああああ!? 目が、目が潰れるぅ!! 何なんですかこの人! 魂がイケメンとかそんなレベルじゃねぇ! 研磨された宝石? 太陽? 人間の、この星の人々の魂じゃないですよ!」